膵臓がんと関連する遺伝子変異
催眠術は小児がん患者の治療に対する恐怖を軽減する
小細胞肺がん治療に対するPARP阻害薬
神経芽腫の心理的障害における影響
膵がんにおいて術前化学放射線療法は有益である(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4002) 
新たな化学療法レジメンは膵がんの生存率を改善する(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4001) 
進行大腸がんに対しては治療が少ない方がよい可能性がある(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA3503) 
ここ30年における横紋筋肉腫治療の一番の進歩(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA2) 
エソメプラゾールとアスピリンの併用は食道がんを予防する(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4008) 
進行扁平上皮NSCLCの予後改善(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA9000) 
新たな分子標的治療は進行乳がんの増殖を遅らせる(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA1006) 
21個の腫瘍遺伝子は乳がんの個別化治療の決定に役立つ(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA1) 
ペンブロリズマブは初回肺がん治療に有効(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA4) 
スタディによりいくつかの新たながんとLynch症候群が関連付けられた(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA1509) 
血液検査が早期肺がんを検出できる可能性が示された(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA8501) 
進行腎臓がんに対する腎摘出術回避(2018 ASCO Annual Meeting, Abstract LBA3) 
膵臓がんリスク上昇と関連する6つの遺伝子が、膵臓がんの家族歴のない患者においても認められた [2018-06-26]
Six genes linked to increased risk of pancreatic cancer even in patients with no family history of the disease

家族内で遺伝した可能性のある変異を有する6つの遺伝子が、その人の膵臓がんリスクを大幅に上昇させている、とJAMA に掲載された。このスタディでは、6つの遺伝子(BRCA1、BRCA2、CDKN2A、TP53、MLH1およびATM)が、膵臓がんリスク上昇と明らかに関連があることが示された。これらの遺伝子変異は全ての膵臓がん患者の5.5% に認められ、そのうちの5.2% は膵臓がんの家族歴を有していなかった。しかし、家族歴のない患者においてこれらの遺伝子変異が認められたことから、全ての膵臓がん患者に対し、新たな標準治療として遺伝子検査を行うことを研究者らは推奨している。

催眠術は若年がん患者の医療処置に対する恐怖を軽減するのに役立つ [2018-06-26]
Hypnosis could help reduce fear of medical procedures in young people with cancer

催眠術は小児および若年がん患者の医療処置に対する恐怖を軽減するのに役立つ、とPsycho-Oncology に掲載された。研究者らは、注射および骨髄穿刺などの針を用いるその他の施術に伴う恐怖や不安を、催眠術が軽減する可能性があることを期待させるエビデンスを示した。過去の研究から、これらの施術はしばしばがん自体よりも不安を引き起こし、この苦痛はメンタルヘルスに長期にわたり影響を及ぼし得ることが明らかにされている。研究チームはまた、音楽を聴くことやバーチャルリアリティや認知行動療法などに関するエビデンスについても考察したが、これらに関する研究結果とは食い違いがみられた。

PARP阻害薬は小細胞肺がん患者の全奏効率を改善する [2018-06-19]
PARP inhibitor improves overall response rates in patients with small cell lung cancer

第II相試験において、PARP阻害薬veliparibを標準的な化学療法剤に上乗せすることにより小細胞肺がん(SCLS)患者の全奏効率(ORR)が改善した。4か月後、腫瘍縮小患者の割合で定義されたORRは、テモゾロミド(TMZ)/veliparib群においてTMZ/プラセボ群に比べ3倍近く高く(39% vs. 14%)、統計学的に有意な差であった。また選択患者群(SLFN11発現腫瘍を有する患者)においても、無増悪生存期間および全生存期間における有益性が認められ、SLFN11発現がSCLCにおけるPARP阻害薬への感受性の有望なバイオマーカーであることが示唆される。このスタディ結果はJournal of Clinical Oncology に掲載された。

神経芽腫小児は長期の心理的障害のリスクが高い [2018-06-19]
Children with neuroblastoma have an elevated risk of long-term psychological difficulties

神経芽腫小児は長期の心理的障害のリスクが高い、とCANCER オンライン先行版に掲載された。兄弟姉妹に比べ、神経芽腫既往者は不安/抑うつ(19% vs. 14%)、向こう見ずな行動(19% vs. 13%)、注意欠如(21% vs. 13%)、仲間との対立/ひきこもり(26% vs. 17%)、および反社会的行動(16% vs. 12%)の領域における障害の有病率が高かった。さらに、これらの障害を有する者は、年を取るにつれて特別な教育サービスを必要とし、大学に行かない傾向にあった。

PREOPANC:術前の放射線療法を併用した化学療法は膵がん患者の生存率を改善する可能性がある [2018-06-12]
PREOPANC: Pre-operative chemotherapy with radiation may improve survival for people with pancreatic cancer

2018 ASCO Annual Meeting で取り上げられた第III相試験の結果、膵がんの術前に化学放射線療法を施行された患者は、治療を手術から開始する現在の標準治療を施行された患者に比べ無病生存期間が優れていたことが明らかにされた。このPREOPANC試験における全生存期間中央値は、術前化学放射線療法群で17.1か月であったのに対し、すぐに手術を施行された患者群では13.7か月であった(P=0.074)。膵がん再発までの期間もまた、術前治療群の方が長かった(9.9か月対7.9か月、P=0.023)。2年生存率についてもまた、術前化学放射線療法施行群において高かった(42% vs. 30%)。

新たな化学療法レジメンは膵がん患者の生存期間を20か月近く延長させる [2018-06-12]
Chemotherapy regimen extends life by nearly 20-months for people with pancreatic cancer

第III相ランダム化試験において、膵がんを外科的に切除されmFOLFIRINOX(オキサリプラチン、ロイコボリン、イリノテカン、および5-フルオウラシルを含む化学療法)を施行された患者は、現在の標準治療であるゲムシタビンを投与された患者に比べ無病生存期間が有意に長かった。追跡期間中央値33.6か月の時点で、mFOLFIRINOX 群における無病生存期間中央値は21.6か月であったのに対し、ゲムシタビン群では12.8か月であった。全生存期間中央値はmFOLFIRINOX 群で54.4か月であったのに対し、ゲムシタビン群では35.0か月であった。mFOLFIRINOX の有益性は全てのサブグループにおいて認められた。この試験結果は、2018 ASCO Annual Meeting で取り上げられた。

癌性腹膜炎患者において腹腔内温熱化学療法は有益でない [2018-06-12]
Heated abdominal chemotherapy not beneficial in patients with peritoneal carcinomatosis

2018 ASCO Annual Meeting で取り上げられた第III相ランダム化試験の結果、進行大腸がん患者には腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は不要である可能性があることが示された。追跡期間中央値64か月の時点で、全生存期間中央値は2群間で差はなかった(非HIPEC 群41.2か月対HIPEC 群41.7か月、p=0.995)。無再発生存期間もまた、2群間で同様であった(非HIPEC 群11.1か月対HIPEC 群13.1か月、p=0.486)。長期の副作用は化学療法の方が多かった。

維持化学療法は小児横紋筋肉腫の生存期間を延長する [2018-06-12]
Maintenance chemotherapy extends life for children with rhabdomyosarcoma

新たな化学療法戦略は、再発リスクの高い小児横紋筋肉腫の治癒率を改善する、と2018 ASCO Annual Meeting Plenary Session で取り上げられた。標準的な初期治療完遂後、371人が治療中止(以前の標準治療)群または低用量ビノレルビン静注およびシクロホスファミド経口投与6か月施行群に、ランダムに割り付けられた。診断後5年時点における無病生存率は、標準治療群の68.8% に対し維持療法群では77.6% であり、全生存率はそれぞれ73.7% 対 86.5% であった。

AspECT:アスピリンとプロトンポンプ阻害薬の併用はバレット食道患者に有益である [2018-06-12]
AspECT: Aspirin plus proton pump inhibitor benefits patients with Barrett's esophagus

ランダム化第III相試験の最新解析の結果、高用量のプロトンポンプ阻害薬(エソメプラゾール)と低用量アスピリンの併用を7年以上継続することにより、バレット食道患者の高度異形成または食道がん発症リスクが中程度減少、または総死亡を遅らせる可能性があることが示された。高用量エソメプラゾールは、標準用量エソメプラゾールに比べ複合評価項目について統計学的に有意に有益であった(p=0.0459)。最も有効な治療は、高用量エソメプラゾールと低用量アスピリンの併用であった。AspECT試験のこの結果は、2018 ASCO Annual Meeting で発表された。

IMpower131:化学療法にアテゾリズマブによる免疫療法を上乗せすることにより進行扁平上皮肺がんの増殖を遅らせることができる [2018-06-12]
IMpower131: Adding atezolizumab immunotherapy to chemotherapy slows growth of advanced squamous lung cancer

第III相臨床試験の初回結果によると、進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者にとって、化学療法単独による初回治療に比べ、化学療法にアテゾリズマブによるPD-L1標的免疫療法を上乗せする初回治療の方がより有益である‐疾患増悪または死亡リスクが化学療法単独に比べ29% 低かった(p=0.0001)。この併用療法により無増悪生存の有益性が倍になった:12か月後、がんが悪化していなかったのは、免疫療法と化学療法の併用群で24.7%、化学療法単独群では12% であった。この有益性は、PD-L1発現サブグループすべてにおいて認められた。IMpower131試験のこの結果は、2018 ASCO Annual Meeting で発表された。

SANDPIPER:PI3K阻害剤は、転移性乳がんを有する閉経後女性において、がんの増殖を遅らせるのに成功した [2018-06-05]
SANDPIPER: PI3K inhibitor successfully slows cancer growth in postmenopausal women with metastatic breast cancer

2018 ASCO Annual Meeting において取り上げられた第III相臨床試験において、新たな分子標的薬taselisibを標準的なホルモン療法薬フルベストラントに上乗せすることにより、ホルモン療法単独に比べ進行乳がんの増殖が2か月遅延し、がん増悪の確率が30% 低下した。SANDPIPER試験における奏効率は、taselisibを上乗せすることにより2倍以上になった(28 vs. 11.9%)。全生存率のデータはまだ得られていない。Taselisibは一般的なPIK3CA 遺伝子変異を標的とし、比較的新たなクラスのPI3K阻害薬において初めてのそして最も有望な治療である。

TAILORx:早期乳がん患者の多くがある診断検査に従うと化学療法を見合わせることができる [2018-06-05]
TAILORx: Most women with early stage breast cancer can forgo chemotherapy when guided by a diagnostic test

第III相臨床試験の結果、ホルモン受容体陽性、HER-2陰性、腋窩リンパ節転移陰性の早期乳がんで、21個の腫瘍遺伝子発現アッセイにおいて中程度のスコアである女性の多くは、術後の化学療法を必要としないことが示された、と2018 ASCO Annual Meeting で発表された。この結果は、50歳超でホルモン受容体陽性、HER-2陰性、リンパ節転移陰性で乳がん再発スコアが0〜25の全女性(この年代の乳がん女性の約85%)において、化学療法は差し控えるべきであると示唆している。乳がん再発スコア16〜25の50歳以下の女性においては、化学療法によりある程度ベネフィットが得られた。

KEYNOTE-042:ペンブロリズマブは進行肺がんの治療として化学療法よりもよりベネフィットが得られる [2018-06-05]
KEYNOTE-042: Pembrolizumab provides more benefit than chemotherapy alone as initial treatment for advanced lung cancers

大規模ランダム化第III相KEYNOTE-042試験の結果、最も一般的なタイプの肺がん患者の大多数に対し、ペンブロリズマブによる免疫療法は化学療法(現在の標準治療)に比べより有効な初回治療であることが示された、と2018 ASCO Annual Meeting で取り上げられた。PD-L1が1% 以上発現している進行非小細胞肺がん患者で、ペンブロリズマブによる免疫療法で初回治療を施行された者は、化学療法を施行された者に比べ、生存期間中央値が4〜8か月長かった。さらに、重篤な副作用の発現は、化学療法群に比べペンブロリズマブ群で少なかった(18% vs. 41%)。

ゲノム研究の結果、Lynch症候群は高MSI腫瘍を有する人々に多いことが示された [2018-06-05]
Genomic study finds Lynch syndrome is common among people with MSI-high tumors

2018 ASCO Annual Meeting で発表された15,000を超える腫瘍検体のゲノム研究の結果、マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)腫瘍を有する人々はLynch 症候群を有する確率が高いことが示された。MSI-H 腫瘍を有する人々のうち、16% はその後Lynch 症候群を有することが明らかになった。予想通り、1,025の MSI-H/MSI-I 腫瘍の約25% は、大腸がんまたは子宮内膜がんであった。しかし、Lynch 症候群を有することが同定されたMSI-H/MSI-I を有する患者の50% 近くが、これまでこの症候群と関連がないとされていたかまたはまれであったタイプのがん(中皮腫、肉腫、副腎皮質がん、悪性黒色腫、前立腺および卵巣胚細胞がんなど)を有していた。

CCGA:血液検体から得たゲノムシークエンシングは、早期および進行期肺がんのいずれも検出するのに成功した [2018-06-05]
CCGA: Genome sequencing from blood samples successfully identifies both early- and late-stage lung cancer

現在進行中の大規模試験Circulating Cell-Free Genome Atlas (CCGA) により、血液検査が早期肺がんを検出できる可能性があるとの予備的なエビデンスが得られる。このサブ解析で研究者らは、I〜IV期肺がんを有する患者127人において、3つの異なるアッセイのがん検出能を調査した。肺がんの生物学的シグナルは、試験したアッセイ全てにおいて同等であった。このシグナルは、がんのステージとともに増加し、偽陽性率が低かった。580のコントロール検体のうち、5例(<1%)は3つ全てのアッセイにおいてがん様シグナルを有していた。これらのうち、2例はその後がんと診断されており、これらの検査が早期がんを検出する可能性を強調している。

CARMENA:転移性腎細胞がん患者の多くが手術を必要としない [2018-06-05]
CARMENA: Many people with metastatic renal cell carcinoma do not need surgery

2018 ASCO Annual Meeting で発表されたランダム化第III相臨床試験の結果、同時発症転移性腎細胞がんの患者の多くが生存期間を短縮することなく手術を回避できることが示された。このCARMENA試験対象患者の全生存期間は、スニチニブによる標的療法のみの群で18.4か月であったのに対し、現在の標準治療である手術後にスニチニブ投与群では13.9か月であった。治療奏効率はこれら2つの群で同等であり、がん増悪までの期間中央値はスニチニブのみを投与された患者でやや長かった(8.3か月対7.2か月)。