アルツハイマー病と心血管リスクファクターの間に遺伝子のオーバーラップが発見された [2015-04-28]
Genetic overlap found between Alzheimer's disease and cardiovascular risk factors

Circulationに掲載されたスタディの結果、アルツハイマー病(AD)と2つの有意な心血管疾患リスクファクター(C反応性蛋白[CRP]と血中脂質の高値)との間に遺伝子のオーバーラップがあることが明らかにされた。研究者らは、臨床的に診断されたADと関連する一塩基多型(SNPs)とCRPおよび総コレステロールの3つの構成因子:高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)および中性脂肪(TG)との遺伝子のオーバーラップを調査するため計200,000人超を対象としたゲノムワイド関連スタディの簡易統計を用いた。その結果、CRP、LDL、HDLおよびTGとの異なるレベルでの関連において、最大50倍のAD SNPs増加が認められ、さらにこれはADリスク上昇と関連する55のDNA lociの同定に繋がった。研究者らは次にこれらの55の亜型のメタ解析を、約145,000人のADおよび健康人を含む4つの独立したADスタディコホートについて行い、染色体4および10上の2つのゲノム全域にわたる有意な亜型を示した。この2つの同定された遺伝子−HS3ST1およびECHDC3-はこれまでADリスクと関連付けられていなかった。この結果から、2つの心血管フェノタイプがADリスクにおいて役割を果たしており、疾患進行抑制への新たな道筋となる可能性のあることが示唆された。

親に対するトレーニングプログラムは自閉症児の破壊的行動軽減に役立つ [2015-04-28]
Parent training program helps reduce disruptive behavior of children with autism

自閉症スペクトラム障害(ASD)児の破壊的行動を管理する特殊な技術を提供する24週間の親に対するトレーニングプログラムにより、親への教育と比較し、破壊的および不従順行動が大きく軽減したとのスタディ結果がJAMAに掲載された。研究者らは、ASDを有する小児(3〜7歳)を親のトレーニング群(89人)または親の教育(91人)群にランダムに割り付けるスタディを行った。親が評価した破壊的および不従順行動計測値において、親へのトレーニングは親への教育と比較し、2つの尺度において大きく軽減を認めた:Aberrant Behavior Checklist-Irritabilityサブスケールにおける低下率が48%対32%、およびHome Situations Questionnaire-Autism Spectrum Disorderにおける低下が55%対34%であった。両治療群ともに経時的に改善したが、いずれの計測値も事前に特定した最小の臨床的に重要な差には合致しなかった。群間差が期待したより小さかったことに対する一つの可能性のある説明は、親への教育群における改善が予想したより大きかったことであろうと筆者ら述べている。全体的な改善の計測値において、親へのトレーニングは親への教育よりも優れていた(69%対40%)。

注意欠如・多動性障害の診断は標高が上昇するに従って減少する [2015-04-21]
Diagnosis of attention deficit hyperactivity disorder decreases as altitude increases

最近の研究から、高地の希薄な空気とうつ病や自殺増加とが関連付けられた。しかし、Journal of Attention Disordersに掲載された新たなスタディは、高地における良いことも示している:注意欠如・多動性障害(ADHD)は標高が高いほど実質的に減少する。研究者らは、米国の平均標高とADHD診断症例数との相関を観察しADHD率を判定した。その結果、標高が1 foot上昇する毎に医療機関でADHDと診断される確率は0.001%低下することが明らかになった。例えば、North Carolina(平均標高869フィート)では、ADHDと診断される割合が最も高かった(15.6%)。Nevada(平均標高5517フィート)では5.6%と、最も割合が低かった。ADHDと診断される小児の割合は山岳州において平均よりもかなり低かった。このADHD率低下の原因としてひとつの可能性は、低圧低酸素への反応としてドーパミンが産生されその値が高いことである。ドーパミンレベル低下はADHDと関連があり、したがって高度上昇に伴いこのホルモンレベルが上昇するとADHDのリスクは徐々に低下する。

高齢期に様々な社会的および創造的な活動に従事することは認知機能を維持するようである [2015-04-21]
Engaging in various social and creative activities appears to maintain cognition in old age

中年期および高齢期に美術や工芸活動に参加する人々は、高齢時の認知症につながりやすい思考や記憶障害の発症を遅延させる可能性がある、とのスタディ結果がNeurology®オンライン版に掲載された。スタディには、スタディ開始時に思考や記憶障害を有さない256人(平均年齢87歳)を組み入れた。参加者は、絵画やスケッチなどの美術;木工、陶芸、裁縫などの手工芸;映画鑑賞、人付き合い、聖書研究、旅行などの社会活動;およびインターネット使用、コンピュータゲーム、オンライン購入などのコンピュータによる活動について報告した。平均4年後に、121人が軽度認知機能障害(MCI)を発症した。中年期および高齢期に美術活動に従事した者はそうでなかった者に比べMCIを発症する確率が73%低かった。手工芸を行っていた者はMCI発症率が45%低く、社交的であった者はMCI発症率が55%低かった。コンピュータを使用することによるMCIリスクの低下は53%であった。

統合失調症様行動および脳変化の分子トリガーが発見された [2015-04-14]
Scientists find molecular trigger of schizophrenia-like behaviors and brain changes

統合失調症様行動、脳変化および網羅的遺伝子発現を引き起こすある脳内分子が動物モデルにおいて同定されたとの研究結果がTranslational Psychiatryに掲載された。出産前出血、低酸素または妊娠中の母親の栄養不良などの妊娠中および出産時の合併症と精神疾患との間には強力な関連性がある。今回の新たなスタディにおいて、研究者らはある特定の既知のリスクファクター:胎児脳出血について調査した。特に彼らは、出血時に産生されるリゾホスファチジン酸(LPA)の役割を調査した。過去のスタディから、LPAシグナリング上昇と胎児脳の構造変化および水頭症の始まりが関連付けられている。これらのタイプの事象はいずれも精神障害リスクも上昇させ得る。彼らは、LPA含有血清またはLPAのみを投与されたメスのマウスは刺激に対し過剰反応を見せ、不安を示しドパミン産生ニューロン数が増加することを明らかにした―これらは全て統合失調症や他の精神疾患に特徴的である。LPAの役割をさらに調査するため、研究者らはある分子を用いて脳内のLPAシグナリングのみを遮断した。この治療は統合失調症様症状を予防した。この研究は、いつか精神疾患を予防し治療するであろう新たな手段を提供している。

一般に処方されている抗うつ薬が動物モデルにおいて冠動脈アテローム性硬化症を増加させた [2015-04-14]
Commonly prescribed antidepressant increased coronary atherosclerosis in animal model

一般に処方されている抗うつ薬がヒト以外の霊長類の冠動脈内アテローム性プラークを最大6倍増加させた、とのスタディ結果がPsychosomatic Medicineオンライン最新版に掲載された。このスタディにおいて、中年の雌ザル42匹が脂肪やコレステロールを含む西欧風の食事を18か月与えられた。この前治療相で、動物のうつ行動が記録された。その後サルらは、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)のセルトラリンまたはプラセボを1日1回18か月投与される群に無作為に割り付けられた。投与された抗うつ薬用量は患者に投与されるものに匹敵した。SSRIを投与されたサルはプラセボを投与されたサルと比較し、冠動脈内動脈硬化量が3倍になった。うつ状態の動物においてはこの量はさらに多かった―SSRIを投与されたサルではプラセボ投与のサルの約6倍多かった。これらの結果から、この薬剤を用いた長期治療はヒト以外の霊長類において冠動脈内動脈硬化を促進することが示唆された。筆者らは、さらなる研究が必要であるが、医師は抗うつ薬を処方する際にこれらの結果を肝に銘じておいたほうがよい、と述べている。

驚くべきセロトニン供給源が抗うつ薬活性に影響し得る [2015-04-07]
Surprising source of serotonin could affect antidepressant activity

抗うつ薬が作用するメカニズムにおいて重要な役割を果たし得るセロトニンの神経からの特殊な放出の仕方が発見された、とのスタディ結果がJournal of General Physiology 4月号に掲載された。ニューロン間のシグナルを伝達する他の神経伝達物質のようにセロトニンは、1つのニューロンのシナプス前終末内小胞に貯留されておりニューロン発火に反応しシナプス内に放出され、シナプス後ニューロン上の受容体に結合する。セロトニンシグナリングの不均衡は一般的にうつ病の一翼を担っていると考えられている。SSRIs―セロトニンシグナリングを増強させることを目的とする―は、実は最初は治療過程を遅延させる可能性がある。今回研究者らは、自己抑制をもたらすセロトニンはある異なる過程を通して細胞外空間に放出されるようであることを明らかにした。神経発火に反応して小胞から放出される(エキソサイトーシスとして知られる過程において)のではなく、このセロトニンの貯蔵は細胞膜内の単純な拡散により供給される可能性がある。この過程を十分に理解することにより、うつ病治療目的のより良いセロトニンシグナル調節法の情報が得られる可能性がある、と研究者らは確信している。

大規模縦断的スタディから退役軍人におけるPTSDと心疾患との関連が報告された [2015-04-07]
Large-scale longitudinal study reports an association between PTSD and incident heart failure in veterans

心的外傷後ストレス障害(PTSD)を有する退役軍人は、PTSDを有さない対照と比較し、心不全発症リスクが約50%高い、との研究結果がAmerican Journal of Public Health 2015年4月号に掲載された。このスタディは、外来患者として通院した米国退役軍人8,248人を観察し、平均7年余り追跡したものである。スタディ群全体のうち約21%がPTSDと診断された。スタディ期間中の心不全371例中287例はPTSDを有する者から発症し、一方PTSDを有さない者からはわずか84例の発症であった。したがって、PTSDと診断された者は今回の追跡期間中の心不全発症率が47%高かった。研究者らは健康状態および背景における群間差を補正した。戦闘支援は、PTSDの診断に結びつくか否かに関係なく、それ自体が心不全の強力な予測因子であった。戦闘の経験を有する退役軍人はこの経験を有さない退役軍人よりもスタディ期間中に心不全を発症する確率が5倍高かった。心不全の他の予測因子は高齢、糖尿病、高血圧、および過体重または肥満であった。