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潰瘍を引き起こすバクテリア株を根絶することにより胃がんが予防できる可能性がある [2015-07-28] |
Eradicating the strain of bacteria that causes ulcers may help prevent stomach cancer |
Cochrane Libraryに掲載された新たなレビューの結果、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)−胃潰瘍を引き起こす主な原因−を、二種類の一般的に使用される薬剤を用いた短期治療で根絶することにより胃がんリスクが軽減する可能性があることが示唆された。研究者らは、無症候性H. pylori陽性以外は健常な成人における1週間以上のH. pylori治療とプラセボまたは無治療を比較した、公表された全てのランダム化コントロールトライアルを解析した。1つのスタディはColombiaで施行され、残りは胃がんの多いアジア諸国で行われ、うち4つは中国であり1つは日本であった。スタディでは主に抗生剤とプロトンポンプ阻害薬が併用された。スタディの解析の結果、抗生剤と酸分泌抑制療法の併用を1〜2週間施行することにより、プラセボまたは無治療に比べ胃がん発症を抑制することが示された:H. pylori治療を施行された者の51/3294(1.6%)が胃がんを発症したのに対し、無治療またはプラセボ群ではその割合は76/3203(2.4%)であった。しかし、このトライアルにおける胃がん死亡率は低く、H. pylori除菌が生存率を改善するかどうかを明らかにする十分なエビデンスは得られなかった。 |
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終末期転移がん患者における化学療法の有害の可能性 [2015-07-28] |
Potential harm of chemotherapy use in patients with end-stage metastatic disease |
終末期がん患者に対する化学療法は、まだ多くの生活機能を行う能力を有している患者に対し、終末期のQOLを悪化させる可能性があるとの論文がJAMA Oncologyオンライン版に掲載された。研究者らは化学療法施行と、歩行や勤労および自己管理能力などを遂行する能力をランク付けした患者のパフォーマンスステータスに応じて、終末期QOLとの関連を調査した。化学療法使用(スタディ登録時点で158人、50.6%に施行)とパフォーマンスステータスはベースライン時(死亡前期間中央値約4か月)に評価され、進行転移がんを有する患者312人が追跡された。患者の大部分は男性であり、平均年齢は58.6歳であった。化学療法は、遂行機能が中等度または低い患者において終末期QOLを改善しなかった。しかし、生活遂行能力が依然として良好である患者においては、化学療法を施行することにより行わないよりも終末期QOLは低下した。化学療法は患者のパフォーマンスステータスに関係なく有益でなかったのみならず、パフォーマンスステータスの良好な患者に対して最も有害であるようだ、と筆者らは述べている。 |
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非侵襲的出生前検査の結果における矛盾の一部は母親の診断未確定がんにより説明できる可能性がある [2015-07-21] |
Undiagnosed maternal cancer may explain some discrepancies in noninvasive prenatal testing results |
予備的研究において、非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の結果が染色体異常を示したが続いて胎児の核型が正常であることが判明した妊婦の間で、その後少数の潜在的悪性腫瘍が診断された、と第19回International Conference on Prenatal Diagnosis and Therapyで発表され同時にJAMAに掲載された。ある特定の染色体の異数性を含むNIPT異常を示し、出生前検査後にがんと診断された一連の妊婦のDNAシーケンシングのデータを調査した。評価された臨床検体125,426例中、3,757例(3%)が染色体13, 18, 21, XまたはYの異数性が1つ以上陽性であった。これらの結果は、検査を依頼した医師らにさらなる評価を推奨するとして報告された。この集団から、妊婦のがん10例が検出された。8例において、詳細な臨床およびシーケンシングのデータが得られた。母親のがんは異数性が2個以上検出されるまれなNIPT所見に伴い最も高頻度で発現した(NIPTにより複数の異数性が認められた39例中7つの既知のがん、18%)。1例において、大腸がん治癒後に採血が施行され、その異常所見はもはや消失していた。 |
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新規薬剤併用はがんの化学療法に対する感受性を増強させ得る [2015-07-21] |
New drug combination could make cancer more sensitive to chemotherapy |
がん細胞の化学療法抵抗性を助ける蛋白を標的とした新規薬剤と化学療法の併用により、治療を劇的に改善させる可能性があるとの研究結果がCancer Cellに掲載された。化学者らは結腸、肺、乳房、子宮頸がんおよび卵巣がんにおけるこのネットワーク強度を計測し、なぜ一部のがんがタキサン系化学療法に奏効しやすく、一部のがんが抵抗性であるのかを解明しようとした。その結果、このネットワークのある特定の因子−通常は化学療法薬で治療されるとがん細胞を死滅させる自己破壊過程を阻害することによりがん細胞が治療から生き延びるのを助けるBcl-xLと呼ばれる蛋白−を同定した。Bcl-xL阻害薬は既に使用可能であり、実験段階においてタキサンとの併用療法がタキサン単独の場合と比べはるかに多くのがん細胞を死滅させることが示された。筆者らは、この併用療法を用いることによりタキサン系薬剤を投与される患者の治療を改善し化学療法剤の用量を減少させ、それにより副作用が軽減する可能性がある、と述べている。 |
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Lynch症候群、ホルモン因子と子宮内膜がんとの関連が明らかにされた [2015-07-14] |
Association found between Lynch syndrome, hormonal factors and risk of endometrial cancer |
Lynch症候群の女性において、子宮内膜がんリスクと初潮年齢、出産、およびホルモン避妊薬使用との関連が明らかにされたとのスタディ結果がJAMA 7月号に掲載された。論文の背景によると、子宮内膜がん全体の2〜5%は、遺伝的ながんの易罹患性、主に、DNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子の1つにおける生殖細胞系列変異により発症するLynch症候群に関連している。研究者らはMMR遺伝子変異を有する女性1,128人を組み入れた:子宮内膜がんは133人の女性において診断された。その結果、初潮年齢が遅い(13歳以上)、出産歴(1回以上の生産の経験)、およびホルモン避妊薬の使用(1年以上)は子宮内膜がんリスクが低いことと関連があった。子宮内膜がんと高齢出産(生産)、閉経年齢、および閉経後ホルモン使用とには統計学的に有意な関連はなかった。今回観察された関連の方向性は一般人口において報告された結果と同等であり、これらの因子が防御的に働いている可能性が示唆された。 |
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新薬はシスプラチンなどの薬剤に耐性となった後でも活性を示す [2015-07-14] |
New drug remains active against cancer cells that have become resistant to drugs such as cisplatin |
試験の結果、新薬FY26は臨床的に使用されているシスプラチンより49倍効果がある。まれで貴重な金属オスミウムの化合物を基に、この新薬はがん細胞が機能するのに必要なエネルギーをミトコンドリアに使用させることにより作用する。健康な細胞がミトコンドリアをエネルギー産生に使用するのに対し、がん細胞は細胞のエネルギー需要を継続できない不完全なミトコンドリアを有する。FY26がないと、がん細胞は不完全なミトコンドリアの使用から細胞質の代謝能を用いたエネルギー産生に切り換える。このエネルギー源の切り替えを停止することにより、この薬剤はがん細胞を死滅させる。この薬剤の有効性は、卵巣がんおよび大腸がんに対する試験において示されている。この解析はまた、卵巣がん細胞のミトコンドリアDNAにおける3つの変異も正確に示した。筆者らは、現在使用されているプラチナベースのがん治療は初回クール後に有効性が頻繁に低下するが、この新たなオスミウム化合物はシスプラチンなどのプラチナベース治療薬に耐性となった後もがん細胞に対する活性が持続する、と指摘している。この研究結果はがん生存率を実質的に改善することに繋がり得ると彼らは推察している。この研究結果はPNAS: the Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。 |
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NK1受容体拮抗薬はオキサリプラチンを含む化学療法を受けている患者の悪心嘔吐を予防するようである [2015-07-07] |
NK1 antagonists appear to prevent nausea and vomiting in patients treated with oxaliplatin-based chemotherapy |
オキサリプラチンによる化学療法を受けている患者における嘔吐予防に対するNK1受容体拮抗薬の評価への扉がSENRIトライアルにより開かれたとの日本のスタディの結果が、European Society for Medical Oncology第17回World Congress on Gastrointestinal Cancerで発表された。多施設、オープンラベル、ランダム化第III相トライアルでは、大腸がん患者413人においてオキサリプラチンを含む化学療法による悪心嘔吐の予防に対するNK1受容体拮抗薬アプレピタントの予防効果について評価した。患者は初回のコースにおいて1:1の割合でコントロール群(5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン)またはアプレピタント群(5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン+アプレピタントまたはホスアプレピタント)にランダムに割り付けられた。全ての患者が2回目のコースでは、アプレピタント/ホスアプレピタントを投与された。嘔吐しなかった患者は、全体を通してそして後期相においてアプレピタント群の方がコントロール群より多かった。全体の完全奏効率は、コントロール群およびアプレピタント群において女性の方が男性よりも低かった。女性において、嘔吐なしおよび完全制御率はアプレピタント群においてコントロール群よりも有意に高かった。 |
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やせ型のステージ4大腸がん患者は過剰体重および肥満の患者よりも生存期間が短い [2015-07-07] |
Thin patients with stage 4 colorectal cancer have shorter survival than overweight and obese patients |
ボディーマスインデックス(BMI)が高く過剰体重であることは大腸がんハイリスクと関連があると長年考えられてきたが、痩せた患者も進行大腸がん治療後の経過がよくない可能性があるとのスタディ結果が、European Society for Medical Oncology第17回World Congress on Gastrointestinal Cancerで発表された。研究者らは、転移性がんに対し未治療の大腸がん患者6,128人のプールドデータを調査した。がん治療開始時の患者の平均BMIは25.3であり、やや過剰体重であると考えられた。全員が化学療法にベバシズマブを併用投与された。BMIが最も小さくBMIガイドラインでは健康体重と考えられる20〜24.9の患者の治療開始後の生存期間は21.1か月であった。過剰体重と考えられるBMI 25〜29の患者の平均生存期間は23.5か月であった。基準からすると肥満に当るBMI30〜35の患者の平均生存期間は24か月であった。BMIが35.1以上の患者の平均生存期間は23.7か月であった。スタディの結果、患者の生存期間はBMIにより有意差が認められたが、無増悪生存期間はどのBMIでも同等であった。 |
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