2014
カテーテル室のプレアクティベーションは生存率を改善する
地中海式ダイエットは女性の脳卒中リスクを低下させる可能性がある
悪化する心不全においてトロンビン阻害薬は無効である(ESC Congress 2018, Abstract 3238)
抗肥満薬は心血管イベントを増加させない(ESC Congress 2018, Abstract 2069)
認知機能検査で認知症リスクの高い高血圧患者を同定できる(ESC Congress 2018, Abstract P4785)
就寝時にヨガ音楽を聴くことは心臓によい(ESC Congress 2018, Abstract P4488)
たこつぼ心筋症患者においてがんは予後不良と関連がある(ESC Congress 2018, Abstract P6133)
抗凝固薬による出血はがんと診断されるリスクを上昇させる(ESC Congress 2018, Abstract 1321)
左心系心内膜炎において経口抗菌薬への切り替えは安全である(ESC Congress 2018, Abstract 5869)
心房細動における併用療法に疑念が生じた(ESC Congress 2018, Abstract 5878)
タファミジスは心アミロイドーシスの死亡率を低下させる(ESC Congress 2018, Abstract 3235)
心房細動患者において未知の脳障害が認められた(ESC Congress 2018, Abstract 1358)
小径冠動脈病変に対するバルーンとステントの比較(ESC Congress 2018, Abstract 5167)
フェブキソスタットは高尿酸血症患者の有害事象を減少させる(ESC Congress 2018, Abstract 5163)
一次予防に対するアスピリンの価値に関する様々なメッセージ(ESC Congress 2018, Abstract 2072)
糖尿病における一次予防に対しアスピリンは必要ない(ESC Congress 2018, Abstract 2315)
HDLコレステロール値が非常に高いことは有害である可能性がある(ESC Congress 2018, Abstract 50)
降圧薬により長期生存率が改善する(ESC Congress 2018, Abstract 1327)
魚油は糖尿病患者における心血管イベントを予防しない(ESC Congress 2018, Abstract 2317)
持久系アスリートにおいて左房線維化増加が認められた(ESC Congress 2018, Abstract 4602)
STEMI患者来院前にカテーテル室をプレアクティベートすることにより早く治療することができリスクは低下する [2018-09-26]
Pre-activating cath labs prior to STEMI arrival speeds treatment and reduces risk

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者が搬送される病院のカテーテル室に、救急隊が10分以上前に連絡することにより患者の生存率が上昇する、と JACC: Cardiovascular Interventions に掲載された。カテーテル室のプレアクティベーションにより、プレアクティベーションを行わなかった場合に比べ、病院到着からバルーン拡張まで(door-to-device)の時間中央値が12分短縮し、最初の医療従事者との接触(first medical contact)からバルーン拡張までの時間が90分未満であった患者の割合が上昇し、医師の勤務時間内および時間外いずれに来院した患者においても再灌流の遅延の確率が有意に低下し、リスク補正後の院内死亡率が低下した。

女性において地中海式ダイエットを遵守することにより脳卒中リスクが低下するが男性ではそうではない [2018-09-26]
Following a Mediterranean-style diet reduced stroke risk in women but not in men

地中海式ダイエットは特に40歳超の女性において、閉経前閉経後またはホルモン補充療法の有無に関係なく、脳卒中の予防効果があるとの新たな研究結果がStroke に掲載された。17年にわたり、地中海式ダイエットを最も厳密に行った者は、脳卒中発症が全体で17%、女性では22%、男性では6% 低かった。心血管疾患リスクが既に高かった参加者においても、地中海式ダイエットスコア4群全体において脳卒中リスクが13% 低かった。しかし、これは主に女性において脳卒中リスクが20% 低いことによるものであった。

COMMANDER HF:抗トロンビン薬は冠動脈疾患を伴う洞調律の心不全において無効である [2018-09-18]
COMMANDER HF: Antithrombin drug not effective in heart failure with sinus rhythm and coronary disease

抗トロンビン薬リバーロキサバンは、冠動脈疾患を有する洞調律の心不全患者における心不全悪化後の生存率、心筋梗塞(MI)および脳卒中から成る複合エンドポイントのリスクを減少させない、との COMMANDER HFトライアルの結果がESC Congress 2018 で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。追跡期間中央値21.1か月の間に、主要評価項目が発現したのは、リバーロキサバン群の25.0% に対しプラセボ群では26.2% であった(p=0.27)。総死亡または非致死性MIにおいて群間差はなかったが、非致死性脳卒中はリバーロキサバン群においてプラセボ群よりも有意に低かった(p=0.023)。

CAMELLIA-TIMI 61:スタディの結果、心血管リスクの高い患者における体重管理目的でのlorcaserin使用が支持される [2018-09-18]
CAMELLIA-TIMI 61: Study supports use of lorcaserin for weight management in patients at high cardiovascular risk

抗肥満薬lorcaserinは心血管イベントを増加させないとのCAMELLIA-TIMI 61トライアルのレイトブレイキングの結果がESC Congress 2018 で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。食事療法および運動療法に追加することにより、この薬剤はプラセボに比べ軽度の体重減少をもたらし、主要心血管イベント(MACE)を増加させなかった。追跡期間中央値3.3年の時点で、MACEはlorcaserin 群の6.1% およびプラセボ群の6.2% に発現し、非劣性が示された(p<0.001)。これらの結果から、例え患者の心血管リスクが高い場合でも体重管理目的でのlorcaserin 使用は支持される、と筆者らは述べている。

Heart-Brain Study:高血圧患者には時計描画による認知機能検査をルーチンに施行すべきである [2018-09-18]
Heart-Brain Study: Clock drawing cognitive test should be done routinely in patients with hypertension

高血圧患者には認知機能障害検出目的の時計描画検査をルーチンに施行すべきである、とESC Congress 2018 で発表された。スタディグループは、時計描画検査によりMMSE (Mini-Mental State Examination) に比べ、認知機能障害の有病率が上昇することを明らかにした(それぞれ36% vs. 21%)。MMSE正常スコアの患者10人中3人が、時計描画検査の結果では異常であった。これら2つの試験結果の違いは、中年患者において最も大きかった。筆者らは、時計描画検査は無症状の血管障害の代替検査と考えられ、認知症発症リスクの高い患者を同定できると確信している。

ヨガ音楽は睡眠前の心拍変動に有益な影響を与える [2018-09-18]
Yoga music has a beneficial impact on heart rate variability before sleeping

就寝時にヨガ音楽を聴くことは心拍変動に有益な影響を与える、とESC Congress 2018 で発表された。スタディには健常者149人(平均年齢26歳)が組み入れられ、別々の夜に3つのセッション(睡眠前に癒しのヨガ音楽;睡眠前に一定テンポのポップミュージック;睡眠前に音楽のない静かな状態)に参加した。心拍変動はヨガ音楽で増加、ポップミュージックで減少、さらに静かな状態で有意な変化はなかった。不安レベルはヨガ音楽の後に有意に低下し、ポップミュージック後に有意に上昇、さらに音楽なしのセッション後には上昇した。

がんを有するたこつぼ心筋症患者においては有害事象がより多い [2018-09-18]
Adverse events are more common in patients with takotsubo cardiomyopathy who had cancer

たこつぼ心筋症患者において、がんは死亡および再入院リスクが高いことと関連がある、とESC Congress 2018 で発表された。入院中および退院後の有害事象を合わせて調査したところ、がんの既往またはがんを有しているたこつぼ心筋症患者は、がんを有さない患者に比べ臨床イベントのリスクが有意に高かった(p<0.01)。退院後のイベントリスクを別々に評価したところ、がんを有さないグループに比べがんグループでは2倍高かった(p<0.01)。入院中のイベントリスクは、がんグループにおいて有意ではないが高い傾向がみられた。

COMPASS:抗凝固薬で治療されている患者が出血した場合は、がんの検索をすべきである [2018-09-18]
COMPASS: Bleeding in patients treated with anticoagulants should stimulate search for cancer

抗凝固薬で治療されている患者において出血した場合はがんの検索をすべきである、とのCOMPASS試験のレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表された。重大な消化管出血により新たな消化器がんの診断は20倍となり(9.3% vs. 7%、p<0.0001)、非消化器がんの診断は2倍に増加した(4.6% vs. 3.1%、p<0.0001)。重大な非消化管出血は非消化器がんと新たに診断されるリスクを5倍上昇させた(9.4% vs. 3.0%、p<0.0001)。重大な出血を来した患者の10人に1人以上が後にがんと診断され、新たにがんと診断された患者の20% は出血を来した患者であった。

POET:左心系心内膜炎患者において経口抗菌薬に切り替えることによって入院期間を半減させることができる [2018-09-11]
POET: Treatment with oral antibiotics can halve hospital stays for patients with left-sided endocarditis

一部の左心系心内膜炎患者において新たな治療法により入院期間を半減することが可能である、とのDanish POET トライアルのレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。10日以上の経静脈的抗菌薬投与の後、臨床的に安定した心内膜炎患者400人が経静脈的抗菌薬投与を継続する群、または経口抗菌薬投与に切り替える群にランダムに割り付けられた。経口抗菌薬投与群は外来患者として治療された。6か月の追跡期間中、主要評価項目発現率は両群ともに10.5% で、有意差はなかった。

GARFIELD-AF:心房細動患者において経口抗凝固薬と抗血小板薬の併用は予後不良と関連がある [2018-09-11]
GARFIELD-AF: Oral anticoagulants plus antiplatelets associated with poor outcomes in atrial fibrillation

新たに心房細動と診断され、明らかな抗血小板薬の適応のない患者において、経口抗凝固薬と抗血小板薬の併用は抗凝固薬単独に比べ予後を悪化させる、とのGARFIELD-AF レジストリのレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表された。このスタディは、新たに心房細動と診断された患者25,815人を組み入れた。患者は、抗血小板薬および経口抗凝固薬または経口抗凝固薬のみを初めて処方された。経口抗凝固薬と抗血小板薬併用療法は、抗血小板薬の適応でない患者においては有害であった。抗血小板薬の適応であった患者においては有害ではなかったが、ベネフィットも得られないようであった。

ATTR-ACT:トランスサイレチン型心アミロイドーシスの生存率を改善する初めての治療が開発される [2018-09-11]
ATTR-ACT: Researchers discover first treatment to improve survival in transthyretin amyloid cardiomyopathy

タファミジスはトランスサイレチン型心アミロイドーシスと呼ばれる、まれな心疾患の生存率を改善し入院を減らす初めての治療薬である、とのレイトブレイキング研究が ESC Congress 2018 で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。ATTR-ACT トライアルにおいて、タファミジスはプラセボと比較して死亡および心血管疾患関連の入院を有意に減少させた(p=0.0006)。30か月の追跡期間中、実薬群の78人(29.5%)が死亡したのに対し、プラセボ群では76人(42.9%)が死亡した−この結果には、心臓移植施行患者や補助人工心臓を使用された患者も含まれた。この治療薬はまた、プラセボと比較し6分間歩行距離の低下およびQOLの低下を減少させた。

Swiss-AF:心房細動患者10人に4人は未知の脳障害を有している [2018-09-11]
Swiss-AF: Four out of ten patients with atrial fibrillation have unknown brain damage

脳卒中や一過性脳虚血発作の既往のない心房細動患者の10人に4人が、これまでに気付かなかった脳障害を有しており、これで認知症と心房細動の関連が説明できる可能性があるとのSwiss-AFスタディの初めての結果が、ESC Congress 2018 で発表された。最終解析には、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往のない心房細動患者1,389人が含まれた。参加者の平均年齢は72歳であり、26% は女性であった。標準化された脳MRI画像の結果、41% の患者が少なくとも1種類の過去の未知の脳障害を有していた:15% は脳梗塞、19% は微小脳出血、そして16% はラクナ梗塞を有していた。

BASKET-SMALL 2:小径の新規冠動脈病変において、着脱可能なバルーンの成績は永久留置型ステントと同様である [2018-09-11]
BASKET-SMALL 2: Removable balloon is as good as permanent stent implant in small de novo coronary lesions

小径の新規冠動脈病変において、着脱可能なバルーンの成績は永久留置型ステントと同様である、とのBASKET-SMALL 2 トライアルのレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表され、同時に Lancet に掲載された。12か月の時点で、主要心血管イベント(MACE)はステント群(7.5%)とバルーン群(7.6%)とで有意差がなかった(p=0.918)。心臓死、非致死性心筋梗塞、標的病変血行再建術、または大出血の発現率は、2群間で統計的有意差はなかった。

FREED:高齢の高尿酸血症患者において痛風治療薬は尿酸値を低下させ有害事象を減少させる [2018-09-11]
FREED: Gout drug lowers uric acid and reduces adverse events in elderly patients with hyperuricemia

痛風治療薬フェブキソスタットによる尿酸値低下により、高齢の高尿酸血症患者の有害事象が減少するとのレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表された。FREEDスタディにおいて、計537人の患者がフェブキソスタット(平均用量29 mg)を投与された。フェブキソスタット非投与群533人中、27% がアロプリノール100 mgを投与された。平均血清尿酸値はフェブキソスタット群で4.4 mg/dL、フェブキソスタット非投与群では6.7 mg/dLであった。主要評価項目(脳、心血管および腎イベント、および総死亡)はフェブキソスタット群の23% において発現したのに対し、フェブキソスタット非投与群では29% であった(p=0.017)。

ARRIVE:心血管イベントに対する一次予防目的でアスピリンを毎日服用することの価値は依然として不明である [2018-09-04]
ARRIVE: Value of an aspirin a day as primary prevention of cardiovascular events still unclear

初発心筋梗塞(MI)や脳卒中の中等度リスクを有する人々が、リスク軽減目的でアスピリンを毎日内服するべきか否かに関しては依然として不明である、とのARRIVE試験のレイトブレイキングの結果が ESC Congress 2018 で発表され、同時にLancet に掲載された。アスピリンを内服したスタディ参加者は、特に50〜59歳においてMIが少ない傾向にあったが、脳卒中に関しては効果がなかった。予想通り、消化管出血およびいくつかの他の小出血はアスピリン群において多かったが、致死的出血は2群間で差はなかった。

ASCEND:糖尿病患者においてアスピリンによる出血と有益性は拮抗しており、がんに対しては効果がない [2018-09-04]
ASCEND: Bleeds and benefit with aspirin balanced in patients with diabetes and no effect on cancer

心血管疾患の既往のない糖尿病患者においてアスピリンは重篤な血管イベントを予防したが、ほぼ同等の大出血を引き起こし、がんには効果がなかった。これらはESC Congress 2018のレイトブレイキング で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。ASCENDトライアルは、アスピリンは心筋梗塞、脳卒中、および微小脳出血などの血管イベントを減少させたが、主に消化管出血による大出血のリスクも上昇させることを示した。アスピリン群において、いずれのがんも減少しなかった。糖尿病患者においてアスピリンを内服することによる有益性はなかった、と筆者らは結論付けている。

HDLコレステロール値が非常に高いと心血管死または非致死性MIのリスクが上昇する [2018-09-04]
Very high levels of HDL-cholesterol increases risk of cardiovascular death or non-fatal MI

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値が非常に高いことは心筋梗塞(MI)および死亡のリスクが高いことと関連がある可能性がある、とESC Congress 2018 で発表された。追跡期間中央値4年間におけるMIまたは心血管死のリスクは、HDLコレステロール値が41〜60 mg/dL (1.1〜1.5 mmol/L)の参加者で最も低かった。リスクは、HDLコレステロールが低値(41 mg/dL未満)および非常に高値(60 mg/dL超)の両者において高かった。HDLコレステロール値が非常に高い参加者は、HDLコレステロール値が41〜60 mg/dLの参加者に比べ、心血管死または非致死性MIのリスクが50% 高かった。

ASCOT:血圧とコレステロールを低下させる薬剤は十年後でも生存率を改善し続けている [2018-09-04]
ASCOT: Blood pressure and cholesterol lowering drugs continue to improve survival after a decade

血圧とコレステロールを低下させる薬剤は10年以上生存率を改善し続けている、とのASCOTレガシースタディのレイトブレイキングの結果がESC Congress 2018 で発表され、Lancet に掲載された。高血圧を有する60代半ばの患者は、カルシウム拮抗薬ベースの降圧剤およびスタチンの両者を内服している場合、75〜80歳までに心疾患および脳卒中で死亡する確率が低かった。スタチンはトライアル終了後も長期生存に関する有益性を有することが過去に示されているが、降圧剤で示されたのは今回が初めてである、と筆者らは強調している。

ASCEND:オメガ3サプリメントは糖尿病患者の心筋梗塞または脳卒中を予防しない [2018-09-04]
ASCEND: Omega 3 supplements do not prevent myocardial infarction or stroke in people with diabetes

オメガ3サプリメントは糖尿病患者の心筋梗塞(MI)または脳卒中を予防しない、とのASCENDトライアルのレイトブレイキング結果がESC Congress 2018 で発表され、New England Journal of Medicine に掲載された。ASCENDトライアルの平均追跡期間7.4年間に、初回の重篤な血管イベントはオメガ3サプリメント群の689人(8.9%)およびプラセボ群の712人(9.2%)において発現し、2群間に有意差がないことが示された(p=0.55)。糖尿病患者において心血管イベント予防目的で魚油を推奨する根拠はない、と筆者らは結論付けている。

持久系アスリートにおける不整脈リスクの増加は左房の線維化で説明できる可能性がある [2018-09-04]
Left atrial fibrosis may explain increased risk of arrhythmias in endurance athletes

高度にトレーニングをした持久系アスリートにおける不整脈リスク増加は左房の線維化で説明できる可能性がある、とESC Congress 2018 で発表された。全体としてアスリートは、非アスリートのコントロール群に比べ、若年でありBMIが小さく併存疾患が少なかった。左房線維化の平均は、持久系アスリートで13.7% であり、非アスリートでは11.8% であった。年齢やBMIで補正すると、持久系アスリートであることは非アスリートに比べ、左房線維化との関連がより強かった。持久系アスリートであることは、糖尿病、高血圧、および喫煙関連疾患などの併存症よりも線維化の度合いに対する影響が大きかった。