HER2陽性乳がんに対するより短期間のトラスツズマブによる治療は、標準治療に比べ心臓における副作用は少なく有効性は同等である [2018-05-29]
Shorter trastuzumab treatment for HER2+ breast cancer as effective as standard treatment with fewer cardiac side effects

2018 ASCO Annual Meeting で、HER2陽性早期乳がん女性4,088人を対象とした第III相試験の結果、6か月間のトラスツズマブ投与は現在の標準的な12か月間の治療に比べ非劣性であることが明らかにされた。4年無病生存率は、6か月治療群で89.4% であり12か月治療群で89.8% であった。さらに、心臓疾患によりトラスツズマブを早期中止した女性は、 6か月治療群ではわずか4%であったのに対し、12か月治療群では8% であった。この試験は、HER2陽性乳がん患者の多くにおいて、トラスツズマブによる治療期間を6か月に短縮する方向への最初のステップを示している、と筆者らは述べている。

子宮内における微粒子状物質への曝露は小児期高血圧と関連がある [2018-05-29]
Exposure to ambient fine-particulate pollution in the womb associated with higher blood pressure in childhood

母親の妊娠第3期に高レベルの大気汚染に曝露された小児は小児期高血圧のリスクが高かった、とHypertension に掲載された。妊娠第3期に子宮内で高レベル(上から3分の1)の微粒子物質に曝露された小児は、曝露が少なかった(下から3分の1)小児に比べ、収縮期血圧の上昇確率が61% 高かった。血圧上昇との関連は、出生時体重が低、正常、高に関係なく維持された。

心的外傷後ストレス障害と心房細動発症リスク上昇との関連 [2018-05-22]
Link between post-traumatic stress disorder and increased risk of developing atrial fibrillation

心的外傷後ストレス障害(PTSD)と新規発症心房細動(AF)との関連を初めて報告したスタディの結果が、Heart Rhythm 2018, the Heart Rhythm Society's 39th Annual Scientific Sessions で発表された。このスタディは、AFまたは心房粗動歴を有さない患者100万人超(ベースライン時平均年齢30.29 ± 9.19、男性87.8%)を対象とした。平均追跡期間4.8年の間に、PTSDと新たに診断されたことは、広範な変数で補正後のAFに対する診断リスク上昇と関連があった。

ヒトにおける腸内細菌叢と動脈壁硬化を関連付けた初めての観察研究 [2018-05-22]
First observation in humans linking gut microbes and arterial stiffness

我々の消化器系における種々の"善玉菌"のレベルが動脈硬化と関連していることが明らかにされた、との新たな研究結果がEuropean Heart Journal に掲載された。研究者らは中年女性の双子617人の集団の医療データを調査した結果、全ての女性において腸内細菌叢の多様性と動脈の健康状態に有意な相関が認められた。健康な腸内細菌の多様性が少ない女性は、動脈硬化度が高かった。彼らは、特定の細菌が動脈壁硬化リスクの低さと関連することを明らかにした。これらの細菌は、肥満リスクの低さと関連していることもすでに報告されている。

MR血管造影の結果、心血管疾患の低〜中等度リスクの患者において早期動脈硬化が認められた [2018-05-15]
MR angiography identifies early atherosclerosis in people at low to intermediate risk of cardiovascular disease

全身磁気共鳴血管造影(MRA)を用いたところ、心血管疾患の低〜中等度リスクと考えられる人々において驚くほど動脈硬化が高率に認められた、とRadiology に掲載された。研究者らは、平均年齢53.5歳の1,513人に対し全身MRAを用いて無症候性動脈硬化の負荷および分布を定量化した。参加者は、10年心血管疾患リスクが20% 未満の低〜中等度リスクと考えられた。参加者のほぼ半数は少なくとも1つの狭窄血管を有し、4分の1超は複数の狭窄血管を有していた。

特定の脳経路の障害は右側の皮質下脳卒中患者の注意力欠如と関連がある [2018-05-15]
Impairment of specific brain pathways associated with attention deficit in patients with right subcortical stroke

脳全体の情報を伝える経路の一部の傷害が、脳の右半球の皮質下脳卒中歴のある患者の注意力欠如の原因である可能性がある、とRadiology に掲載された。VLSM法によって、右脳の尾状核および周辺の白質における急性脳卒中病変が反応時間の遅延と関連があることが明らかにされた。拡散テンソルトラクトグラフィにより、コントロールにおいてこの原因病変が右視床‐および尾状核‐前頭葉経路に位置することが示された。研究者らは、この所見により脳卒中後の認知機能低下を軽減することを目標とした、早期介入に適した患者を選択する方法が得られることを期待している。

口腔衛生が良好であることは心筋梗塞後の回復を助ける可能性がある [2018-05-01]
Good oral hygiene may help recovery following myocardial infarction

口腔衛生が良好であることは心筋梗塞や大動脈解離などの急性心血管イベント後の回復を助ける可能性がある、とFrontiers in CardioVascular Biology (FCVB) 2018 congress で発表された。マウスにおけるこの実験では、歯周病を引き起こす細菌は血管治癒も妨げることが明らかにされた。研究者らは、歯周病菌が出血した歯肉から血流に侵入し動脈硬化巣に接着し病変の治癒を妨げる、との仮説を立てている。主な歯周病菌であるジンジバリス菌を注射されたマウスは、コントロール群のマウスに比べ死亡する割合が有意に高かった(68% vs. 35%, p<0.05)。死亡原因は大動脈修復障害や、その結果としての大動脈破裂であった。

高齢女性はミトコンドリア機能不全、抗酸化蛋白減少、および炎症増加を有する [2018-05-01]
Older women have mitochondrial dysfunction, reduced antioxidant proteins, and increased inflammation

高齢女性における心血管疾患発現率上昇に対する分子的基盤が発見された、とFrontiers in CardioVascular Biology 2018 congress で発表された。ミトコンドリア機能において重要である蛋白Sirt1のレベルは、若年女性において若年男性よりも多い。高齢者の心臓において、Sirt1レベルは女性では低下するが男性では低下しない。ミトコンドリア内の抗酸化蛋白スーパーオキシドディスムターゼ2の発現は、若年女性において男性よりも多かったが、加齢によりこの差は消失した。細胞を酸化ダメージから保護する酵素であるカタラーゼの発現もまた、若年女性では男性よりも多かったが、これも加齢により消失した。