2014
トライアルの結果、経静脈的投与の鉄補充が支持されたが経口による鉄補充は支持されなかった(AHA,LBCT.04)
中等度リスク患者に対するTAVIの有効性(AHA, LBCT.02)
合併症はHeartMate 2に比べHeartMate 3において少ない(AHA, LBCT.04)
女性における冠動脈石灰化の予後予測精度(AHA, EP.AOS.763, Presentation 372)
マリファナ使用は一時的なストレス心筋症と関連がある(AHA, HF.APS.P14, Poster S4054)
胸やけの薬は虚血性脳卒中リスクを上昇させる可能性がある(AHA, EP.AOS.765, Presentation 391)
LFFRはPCIガイドの解決策ではない(AHA,LBCT.02)
小児においてCPRの最良の結果を出すには心臓マッサージに呼吸を加えることである(AHA, ReSS.AOS.13A)
急性心不全に対する医師の考え方を変える(AHA, LBCT.01)
血圧およびコレステロール低下の認知機能への影響(AHA, LBCT.01)
心房間シャント作成デバイスは心不全症状を改善する(AHA, LBCT.04)
片側対両側内胸動脈グラフト(AHA, LBCT.02)
LVADと強化薬物療法の併用は心機能を改善する(AHA, Poster: S4026)
心停止前のスタチン使用はその後の生存を手助けする可能性がある(AHA, Presentation 15-Session: ReSS.AOS.11B)
新たなポリマーフリー薬剤充填ステントは有望なようである(TCT)
出血リスクの高い患者においてポリマーフリーステントの有益性が示された(TCT)
薬物療法へのコンプライアンスは心血管アウトカムに影響する
妊娠による脳卒中リスク
慢性心不全における鉄補充は、2つのスタディの対立する結果により未だ結論が出ない [2016-11-29]
Iron supplementation in chronic heart failure remains unsettled after two studies report conflicting results

慢性心不全(HF)患者における鉄補充に関しては、経口および経静脈的鉄補充を調査した2つの新たなスタディの結果が対立していることから未だ結論が出ない、と2016年American Heart Association学術集会で発表された。過去のスタディから、鉄欠乏症をカルボキシマルトース鉄(FCM)の経静脈的投与で治療することにより、HF患者の運動耐容能が改善することが示されたが、経口的鉄補充に関しては不明である。本年のミーティングにおいて、EFFECT-HFスタディの結果から、最大酸素摂取量(VO2)は貧血の有無にかかわらず、HF患者に対する3回のFCM経静脈的投与により有意に改善したが、IRONOUTスタディにおいては、安価な経口的鉄補充は機能的能力および他の評価項目を改善しなかった。

GARY:中等度リスク患者においてTAVIの死亡率はSAVRより高い [2016-11-29]
GARY: TAVI mortality higher versus SAVR in intermediate risk patients

ドイツのレジストリにおける手術リスク中等度の大動脈弁狭窄症患者において、1年後の調整死亡率は経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)施行患者において、外科的大動脈弁置換術(SAVR)施行患者に比べ有意に高かった、と2016年American Heart Association学術集会で発表された。院内死亡率はTAVI患者で3.8%、SAVR患者で2.6%であり、1年後の死亡率はTAVIで16.6%、SAVRで8.9%であった。この2群間の有意な死亡率の差は、傾向スコア解析後でも認められた。しかし、レジストリデータの後ろ向き解析は、2つの治療戦略を比較する選択法ではない、と筆者らは指摘している。

MOMENTUM 3:新たな心臓ポンプは安全かつ有効であり、血栓形成に関連する合併症が少ないようである [2016-11-29]
MOMENTUM 3: Novel heart pump appears safe and effective, reduces clotting-related complications

新しいHeartMate 3左室補助循環装置(LVAS)は、有害事象を予防するようにデザインされたが、その有害事象すなわちポンプ内血栓を軽減した、とAmerican Heart Association学術集会late-breaking臨床試験で発表され、同時にNew England Journal of Medicine に掲載された。患者は、HeartMate 3 または HeartMate 2の群にランダムに割り付けられた。この294人の患者を6か月間追跡した事前設定解析において、研究者らは、HeartMate 3がその他の有害事象において明らかな差はなく、ポンプ機能不全による再手術率を軽減したことにより、臨床転帰がますます改善したことを示した。

心血管疾患低リスク女性における冠動脈石灰化の有病率および予後 [2016-11-29]
Prevalence and prognostic implications of coronary artery calcification in women at low cardiovascular disease risk

動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)低リスク女性において、冠動脈石灰化は約3分の1に存在し、ASCVDリスク上昇と関連があり、従来のリスクファクターに比べ予後予測精度をやや上昇させた、と2016年American Heart Association学術集会で発表され、同時にJAMA に掲載された。研究者らは、低リスク女性(5つの大規模地域住民コホートで10年ASCVDリスクが7.5%未満の者)における、心血管疾患のリスク推定および層別化に対する冠動脈石灰化(CAC)検査の潜在的有用性について評価した。CACは従来のリスクファクターに比べ、予後予測精度を軽度改善した。

マリファナの若年使用者はストレス心筋症を経験する確率が2倍である [2016-11-29]
Younger marijuana users twice as likely to experience stress cardiomyopathy

積極的なマリファナ使用は、他の心血管疾患リスクファクターを考慮しても、ストレス心筋症リスクを2倍にする可能性がある、と2016年American Heart Association学会で発表された。マリファナ使用者は非使用者に比べ、より若年で、高血圧、糖尿病および脂質異常症などの心血管リスクファクターの少ない男性である割合が高かった。しかし、ストレス心筋症の間に心停止を認め、植込み型除細動器を必要とする割合は、マリファナ使用者において有意に高かった(それぞれ2.4% vs. 0.8%、p=0.034およびICD: 2.4% vs. 0.6% p=0.008)。積極的な使用者はまた、精神疾患や薬物乱用を有する割合も高かった。

プロトンポンプ阻害薬は虚血性脳卒中リスクを上昇させる可能性がある [2016-11-29]
Proton pump inhibitors may increase risk of ischemic stroke

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は虚血性脳卒中リスクを上昇させる可能性がある、との予備研究の結果が2016年American Heart Association学術集会で発表された。研究者らは、平均年齢57歳のデンマーク人患者244,679人のカルテを解析した。PPI(オメプラゾール、pantoprazole、ランソプラゾール、またはエソメプラゾール)内服患者においては、全体の脳卒中リスクが21%上昇した。最も低用量のPPIでは、脳卒中リスクは軽度上昇、または上昇しなかった。最高用量では、ランソプラゾールの30%からpantoprazoleの94%までの脳卒中リスク上昇を認めた。ファモチジンやラニチジンなどのH2ブロッカーでは、脳卒中リスクは上昇しなかった。

FUTURE:冠血流予備量比ガイド下血管形成術の有益性はほとんどなく有害である可能性がある [2016-11-22]
FUTURE: Little benefit, possible harm to fractional flow-reserve-guided angioplasty

冠血流予備量比を用いた経皮的冠動脈インターベンションの有益性はほとんどなく有害である可能性がある、と2016年American Heart Association学術集会で発表された。FUTUREトライアルは、無作為化された初めの836例の解析結果から、FFRガイド群における12か月の総死亡率が過剰であった(p=0.02)ため、早期に中止された。中間解析の結果、血管形成術での比較において、FFR群では有意ではない死亡率過剰の傾向があり、FFRの臨床上の有益性は認められないことが示された。研究者らは、複雑な高リスク患者において、FFRは治療方針決定に役立たず、安全上好ましくない徴候と関連があり得る、と結論付けている。

CARES:心停止後の小児において換気を伴うCPRは転帰を改善する [2016-11-22]
CARES: CPR with ventilation associated with better outcomes after cardiac arrest in children

院外心停止を来した小児および10代の若年者において、バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)は−蘇生を行わない場合と比べ−生存率および神経学的転帰が優れていた、と2016年American Heart Association年次集会で発表され、同時にJAMA Pediatrics オンライン版に掲載された。従来のCPR(換気を伴う)または心臓マッサージのみのCPRが、同数の症例に施行された。従来のCPRは心臓マッサージのみのCPRと比べ転帰を改善した。幼児においては、換気を行わない限り従来のCPRの有益性はなかった。

TRUE_AHF:急性非代償性心不全における緊急の血管拡張の短期および長期効果 [2016-11-22]
TRUE_AHF: Short and long-term effect of immediate vasodilator therapy in acutely decompensated heart failure

急性心不全で入院した患者において、早期における心内圧を低下させる短期薬物療法は心筋傷害を予防し長期の有益性をもたらす、とこれまで医師は考えていた。2016年American Heart Association学術集会で発表されたTRUE-AHFトライアルにおいて、ularitide(ナトリウム利尿ペプチド)を投与された患者では、心ストレスが軽減し、過剰循環血液量の徴候が減少し、薬物投与中の心不全発現が少なかったことが示された。しかし、この薬剤の短期治療は、心筋傷害指標を改善せず、その後の心血管疾患による入院や死亡リスクを変化させなかった。

HOPE 3:長期の降圧およびコレステロール低下療法は認知機能低下を予防しない [2016-11-22]
HOPE 3: Long term blood pressure and cholesterol lowering did not prevent cognitive decline

2016年American Heart Association 学術集会で発表されたHeart Outcomes Prevention Evaluation-3(HOPE 3)において研究者らは、心血管疾患中等度リスク者において、長期間のコレステロール低下療法または降圧療法が、認知機能低下を遅延させるかどうかを評価した。参加者は平均74歳、59%が女性であった。それぞれの群の参加者は認知機能低下を来したが、どちらの治療も参加者の認知機能に対し悪影響は何も及ぼさなかった。今回の中等度リスク者において、5年半の降圧療法およびコレステロール低下療法は、認知機能低下を予防しなかった。早期の、より長期にわたる治療が有益である可能性については、不明である。

REDUCE LAP HF:経カテーテル心房間シャント作成デバイスの留置術は、駆出率の保たれた心不全患者において持続的な臨床的有益性を提供する [2016-11-22]
REDUCE LAP HF: Transcatheter interatrial shunt provides sustained clinical benefit in patients with preserved ejection fraction

経カテーテル心房間シャント作成デバイス(IASD)の留置術は、駆出率の保たれた心不全患者において持続的な臨床的有益性を提供する、と2016年American Heart Association学術集会で発表された。スタディは、心不全の根本原因に対処するようにデザインされた、初めての治療デバイスを評価している。IASDは、心房間に小さな交通を作成することにより、持続的かつ機械的に左房圧を低下させる。12か月の時点で、このデバイスは安全であり労作時の左房圧を低下させるようである。6か月および12か月後に、患者は症状の軽減、QOLの改善、および運動能の改善を認めた。

ART:内胸動脈グラフトは片側と両側とで臨床転帰は同様である [2016-11-22]
ART: Single and bilateral artery grafting have similar clinical outcomes at five years

内胸動脈グラフトは片側と両側とで臨床転帰は同様である、と2016年American Heart Association学術集会で発表された。Arterial Revascularization Trial(ART)では、片側または両側グラフトによる冠動脈バイパス術を予定されている患者3,102人(平均年齢64歳、女性24%)を、ランダム化割り付けした。5年後、両側手術と片側手術とで臨床転帰は同様であった。片側動脈グラフト群における死亡率は8.4%であり、両側動脈グラフト群では8.7%であった。死亡、心筋梗塞および脳卒中の複合エンドポイントは、片側動脈グラフト群で12.7%であり、両側動脈グラフト群で12.2%であった。

RESTAGE:LVADと強化薬物療法の併用は重症心不全患者の心機能回復を助ける [2016-11-15]
RESTAGE: LVAD plus intensive drug therapy helps severe heart failure patients recover function
左室補助装置(LVAD)と強化薬物療法の併用治療により、3分の1を超える進行心不全患者でLVADを除去できるまでに心機能が回復した、と現在進行中のスタディの予備的な結果が2016年American Heart Association年次集会で発表された。多施設共同RESTAGEトライアルは、極めて進行または末期の心不全患者を対象とした。これまでに36人の患者の心機能を評価し、併用療法を受けた13人の患者でポンプを除去できるまでに心機能が改善した(平均344日後)ことを明らかにした。
スタチンの事前使用は心停止後の高生存率と関連がある [2016-11-15]
Prior use of statins associated with higher rates of survival after cardiac arrest

スタチン投与を続けている患者はそうでない患者に比べ、心停止後の生存期間が長い傾向にある、と2016年American Heart Association年次集会Resuscitation Science Symposiumで発表された。研究者らは、スタチンの事前使用により、病院到着時の生存率が約19%高く、長期生存し生きて退院する確率が約47%高く、その後1年以上の生存率が50%高いことを明らかにした。スタチン群の中では、2型糖尿病を有する患者において生存率が最も大きく改善した。

REVELUTION: ヒトにおける初めてのポリマーフリーステントは血管造影および画像上良好な結果を示した [2016-11-08]
REVELUTION: First-in-human of new polymer-free stent demonstrated favorable angiographic and imaging outcomes

内腔から薬物を調整して溶出するポリマーフリー薬剤充填ステント(DFS)のヒトにおける初めてのスタディの結果、過去のzotarolimus溶出ステント(Resolute)のデータと比較し、9か月後のステント内後期内腔減少に関して非劣性が示された。ステント内後期内腔減少はDFSで0.26±0.28 mmであり、Resoluteで0.36±0.52 mmであった(p<0.001)。さらに、50%以上の再狭窄はなく、早期ステントストラット被覆化は高度で、不完全密着は最小であった。今回のREVELUTIONスタディの結果は第28回Transcatheter Cardiovascular Therapeutics scientific symposiumで発表され、同時にJACC: Cardiovascular Interventions に掲載された。

LEADERS FREE:出血リスクの高い患者においてポリマーフリー薬剤溶出ステントは2年後の時点でより安全で有効性が高い [2016-11-08]
LEADERS FREE: Polymer-free drug-coated stents safer and more effective at 2-years in high bleeding risk patients

1か月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を施行された、出血高リスク患者のみを対象とした初めてのランダム化臨床試験であるLEADERS FREEの2年間の結果から、ポリマーフリー薬剤溶出ステント(DCS)は、このトライアルで使用された比較対照のベアメタルステント(BMS)よりも有意に安全で有効性が高い状態を維持していたことが示された。一次有効性評価項目である、2年間の臨床的に必要とされた標的病変血行再建術施行は、DCS群で6.8%であり、BMS群で12.0%であった(p<0.0001)。このスタディは、第28回Transcatheter Cardiovascular Therapeutics scientific symposiumで発表され、同時にJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。

心臓手術後の良好な服薬アドヒアランスは無イベント生存率を押し上げる可能性がある [2016-11-01]
Adhering to prescribed medication after heart procedures may boost event-free survival rate

心臓手術の内容にかかわらず、服薬アドヒアランスが良好な患者は無イベント生存率が2倍以上であった、とCirculation に掲載された。心臓バイパス術および血管形成術を施行されたいずれの患者もアスピリンとスタチンを処方され、いずれの受診日にも内服を継続していた者は、いずれの受診日にも内服をしていなかった者に比べ、無イベント生存率が良好であった。バイパス術施行患者はPCI施行患者に比べ、服薬していないことによる悪影響には耐性があるようであった。服薬していないバイパス術施行患者は、服薬していないPCI施行患者に比べ、合併症なく生存する割合が68%高かった。

若年者においては年齢により妊娠関連脳卒中リスクが増加するが高齢女性ではそうではない [2016-11-01]
Age increases pregnancy-associated risk of stroke in younger, but not older women

分娩後6週間以内の妊婦を含む若年妊婦は、非妊婦よりも脳卒中リスクが高いようであるが、この脳卒中リスク増加は高齢妊婦では認められなかった、とJAMA Neurology に掲載された。高齢妊婦は若年妊婦よりも妊娠中の脳卒中リスクは高かったが、そのリスクは妊娠していない同年代女性のリスクと同様であった。しかし、35歳未満の女性においては、妊娠により脳卒中リスクが上昇し、最年少群では2倍であった。