2014
心不全における一次予防としてのICDは死亡リスクを低下させる(ESC Congress 2019)
PCI後予防的ICDの長期の有益性(ESC Congress 2019)
末梢動脈疾患に対してスタチンを開始するのに遅すぎることはない(ESC Congress 2019, Abstract 80087)
心不全および脳卒中患者において白質病変は一般的である(ESC Congress 2019, Abstract 89078)
うつ病は介護者の身体的健康と関連がある(ESC Congress 2019, Abstract 81211)
MI後の内出血はがんを疑うきっかけとなる(ESC Congress 2019, Abstract 83231)
16年経過してもPCIは未だ血栓溶解療法に勝る(ESC Congress 2019)
β遮断薬は腎機能障害を有する患者であっても死亡率を低下させる(ESC Congress 2019)
PCIとCABGには10年後の死亡率に差はない(ESC Congress 2019)
2年後の時点で経皮的僧帽弁修復術の有益性は認められなかった(ESC Congress 2019)
コレステロールおよび血圧の穏やかな低下の効果(ESC Congress 2019)
地域住民を対象とした塩分置換プログラムは血圧を低下させる(ESC Congress 2019)
糖尿病患者におけるチカグレロルの臨床的有用性(ESC Congress 2019)
STEMI後の非責任病変におけるPCIで予後を改善 (ESC Congress 2019)
ダパグリフロジンは糖尿病だけでなく心不全も治療する(ESC Congress 2019)
ACSにおいてプラスグレルはチカグレロルに勝る(ESC Congress 2019)
駆出率の保たれた心不全は依然として治療が困難である(ESC Congress 2019)
高感度トロポニンを用いた単回の検査でMIを除外する(ESC Congress 2019)
大気汚染は血管形成術の施行率を上昇させる(ESC Congress 2019, Abstract P3421)
左室心筋重量の増加は心不全リスクを上昇させる
SwedeHF試験:植込み型除細動器は心不全の死亡率を低下させる [2019-09-24]
SwedeHF: Implantable cardioverter-defibrillator linked with lower mortality in heart failure

一次予防としての植込み型除細動器(ICD)使用は最新の治療を受けている心不全患者の短期および長期死亡率を低下させる、との late breaking の結果が ESC Congress 2019 で発表され、Circulation に掲載された。ICDの使用は1年全死亡の相対リスクを26% 低下させ(p<0.01)、5年全死亡の相対リスクを13% 低下させた(p=0.04)。短期および長期死亡率の低下は、サブグループいずれにおいても一貫して認められた。これらの結果は現在の推奨を支持し、実地臨床におけるより適切なICD植込みの実施を呼びかけるものである。

DAPA試験:早期除細動器植え込みは冠動脈ステント留置後の生存期間を延長する [2019-09-24]
DAPA: Early implantable cardioverter-defibrillator use prolongs survival after coronary stenting

プライマリ冠動脈インターベンション後の植込み型除細動器(ICD)早期使用は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)後の死亡リスクの高い患者の生存期間を延長する、との late breaking の結果が ESC Congress 2019 で発表された。DAPA 試験の9年追跡において、全死亡はICD 群の24.4%、コントロール群の35.5% に発現し、ハザード比(HR)は0.58であった(95% 信頼区間[CI]0.37-0.91)。心臓死はICD 群で11.4% であり、コントロール群では18.5% であった(HR 0.52;95% CI 0.28-0.99)。心臓突然死の割合は、両群間で有意差がなかった。

EUROASPIRE試験:研究の結果、PADに対する薬物療法の開始と生涯にわたり遵守することの重要性が示された [2019-09-24]
EUROASPIRE: Research shows importance of starting and adhering to lifelong medication for PAD

末梢動脈疾患(PAD)患者において、スタチン系薬剤は診断後に遅れて開始された場合でも死亡率を低下させた、と ESC Congress 2019 で発表された。EUROASPIRE 試験において、スタチン内服を中止した患者の死亡率(33%)は、一度も内服したことのない患者と同等(34%)であった。試験期間50か月にわたりスタチン内服を遵守することは、20% の死亡率と関連があった。試験期間中の高用量スタチンの内服は、最も低い死亡率(10%)と関連し、同じ期間中の用量減量は最も高い死亡率と関連した。

LIFE-Adult試験:心不全患者は脳卒中患者と同様の認知症型脳病変の可能性がある[2019-09-24]
LIFE-Adult: Heart failure patients have similar odds of dementia-type brain lesions as stroke patients

認知症および認知機能障害と関連のある脳損傷の型は、心不全患者において脳卒中歴を有する患者同様に多く認められる、との LIFE-Adult-Study の結果が ESC Congress 2019 で発表された。心不全患者は、心不全を有さない患者よりも白質領域病変(WML)率が2.5倍高かった。同様に、脳卒中患者は、脳卒中歴を有さない者よりもWHL率が2倍高かった。WHL 率は心不全期間が長いほど増加した(診断から3年以内の1.3から、診断後6年以上2.9へ)。

脳卒中既往患者の介護者におけるうつ症状は将来の健康問題を予測する [2019-09-24]
Symptoms of depression in caregivers of stroke survivors may predict future health problems

うつ徴候を示す脳卒中既往患者の介護者は、将来的に自身の健康面の課題を有するリスクが高い可能性がある、と ESC Congress 2019 で発表された。慢性的なうつ症状を有する人々の精神的健康状態は、身体的健康状態と密接に関連があった。試験に参加した介護者の3分の1は、1年後の身体の健康状態はまずまず、または不良であると報告し、43% は健康状態が悪化したと報告した。うつ徴候のない介護者に比べ、うつ状態が続いている介護者は、脳卒中既往患者の介護開始1年後の体調不良を訴える確率が7倍高かった。

急性冠症候群患者において、退院後の出血とその後がんと診断されることには関連があることが明らかにされた [2019-09-24]
Link found between bleeding after hospital discharge and subsequent cancer diagnosis in patients with acute coronary syndrome

心筋梗塞後の退院から6か月以内の出血はその後にがんと診断されることと関連がある、と ESC Congress 2019 で発表された。研究者らは、退院後抗血小板薬2剤併用療法を施行された急性冠症候群患者3,644人のカルテを、後ろ向きにレビューした。退院後の出血は、新たにがんと診断されるリスクを3倍にした。明らかな原因のない自然出血は、がんと診断されるリスクが4倍高いことと関連があった。このがんとの関連は、出血重症度が高いほど増大した。出血とがんとの関連性は、2剤併用療法の継続の有無に関係なく認められた。

DANAMI-2試験:冠動脈ステント留置により死亡または再梗塞を1年以上遅らせることができる [2019-09-17]
DANAMI-2: Death or reinfarction delayed by more than one year with coronary stenting

転院を含むプライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)治療により、血栓溶解療法に比べ死亡または再梗塞を1年以上遅らせることができる、との DANAMI-2試験の結果が ESC Congress 2019 の Hot Line Session で発表され、European Heart Journal に掲載された。プライマリPCIを施行された患者は、16年間の総死亡または再梗塞からなる複合エンドポイント発現率が持続的かつ有意に低かった。これはコホート全体(PCI 58.7% vs. 血栓溶解療法 62.3%、ハザード比 [HR] 0.87)および紹介病院からPCI可能な高度医療センターに転送された患者(PCI 58.7% vs. 血栓溶解療法 64.1%、HR 0.84)、いずれにおいても明らかであった。

BB-meta HF試験:心不全および中等度腎機能障害を有する患者においてベータ遮断薬は死亡を減らす [2019-09-17]
BB-meta HF: Beta-blockers reduce death in patients with heart failure and moderate renal impairment

駆出率の低下した洞調律の心不全(HFrEF)において、β遮断薬はたとえ腎機能障害を有していても死亡を予防するために有効である、と ESC Congress 2019 の Hot Line Session で発表された。追跡期間中央値1.3年の間、腎機能障害は高死亡率と独立して関連があり、腎機能障害が重度であるほど心不全の進行が死亡原因である頻度が高かった。洞調律の患者13,861人において、中等度から中等度‐重度の腎障害を有する患者であっても、β遮断薬は死亡率を有意に低下させた。補正後、β遮断薬はプラセボと比較し、死亡リスクをそれぞれ27% および29% 低下させた。

SYNTAX試験:バイパス手術と冠動脈ステント留置術とでは10年後の予後は同等である [2019-09-17]
SYNTAX: Bypass surgery and coronary stenting yield comparable 10-year survival

新規発症3枝病変および左冠動脈主幹部病変を有する患者において、冠動脈バイパス術(CABG)と薬剤溶出性ステント留置術とでは10年生存率は同等である、とのSYNTAX Extended Survival 試験の結果が ESC Congress 2019 で発表され、Lancet に掲載された。10年間の追跡調査の結果、患者群全体における生存率は薬剤溶出性ステントを用いたPCI とCABG とで差がなかった(p=0.092)。事前に規定されたサブグループについてさらに解析した結果、3枝病変および進行した複雑な冠動脈病変を有する患者において、CABG は10年生存率において改善を認めた。糖尿病の有無で10年生存率に差はなかった。

MITRA-FR試験:心不全患者における二次性僧帽弁閉鎖不全症は2年後の転帰を改善しない [2019-09-17]
MITRA-FR: Reducing secondary mitral regurgitation in heart failure does not improve two-year outcomes

心不全患者における二次性僧帽弁閉鎖不全症に対する経皮的修復術は、標準的な医療と比較し、2年後の時点で死亡および入院を減少させない、との MITRA-FR 試験の結果が ESC Congress 2019 で発表され、European Journal of Heart Failure に掲載された。総死亡および心不全による予定外入院は、弁修復術を施行された患者の63.8% および弁修復術を施行されなかった患者の67.1% に発現し、2群間で有意差はなかった。これらの転帰を別々に解析しても、有意差は認められなかった。

血圧およびコレステロールの穏やかな低下により多くの心血管イベントが回避できる [2019-09-17]
Most cardiovascular events avoidable with modest blood pressure and cholesterol reductions

心筋梗塞(MI)、脳卒中、および心疾患死の大部分が血圧およびコレステロールの穏やかで持続的な低下により予防可能である、と ESC Congress 2019 の Hot Line Session で発表され、Journal of the American Medical Association に掲載された。長期にわたり低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)がより低値で収縮期血圧(SBP)が低いことは、生涯における心血管疾患リスクの独立した更なる軽減と関連があった。健康な食事(DASH 食や類似の食事療法)により達成できるLDL-C およびSBP の軽度の低下であっても、将来の心血管疾患の可能性が低下した。

地域レベルで高ナトリウム塩を置換することにより血圧が低下し新たな高血圧発現率が半減する [2019-09-17]
Replacing high-sodium salt at the community level lowers blood pressure and halves incidence of new hypertension

ペルーにおける地域住民を対象とした塩分置換プログラムは、血圧を低下させ新たな高血圧症例を減少させた、と ESC Congress 2019 の Hot Line Session で発表された。この試験では、ナトリウム75% およびカリウム25% を含み著しい味の違いのない食塩代用品を用いた。対象住民全体において、食塩代用品は収縮期血圧を平均1.23 mmHg、拡張期血圧を0.72 mmHg 低下させ、高血圧発症率を55% 低下させた(p<0.001)。ベースラインで高血圧を有さなかった者において、食塩代用品は高血圧発症率を51% 低下させた。

THEMIS試験:チカグレロルとアスピリンの併用は糖尿病を有する安定冠動脈疾患患者の虚血イベントを減少させる [2019-09-10]
THEMIS: Ticagrelor plus aspirin reduce ischemic events in stable coronary patients with diabetes

チカグレロルとアスピリンの併用は、アスピリン単剤との比較で、糖尿病を有する安定冠動脈疾患患者の虚血イベントを減少させる、とのTHEMIS試験のレイトブレイキングの結果がNew England Journal of Medicine に掲載され、ESC Congress 2019のHot Line Session で発表された。有効性主要評価項目(心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合)発現率は、チカグレロル群においてプラセボ群よりも低かった(7.7% vs. 8.5%、p=0.038)。TIMI大出血発現率は、チカグレロル群で高かった(2.2% vs. 1.0%、p<0.001)。チカグレロルはまた、Lancet に掲載された事前に規定されたサブグループ解析(THEMIS-PCI)において、PCI歴を有する糖尿病患者における虚血性イベントを減少させた。

COMPLETE試験:STEMI後の完全血行再建は責任病変のみの血行再建よりも優れている [2019-09-10]
COMPLETE: Complete revascularization is superior to culprit-lesion only intervention following STEMI

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)後患者において、完全血行再建は責任病変のみに対する経皮的冠動脈形成術(PCI)に比べ主要心血管イベントを減少させる。最初のコプライマリーエンドポイント(心血管死または心筋梗塞)は、完全血行再建術群の7.8% に発現したのに対し、責任病変のみの群では10.5% であった(p=0.004)。2番目のコプライマリーエンドポイント(心血管死、心筋梗塞、または虚血に対する血行再建術施行)は、完全血行再建術群で8.9% であったのに対し、責任病変のみの群では16.7% であった(p<0.001)。このCOMPLETE試験の結果はESC Congress 2019 のHot Line Session で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。

DAPA-HF試験:ダパグリフロジンは心不全患者の死亡および入院を減少させる [2019-09-10]
DAPA-HF: Dapagliflozin reduces death and hospitalization in patients with heart failure

ダパグリフロジンは、糖尿病の有無にかかわらず駆出率の低下した心不全患者の死亡および入院を減少させた、とのDAPA-HF試験のレイトブレイキングの結果がESC Congress 2019 のHot Line Session で発表された。追跡期間中央値18.2か月の間に、一次エンドポイントを発現したのはダパグリフロジン群で16.3% であり、プラセボ群では21.2% であった(p<0.00001)。一次エンドポイントの構成要素はさらに、個別に解析された。ダパグリフロジン投与群の10% およびプラセボ投与群の13.7% が初回の心不全増悪を経験した(p<0.00004)。心血管系が原因で死亡したのは、それぞれ9.6% および11.5% であった(p=0.029)。

ISAR-REACT 5試験:プラスグレルはPCIが予定されている急性冠症候群患者の虚血性イベントを減少させる [2019-09-10]
ISAR-REACT 5: Prasugrel cuts ischemic events in acute coronary syndrome patients headed to PCI

急性冠症候群を有し侵襲的治療を予定されている患者の虚血イベントを低下させるにあたり、プラスグレルはチカグレロルよりも優れている、とのISAR-REACT 5試験の結果が ESC Congress 2019で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。一次複合エンドポイント(12か月以内の死亡、心筋梗塞、脳卒中)は、チカグレロル群で9.3% に発現したのに対し、プラスグレル群では6.9% であった(p=0.006)。一次エンドポイントそれぞれの発現は、チカグレロル群とプラスグレル群とで、死亡は4.5% vs. 3.7%、心筋梗塞は4.8% vs. 3.0%、脳卒中は1.1% vs. 1.0% であった。

PARAGON-HF試験では駆出率の保たれた心不全におけるエンドポイントは達成できなかったが、一部の患者で有益性が認められた [2019-09-10]
PARAGON-HF misses endpoint in heart failure with preserved ejection fraction, but benefit noted in some patients

アンジオテンシン受容体‐ネプリライシン阻害薬sacubitril/バルサルタンは、駆出率の保たれた心不全患者(HFpEF)における全入院および心血管死減少からなる一次エンドポイントは達成できなかったが、データから一部の患者群において有益である可能性が示された。一次エンドポイント率比は0.87(95% 信頼区間 [CI] 0.75-1.01;p=0.059)であった。駆出率中央値57% 未満の患者において有益性が高く、一次エンドポイントが22% 低下し、さらに女性では28% 低下した。このPARAGON-HF試験の結果は、ESC Congress 2019のHot Line Session で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。

HiSTORIC試験:心筋梗塞疑いに対する迅速検査により健康な患者を早期に帰宅させることが可能になる [2019-09-10]
HiSTORIC: Rapid pathway for suspected myocardial infarction enables healthy patients to go home earlier

心筋梗塞の早期除外診断は、心有害事象を増加させることなく病院滞在時間および入院を減少させる、とのHiSTORIC試験のレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2019の Hot Line Session で発表され、Circulation に掲載された。この試験では高感度トロポニン検査を用いて、診察時の心筋梗塞を除外する迅速な方法の有効性および安全性を、標準的な方法と比較し調査した。この検査を実地臨床でルーチンに導入することにより、救急外来滞在時間が3時間以上短縮し、救急外来から帰宅する患者の割合は追加リスクなく50% 以上増加した。

大気汚染と冬は心筋梗塞治療率上昇と関連がある [2019-09-03]
Air pollution and winter linked with rise in treatment for myocardial infarction

寒い月の重度の大気汚染地域は空気の汚染されていない地域に比べ血管形成術施行率が高い、とESC Congress 2019 together with the World Congress of Cardiology で発表された。研究者らは、PM10 を用いて汚染されていない6都市および汚染された5都市を選択した。その結果、汚染地域および非汚染地域いずれにおいても、PM10 濃度の上昇は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の高い施行率と関連があった。空気のきれいな地域の患者は、汚染の悪化により敏感であった。PCI 施行は、1年で最も大気が汚染される冬に多くみられた。

左室肥大は著明な心血管イベントの独立した予測因子である [2019-09-03]
Left ventricular hypertrophy is an independent predictor of significant cardiovascular events

左室肥大は冠動脈石灰化スコアよりも冠動脈疾患関連死および心不全の独立した予測因子である、とRadiology に掲載された。解析によると、MRI で左室(LV)肥大が認められたスタディ参加者の22% が著明な冠動脈疾患(CHD)のイベントを来したのに対し、LV 肥大のない患者におけるその割合は6% であった。LV 肥大を有する患者はLV肥大を有さない者に比べ、冠動脈疾患関連死のリスクが4.3倍高かった。冠動脈関連死および冠動脈非関連死は、CT スキャンで判断された冠動脈石灰化スコアよりもLV 肥大とより強く関連があった。