慢性炎症とApoE4遺伝子キャリアにおけるアルツハイマー病リスクとの関連が認められた [2018-10-30]
Link found between chronic inflammation and risk for Alzheimer's disease in carriers of the ApoE4 gene

ApoE4 遺伝子を保有することはアルツハイマー病(AD)の主要な遺伝的リスクファクターであることが広く知られている一方で、ApoE4 遺伝子保有者すべてがADを発症するわけではない。今回初めて、ApoE4 が慢性炎症と結びつくことによりADリスクが劇的に上昇することが示された。これは、臨床現場でルーチンに行える一般的な検査項目であるC反応性蛋白を連続的に計測することで検出できる。筆者らは、ApoE4 遺伝子保有者における慢性全身性炎症を徹底的に治療することにより、アルツハイマー病を効果的に予防することが可能であると述べている。この結果はJAMA Network Open に掲載される。

双極性障害患者において炎症の起源である食事とBMIは治療への反応性を予測する可能性がある [2018-10-30]
Inflammatory nature of diet and BMI of patients with bipolar disorder may predict their response to treatment

2018 European College of Neuropsychopharmacology (ECNP) Conference において発表された研究の結果、双極性障害の治療に対する患者の反応性は、体重および、全身の炎症に影響すると考えられている食品を多く食べているかなどの食事全体の質の影響を受けることが示された。抗炎症作用のある食事をしている者またはBMIが低い者は、炎症を促進する食事をしているかまたは過剰体重の者に比べ、追加の栄養補助食品治療への反応が良好であった。これらは早期結果であるが、もし再現性があれば一部の精神疾患の治療は食事指導を行うことが有益となり得る可能性がある。

スタディの結果、高齢者における抑うつ、不安、睡眠障害および他の症状の生物学的基礎が示唆される [2018-10-23]
Study suggests biological basis for depression, anxiety, sleep disturbances and other symptoms in older adults

アルツハイマー病(AD)に関連した脳変性の最も早い段階は不安、抑うつ、食欲不振、および睡眠障害などの神経精神症状と関連がある、とJournal of Alzheimer's Disease に掲載された。脳幹に非常に早期の神経原線維変化が認められるが記憶障害のない者においては、アジテーション、不安、食欲変化、抑うつ、および睡眠障害などの神経精神症状が1つ以上あるが明らかな記憶障害がない、と家族や介護者が報告する率が高かった。NFT蓄積が脳の皮質外層に到達し始めたときのみ、ADに典型的な認知症の症状である妄想の徴候および認知機能低下が表れ始めた。

動脈スティフネスは認知症を発症する人を予測するよい代替因子である [2018-10-23]
Arterial stiffness is a good proxy for predicting who will go on to develop dementia

高齢者にとって、認知症発症率に関しては"賽は投げられた"状態のように思えるかもしれないが、Journal of Alzheimer's Disease に掲載された新たな研究の結果、たとえ高齢であっても修正可能な認知症リスクファクターが同定された。脈波伝播速度(PWV、動脈スティフネスの指標)の値が高い者は、PWV値が低い者に比べ15年以内の認知症発症率が60% 高かった。脳疾患の微細徴候でさえ、これほどでもなかった。これらの結果から、リスクのある患者は降圧薬や生活習慣改善により認知症の発症を予防または遅延させることができる可能性が示唆される。

情緒的発達の達成のための脳回路は幼児期に確立する [2018-10-16]
Brain circuits for successful emotional development established during infancy

感情調節を目的とした成人のような脳の機能的結合は、生後1年間に発現するとBiological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging に掲載された。機能的MRIというレンズを通して、今回の研究は、成人における感情調節の達成にとって不可欠な脳回路は、胎児においては存在しないが1〜2歳時に出現し、情緒的発達の達成の土台が得られることを示している。この2歳までの情緒的回路の成長により、4歳時のIQや感情コントロールが予測され、情緒的問題のリスクのある小児に対する早期発見および介入に対する新たな手段が示唆される。

軽度認知障害をより評価するための複合データモデルが開発される [2018-10-16]
Researchers develop combined data model to better evaluate for mild cognitive impairment

画像と神経心理学的検査を組み合わせたシステムを用いることで、医師が個々人の認知機能の状態をより正確に評価できる、と Alzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring に掲載された。研究者らは、個々人のMRI画像所見から作成したモデルとMini-Mental State ExaminationおよびWechsler Memory Scale Logical memory test の結果に基づき開発されたモデルとを組み合わせることを可能にした機械学習システムを開発し、認知機能に関する臨床診断を予測した。この融合モデルは個々のモデル単独よりも優れており、全体の精度は90% 超に達した。

医療記録研究の結果、認知症に関連する脳変化と重症疾患による入院が関連付けられる [2018-10-09]
Medical records study links dementia-related brain changes to hospital stays for critical illness

Journal of the American Geriatrics Society に掲載された論文によると、1,000人を超える患者を対象とした新たな解析の結果、入院、重症疾患および重症感染症は、アルツハイマー病により最も影響を受けることの多い脳構造を傷つける可能性があるとのエビデンスが加えられた。解析された入院患者1,214人のうち重症疾患を1個以上有していた者は、アルツハイマー病に関連する海馬などの脳容積が3% 小さかった。重症感染症はアルツハイマー病において傷つきやすい領域の脳容積減少(2%)、10% の脳室拡大と関連があった。

小児期の社会的および経済的不利益は後の認知機能に対し好ましくない影響を及ぼす [2018-10-09]
Social and economic disadvantages in childhood have negative impact on later cognitive skills

貧困な環境で成長したかまたは社会的および経済的に不利な小児は、高齢期の認知機能検査において成績が低い可能性が高い、とNeurology® オンライン版に掲載された。年齢、性別および地理的位置で補正した結果、小児期に社会経済的困難を経験した者はこれを経験しなかった者に比べ、認知機能検査の点数が平均0.27ポイント低かった。教育、雇用、うつ病、BMI、運動および心血管疾患などの社会的および臨床的因子の差異を考慮に入れても、彼らのスコアは平均0.15 ポイント低かった。

稀な型のアルツハイマー病患者において運動は認知機能低下を遅延させる可能性がある [2018-10-02]
Exercise may delay cognitive decline in people with rare form of Alzheimer's disease

常染色体優性アルツハイマー病(ADAD)の人々にとって、1週間当たり2.5時間以上の運動を行うことは、アルツハイマー病脳変化マーカーに有益な効果を来し認知機能低下を遅延させる可能性がある、との新たなスタディ結果がAlzheimer's & Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association オンライン版で閲覧可能である。研究者らは、ADADの遺伝子変異を有する275人(平均年齢38.4歳)から得たデータを解析した。運動をより多くした者ほど、Mini-Mental State Examination および Clinical Dementia Rating Sum of Boxes のスコアが良好であった。彼らはまた脳脊髄液内のタウ値などアルツハイマー病バイオマーカーの値が低かった。

アルツハイマー病に有効な薬剤開発への挑戦は続く [2018-10-02]
Challenge continues in developing effective drug treatment for Alzheimer's disease

大規模国際試験の結果、降圧薬ニルバジピンはアルツハイマー病の進行を遅延させない、と結論付けられた。ニルバジピンは動物実験において脳アミロイドを減少させたため、ヒトのアルツハイマー病治療薬となる可能性があると考えられた。今回の試験においてニルバジピンの忍容性は良好であったが、軽度および中等度のアルツハイマー病患者群全体において記憶力または機能に対する有益性は示さなかった。より軽度のアルツハイマー病患者のサブグループではニルバジピンは有効なようであったが、これらの結果に関してはさらなる研究が必要である。この研究結果はPLOS Medicine に掲載された。