2014
乾癬の重症度は腹部大動脈瘤リスクと関連する
ワルファリンに関する知識を急速に改善する必要がある
幹細胞治療は心不全の転帰を改善する(LBCT 1172-079)
院外心停止に対する抗不整脈薬投与が疑問視される(LBCT 410-08)
ステント留置を遅らせても臨床的有益性は示さなかった(LBCT 405-08)
心筋梗塞後のlosmapimod投与により改善は認めなかった(LBCT 410-14)
クライオアブレーションは高周波アブレーションに匹敵する(LBCT 410-10)
CABGは心不全患者の寿命を延長させる(LBCT 406-12)
スタチンの広範な使用がスタディにより支持された(LBCT 401-19)
中等度リスクの患者においてTAVRは手術に代わる妥当な代替療法である(LBCT 401-15)
PCSK9阻害薬はスタチン不耐性患者のコレステロール値を低下させる(LBCT 404-10)
心臓検査における性差(LBCT 416-08)
Evacetrapibトライアルは早期中断された(LBCT 404-08)
肥満手術の血糖値に対する効果は時間が経過しても持続する(LBCT 416-12)
脳画像が扁桃体の活性と心臓発作のリスクを関連付ける(Abstract 1275M-03)
心疾患患者においてうつ病は予後不良と関連している(Abstract 1275M-05)
心疾患疑いの症状は男女で差がない(Abstract 1206M-03)
午睡はメタボリック症候群のリスクを上昇させる(Abstract 1191-377)
バイスタンダーによるCPRは生存率向上および神経学的転帰が良好であることと関連がある(Abstract 1189-355)
マンモグラムは心疾患の新たなスクリーニング法となり得る(Abstract 1184-256)
乾癬は皮膚のみの疾患ではなく全身性炎症性疾患と考えるべきである [2016-04-26]
Psoriasis should be considered a systemic inflammatory disease rather than an isolated skin disease

乾癬患者は腹部大動脈瘤(AAA)発現リスクが高い、とArteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biologyに掲載された。デンマーク国内登録を用いたところ、AAA発症率(10,000人当たりの人数-年)は一般人口では3.72であったが、軽症乾癬患者では7.30であり、重症乾癬患者では9.87であった。この結果は、重症乾癬患者ではAAA発現リスクが67%高いことを示している。今回のエビデンスは、乾癬が臨床的に関連のある心血管疾患危険因子であることを示しており、この疾患は皮膚のみの疾患ではなく全身性炎症性疾患であると考えるべきである、と筆者らは述べている。

ワルファリンに関する知識が乏しい患者は重篤な副作用リスクが高い可能性がある [2016-04-26]
Poor patient warfarin knowledge may increase risk of serious side effects

ワルファリンに関する知識が乏しい患者は重篤な副作用リスクが高い可能性がある、と2016年EuroHeartCareで発表された。スタディは、ワルファリンを内服している大動脈狭窄患者404人を対象とした(平均年齢68歳、男性70%)。患者はワルファリンに関する28の多項目選択質問からなる質問票を郵送で受け取った。彼らは平均で18の質問には正確に回答したが、22%は回答率が半分未満であった。回答率が最も低かった質問は、食品や薬物との相互作用および、いつ医師に連絡をとるべきかに関するものであった。

ixCELL-DCM:試験的幹細胞治療後に心不全患者の転帰が改善した [2016-04-19]
ixCELL-DCM: Heart failure patients experience improved outcomes following investigational stem cell treatment

患者自身の骨髄から得た幹細胞による試験的幹細胞治療は重症心不全患者の転帰を有意に改善した、とAmerican College of Cardiology年次集会で発表され、同時にLancetに掲載された。この第II相試験において、医師は虚血性拡張型心筋症と診断された患者109人を12か月間追跡した。幹細胞治療を受けた患者58人においては、プラセボを投与された患者51人よりも死亡、入院および症状増悪率が37%低かった。幹細胞治療を受けた患者のうち死亡したのは3.4%であったのに対し、プラセボ投与群では13.7%であった。

ALPS:院外心停止に対する抗不整脈薬投与の有益性に関する結果は様々である [2016-04-19]
ALPS: Mixed results on benefits of antiarrhythmic drugs for out of hospital cardiac arrest

院外心停止を来した患者において、2つの抗不整脈薬‐アミオダロンおよびリドカイン‐の使用はいずれも退院までの生存率または神経学的転帰を有意に改善しない、とのALPSスタディの結果が第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。しかし、バイスタンダーに目撃されていた心停止患者のうち、蘇生中にアミオダロンまたはリドカインを投与された患者は、プラセボを投与された患者に比べ、退院までの生存確率が5%大であり、統計学的に有意な差であった。この結果はNew England Journal of Medicineに掲載された。

DANAMI-3-DEFER:ステント留置の遅延または延期に関する最大規模のトライアルは有望な予備試験の結果を否定する [2016-04-19]
DANAMI-3-DEFER: Largest trial of delayed or deferred stent implantations contradicts findings of promising preliminary studies

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)を来した患者に対するステント留置の遅延または延期は臨床的な有益性を示さなかった、とのDANAMI-3-DEFERトライアルの研究結果が第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、Lancetに掲載された。平均追跡期間43か月後に、DEFER群のうち105人(17%)および標準治療群のうち109人(18%)が主要評価項目(総死亡、心不全による入院、2回目のMI、および予定外の再血行再建術の複合評価項目)に合致し、有意差はなかった。これらの結果は、ステント留置の延期は臨床的に有益であるとの予備試験の結果に反論するものである。

LATITUDE-TIMI 60:抗炎症薬は心筋梗塞後の重大な心血管イベントリスクを低下させない [2016-04-19]
LATITUDE-TIMI 60: Anti-inflammatory drug does not reduce risk of major cardiovascular events following myocardial infarction

急性心筋梗塞(MI)で入院した患者において、抗炎症薬losmapimodは12週間の治療期間中の重大な心血管イベントの再発リスクを減少させなかった、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、同時にJAMAに掲載された。第3相LATITUDE-TIMI 60トライアルにおいて、主要評価項目(心血管死、MI、または緊急冠動脈血行再建術を要する重症再発性心筋虚血の複合評価項目)が12週までに発現したのは、プラセボ群で7%であったのに対し、losmapimod群では8.1%であった。重篤な有害事象の発現率は、losmapimod群で16%であり、プラセボ群では14.2%であった。

FIRE and ICE:発作性心房細動におけるクライオアブレーションの安全性および有効性は高周波アブレーションと同等である [2016-04-19]
FIRE and ICE: Cryoablation comparable in safety and efficacy as RF ablation in paroxysmal atrial fibrillation

発作性心房細動(PAF)の治療において、クライオバルーンアブレーションの有効性および安全性は高周波カテーテル(RFC)アブレーションと同等である、とのFIRE and ICEトライアルの結果が示された。クライオバルーンはRFアブレーション治療群に比べ施術時間が短く(平均=124分対141分;p=0.0001)、透視時間はRFカテーテルの方が短かった(RFで平均17分;クライオバルーンで平均22分;p=0.0001)。このスタディ結果は第65回American College of Cardiology年次集会Late Breaking Clinical Sessionで発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。

STICHES:重症LV機能不全患者においてバイパス手術は10年生存率を改善する [2016-04-19]
STICHES: Bypass surgery improves 10-year survival in patients with severe LV dysfunction

これまで考えられていたより多くの冠動脈疾患患者が、冠動脈バイパス(CABG)手術により恩恵をこうむる可能性がある、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、New England Journal of Medicineに掲載された。薬物療法にCABGを追加することにより、冠動脈疾患、左室機能不全、および心不全の患者の死亡および入院が有意に低下することが示された。10年間の総死亡リスクは16%減少し、生存期間中央値は約1年半延長した。

HOPE-3:中等度の心血管疾患リスク患者においてスタチンを用いたコレステロール低下療法は有益である [2016-04-12]
HOPE-3: Lowering cholesterol with statins is beneficial in patients at intermediate risk of cardiovascular disease

平均的なコレステロール値および血圧レベルで心疾患リスクが中等度と考えられる人々において、スタチンを用いたコレステロール低下療法は有害心血管イベントを有意に低下させた、とのHOPE-3トライアルの結果が第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。スタチンの有益性は全ての民族集団および全てのLDLコレステロール基準値において同等であり、内服時のコレステロール値はスタチンの恩恵を得られるか否かの判断には重要でないことが示唆された。降圧薬は高血圧を有する人々にしか有益ではなかった。

PARTNER 2A:2年後の死亡率および脳卒中発症率は手術とTAVRとで同等である [2016-04-12]
PARTNER 2A: Rates of death and stoke equivalent for surgery and TAVR at two years

重度の大動脈弁狭窄を有し、非侵襲的経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を施行された中等度リスク患者における2年後の死亡率および機能障害を残す脳卒中の発症率は、標準的な開心術による大動脈弁置換術を施行された患者と同等である、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。この非劣性試験の追加データから、経大腿動脈アプローチで施行された場合にはTAVRの方が優れている可能性があることが示唆された。TAVRを施行された患者はまた、手術を施行された患者に比べ入院期間が短く一部の主要合併症も少なかった。

GAUSS-3:エボロクマブはLDL-Cコントロール不良でスタチン不耐性患者のコレステロール値を低下させる [2016-04-12]
GAUSS-3: Evolocumab dramatically reduces cholesterol in patients with both uncontrolled LDL-C levels and statin intolerance

前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9(PCSK9)阻害薬エボロクマブを用いて6か月間治療することにより、LDL-Cコントロール不良およびスタチン不耐性患者のLDL-C値を劇的に低下させることができる、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、同時にJAMAに掲載された。24週間の治療期間後、スタチン不耐性が確認されエボロクマブを投与された患者では、スタディの主要エンドポイントの1つであるLDLコレステロール値が52.8%低下したのに対し、エゼチミブ内服患者においては16.7%の低下であった。エボロクマブを投与された患者のうち筋肉症状を訴えたものは少なかった。

PROMISE:心機能の診断検査は女性と男性とでは異なって機能する [2016-04-12]
PROMISE: Diagnostic tests for heart disease function differently for women than men

冠動脈疾患の重症度の診断や評価に用いられる検査は女性と男性とで異なって機能する、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。女性においてCT血管造影(CTA)は機能的負荷検査よりも将来の冠動脈イベントの予知能が高いことが示された。男性において、負荷検査は心疾患の陽性所見頻度がCTAよりも少なかったが、イベント予知能はCTAと負荷試験とでほぼ同等であった。

ACCELERATE:Evacetrapibはコレステロールには影響したものの主要有害心血管イベントは軽減しなかった [2016-04-12]
ACCELERATE: Evacetrapib fails to reduce major adverse cardiovascular events despite impacts on cholesterol

低比重リポ蛋白(LDL)を低下させ高比重リポ蛋白(HDL)を著明に増加させたにもかかわらず、コレステロール治療薬evacetrapibを調べる大規模臨床試験は予備的解析において、この薬剤が重大な有害心血管イベントを軽減させないことが示された後に早期中断された、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。第3相ACCELERATEトライアルにおいて、コレステロールに対する好ましい効果はスタディの主要エンドポイント(心血管死までの時間、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈バイパス手術または不安定狭心症による胸痛のための入院)を低下させることには少しもつながらなかった。

STAMPEDE:肥満手術施行患者は術後5年間インスリンを使用することなく健康的な血糖値を維持している [2016-04-12]
STAMPEDE: Patients maintain healthy blood glucose levels without the use of insulin five years after bariatric surgery

第65回American College of Cardiology年次集会で発表されたSTAMPEDEトライアルの追跡結果から、軽度から中等度の2型糖尿病患者において肥満手術の血糖コントロールに対する有益な効果は最長5年間持続し、糖尿病治療薬のみの治療法に対する優越性は時間とともに拡大する可能性があることが示された。胃バイパス手術患者の29%およびスリーブ状胃切除術患者の23%が正常血糖値を達成し維持したのに対し、薬物療法のみの患者におけるその割合は5%であった。減量は胃バイパス術およびスリーブ状胃切除術において薬物療法よりも有意に大であり、血糖コントロールの主要な促進因子であった。

画像を用いたスタディにおいてストレス応答と心血管リスクの背後にあるメカニズムが初めて研究された [2016-04-05]
Study uses imaging to gain a first look into mechanisms behind stress response and cardiovascular risk

脳内のストレス中枢が活性化されるほど動脈の炎症所見も多く有し、心筋梗塞、脳卒中および死亡などの心血管イベントリスクも高い、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。PET/CT画像を調査することで研究者らは、脳ストレス活性測定値が1単位増加するごとに心血管イベントリスクが14倍上昇することを明らかにした。5年間で、ストレス中枢の活性が高い患者の35%が心血管イベントを発症したのに対し、ストレス中枢の活性が低い者におけるその割合は5%であった。

うつ病の冠動脈疾患患者は心筋梗塞および死亡のリスクが高い可能性がある [2016-04-05]
Depressed patients with coronary artery disease may be at higher risk for myocardial infarction and death

うつ病の冠動脈疾患(CAD)患者はうつ病でないCAD患者に比べ、心筋梗塞(MI)または死亡のリスクが高い可能性がある、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。安定CADの診断後のうつ病発現率は18.8%であった。うつ病のCAD患者はうつ病でないCAD患者に比べ、総死亡率が83%高く、MIで来院する確率が36%高かった。CADの診断後90〜180日にうつ病と診断された患者は、リスクがより高かった。

PROMISE:心疾患の危険因子に性差はあるが、過去の研究結果とは異なり症状は同様である [2016-04-05]
PROMISE: Risk factors for heart disease vary by gender but symptoms are similar despite findings from older research

心疾患が疑われる男女において最も一般的に訴えられる症状は胸痛と息切れであり、この結果は過去のデータとは対照的である、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表されJACC: Cardiovascular Imagingに掲載された。このPROMISEトライアルにおいてはまた、女性の方が男性に比べ保有する危険因子は多いが、女性は医療従事者のみならず、客観的に測定し心疾患を予測するスコアにおいても、低リスクに分類されがちであることも明らかにされた。

午睡や眠気はメタボリック症候群リスク上昇と関連する [2016-04-05]
Daytime napping and sleepiness associated with increased risk of metabolic syndrome

日中の眠気に加え、40分以上の午睡はメタボリック症候群発症リスク上昇と関連する可能性がある、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。307,237人のアジア人および欧米人を対象とした、21の観察研究のデータを解析したスタディにおいて、日中に40分以上午睡する者はメタボリック症候群のリスクが著しく上昇することが示された。90分の午睡は過剰な日中の疲労感と同様に、リスクを50%も上昇させるようであった。

HeartRescue:バイスタンダーによるCPRおよび除細動は院外心停止後の予後を改善する [2016-04-05]
HeartRescue: Bystander CPR and defibrillation improves outcomes following out-of-hospital cardiac arrest

院外心停止患者に対するバイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)およびファーストレスポンダーによる除細動は、生存率向上および神経学的転帰が良好であることと関連がある、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表された。2010〜2014年の間に、バイスタンダーによるCPRを施行された患者の割合は自宅および公共の場において有意に増加した一方で、ファーストレスポンダーによる除細動は自宅では増加したが公共の場では増加しなかった。退院時生存率は公共の場における心停止群において10.8%から16.8%に上昇し、自宅における心停止群では5.7%から8.1%に上昇した。神経学的転帰は自宅では改善の傾向がみられ(4.9%から6.1%;p=0.06)、公共の場においては有意に改善した(9.5% から14.7%;p=0.02)。

乳房の石灰化と冠動脈石灰化との強力な定量的関連が認められた [2016-04-05]
Strong quantitative association found between breast arterial calcification and coronary artery calcification

定期的なマンモグラフィーは心疾患リスクのある女性の同定に役立ち、それにより早期介入が可能となる、と第65回American College of Cardiology年次集会で発表され、同時にJACC: Cardiovascular Imagingオンライン版に掲載された。全体で、マンモグラフィーで乳房石灰化(BAC)所見を有する女性の70%が、非造影胸部CTスキャンで冠動脈石灰化(CAC)も有していた。CACを有する60歳未満の女性においては、半数が乳房石灰化も有していた。BACを有する若年女性は、CACも有する確率が83%であった。