血中循環腫瘍DNAの調査は肝がんの個別化医療に役立つ可能性がある [2015-11-10]
Studying circulating tumor DNA in blood may help personalize treatment in liver cancer

患者の血流内を循環するがんDNAフラグメントは医師がより個別化した肝がん医療を提供するのに役立つ可能性がある、と日本人研究者らがCellular and Molecular Gastroenterology and Hepatologyに報告した。近年のスタディから、循環腫瘍DNA(ctDNA)は種々のがんにおいて有用なバイオマーカーとなる可能性があることが示唆されている。研究者らは、肝細胞がん(HCC)患者46人の血清内ctDNAを検出できるかどうかを調査した。その結果、7人の患者においてctDNAが検出された。これらの患者は他の患者より肝細胞がん再発および遠隔転移を有する割合が高かった。さらに、ctDNA値はHCC進行や治療と相関があった。ctDNAはがんが行う遺伝子再構成を調査する非侵襲的方法となる可能性がある、と筆者らは述べている。また、医師はがんの進行を安全に調べたり患者の腫瘍の遺伝子的特性を特徴付ける非侵襲的方法を必要としている、と指摘している。現在行われている生検の重篤なリスクの1つは、解析のために腫瘍サンプルを得ようとすることでがんを臓器周辺空間に撒き散らす可能性があることである。循環DNAフラグメントの検査は、これらの目的を果たす上で従来の肝生検よりも簡便で安全な方法となり得る。

乳がんの術後補助療法の相対的有益性は術後のそれぞれの時点において変化する [2015-11-10]
Relative benefits of adjuvant therapy for breast cancer varies at specific points of time after surgery

乳がん手術後、患者はがん再発リスク軽減目的で化学療法やホルモン製剤による術後補助療法を処方される。これまでこれらの療法の治療効果は時間が経っても変化しないと思われてきたが、Journal of the National Cancer Instituteに掲載された新たなスタディによると、そうではないことが示唆されている。研究者らは、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)の19の乳がん術後補助療法臨床試験を調査した。療法は、スタディ参加者の再発および死亡抑制割合で定義した相対的有益性で評価された。その結果、約半数(19のうち9)のトライアルにおいて術後補助療法の効果が時間依存性に作用することが明らかになった。いくつかのトライアルでは、術後のある特定の時点において有益性が低下した。他のトライアルでは、早期の有益性はなかったが、術後1年以上経過してからの有益性が認められた。ある臨床試験においては、ある治療法が初期の有益性を示したが、それに引き続き患者にとって不利益が生じた。この結果は、臨床腫瘍医が患者に対して受けている治療の効果を説明する方法を変化させる可能性がある。

マンモグラフィーによる高悪性度非浸潤性乳管がん検出率は加齢に伴い上昇する [2015-11-02]
Mammography detection rate of high-grade ductal carcinoma in situ rises with age

早期ではあるが浸潤性の可能性のある乳がんのマンモグラフィー検出率は加齢に伴い上昇する、とのドイツの新たな大規模スタディがRadiologyオンライン版に掲載された。今回のレトロスペクティブスタディにおいて研究者らは、初回のスクリーニングプログラムに参加した50〜69歳の女性733,905人を年代別に5グループに分類した。その後、高悪性度、中等度悪性度、低悪性度別の非浸潤性乳管がん(DCIS)検出率を測定した。733,905人の女性のうち、989人(1.35%)が悪性度別DCISの診断を受け、うち419人は高悪性度、388人は中等度悪性度、182人は低悪性度であった。DCIS総検出率は加齢に伴い上昇し、大部分は高および中等度悪性度DCISによるものであった。この結果は、データに乏しい60歳超の女性集団における標準的なDCIS治療の有効性に関するさらなる研究の必要性を浮き彫りにしている、と筆者らは述べている。DCIS関連の過剰診断の可能性は、高悪性度DCISは再発や浸潤性がんに進行する割合が高いとの頑健なエビデンスとバランスを取るべきである。

異なるシグナリングパスウェイを標的とした薬剤の併用はBRAF阻害薬抵抗性腫瘍に相乗効果を有する [2015-11-02]
Combining drugs addressing different signaling pathways has synergistic effect in tumors resistant to BRAF inhibition

難治性がんの1つであるメラノーマに対し有効な可能性のある新たな併用療法が発見された。PLOS ONEオープンアクセスジャーナルに掲載された論文によると、この併用療法‐BRAF遺伝子の変異を標的とした薬剤と他の重要なシグナリングパスウェイを標的としたもう1つの薬剤の組み合わせ‐は、これまでに施行された抗がん剤併用療法の最大のスクリーニングを通して発見されたものである。このスタディでは特性が明らかにされた36のメラノーマ細胞株のリストを用いて、可能性のある100超の抗がん剤(3分の2は現在臨床で使用されている)全てを調査した。メラノーマ症例の約半数はBRAF遺伝子変異により引き起こされるため、研究チームはBRAF阻害薬ベムラフェニブに対する内因性耐性に対処し得る併用療法に焦点を当てた。その結果、血管新生に関わることが知られている蛋白群を標的とした治験薬cediranibとの併用はベムラフェニブ単剤療法に感受性のあった細胞株ではなく耐性を示した細胞株に対し相乗効果を有することが明らかになった。また2種類の耐性細胞株が移植された動物モデルにおいてもこの併用療法の試験を行ったところ、いずれの腫瘍モデルにおいても有意な相乗効果が認められた。