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1型糖尿病患者は加齢に伴い認知症リスクが約2倍になる [2015-07-28] |
Patients with type 1 diabetes face nearly double the risk for dementia as they age |
高齢1型糖尿病(T1D)患者における、アルツハイマー病を含む認知症リスクに関する初めてのスタディが2015年Alzheimer's Association International Conference®で報告された。このスタディにおいて、T1D患者は糖尿病を有さない者と比べ認知症を発症する割合が93%(心血管リスクファクターで補正後73%)高かった。研究者らは、認知症歴のない60歳以上490,344人の既往歴を調査し、新たな認知症診断例を追跡した。解析では、T1D群(334人)を2つのコントロール群(1つは2型糖尿病[T2D]を有し、他の1つは糖尿病を有さない)と、性別、人種、脳卒中、末梢動脈疾患および高血圧を考慮に入れ比較した。その結果、スタディ対象T1D患者の16%が追跡期間中に認知症と診断され、T1Dでない者はその割合が12%であった。つまり、スタディ対象T1D患者はT1Dを有さない者に比べ認知症を発症する割合が83%高かった;脳卒中、末梢動脈疾患および高血圧で補正後は61%高かった。認知症リスクに関するT1Dの影響度は、コントロール群からT2Dを有する者を除外することで増大した(リスクが93%上昇;心血管系リスクファクターで補正後73%に上昇)。 |
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小児期の学業成績および1型糖尿病がアルツハイマー病および認知症のリスクファクターとして同定された [2015-07-28] |
Childhood school performance and type 1 diabetes identified as risk factors for Alzheimer's disease and dementia |
2015年Alzheimer's Association International Conference®で発表された2つのスタディから、小児期の学業成績と後年の認知症との関連が示唆された。研究者らは、7,574人(65歳以上、認知症950人)を20年以上追跡し、新規発症認知症例を検出した。従来の認知予備能計測値に加え、小児期の認知能力−10歳前後の学業成績−のデータを収集した。この対象において、小児期の成績が最下位から20%の者において認知症リスクが21%高かった。データや数を扱う複雑度の高い仕事に就いている者の間では認知症リスクは23%低かった。小児期の学業成績が優秀でデータを扱う複雑な職業に就いている群で認知症リスクが最も低かった(39%低下)。高度に複雑な職業に就くことで小児期の学業成績が不良であることを補うことはできなかった。これらの結果は、小児期の成績が最下位から20%以内であった75歳超の者においては、たとえ正式な教育を受けたり著しく複雑度の高い仕事に就いたとしても認知症リスクが50%以上高かったことを示した本学会の小規模スタディによって確証された。中等教育を修了した者は初等教育のみ修了した者に比べ、認知症リスクは28%低かった。 |
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糖尿病および高血糖は認知機能や意思決定能力に対し慢性的に好ましくない影響を及ぼす [2015-07-21] |
Diabetes and high blood sugar impose a chronic negative effect on cognitive and decision-making skills |
わずか2年の間に、2型糖尿病患者は脳血流調整能に好ましくない変化を来し、それが認知機能検査スコアの低下および日常生活活動能力の低下と関連した、との新たなスタディ結果がNeurology®オンライン版2015年7月8日号に掲載された。スタディは40人(平均年齢66歳)を対象とした。そのうち19人は2型糖尿病を有し、21人は糖尿病を有していなかった。学習および記憶検査のスコアは糖尿病患者において2年間に12%低下し(46点から41点)、一方糖尿病を有していない人々では不変(55点)であった。脳のMRIスキャンで観察した脳血流は、糖尿病患者において65%低下していた。スタディ開始時点で血流調整能が低い人々は、入浴や調理などの日常生活活動遂行の計測値低下が大であった。炎症レベルが高いと、たとえ糖尿病や血圧コントロールが良好であっても血流調節能低下度が大きかった。 |
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糖尿病患者において合併症率が高いことは認知症リスクの予測因子となる [2015-07-21] |
Higher rates of complications predicts risk of dementia in people with diabetes |
糖尿病を有し合併症の割合が高い者は、合併症が少ない者と比べ、年齢とともに認知症を発症する割合が高いとの新たなスタディ結果が、内分泌学会誌Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism に掲載された。12年間の長期住民ベースコホートスタディは、Taiwan National Health Insurance Research Databaseの記録を1999年まで遡り、51歳以上で新たに糖尿病と診断された431,178人を同定した。研究者らは記録をレビューし、コホートのうち糖尿病の診断後に認知症により入院したかまたは外来を3回以上受診した患者の人数を調査した。各患者の糖尿病の進行度を評価するために研究者らは、糖尿病患者の死亡や入院を予測するのに用いられる改訂版Diabetes Complications Severity Index(DCSI)を使用した。コホートにおいて26,856人、つまり6.2%が認知症と診断された。認知症発症リスクは、DCSIが高値の人々において低値の人々に比べ高かった;新規発症糖尿病患者において、DCSIの早期変化は認知症リスクの予測因子であった。 |
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不眠に対する認知行動療法は精神疾患および内科的疾患を有する患者において有効である [2015-07-14] |
Cognitive behavioral therapy for insomnia can work for patients with psychiatric and medical conditions |
過去の研究から不眠症に対する認知行動療法は睡眠を改善し得ることが示されているが、多くのスタディでは既存の精神疾患および内科的疾患を併存する者を除外している。ある新たな解析の結果、不眠に対する認知行動療法は不眠が精神疾患および内科的疾患と併存している患者に対しても有効であり得ることが示唆された、とJAMA Internal Medicine オンライン版に掲載された。研究者らは医学論文をレビューし、精神疾患(アルコール依存症、うつ病および心的外傷後ストレス障害など)および/または内科的疾患(慢性疼痛、がん、および線維筋痛症など)を有する患者における不眠に対する認知行動療法の有効性を調査した。最終的な解析において、37スタディの2,189人のデータが含まれた。治療後評価において不眠に対し認知行動療法を受けた患者においては、コントロール群つまり比較群の患者と比べ、不眠が寛解した患者の割合が2倍であった。この治療はまた併存疾患の転帰に対しても好ましい効果を与えたが、症状改善の程度は併存疾患のタイプにより決定された。解析の結果、精神疾患を有する者は内科的疾患を有する者よりも変化が大きかった。 |
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中年期におけるカギとなるバイオマーカーの変化は後に認知症を発症する者を同定するのに役立つ可能性がある [2015-07-14] |
Changes in key biomarkers during midlife may help identify those who will develop dementia years later |
健常成人の脳スキャンおよび脳脊髄液を調査した結果、中年期のアルツハイマー病バイオマーカーの変化は後に認知症を発症する者を同定するのに役立つ可能性がある、との研究結果がJAMA Neurologyに掲載された。スタディでは、10年にわたり収集したスタディ組み入れ時認知機能の正常な45〜75歳の参加者169人のデータに焦点を当てた。初期評価の時点で、研究者らは参加者を3つの年代群(早期中年[45〜54];中期中年[55〜64];および後期中年[65〜74])に分類した。各患者は3年毎に徹底的な臨床的、認知画像検査および脳脊髄液バイオマーカー解析を施行された。その結果、認知機能の正常な45〜54歳において脳脊髄液中のアミロイドβ42レベルが低下していることは、その後数年の脳スキャンにおいてプラークが発現することと関連があった。また、タウおよび他の脳細胞障害バイオマーカーは一部の対象者において50代半ばから70代半ばに達した時に急激に増加し、YKL-40は今回のスタディで焦点を当てた年代群を通して上昇していた。これらの変化全てが、アルツハイマー病のリスクを有意に上昇させる遺伝子の1型であるAPOE保有者で著明であった。 |
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再発性うつ病は脳の海馬領域を小さくするようである [2015-07-07] |
Recurrent depression appears to make the hippocampus region of the brain smaller |
再発性うつ病を有する人々の脳は海馬―新たな記憶を形成するのに最も関連のある脳部位―が健常人のものより有意に小さいとの新たなグローバルスタディがMolecular Psychiatry に掲載された。大うつ病患者1,728人および健常人7,199人の磁気共鳴画像(MRI)脳スキャンおよび臨床データを用いて、スタディではヨーロッパ、米国およびオーストラリアの15のデータセットを組み合わせた。再発性うつ病患者はスタディ対象である大うつ病患者の65%を占めた。若年発症大うつ病(21歳以前)の人々もまた健常人より海馬が小さく、これら若年患者の多くが再発性うつ病に移行するとの見解に一致した。しかし、大うつ病初回エピソードの患者(スタディ対象の大うつ病患者の34%)は健常人と比べ海馬は小さくなかったが、この変化は再発性うつ病の脳に対する悪影響によるものであることが示唆された。このスタディは、特に10代や若年成人の間で初回うつ病が発症した場合、それを検出し治療を行い再発性うつ病に伴う脳変化を予防することの必要性を強調している。 |
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記憶および思考検査の低スコアは予想以上に早期のアルツハイマー病のシグナルである可能性がある [2015-07-07] |
Low scores on memory and thinking tests may signal Alzheimer's disease earlier than thought |
記憶や思考検査における間違いはアルツハイマー病の診断より18年も前に疾患の予兆である可能性があるとのスタディ結果がNeurology® オンライン版2015年6月24日号に掲載された。スタディでは、アルツハイマー病を有していないシカゴ出身のヨーロッパ系米国人およびアフリカ系米国人2,125人(平均年齢73歳)が記憶および思考能力の検査を3年毎、18年間にわたり施行された。アフリカ系米国人の23%およびヨーロッパ系米国人の17%が、スタディ期間中にアルツハイマー病を発症した。記憶や思考検査において全般的に低スコアであった者は、アルツハイマー病発症リスクが高かった。スタディの最初の年に、検査が低スコアであった者は高スコアであった者よりもアルツハイマー病と診断される確率が約10倍高く、スコアが平均より標準偏差1低下する毎に比率が10増加した。最終評価の13〜18年前に施行された検査によると、標準認知機能検査スコアが1単位低いと将来の認知症リスクが85%高かった(相対リスク1.85)。 |
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