機能的MRIが貧困、小児期のうつ病、および脳結合性変化との関連を同定する [2016-01-26]
Functional MRI identifies link between poverty, childhood depression, and changes in brain connectivity

小児の機能的MRI画像を解析することにより、脳内の重要な構造と他の脳領域との結合が、貧困状態にある小児と裕福な環境で育った小児とでは異なることが明らかにされた。American Journal of Psychiatryに掲載されたこの研究から、脳の結合性の変化は臨床的うつ病と関連することも示された。研究者らは7〜12歳の小児105人の脳画像を解析した結果、海馬および扁桃体と他の脳領域との結合は、小児が曝露された貧困の度合いに応じて弱いことを示した。家庭が貧しいほど、海馬や扁桃体と他の脳領域の結合は、研究者らが弱いと特徴付けた様に結合していた。さらに、貧しい未就学児ほど就学時に臨床的うつ病を有する確率が高かった。同じ研究者らの先行研究では、灰白質および白質容積、および海馬と扁桃体の大きさや容積に差があることが確認されている。彼らはまた、これらの変化の多くが親の養育により克服できることも示した。しかし、今回のスタディで認められた結合性の変化に関しては、そのような事実は認められなかった。

術前の精神状態と減量手術後の体重減少との関連 [2016-01-26]
Association between preoperative mental health conditions and postoperative weight loss following bariatric surgery

うつ病やむちゃ食い障害などの精神疾患は減量手術候補者または施行者において一般的に認められる、とJAMAに掲載された。研究者らはメタ解析を行い、減量手術候補者および手術施行者における精神疾患有病率、および術前の精神状態と減量手術後の転帰との関連を検討した。メタ解析の結果、減量手術施行患者の23%が現在の気分障害−うつ病が最多(19%)−であると推定され、17%が摂食障害と診断された。いずれの推定率も一般人口において報告されている率よりも高かった。他の一般的な精神疾患は不安障害(12%)であった。術前の精神状態と術後の体重減少との関連に関するエビデンスは、これまで相矛盾していた。うつ病も過食も体重に関する転帰の差と一貫した関連はなかった。しかし、減量手術は術後のうつ病有病率減少(7スタディ;8〜74%減少)およびうつ症状重症度減少(6スタディ;40〜70%減少)と一貫して関連した。

2つの脳内結合ネットワークの疾患関連による変化が、認知症症状においてどのような役割を果たすかが示された [2016-01-19]
Research shows how disease-associated changes in 2 interlinked networks in the brain play role in symptoms of dementia

2つの脳内結合ネットワークにおける疾患に関連した変化が、認知症症状の発現に重要な役割を果たしている可能性があるとの2つのスタディ結果がJournal of Neuroscienceに掲載された。1つ目のスタディでは、健康なマウスおよび認知症マウスの嗅内皮質活性が比較された。その結果、嗅内皮質の頂点から底部までの電気的活性勾配が認知症マウスにおいては存在しないことが示された。この結果から、大きな地図において見られるような洗練された方向指示の細目が、認知症患者では正確に表現されていないことが示唆される。もう1つのスタディにおいて研究者らは、学習や記憶の過程において重要であることが知られている、海馬に位置する"場所細胞"を調査した。場所細胞は自分がどの空間にいるかを見極めるのに役立つ。認知症マウスの海馬は、シナプス、細胞、およびネットワークレベルの機能が特異的に障害されており、つまり空間情報が誤ってエンコードされ空間記憶が障害されていることが、研究チームにより明らかにされた。両スタディともに、認知症における脳内の"GPS"方向指示系がどのように障害されているかに着目し、認知症患者が一般に経験する見当識障害の根底にある可能性のある原因を示している。

スタディの結果、胎児期の抗うつ薬への曝露による自閉症やAHDHのリスク上昇はないことが示された [2016-01-19]
Study finds no increased risk of autism or ADHD with prenatal antidepressant exposure

医療記録データの解析の結果、胎児期の抗うつ薬への曝露が自閉症や自閉症関連障害または注意欠如多動障害(ADHD)リスクを上昇させるエビデンスはないことが示された。Translational Psychiatryオンライン版に掲載された報告において研究チームは、過去のスタディで示された自閉症やADHD発現率上昇のエビデンスはおそらく母親のうつ病の重症度−いくつかの神経精神疾患の既知のリスクファクター−と関連があり、妊娠中の抗うつ薬内服によるものではないことを示した。研究者らは、自閉症関連診断コードを有する小児1,200人以上と3,500人を超えるマッチさせた神経精神的診断を有さないコントロールの小児とを比較した。また、ADHD小児約1,700人のデータと約3,800人のコントロールのデータを比較した。妊娠前に抗うつ薬を内服した母親の子供において自閉症およびADHD発現率は上昇したが、妊娠中の抗うつ薬への曝露はいずれの疾患の発現率も上昇させなかった。妊娠前の抗うつ薬使用などうつ病がより重度であることを示す母親への心理療法は子供の自閉症やADHDいずれのリスクも顕著に上昇させ、これらのリスクが上昇したとのスタディ結果は、実際は母親のうつ病自体により引き起こされたリスクを反映しているとの仮説を支持している。

アルツハイマー病患者における精神病の主要な決定要因は脳血管疾患である [2016-01-12]
Cerebrovascular disease is major determinant of psychosis in patients with Alzheimer's disease

アルツハイマー病患者における精神病の主要な決定要因は脳血管疾患であることが明らかにされた、とJournal of Alzheimer's Diseaseに掲載された。アルツハイマー病患者の約半数は妄想や幻覚のような精神病症状を発症する。しかし、精神病症状の根底にある病態学的メカニズムは不明であり、そのためそれらの管理および治療への対処能力は限定されている。29のアルツハイマー病センターから収集したデータを用いて、研究者らは1,073人の剖検データを解析した。生前に臨床的にアルツハイマー病と診断されていた患者890人中、最も精神病の傾向のある者は剖検の結果、老人斑や神経原線維変化などのアルツハイマー病の身体所見を有する率が高かった。しかし、剖検でアルツハイマー病と確認された728人を調査すると、精神病を有していた者はアルツハイマー病の身体所見が多くなかった。両群において、精神病はレビー小体と有意な相関があった。精神病は認知症がパーキンソン病と合併すると顕著となることから、この結果は想定外ではなかった。全く想定外であったのは、精神病において血管性リスクファクター(高血圧、糖尿病、禁煙時年齢)や小血管疾患に関連した脳損傷が重要な役割を果たしていることであった。

過去にアルツハイマー病と関連付けられた遺伝的変異が脳皮質および海馬の萎縮と関連していた [2016-01-12]
Genetic variants previously linked to Alzheimer's disease associated with cortical and hippocampal atrophy

過去にアルツハイマー病と関連付けられた2つの遺伝的変異が、この疾患に特徴的な脳萎縮とより特異的に結び付けられた。今回のスタディにおいて研究者らは、アルツハイマー病のいくつかの特徴のリスクを上昇させると考えられている、APOe4を除く上位9つの遺伝的変異を同定した。磁気共鳴画像を用いた脳容積計測および遺伝子解析により、研究者らは遺伝的変異と脳皮質および海馬領域の萎縮との関連を調査した。スタディは認知機能障害を有さない50人の参加者(50歳以上)および軽度認知障害と診断された90人を対象に施行された。その結果、2つの遺伝的変異‐ABCA7およびMA4A6A‐のみが脳皮質および海馬領域の萎縮と関連があるようであった。末梢血液中を循環するこれら遺伝子の産生蛋白レベルもまた、脳皮質および海馬の萎縮と関連があった。これらの遺伝子により産生される蛋白は将来アルツハイマー関連検査として用いられる可能性がある、と研究者らは考えている。この研究結果はNeurobiology of Agingオンライン先行版に掲載された。