2014
日本のスタディにおいて高用量のピタバスタチンによる治療は低用量の治療を上回った(2017 AHA, Session LBS.02)
PCI後患者に対する術前アスピリン投与は有益である可能性がある(2017 AHA, Session LBS.05)
ダビガトランを含む2剤併用療法はサブグループ間で一貫して有益である(2017 AHA, Session LBS.05)
心房細動に対するボツリヌス毒素(2017 AHA, Session LBS.07)
肥満手術は降圧薬の必要性を軽減する(2017 AHA, Session LBS.03)
CTスキャンと負荷試験はMI否定には役立たない(2017 AHA, Abstract 735)
130が新たな高値(2017 AHA)
スタディの結果、抗炎症薬が最も奏功する患者が同定された(2017 AHA, Session LBS.02)
エボロクマブはPAD患者における心血管イベントリスクを低下させる(2017 AHA, Session LBS.02)
一次予防としての140未満への血圧降下(2017 AHA, Session LBS.02)
下限値を低下させることにより輸血量が減少する(2017 AHA, Session LBS.02)
ストレスフルイベントは女性の肥満率を上昇させる(2017 AHA, Poster Presentation T2039 - Session: CM.APS.06)
スタディの結果、安定狭心症に対するPCIに疑問が投じられた
ベアメタルステント使用反対を支持するさらなる所見
10代での出産は心疾患リスク上昇と関連がある
左主幹部分岐部病変における標的病変不全の軽減
REAL-CAD:高用量ピタバスタチンは安定CADを有する日本人患者において心血管イベントを有意に減少させた [2017-11-28]
REAL-CAD: High-dose pitavastatin significantly reduced cardiovascular events in Japanese patients with stable CAD

高用量スタチン療法はアジアの臨床現場ではあまり用いられていないが、安定冠動脈疾患(CAD)を有する日本人患者において有効であり忍容性に優れている、と2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表された。REAL-CAD 試験には、日本の733施設から13,000人超が組み入れられた。5年後に、高用量群(4mg/日)においては、低用量群(1mg/日)に比べ、主要評価項目(心血管死、非致死性MI、非致死性脳卒中、および不安定狭心症による入院)の有意なリスク減少が認められた(p=0.001)。5年間の治療必要数(NNT)は63であった。

POISE-2 PCI:周術期低用量アスピリン投与はPCI後患者の死亡および非致死性MIのリスクを減少させる [2017-11-28]
POISE-2 PCI: Low-dose perioperative aspirin reduces risk of death or nonfatal MI in patients with prior PCI

過去に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行された患者において、非心臓手術直前、術中および術直後のアスピリン投与により、心臓に関する合併症を予防することができる、とのPOISE-2 試験の結果が2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、Annals of Internal Medicine に掲載された。この結果から、周術期のアスピリン投与はPCI歴を有する非心臓手術患者1,000人毎に、59件の心筋梗塞を予防し8件の大出血イベントを来すことが示された。アスピリンはPCI歴の有無に関係なく、同程度に出血リスクを増大させた。

RE-DUAL PCI:ダビガトランとP2Y12阻害薬による2剤併用療法は、サブグループ間で一貫してワルファリンよりも出血リスクを減少させる [2017-11-28]
RE-DUAL PCI: Dual therapy with dabigatran and a P2Y12 inhibitor reduces bleeding risk better than warfarin across subgroups

RE-DUAL PCI試験のサブグループ解析の結果、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行される広範な心房細動患者において、ダビガトランとP2Y12阻害薬による2剤併用抗血栓療法は、ワルファリンを含む3剤併用療法に比べ出血リスクが低いことが示された。ダビガトラン2剤併用療法の有益性は、指標となるイベントとしての急性冠症候群の有無に関係なく、薬剤溶出性ステントまたはベアメタルステントを留置され、P2Y12阻害薬、クロピドグレルまたはチカグレロルを投与された患者における主研究の結果と一貫していた。この結果は2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表された。

TNT-POAF:心外膜へのボツリヌス毒素注入は術後心房細動を減少させる可能性がある [2017-11-28]
TNT-POAF: Epicardial botulinum toxin may reduce postoperative atrial fibrillation

心臓手術後心房細動(POAF)の予防目的での心外膜ボツリヌス毒素治療はPOAFリスクを数字上低下させたが、この差は統計学的有意差には到達しなかった、と2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表された。心外膜脂肪層の心臓自律神経近くに注入すると、ボツリヌス毒素は心房に抗コリン的に作用し、心房の有効不応期を短縮しAF誘発を阻害する。ボツリヌス毒素を注入された患者のうち、36.5% がPOAFを発症したのに対し、プラセボ注入群では47.8% であった(p=0.19)。入院期間または術後合併症に有意差はなかった。

GATEWAY:胃バイパス手術は降圧薬への依存を軽減するのに薬物療法よりも優れている [2017-11-28]
GATEWAY: Gastric bypass surgery superior to medical management at reducing reliance on antihypertensive medications

肥満の高血圧患者における胃バイパス手術は、降圧薬への依存を軽減するのに薬物療法単独よりも優れており、体重を減らし他の健康尺度も改善する、と2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、Circulation に掲載された。胃バイパス術と薬物療法の併用にランダムに選択された患者は、主要評価項目である降圧薬を少なくとも30% 減量しても、12か月後の血圧が良好に維持できている確率が薬物療法のみの患者に比べ圧倒的に高かった(83.7% vs. 12.8%、p<0.001)。12か月後、胃バイパス手術患者の51% が、内服せずに血圧がコントロールされた状態を維持していた。

ROMICAT-II:侵襲的な検査は救急外来の胸痛患者に有益性をもたらさない [2017-11-28]
ROMICAT-II: Aggressive testing provides no benefits to patients in emergency room with chest pain

救急外来において胸痛患者に対しコンピュータ断層撮影(CT)および心臓負荷検査は過剰に使用されており、患者が心筋梗塞の状態か否かを判断するのに何も情報を提供していない、と2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、JAMA Internal Medicine に掲載された。研究者らはROMICAT-II試験の結果に立ち戻り、臨床評価のみを受けた患者とCTスキャンまたは負荷試験を受けた患者との転帰の差を検討した。その結果、2群間に有意差はなかった。追加の検査は入院延長につながり、被曝が増加した。

高血圧が14年ぶりに再定義された [2017-11-21]
High blood pressure redefined for the first time in 14 years

高血圧は140/90ではなく、130/80の時点で生活習慣改善や一部の患者においては薬物治療により早期に治療されるべきである、との初めての包括的な高血圧新ガイドラインが、10年以上ぶりに2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表された。新ガイドラインでは、高血圧前症のカテゴリーを取り除いた。これにより、より多くの人々が高血圧と診断され生活習慣改善に関する指導を受けることになる一方で、薬を処方される患者は少し増加するのみであろう。新ガイドラインの影響は、若年層において最大であろうと考えられている。このガイドラインはHypertension および Journal of the American College of Cardiology に掲載された。

CANTOS:カナキヌマブ単回投与後の奏効性により最もベネフィットを得る患者が予測できる [2017-11-21]
CANTOS: Response after single treatment with canakinumab predicts which patients will benefit most

2017 American Heart Association Scientific Sessions において、抗炎症薬カナキヌマブが心血管死亡率および総死亡率を低下させたことを示したCANTOS試験のpre-specified(解析項目を事前に設定した)解析の結果が公表された。カナキヌマブ単回投与後にhsCRP値が2mg/L未満に低下した患者において、長期投与により心血管死亡率および総死亡率は、いずれも31% 低下した。カナキヌマブ単回投与後にhsCRP値が2mg/Lまたは2mg/L 超であった患者においては、これらの評価項目の統計学的に有意な低下は認められなかった。初回治療に対する確かな奏効性の有無によって、全ての主要な心血管アウトカムに大きな差が認められた。このスタディ結果はLancet に掲載された。

FOURIER:PCSK9阻害薬は末梢動脈疾患患者の予後を改善する [2017-11-21]
FOURIER: PCSK9 inhibitor improves outcomes for patients with peripheral artery disease

末梢動脈疾患(PAD)患者に対し、スタチン療法にPCSK9阻害薬エボロクマブを併用することで将来の心血管イベントリスクを軽減することが示された、とのFOURIER 試験のサブ解析の結果が2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、Circulation に掲載された。PAD患者はMIまたは脳卒中リスクが高いため、心血管イベントの絶対リスク減少率が大であった(PAD患者3.1%、非PAD患者1.6%)。エボロクマブは、PAD患者の主要有害下肢イベントリスクを、プラセボに比べ約半分に低下させた。PADを有しMIまたは脳卒中リスクを有さない患者において、エボロクマブは2.5年間の心血管または有害下肢イベントリスクを6% 低下させた。

強力な降圧療法は心血管系疾患を軽減しない [2017-11-21]
No cardiovascular disease reduction with intensive blood pressure lowering treatment

収縮期血圧が140mmHg未満の健常者において、降圧療法は死亡または心血管系疾患を減少させない、と2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、JAMA Internal Medicine に掲載された。このメタ解析において研究者らは、一次予防研究を冠動脈疾患または脳卒中既往を有する患者を対象としたものと分離した。治療効果は、過去には健康であった人々において、どの程度血圧が高かったかに依存した。収縮期血圧が140mmHg を超えていると、治療により死亡および心血管系疾患のリスクが低下した。140mmHg 未満では、治療は死亡率または初回の心血管イベントリスクには影響しなかった。

TRICS III:最終的な世界的輸血スタディの結果は、患者の安全性および良好な転帰を支持する [2017-11-21]
TRICS III: Definitive global transfusion study supports patient safety and positive patient outcomes

心臓手術中の輸血を行う下限値を低下させることは、従来の値を用いた場合よりも安全で患者の転帰を改善するとの、この領域で過去最大の研究が発表された。より低い、つまり"制限的な"下限値により、輸血を受ける患者が28% 減少し、輸血量が約30% 減少した。またこの制限的な下限値により、輸血量が減り各々の施術に費やす費用も減らすことができた。この結果は2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表され、同時にNew England Journal of Medicine に掲載された。

人生においてトラウマになるような出来事を1つ以上経験した女性は肥満度が高い [2017-11-21]
Women who reported one or more traumatic lifetime events had increased odds of obesity

人生において1つ以上のトラウマになるような出来事、またはここ数年で複数のネガティブな出来事を経験した女性は、そのようなストレスのない女性に比べ肥満度が高い、との予備調査の結果が2017 American Heart Association Scientific Sessions で発表された。人生において1つ以上のトラウマになるような出来事を経験した女性は、経験しなかった女性に比べ肥満度が11% 高かった。本人が報告した過去5年間のネガティブな出来事が多いほど、肥満の傾向が強かった。特に、ネガティブな出来事が4つ以上あったと報告した女性は、肥満リスクが36% 高かった。

ORBITA:安定狭心症に対する冠動脈ステントのスタディの結果、プラセボ効果の可能性があることが明らかにされた [2017-11-14]
ORBITA: Study of cardiac stents for stable angina identifies potential placebo effect

薬剤溶出性ステント(DES)を用いて経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行された安定狭心症患者においては、たとえ重度の冠動脈狭窄患者であっても、これまで考えられていたよりプラセボ効果の方が大きい可能性がある、とTranscatheter Cardiovascular Therapeutics 2017で発表され、Lancet に掲載された。この結果は、1枝病変患者200人を調査した、初めてのシャムコントロールPCI試験ORBITAトライアルから得られたものである。DESを用いたPCI後の運動耐容能および症状の軽減は、シャム施術に比べて優れてはいなかった。多枝病変を有し虚血の負荷の大きい患者に対し、この結果を当てはめるのは間違いだと思われる、と筆者らは強調している。

SENIOR:高齢患者において、生体吸収性ポリマー薬剤溶出性ステントはベアメタルステントよりも優れている [2017-11-14]
SENIOR: Drug eluting stent with bioresorbable polymer is superior to bare metal stent in elderly patients

生体吸収性ポリマー薬剤溶出性ステント(DES)Synergyと短期抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の組み合わせは、ベアメタルステント(BMS)に比べ、高齢患者の出血リスクを増加させることなく有害事象を軽減できる。主要評価項目である総死亡、心筋梗塞、脳卒中、または虚血による標的病変血行再建術施行は、DES群の11.6% に対しBMS群では16.4% であった(p=0.0160)。これは主に、虚血による血行再建術(DES群1.7%、BMS群5.9%;p=0.0002)によりもたらされた。SENIORトライアルの結果は、Transcatheter Cardiovascular Therapeutics 2017で発表され、Lancet に掲載された。

10代の母親はそれよりも年長の母親に比べ、後の心血管疾患リスクが高い [2017-11-07]
Teenage mothers have greater risks for cardiovascular disease later in life than older mothers

10代で母親になった女性はそれよりも年長の母親に比べ、後に心臓および血管の疾患を発症するリスクが高い、と Journal of the American Heart Association に掲載された。研究者らは、初産が20歳より前であったと報告した女性は、フラミンガムリスクスコア−10年間の心血管リスクを予測するために一般的に用いられる指標−が、有意に高いことを明らかにした。これに比べ、初産年齢がそれよりも高かった女性は、平均リスクスコアが低かった:しかし心血管リスクが最も低かったのは、出産を一度も経験したことのない女性であった。

DKCRUSH-V:左主幹部分岐部病変におけるダブルキッシングクラッシュステント術は標的病変不全率を低下させることが示された [2017-11-07]
DKCRUSH-V: Double kissing crush two-stent technique in left main bifurcation lesions demonstrates lower rates of target lesion failure

ダブルキッシング(DK)クラッシュステント術は、左主幹動脈の真の遠位分岐部病変の治療において、1年後の標的病変不全(TLF)率を暫定的側枝Tステント(PS)よりも低下させることが示された。1年以内のTLFは、DK群の12人(5.0%)およびPS群の26人(10.7%)に発現した(p=0.02)。DKクラッシュはまた、標的血管心筋梗塞率(p=0.03)および確実な、または可能性のあるステント血栓率(p=0.02)も低下させた。DKCRUSH-Vトライアルの結果は、29th annual Transcatheter Cardiovascular Therapeutics (TCT) scientific symposium で発表され、Journal of the American College of Cardiology に掲載された。