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男児において幼児期の逆境は脳の構造を変化させ、うつや不安のリスクを上昇させる [2015-08-25] |
Adversity early in life alters brain structure and increases risk of depression and anxiety in boys |
男児を対象としたグループにおいて、生まれてから6年間の家庭内不和や虐待などの逆境は、後の18〜21歳の青年期におけるうつや不安などの小児期内在化症状レベルが高いこと、および脳構造変化と関連があるとの論文がJAMA Pediatricsオンライン版に掲載された。スタディには、息子が6歳になるまでに逆境に遭遇したと報告した母親−息子ペア494組を対象とした。母親はまた、息子の7、10、13歳時の内在化症状(うつおよび/または不安)の程度について報告した。青年期におけるMRI画像データが収集された。解析の結果、幼児期の逆境は脳構造変化と関連があった。幼児期の逆境は内在化症状レベルが高いこと、さらには間接的な影響の例として灰白質体積低下と関連した。筆者らは、このスタディが男性に限られていたことを含め、スタディの限界を指摘している。また、逆境に対する介入が子供の内在化症状の発症を予防し、脳の異常発育から守ることに役立つ可能性があると示唆している。 |
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関節リウマチ患者においてうつ、ストレス、不安および怒りは心血管系リスクを上昇させる [2015-08-25] |
Depression, stress, anxiety and anger compound cardiovascular risk in patients with rheumatoid arthritis |
Arthritis Care & Researchに掲載された研究から、関節リウマチ(RA)患者におけるうつ、ストレス、不安、怒りおよび社会的サポートの欠如と動脈硬化症リスク上昇とが関連付けられた。研究者らは、RAにおける心血管疾患の有病率、進行およびリスクファクターを調査した、Evaluation of Subclinical Cardiovascular Disease and Predictors of Events in Rheumatoid Arthritis Study(ESCAPE)のデータを用いた。コホートにはRA患者195人とRAを有さないコントロール1,073人が含まれた。対象者はコンピュータ断層撮影および超音波検査で冠動脈石灰化(CAC)および頸動脈壁厚を計測することで動脈硬化の程度の評価を受けた。RA患者において、不安や怒りスコアが高いこと、うつや介護者のストレスはCACスコア100unit超(中等度から重度)であることと関連があった。関連のある共変数や炎症マーカーで補正した後も、この結果はRA患者においては依然として認められたがコントロール群においては認められなかった。研究チームはまた、RA患者は仕事のストレスによる頸動脈プラークのリスクが高いことも明らかにした。しかし、社会的サポートを増強することは、RA患者の頸動脈内膜中膜肥厚度が低いことと関連があった。筆者らは、心理社会的症状のスクリーニングおよび治療により、RA患者の心血管疾患の負担が抑制される可能性があることを示唆している。 |
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マインドフルネス・ストレス低減法はPTSD症状の重症度を軽減させる [2015-08-11] |
Mindfulness-based stress reduction therapy decreases PTSD symptom severity |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)を有する退役軍人を対象としたランダム化トライアルにおいて、マインドフルネス・ストレス低減法を受けた者は自己申告によるPTSD症状重症度の改善度が大であった(平均改善度は軽度であったが)、とのスタディ結果がJAMAに掲載された。研究者らは、PTSDを有する米国退役軍人116人を9セッションのマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)(批判せず、受容しながら今現在に向き合うように指導する介入、58人)または現在に中心を置くpresent-centeredグループ療法(現在の生活における問題に焦点を当てた9回にわたる週1回のグループセッションから成るアクティブコントロール群、58人)にランダムに割り付けた。MBSR群の参加者は、2か月後の追跡調査時点における自己申告のPTSD症状重症度が臨床的に有意に改善する率が高かった(49%に対しpresent-centeredグループ療法では28%)が、PTSDの診断消失率は治療後(42%対44%)および2か月後の追跡調査の時点(53%対47%)において差がなかった。ある共同編集者は、このスタディの結果は有望なものではあるが、今回は追跡期間が短期であったことから、MBSRの効果が長期に持続するかの疑問が残ると指摘している。さらなるMBSRおよび他のマインドフルネスの介入に関するスタディが必要である。 |
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コリンエステラーゼ阻害薬を内服した高齢認知症患者において有害な体重減少のリスクが生じる [2015-08-11] |
Risk of harmful weight loss rises for older patients with dementia who take cholinesterase inhibitors |
認知症治療に一般的に使用される薬剤が有害な体重減少を引き起こし得るとのスタディ結果が、Journal of the American Geriatrics Society 8月号オンライン版に掲載された。研究者らは認知症と診断され新たにコリンエステラーゼ阻害薬または他の新たな薬剤の慢性投与を処方された患者(65歳以上)を評価した。一次エンドポイントは、医師が気付き、その原因や治療の可能性を考慮すると思われる12か月間で10ポンドの体重減少時期の測定であった。コリンエステラーゼ阻害薬を開始された患者計1,188人が他の薬剤を開始された患者2,189人とマッチさせられた。12か月後、78%が依然としてコリンエステラーゼ阻害薬を内服しており、それに対し他の薬剤の内服を継続していたのは66%であった。コリンエステラーゼ阻害薬内服患者の約29.3%において有意に体重が減少し、非内服者におけるその割合は22.8%であった。したがって、コリンエステラーゼ阻害薬を開始された患者はマッチさせたコントロールに比べ、12か月間の臨床的に有意な体重減少のリスクが高かった。特に、コリンエステラーゼ阻害薬で治療された患者21人当たり1人が10ポンド以上の体重減少を来した。医師はこの薬剤を高齢者に処方する際にはこのリスクを考慮すべきである。 |
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アルツハイマー病におけるタウ蛋白およびアミロイドを標的とする新薬はパーキンソン病やレビー小体型認知症における蛋白も認識する [2015-08-04] |
New drugs that target tau and amyloid in Alzheimer's disease also recognize proteins in Parkinson's and Lewy body dementia |
認知症を引き起こす複数の脳疾患―アルツハイマー病、パーキンソン病、およびレビー小体型認知症など―に共通の成分を標的とする新薬の有望な早期結果が2015年Alzheimer's Association International Conference® で報告された。研究者らは、アルツハイマー病におけるアミロイドおよびタウ蛋白の両者およびプリオン病の蛋白にも反応することが示された、あるクラスのモノクローナル抗体の働きについて調査した。その抗体の様々な型のα-シヌクレインに対する効果を確立するため、研究者らはα-シヌクレイン蛋白の凝集体、オリゴマーα-シヌクレイン蛋白、脳組織に蓄積することが知られている高密度線維形成を作り出した。その後、その抗体が各々のα-シヌクレインとどのように相互作用するかを調べた。研究室由来の3つの型のモノクローナル抗体が用いられ、それぞれがアミロイドおよびタウ蛋白に結合しさらに動物の脳組織へのアルツハイマー様損傷から回復させた。彼らは、3つのモノクローナル抗体全てがオリゴマーα-シヌクレインに結合するが、α-シヌクレイン単量体には結合しないことを発見した。その後、α-シヌクレインに対する抗体の親和性が、パーキンソン病患者から得られたヒト脳組織検体を用いた神経内構造と関連することを確認した。彼らは、ヒト神経変性疾患に対する臨床試験の前段階として、他の動物モデルで試験することを計画している。 |
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運動はアルツハイマー病および血管性認知症の治療に有効である可能性がある [2015-08-04] |
Physical exercise may be an effective treatment for Alzheimer's disease and vascular dementia |
2015年AAICで報告された3つの新たな研究の結果、アルツハイマー病および他の認知症患者に対する中等度から高強度の有酸素運動の価値が示され、このタイプの運動は患者がこの疾患を抱えながらより良い人生を送るのに役立つ可能性があることが明らかにされた。アルツハイマー病患者200人(50〜90歳)を対象とした1つのスタディでは、4か月間の高強度有酸素運動プログラムを終了した者は、不安やいらだち、うつなどの精神症状が少なかったことが示された。最も高強度の運動をした者においては、頭の回転の速さや注意力においても改善した。軽度認知障害を有する、あまり運動をしない65人(55〜89歳)において、中等度から高強度の有酸素運動を行った2つ目のスタディでは、運動が脳脊髄液内タウ蛋白レベルを低下させ、脳の記憶および処理中枢の血流を増加させる可能性があることが示された。この有酸素運動プログラムは注意力、計画および組織力を改善するようである。血管性認知障害を有する成人71人(56〜96歳)を対象とした最後のスタディでは、監視下有酸素運動プログラムへの参加により記憶および注意力が改善することが示された。これら3つのスタディは、アルツハイマー病や他の認知症に対し非薬物療法が有用である可能性を強調しており、アルツハイマー病の治療や予防において複数の方法を追求すべきであることを気付かせてくれる。 |
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