抗うつ薬は中等度から重度のうつ病を有する患者の心血管リスクを低下させる [2015-03-17]
Antidepressants reduce cardiovascular risk among people with moderately to severely depressive symptoms

うつ病のスクリーニングと治療は、中等度から重度のうつ病を有する患者における心疾患リスクを低下させるのに役立つ可能性がある、との研究結果が第64回American College of Cardiology学会で発表された。研究者らは3年にわたり、26,000人超の患者のカルテおよび死亡率、ならびに冠動脈疾患および脳卒中について解析を行った。患者はうつ病スクリーニングに関する9つの質問に回答し、気分、睡眠、食欲などの要因が彼らのうつ症状の程度を測定するために評価された。中等度から重度のうつ病を有し抗うつ薬の単独投与患者は、中等度から重度のうつ病を有していたが抗うつ薬もスタチンも非投与の患者と比べ、3年間の追跡期間中の死亡、冠動脈疾患発症または脳卒中のリスクが53%低下した。中等度から重度のうつ病を有し抗うつ薬の単独投与患者はまた、スタチン単独またはスタチンと抗うつ薬併用投与患者に比べ、経過がよかった。これは、様々なレベルのうつ症状を有する患者を対象に抗うつ薬とコレステロール低下薬併用による相対的効果を評価した、初めてのスタディである。

自然免疫の遺伝子ネットワークは心的外傷後ストレス障害のリスクと関連がある [2015-03-17]
Gene networks for innate immunity linked to risk for posttraumatic stress disorder

研究者らにより、血液検体から得られた心的外傷後ストレス障害(PTSD)と関連する遺伝子マーカーが同定された。このマーカーは自然免疫機能およびインターフェロンシグナリングを調節する遺伝子ネットワークと関連する。PTSDに関する過去のゲノムスタディは、コントロール群を置きPTSDのある人の間で遺伝子発現の差を見極めることに焦点を置いていた。今回の新たなスタディは、ホールトランスクリプトームRNAシークエンシングを用いた、より広範囲な"システムレベルの方法"をとっている。研究者らは、米国海兵隊員188人が紛争地域へ配置される前後に採取された血液検体を解析した。彼らは、自然免疫応答―病原体に対する生体防御の最前線―およびPTSDにも関連するインターフェロンシグナリングに関わり同時制御される遺伝子モジュールを同定した。自然免疫とインターフェロンシグナリングの分子署名は、PTSD発症後ばかりでなくPTSD発症前にも認められた。この結果は2つ目の完全に別の米国海兵隊員96人のグループにおいても再現された。これらの結果は、PTSDの人々の診断や治療を改善するのみならずPTSDに罹患しやすい人を予測する新たな方法となる可能性がある、と筆者らは述べている。この結果はMolecular Psychiatryに掲載された。

心機能が低下した人々は時間経過とともに有意な記憶障害を発症しやすい [2015-03-10]
People with poor heart function more likely to develop significant memory loss over time

心係数で計測した心機能の低下は時間経過とともに有意な記憶障害の発症率と関連がある、との研究結果がCirculation に掲載された。研究者らはFramingham Heart Studyのデータを用い、Framingham's Offspring Cohort参加者1,039人を最長11年追跡し、心係数と認知症発症とを比較した。スタディ期間中に32人が認知症を発症し、うち26人はアルツハイマー病であった。心係数が正常の者と比較し、臨床的に心係数が低い者は認知症の相対リスクが高かった。心疾患や他の心血管疾患を有する者を除外すると、驚くことに認知症やアルツハイマー病リスクはさらに増加した。心係数が低いことと認知症発症との間に認められたリスクは、わずかではあるが何十年もかけて発現する過程―基本的に脳への酸素や栄養の受け渡しの実質的な低下による生涯にわたる負荷―を反映している可能性がある、と筆者らは述べている。このスタディ対象の3人に1人が低い心係数の基準に合致したとの観察結果からこの可能性が懸念されている。

僧帽弁逆流患者において僧帽弁修復術は感情の安寧を有意に改善する [2015-03-10]
Mitral valve repair significantly improves emotional wellbeing in patients with mitral regurgitation

重度の僧帽弁逆流(MR)患者は、うつや不安などの精神情動的症状を有することが多いが、僧帽弁修復術後に感情および身体的健康感の著明な改善を経験する、とThe Annals of Thoracic Surgery 3月号に掲載された。先行研究から、重度MR患者の4人に1人は精神—情動状態(PES)が不良であり、不安が増大し、心的外傷性ストレスレベルであることが示されている。研究者らは、131人の患者においてMR術前および術後6か月に質問ベースの解析を行い、PESおよび健康関連のQOLを評価した。結果は手術を施行されなかったMR患者62人およびコントロール患者36人のものと比較された。6か月後の追跡調査の時点で、精神情動的症状およびQOLの計測値は、僧帽弁修復術を施行された患者において改善しコントロール群で観察されたレベルにまで正常化していた;しかし手術を施行されなかったMR患者においてこれらの症状の改善は認められなかった。他の重要な所見は、術前に呼吸困難や倦怠感などの身体症状を何も有さなかった"無症状"のMR患者であっても、精神情動的症状が増加していたことである。これらの無症状の患者もまた、外科的修復後に改善し精神情動的状態がより良好となり正常化した。

電話によるピアサポートは産後うつの悪影響予防に役立つ [2015-03-03]
Telephone-based peer support helps prevent adverse effects of postpartum depression

電話によるピアサポートは産後うつの軽減に役立ち、同輩による社会的サポートは出産後2年までの母親のうつ病に有効である、との研究結果がJournal of Advanced Nursingに掲載された。研究者らは出産後2年までのうつ病の母親64人を組み入れた。産後うつから回復したボランティアの産後女性がピアサポートの訓練を受け、平均9回のサポートの電話をかけた。母親の平均年齢は26歳であり、77%は妊娠前からうつ症状を訴えており、57%は妊娠合併症を有していた。出産後から抗うつ薬を内服していた女性は16人(35%)であった。スタディ開始時、全ての母親が中等度のうつ症状を有していたが、電話によるサポート後の中間点には8.1%(3/37)に低下したが、スタディ終了時には11.8%(4/34)に上昇し、いくらかの再発が示唆された。同輩からのこの中立的なサポートはしばしば精神疾患に関連するスティグマを克服するのに役立つと思われる、と筆者らは結論付けている。また、看護師はうつ病のリスクファクター、治療の障壁および精神疾患のスティグマに関する理解を深め、うつ病の母親が必要とするケアを受けるのに役立つ介入法を開発することにより、よりよい援助ができる、と提言している。

軽度認知障害の人々において糖尿病と精神症状は認知症リスクの予測因子となる [2015-03-03]
Diabetes and psychiatric symptoms predict dementia risk in people with mild cognitive impairment

軽度認知障害(MCI)の人々は糖尿病またはうつ病のような精神症状を有していると認知症発症リスクが高い、との研究結果がAmerican Journal of Psychiatryに掲載された。研究者らは62の別々のスタディのデータを解析し、MCIと診断された計15,950人を追跡した。その結果、MCIの人々のうち糖尿病を有する者は認知症を発症する率が65%高く、精神症状を有する者はその率が2倍以上高かった。この論文の背景によると、MCIは65歳以上の19%に認められ、MCIの約46%が3年以内に認知症を発症するのに対し、一般集団におけるその割合は3%である。精神と身体の健康には強力な関連があることから、食事や心的状態を改善するために生活習慣を改めることはMCIが認知症に移行するのを回避するのに役立つ、と筆者らは説明している。また、このことが糖尿病、精神症状及び食事への取り組みによりその人のリスクが低下することを必ずしも意味するわけではないが、このレビューは役立つ可能性のある最良のエビデンスを提供している、と強調している。