妊娠および生殖歴は人生後期の認知症リスクを予測する可能性がある [2018-07-31]
Pregnancy and reproductive history may predict risk of dementia later in life

認知症リスクと子供の数、流産回数、初潮年齢、閉経年齢、および生殖期との相関が明らかにされたとのデータがAlzheimer's Association International Conference 2018 で発表された。子供を3人以上有する女性は子供が1人の女性に比べ認知症リスクが12% 低かった。流産回数が1回増加するごとに認知症リスクは9% 上昇した。さらに、初潮年齢が16歳以上であった女性は、それが13歳であったと報告した女性よりもリスクが31% 高かった。

健康な女性において閉経近くに開始されたホルモン療法は安全である [2018-07-31]
Hormone therapy started close to menopause safe for cognition in healthy women

更年期ホルモン補充療法は閉経への移行期近くに開始された場合、女性が健康であれば(糖尿病でないなど)認知機能に有害ではない、とAlzheimer's Association International Conference 2018 で発表された。ホルモン補充療法を50〜54歳に開始した女性において、認知機能に対する悪影響は計測されなかった。対照的に、ホルモン療法を65〜79歳に開始した女性では、認知機能全般、ワーキングメモリおよび実行機能の低下を示した。ホルモン補充療法を行った2型糖尿病を有する女性は、2型糖尿病を有さない女性およびプラセボ治療を受けた糖尿病を有する女性に比べ、認知障害リスクが高かった。

繰り返し認知機能検査の結果は、診断や治療に不可欠な認知機能の変化を正確に反映しない可能性がある [2018-07-24]
Results from repeated cognitive tests may not accurately reflect cognitive changes crucial to diagnosis and treatment

中年男性における繰り返し認知機能検査は"練習効果"を生み出し、これにより真の認知機能低下が分かりにくくなり、軽度認知障害(MCI)の発見が遅れる可能性がある、とAlzheimer's & Dementia: Diagnosis, Assessment & Disease Monitoring に掲載された。研究者らは、中年から中年後期の男性995人に認知機能検査を施行し、6年後にフォローアップの再検査を行った。また年齢をマッチさせたコントロール170人は、初めてこの検査を受けた。ほとんどの認知領域において有意な練習効果が認められ、これらの練習効果で補正するとMCIの診断は4.5% から9% に倍増した。筆者らは、一部の男性は過去にこの検査を受けていなければ、認知機能障害を示す程度にまで認知機能は低下していたであろう、と結論付けている。

高齢者において緑が多い地域に居住することは認知機能低下が遅いことと関連がある [2018-07-24]
Living in greener neighborhoods is associated with slower cognitive decline in the elderly

住まいの周りの緑にふれることは、メンタルヘルスに有益であると言われている。高齢者において、緑にふれることは認知機能低下に有効な役割を果たす可能性もある、と Environmental Health Perspectives に掲載された。老化過程の一部として想定される認知機能の低下は、緑が多い地域に居住する人々においてやや遅かった:10年後の追跡調査による認知機能スコアの低下は、緑が多い地域に居住する人々において4.6% 小さかった。今回観察された相関は女性において強く認められ、この相関は性別によって異なる可能性があることを示唆している。

高齢者においてサルコペニア肥満は全般的な認知能力が不良であることと関連する [2018-07-17]
Sarcopenic obesity linked to poor global cognitive performance in older adults

高齢者において"隠れ肥満"−低筋肉量および高体脂肪量の組み合わせ−は、認知能力の重要な予測因子となり得る、とClinical Interventions in Aging に掲載された。サルコペニア肥満または"隠れ肥満"は全般的な認知能力が最も低く、次にサルコペニア単独そして肥満単独の順に低かった。肥満およびサルコペニアは、個々で評価すると、作動記憶、精神的柔軟性、セルフコントロールおよび見当識などの実行機能が低いことと関連があり、肥満とサルコペニアが合併するとより顕著にこれらが低かった。

交替制勤務への忍耐力とアルツハイマー病のリスクとの新たな分子レベルの繋がり [2018-07-17]
New molecule-level connection between tolerance to shift work and risk of Alzheimer's disease

SLEEP に掲載されたスタディの結果、メラトニン受容体1A (MTNR1A)遺伝子の多様性が高齢者のアルツハイマー病リスクと関連していることが示された。MTNR1A遺伝子の多様性は、死後解剖脳組織において見ることのできる脳領域とも関連があった。さらに、培養細胞においてMTNR1A遺伝子発現が減少すると、アルツハイマー病に特徴的であるアミロイドβタンパク質が蓄積し始めた。この遺伝子の多様性は、過去に交替制勤務への忍耐力を低下させることも示された。この内因性メラトニンのシグナリングが弱いこととアルツハイマー病との関連は、サーカディアンリズムの調整がアルツハイマー病発症において役割を果たしているとの見解を支持する。

低用量アスピリンは脳内の有害なアミロイドプラークの除去を促進する可能性がある [2018-07-10]
Low dose aspirin may aid removal of harmful amyloid plaque in the brain

低用量アスピリンは脳内プラークを減少させ、それによりアルツハイマー病病変が減少し記憶力が保護されるであろう、とJournal of Neuroscience 7月号に掲載された。脳から不要物を除去する要因となる細胞機構の活性化は、従ってアルツハイマー病の進行を遅らせる有望な戦略として浮かび上がってきた。TFEBと呼ばれるタンパク質が不要物除去の主な調節因子であると考えられている。研究者らは、アルツハイマー病の病変を有する遺伝子改変マウスに、アスピリンを1か月間経口投与した。その結果、アスピリンはTFEBを増強し、リソソームを刺激しマウスのアミロイドプラーク病変を減少させた。

ダウン症候群モデルにおいて若年発症アルツハイマー病と関連するAPP以外の遺伝子 [2018-07-10]
Genes other than APP linked to early-onset Alzheimer's disease in model of Down Syndrome

ダウン症候群の人々において、どの遺伝子が若年発症アルツハイマー病の原因となっているかを理解するのに科学者らは一歩近づいた、とBrain に掲載された。ダウン症候群の人々におけるアルツハイマー病率が高いことは、21番染色体のAPP遺伝子が原因であるとこれまでは考えられていた。21番染色体には231の遺伝子があるが、APPはアミロイド前駆体タンパク質を産生するため、最大の原因であった。今回のスタディにおいて研究者らは、ダウン症候群モデルのマウスにおいて、21番染色体のその他の遺伝子の過剰コピーがアルツハイマー様脳病変および認知機能障害を増大していることを明らかにした。

精神障害は、現在の診断分類には反映されていない重要な分子類似性を有している可能性がある [2018-07-03]
Psychiatric disorders may have important molecular similarities that are not reflected in current diagnostic categories

精神障害は多くの遺伝子多様体を共有し、一方神経障害はより多様性があるようだとの、遺伝子多様体がどのように脳の障害と関連するかを、これまでで最も広範に観察したスタディ結果がScience に掲載された。このスタディは、異なるタイプの精神障害、特に注意欠如/多動性障害、双極性障害、大うつ病、および統合失調症にまたがって、遺伝子のオーバーラップを明らかにした。対照的に、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経疾患は、互いにそして精神障害に比べより多様なようであった。精神障害間の高度の遺伝相関は、現在の臨床分類が根底の生物学を正確に反映していないことを示唆している。

妊娠中の大気汚染への曝露は子供の注意欠如および多動性の症状を増加させない [2018-07-03]
Exposure to air pollution in pregnancy does not increase symptoms of attention-deficit and hyperactivity

妊娠中の大気汚染への曝露は、3〜10歳の子供の注意欠如および多動性症状のリスクを上昇させないであろう、とのスタディ結果がEpidemiology に掲載された。このスタディでは、ヨーロッパの7か国において窒素酸化物および微小粒子状物質(PM10および PM2.5)への妊娠中の曝露を推定した。ADHD症状は親や教師が回答した様々な質問票を用いて評価され、その結果、妊娠中の大気汚染への曝露とADHD症状リスク上昇とに関連は認められなかった。しかし、大気汚染への曝露が、特に遺伝子的にリスクのある小児において神経心理学的成長に有害な影響を与え得る、と筆者らは考えている。