がん患者の静脈血栓塞栓症に対する治療としてのヘパリンとワルファリンの比較 [2015-08-25]
Study compares heparin to warfarin for treatment of venous thromboembolism in patients with cancer

活動性がんの患者および急性症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の患者において、低分子ヘパリンtinzaparinの6か月間毎日投与は、ワルファリンに比べVTE再発を有意に減少させず全死亡や大出血を軽減しなかったが、臨床的に明らかな小出血率は低かった。研究者らは活動性のがんを有し深部静脈血栓症または肺塞栓が明らかにされた成人患者900人を、1日1回のtinzaparin投与を6か月間施行する群とtinzaparinを5〜10日間投与後にワルファリンをINRが治療域になるよう用量調節して使用する従来療法の群にランダムに割り付けた。VTE再発はtinzaparin投与群449人中31人に、ワルファリン投与群451人中45人に発現した(6か月間の累積発現率はtinzaparin群7.2%に対しワルファリン群10.5%)。大出血や全死亡率に差はなかったが、tinzaparinは臨床的に明らかな小出血のリスクを有意に低下させた。Tinzaparinは、広範ながん患者において最大治療用量を最長6か月間施行しても安全である、と筆者らは結論付けた。このスタディ結果はJAMA 8月18日号に掲載された。

多重遺伝子パネル検査はBRCA1およびBRCA2陰性女性において卵巣がんリスクが高いことを明らかにした [2015-08-25]
Multigene panel testing reveals increased ovarian cancer risk in women negative for BRCA1 and BRCA2

BRCA1およびBRCA2陰性女性の多重遺伝子パネル検査の結果、これらの女性の一部は、通常中等度リスクの乳がんおよび卵巣がん遺伝子やLynch症候群遺伝子などの他の有害な遺伝子変異を有しており、これが卵巣がんリスクを上昇させるとJAMA Oncologyオンライン版に掲載された。重複遺伝子パネル検査は、乳/卵巣がんの遺伝的素質を評価する患者においてますます推奨されている。研究者らは、適切な検査を受けているがBRCA1およびBRCA2変異のない女性において何らかの臨床的措置を必要とする変異を多重遺伝子パネル検査が検出する頻度を判定しようとした。彼らは1,046人の女性を組み入れ、全対象者に対し重複遺伝子パネル検査を行った。対象女性のうち、BRCA1およびBRCA2陰性の3.8%(40人)が他の中等度リスク遺伝子内に有害遺伝子を有していた。筆者らはさらに、23人の女性をスタディの臨床管理解析に含めた。変異陽性女性63人の過半数(52%)が現病歴および家族歴に基づく検査のみでなくさらに疾患特異的スクリーニングおよび/または予防措置を考慮されることになった。変異陽性症例の大多数(92%)において、現病歴および/または家族歴に遺伝子変異に関連したがんが含まれた。

青年期の運動への参加はがんおよび全死亡リスク軽減と関連がある [2015-08-11]
Adolescent exercise participation associated with reduced risk of cancer and all-cause mortality

青年期に運動に参加した女性は、中年期および高齢期のがんによる死亡および全死亡リスクが低かった、とのスタディ結果がCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。研究者らは、40〜70歳の女性75,000人を対象とした大規模住民ベース前向きコホートスタディであるShanghai Women's Health Studyのデータを使用した。成人期における社会経済的因子で補正した結果、青年期に週1.33時間以下の運動をした女性はがんによる死亡リスクが16%低く、全死亡リスクが15%低かった。青年期に週1.33時間超運動した者は全死亡リスクが13%低かった。成人期の社会経済的因子で補正した結果、青年期にチームスポーツに参加した女性はがんによる死亡リスクが14%低く、全死亡リスクが10%低かった。青年期および成人後の両方において運動をした女性は、全死亡リスクが20%低かった。

Stage I-III乳がんにおける領域リンパ節照射は無病生存率を改善するが全生存率は改善しない [2015-08-11]
Irradiation of regional nodes in stage I – III breast cancer improves disease free survival but not overall survival

Stage I, IIおよびIII乳がん患者における領域リンパ節照射の全生存率に対する効果はわずかであるが、無病生存率、無遠隔転移生存率および乳がん死亡率は有意に改善したとのスタディの結果がNew England Journal of Medicineに掲載された。この第III相EORTC 22922-10925トライアルは、stage I, IIおよびIII乳がん患者における領域リンパ節照射(すなわち、内胸および内側鎖骨上リンパ節)の手術後全乳房または胸壁照射に対する上乗せ効果を評価した。追跡期間中央値10.9年の時点で、stage I, IIおよびIII乳がん患者の領域リンパ節照射の一次エンドポイントである全生存率に対する効果はわずかであった。10年後の全生存率は領域リンパ節照射群で82.3%であり、非照射群では80.7%であった(HR=0.87 [95%CI 0.76, 1.00]、 p=0.06)。しかし無遠隔転移生存率、無病生存率は臨床的に明らかに低下し、放射線照射の効果は領域コントロールに対する効果のみで測るべきではないことが示された。副作用は非常に限定的なものであったが、長期の放射線毒性は未だ不明である。

洗口液から採取したHPV16DNA検出は中咽頭がんサバイバーの長期腫瘍再発サーベイランスに有用である可能性がある [2015-08-04]
HPV16 DNA detection in oral rinses may be useful for long-term tumor surveillance of oropharyngeal cancer survivors

HPV関連中咽頭がん治療後の洗口液から採取したヒトパピローマウイルス(HPV)16DNAの持続感染は、まれではあるが予後不良と関連するようであり、したがって腫瘍サーベイランスに対する長期検査方法として有用な可能性がある、とJAMA Oncologyオンライン版に掲載された。スタディでは、新規のHPV関連中咽頭がん患者で、治療後1回以上の洗口液によるうがい液の検査を受けた124人を対象とした。その結果、診断の時点においてHPV16DNAが広く認められることが明らかにされた(参加者124人中67人)。しかし、治療後には6人の患者(5人は診断時に認められたHPV16DNA持続感染)に検出されたのみであった。まれではあるが、治療後の洗口液で検出された口腔内HPV16DNA持続感染は、無病生存期間および全生存期間が不良であることと関連があった。HPV16DNA持続感染であった5人の患者全てが再発し、3人は中咽頭がんで死亡した。それとは対照的に、口腔内HPV16DNA持続感染がなかった患者119人中、再発したのはわずか9人であった。このスタディの結果は口腔内HPV16DNA持続感染の頻度が低く死亡や再発の人数が少なかったことから限定的なものである、と筆者らは指摘している。

性交疼痛を有する乳がんサバイバーにおいてリドカイン外用が有益である可能性がある [2015-08-04]
Breast cancer survivors who experience dyspareunia may benefit from topical lidocaine

乳がん治療で一般的に見られる副作用である性交疼痛を有する乳がんサバイバーは、疼痛予防のために液状リドカインを塗布することにより痛みが緩和される可能性があるとの研究結果がJournal of Clinical Oncologyオンライン版に掲載された。研究者らは重度の性交疼痛を有するエストロゲン欠乏乳がんサバイバー46人に対し、分からないように2回のうち1回薬物を使用するようにした。対象者は生理食塩水または4%液体リドカインを受け取り、性交の3分前に膣前庭に塗布した。彼女らはまたシリコン潤滑剤も使用した。最初の平均疼痛スコアは1〜10のうち8であったが、リドカインとシリコン潤滑剤を使用した群においては疼痛レベルがかなり低く1〜10のうち1.0であったのに対し、生理食塩水と潤滑剤を使用した群では疼痛スケールにおいて5.3であった。リドカインを承知して2か月間使用したところ、当初は半数がそのような肉体関係を試みるのは苦痛であったが、2か月後にはスタディ参加者の90%が不快でないと報告した。性的苦痛もまた軽減し性的機能は改善した。しびれを報告したパートナーはいなかった。