脳容積と記憶の関連は認知機能障害発症の確率予測に用いられる可能性がある [2015-10-27]
Association between brain volume and memory could be used to predict likelihood of developing cognitive impairment

脳容積が大きいことは記憶力低下リスクが低いことを示唆し得る、とAlzheimer's Research and Therapyオープンアクセスジャーナルに掲載された。研究者らは物忘れ外来患者計226人を調査し、認知症発症リスクが高い可能性のある者の指標があるかどうかを調査した。このスタディは、様々な種類の神経変性疾患(34人はアルツハイマー病と診断され、82人は健忘型軽度認知機能障害を有していた)を有する、この種では大規模の患者集団を対象としたものであった。患者は言語記憶を評価する記憶力テスト、および幾何学的な形やパターンの記憶能を評価する空間記憶テストを受けた。左の海馬は言語記憶能と関連があり、右の海馬は空間記憶と関連があった。その後、MRI脳スキャンによる解析を施行した。"正常な記憶能"を有する者は海馬が大きく、認知機能障害を有する者よりも記憶課題の成績が良好であった。左または右の海馬が大きいことは言語または空間記憶が優れていることを示唆する可能性があったが、空間記憶課題の成績は言語記憶課題の成績よりも海馬容積への感度がより高いようであった。

脳内免疫細胞の活性レベルは統合失調症症状の重症度とともに上昇する [2015-10-27]
Activity levels of immune cells in the brain increases with severity of schizophrenia symptoms

American Journal of Psychiatry 10月号に掲載されたあるスタディにおいて、統合失調症と診断されている者およびそのリスクの高い者において脳内の免疫細胞がより活性化していることが初めて示された。研究者らは陽電子放射断層撮影(PET)を用いて脳内免疫細胞の活性を計測した。小グリア細胞として知られるこれらの細胞は脳内の傷害や感染に反応し、脳細胞が可能な限り良好に働くように細胞の再配列(剪定[pruning]として知られる過程)を引き起こす。研究チームはすでに統合失調症と診断された者、統合失調症リスクを有する者および症状やリスクのない者を含む56人を検査した。統合失調症患者における小グリア細胞活性レベルは症状の重症度とともに上昇し、統合失調症と診断された人々は脳内免疫細胞活性が高かった。この結果は、統合失調症リスクの最も高い人々を前もって検査することにより早期に治療を開始し最も重度の症状を避けることができる可能性を高め、我々の統合失調症の理解を変える可能性がある。

認知症への理解の欠如は診断、治療およびQOLに影響する [2015-10-20]
Lack of understanding of dementia impacts diagnosis, treatment and quality of life

認知症は通常の老化現象の一部であるとの思い込みが認知症についての最も一般的な誤解である、との新たなスタディ結果がAlzheimer's Disease and Associated Disordersに掲載された。過去20年に15か国で出版された40の研究論文に関する系統的レビューにおいて、一般大衆における最も一般的な誤解は、認知症は通常の老化現象の一部であり、通常の加齢による物忘れがどの時点で認知症を示唆するほど重症であるかが明確でないことが示された。また、高血圧、喫煙および高コレステロールなどの修正可能なリスクファクターが認知症発症に影響しているとの認識がないことから、行政が認知症に関するリスク軽減プログラムをあらゆる面の公衆衛生キャンペーンに合体させる必要性があることが指摘された。さらに、認知症の原因に関するいくつかの社会通念がみられるマイノリティの人種や民族においては、認知症に対する知識が特に乏しいことも明らかになった。人口統計学的因子を調査すると、教育レベルや性別が豊富な知識に関連した−女性は全般的に男性より多くのより良い情報を得ており、教育レベルの高い人々で知識レベルが高かった。

減量手術施行患者において周術期に自傷行為事故が増加する [2015-10-20]
Self-harm emergencies in patients undergoing bariatric surgery increases in the postoperative period

減量手術を施行された大規模成人患者集団を対象としたスタディの結果、自傷行為事故が術後に増加した、とJAMA Surgeryに掲載された。研究者らは、減量手術を施行されたカナダOntario州の成人患者8,815人を調査し、手術前後の自傷行為リスクを比較した。各患者の追跡期間は手術前3年間および手術後3年間であった。研究者らは自傷行為を4つの異なるメカニズム(薬物、アルコール、有毒化学物質による薬物中毒、および身体的外傷)で分類した。追跡期間中に計111人の患者が158件の自傷行為事故を起こした。数人の患者は以前にも自傷行為事故を起こしていたが、これらの事象は術後に有意に(約50%)増加した。ほぼ全てのイベントが精神障害歴を有する患者において発生した。自殺未遂で最も多かったのは意図的な薬物中毒によるものであった。これらの有害事象リスクの高い患者の見極めは未だ解決していないゴールである。これらの結果は、なぜ術後に自傷行為が増えるのか、またこれらのリスクはどうしたら減少するかを理解するのにさらに研究が必要であることを意味する、と著者らは指摘している。

うつ病リスクの高い青少年に対する認知行動療法に基づく予防プログラムは長期の有益性を示した [2015-10-13]
Cognitive behavioral prevention program for adolescents at-risk for depression shows long-term benefit

うつ病リスクの高い若年者に対する認知行動療法に基づくうつ病予防プログラムは、介入実施後6年以上にわたり有益性を示したとJAMA Psychiatryに掲載された。研究者らは参加者316人(組み入れ時13〜17歳で少なくとも片方の親が現在または過去にうつ病エピソードを有する[index parent])を認知行動療法(CBP)に基づく予防プログラム(159人;毎週90分のグループセッションを8週間施行後、月1回の継続セッションを6回)、または通常の治療(157人;家族始動の何らかのメンタルヘルス治療)にランダムに割り付けた。75か月の追跡期間中(88%が残留)、CBPに割り付けられた若年者はうつ病発現率が低かった。このCBPプログラムの全体的な有意な効果は、組み入れ後9か月間のうつ病エピソード発現率が低いことによるものであった。CBPプログラムが有益であったのは、index parentが組み入れ時にうつ病でない若年者であった。また有益性はうつ病発現率、うつ病を有さない日数、および発達能力(すなわち、教育および職業技能、恋愛関係、家族および同胞との関係や人生への満足度)においても認められた。CBPは、ベースライン時にindex parentがうつ状態である場合は有効ではなかった。

体重変化がアルツハイマー病の診断および管理に役立つ可能性がある [2015-10-13]
Body weight change may aid in the diagnosis and management of Alzheimer's disease

アルツハイマー病に関連のある遺伝子型(APOEe4 allele)を有する女性は、この遺伝子を有さない女性に比べ、認知症発症の有無にかかわらず70歳以降に急激にボディーマスインデックス(BMI)が減少する。研究者らはスウェーデン女性を、中年期38〜60歳から約40年間追跡した。また、BMIを認知症発症と関連させて追跡し、晩発性認知症のリスクファクターとして知られるAPOEe4アレルの潜在的役割について検討した。過去の研究結果において、65歳以降に認知症を発症する女性は中年期には緩徐に体重が増加する傾向にあることが示された。今回のスタディはこの研究をさらに拡大し、APOEe4アレルを有する女性は、認知症発症の有無にかかわらず、70歳以降のBMI減少が大きいことを示した。APOEe4のような比較的一般的なリスクアレル、およびこれがリスクをどのように調節するかをよりよく理解することが、認知症リスクの最も高い人々にいかに好ましい介入ができるかを理解するのに役立つ可能性がある、と筆者らは示唆している。

心不全患者における大うつ病を治療する場合には処方を減らし会話を増やすべきである [2015-10-06]
We should talk more and prescribe less when managing major depression in heart failure

うつ病と心不全両者の自己管理を標的とした認知行動療法(CBT)は通常の治療を強化したものと比較し、うつに対しては有効であったが、心不全(HF)の自己管理または身体機能に関しては有効ではなかった、とJAMA Internal Medicineに掲載された。研究者らはHFおよび大うつ病を有する外来患者158人を、経験のあるセラピストによるCBTと通常治療(UC)を行う群(79人)またはUC単独群(79人)にランダムに割り付けた。UCは両群において、循環器専門看護師が施行する構造化されたHF教育により強化された。132人(84%)の患者が治療6か月後の評価を受けた;UCのうち60人(76%)およびCBT参加者の58人(73%)が全ての追跡評価を受けた。6か月後のうつ病スコアはCBT群の方がUC群よりも低かった。CBTはHF自己管理または身体機能を改善しなかったが、不安、倦怠感、社会的機能、およびQOLを向上させた。追加解析の結果、この介入により臨床的うつ病患者の入院率低下に役立つ可能性があることが示唆された。筆者らは、心不全患者における大うつ病は、抗うつ薬治療が無効であってもCBTは有効である可能性がある、と指摘している。

意思決定の支援は医師や患者が抗うつ薬を選択するのに役立つがうつ病は軽減しない [2015-10-06]
Use of decision aid helps clinicians and patients select antidepressant, but does not reduce depression

意思決定の補助はプライマリケア医や中等度から重度のうつ病患者が連携して抗うつ薬を選択するのには役立つが、うつ病コントロールや薬物使用およびアドヒアランスには認識できるほどの効果はなかった、とJAMA Internal Medicineに掲載された。研究者らは、Depression Medication Choice(DMC)診療方針決定補助の意思決定過程やうつ病の転帰に対する効果を調査した。この補助は、患者や医師が使用可能な抗うつ薬およびうつ病改善や患者にとって重要な問題を考えるのに役立つようにデザインされた。10個所の地方、郊外、および都市のプライマリケア診療所がDMC決定補助を用いるまたは用いないうつ病治療を行う群にランダムに割り付けられた。スタディには医師117人および抗うつ薬治療を考慮されている中等度から重度のうつ病患者301人が含まれた。通常ケアに比べ、DMCを使用することにより患者の決定の快適さ、知識、満足度および関わり合いが有意に改善した。また医師の決定の快適さや満足度も改善した。受診期間、薬物アドヒアランス、またはうつ病改善度は2群間で差がなかった。筆者らは、さらに大規模のスタディによりこの意思決定補助を用いることにより恩恵をより被るサブグループ(社会経済的状態など)が明らかにされる可能性がある、と述べている。