独特な作用をもつ抗血小板薬は血管形成術および他の心臓手技を施行される患者における血栓を予防する [2015-12-28]
A uniquely acting antiplatelet agent prevents blood clots in patients undergoing angioplasty and other cardiac procedures

冠動脈血流を再開させる血管形成術などの施行患者において、危険な血栓を予防する新薬は安全で即効性があるようであり、他に類を見ない可逆性の薬剤であるとの早期試験の結果がArteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biologyに掲載された。PZ-128はpepducinと呼ばれる新たな種類の薬剤である。Pepducinは細胞内に入り、細胞膜内側から、細胞の生化学的過程を変化させる特異的な受容体に作用する。PZ-128が43〜74歳の患者31人に様々な用量で投与された。5分の1超の患者が冠動脈疾患を有していた;その他の患者は高血圧、高コレステロール、糖尿病または喫煙などの冠動脈プラークのリスクファクターを有していた。PZ-128投与量が多いほど、血小板凝集をより抑制した。最大用量において、PZ-128は血小板凝集を80〜100%抑制した。さらに、PZ-128の作用は可逆性であり、その薬剤により患者の血液は投与後24時間(最大192時間)と短時間で完全に浄化された。この第I相スタディは、ヒトにおいてpepducinが有益である可能性を初めて示したものである。

橈骨動脈からのアプローチは大腿動脈アプローチよりも出血リスクが少ないにもかかわらず緊急血管形成術で使用される頻度が少ない [2015-12-28]
Radial access used less frequently than femoral approach during emergency angioplasty despite reduced bleeding risk

橈骨動脈を穿刺部位として使用することは大腿動脈を使用するよりも出血が少ないとされているにもかかわらず、橈骨動脈穿刺でレスキュー血管形成術を施行されるのは高リスク心筋梗塞(MI)患者のうちの少数である、とJournal of the American College of Cardiology: Cardiovascular Interventionsに掲載された。研究者らは、血栓溶解療法不成功後にレスキュー血管形成術を施行された患者9,494人の記録を調査した。14%は橈骨動脈穿刺により、85%は大腿動脈穿刺により、それぞれ施術が行われた。多因子で補正した結果、橈骨穿刺は有意に出血が少なかったが、死亡率には差がなかった。橈骨動脈穿刺を選択された患者は大腿動脈穿刺を選択された患者よりも出血リスク予測が低く、"リスク−治療パラドックス"を示しており、これはおそらく橈骨動脈アプローチでは術者の満足が得られないかその有益性を認識していないかが原因であろう。他の因子がこの結果に影響しているかどうかを判断するために、研究者らは群間差が生じないはずである消化管出血をネガティブコントロールとして使用した。その結果、橈骨動脈穿刺群は消化管出血率が低く、計り知れない交絡因子が補正後の転帰に影響した可能性が示唆される。

帯状疱疹は高齢者の脳卒中の短期リスクを上昇させるようである [2015-12-22]
Herpes zoster appears to increase the short-term risk of stroke in older adults

帯状疱疹後90日以内の50歳以上の成人は脳卒中リスクが高い、とMayo Clinic Proceedingsに掲載された。研究者らは帯状疱疹と確定診断された50歳以上の成人5,000人を評価し、帯状疱疹のない年齢性別をマッチさせた集団と比較した。脳卒中およびMIリスクが、帯状疱疹後3か月、6か月、1年および3年後に別々に算定された。その結果、帯状疱疹後3か月の脳卒中リスクが50%高かった。しかし、帯状疱疹を発症した者は発症しなかった者よりも脳卒中リスクを多く有しており、全体的に健康状態が不良であったことが示唆された。これらの複数のリスクおよび交絡因子を差し引いても、帯状疱疹は依然として3か月後の脳卒中リスク上昇と関連があった。MIリスクの軽度の上昇は見られるようではあったが、他のリスクファクターを考慮するとそれは消失した。3か月を超えたいずれの時点においても、脳卒中またはMIリスク上昇はなかった。

MANTICORE:化学療法施行中の心保護薬服用は早期乳がんにおける心不全リスクを軽減する [2015-12-22]
MANTICORE: Taking heart medication during chemotherapy reduces risk of heart failure in early-stage breast cancer

化学療法施行中に心保護薬を服用することにより早期乳がん患者の重篤な心血管障害リスクが軽減する、と2015年San Antonio Breast Cancer Symposiumで発表された。既存の研究から、ハーセプチンのような一部のがん治療は早期乳がんの生存率を大きく改善することが示されているが、5倍の心不全リスクを伴う。今回の新たな5年間のスタディの結果、β遮断薬およびACE阻害薬はがん治療による心機能低下を有効に予防することが示された。この二重盲検試験において、早期乳がん患者100人がβ遮断薬、ACE阻害薬またはプラセボのいずれかを1年間服用する群にランダムに割り付けられた。2年の間に撮影された心臓MRI画像から、β遮断薬服用患者はプラセボ群に比べ心不全徴候が少ないことが示された。ACE阻害薬もまた心保護作用を有していた。今回の結果は診療を変化させるものであり、がん治療の安全性を高めるであろう、と筆者らは確信している。

2型糖尿病の女性は心血管リスクを低下させるために男性よりもより頻回で強度な運動が必要である [2015-12-15]
Women with Type 2 diabetes need more frequent and intense physical activity than men to lower their cardiovascular risk

2型糖尿病の女性は冠動脈疾患を有する確率が男性の2倍であり、心筋梗塞(MI)または脳卒中リスクを低下させるにはより頻回で強度な運動が必要である可能性がある、とのAmerican Heart Associationの新たな科学的声明が学会誌Circulationに掲載された。この声明には、2型糖尿病女性は男性よりも若年でMIを発症し初回MI後に死亡する確率が高いことが強調されている。女性は男性に比べ、血管形成術や冠動脈バイパス術などの閉塞血管を再開通させる処置を施行される率が低く、またスタチンなどの脂質低下薬、アスピリンまたは降圧薬服用率が低い。さらに、女性は男性よりも血糖管理や血圧コントロール率が低い。観察研究の結果、2型糖尿病の女性は食事や運動などの生活習慣改善によって、心血管疾患リスク軽減のベネフィットを男性よりも得られる可能性はあるが、女性は男性よりもより頻回で強度な運動を行う必要性のあることが示唆される。

慢性腎臓病患者は両心室ペーシングの恩恵を被る [2015-12-15]
Chronic kidney disease patients benefit from pacing left and right ventricles

除細動器を用いた心臓再同期療法を施行された中等度‐重度の慢性腎臓病患者は、植込み型除細動器のみの患者に比べ、心不全による入院または死亡のリスクが低い、とJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。研究者らは、腎疾患を有しこれらのデバイスのいずれかの適応である患者10,628人の記録を調査した。このグループのうち、87%が除細動器を用いた心臓再同期療法を受けた。年齢、性別、慢性腎臓病レベル、および心房細動または粗動の有無などの多くの因子で補正した後、心臓再同期療法を施行された患者は植込み型除細動器のみの患者に比べ、心不全による入院または死亡のリスクが15〜20%低下したことが明らかになった。このスタディ結果は、進行腎疾患患者における除細動器を用いた心臓再同期療法と予後改善との関連が観察されたことを確証するものである、と研究者らは述べている。しかしこのスタディはまた、進行腎疾患の増悪軽減のために心臓再同期療法は植込み型除細動器と同様有効ではなかったことも示した。

潜在性心機能低下はMRI上の潜在的な脳疾患の画像マーカーと関連がある [2015-12-08]
Subclinical cardiac dysfunction correlates to imaging markers of subclinical brain disease on MRI

数千人の健常成人を調査している研究者らが、非常に早期の脳疾患と心疾患との関連性を発見した。このスタディは2015年Radiological Society of North America年次集会で発表された。研究者らは、Rotterdamの高齢者における、慢性疾患を調査する地域住民を対象とした前向き研究であるRotterdam Studyの参加者2,432人(女性57.4%、平均年齢56.6歳)のデータを解析した。明らかな心疾患、認知症および脳梗塞を有する人々は解析から除外された。参加者は、拡散テンソル画像(DTI)と呼ばれる先進的技術を用いた脳MRI検査、およびN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)の血中レベル計測を施行された。研究者らは脳容積の減少、微細構造変化および白質病変など、細胞領域が外傷や疾病により障害されていることを示すMRIの結果を早期脳疾患のマーカーとして評価した。DTIの結果から、NT-proBNPが高値の者は白質の微細構造組織が不良であることが示された。NT-proBNP高値は脳の容積が小さいこと、および白質病変容積が大きいことと関連があった。脳容積の減少は灰白質で優位であった。

一流のフリーダイバーにおける無呼吸の生理学的変化は心不全における血行動態変化と類似している [2015-12-08]
Physiological effects of apnea in elite free-divers similar to hemodynamic changes seen in heart failure

呼吸を止めて海面から数百フィート下に潜るフリーダイビングの過激なスポーツに従事するアスリートにおいては、有意な心血管変化が起きている、と2015年Radiological Society of North America年次集会で発表された。これらの変化は、特に経験の浅いまたは心臓が鍛えられていないダイバーにおいては危険な可能性がある。旧式の方法によるフリーつまり無呼吸ダイビング人口は過去10年の間に世界中で非常に増大している。このスポーツは、ダイバーが非常な水圧下で身体的変化を来しながら長時間にわたり呼吸を止めなくてはならないため危険であり得る。研究者らは17人の一流フリーダイバー(23〜58歳)においてMRIを用いてフリーダイビングの心血管系に対する影響をシミュレーションした。ダイバーらは、呼吸を最大に止めている間およびその後の心臓MRIおよびMR位相コントラスト画像検査を施行された。呼吸を止めている平均は299秒(5分弱)であった。長時間の無呼吸はダイビング反応から予測された様に心臓に対する大きな血行動態変化をもたらし、脳血流を増加させた。特に、無呼吸は一過性の心拡大、左室駆出率および左室内径短縮率の減少‐心不全患者において認められるパターン‐を引き起こした。

3D MRIを用いた動脈の画像診断は糖尿病患者の脳卒中リスクを判定するのに役立ち得る [2015-12-01]
Arterial imaging with 3-D MRI could help determine stroke risk among diabetics

糖尿病患者には、脳卒中リスクを上昇させ得る進行した血管疾患が内在している可能性がある、と2015年Radiological Society of North America(RSNA)年次集会で発表された。研究者らは3D MRIを用いて、進行した動脈硬化疾患を示す頸動脈プラーク内出血(IPH)所見を調べた。さらに、非糖尿病の人々よりも、転帰不良な脳卒中リスクが既に有意に高い糖尿病患者群に焦点を当てた。食事療法トライアルから組み入れられた平均年齢63歳の無症候性2型糖尿病患者159人を、3D MRIを用いて頸動脈IPH有病率を調査した。画像検査を受けた患者159人のうち、37人(23.3%)は少なくとも1本の頸動脈にIPHを有していた。これらの37人中5人が両側の頸動脈にIPHを有していた。IPHは頸動脈狭窄がなくても認められ、3D MRIで計測した頸動脈壁容積増加と関連があった。現時点ではIPHに対する治療法はないが、3D MRIはリスク層別化に役立つ可能性があり非糖尿病の人々においても適用し得る、と筆者らは指摘している。

高齢男性において睡眠呼吸障害はしばしば心房細動発症の予測因子となる [2015-12-01]
Sleep-disordered breathing often predicts development of atrial fibrillation in older men

中枢性睡眠時無呼吸またはCheyne-Strokes呼吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸を有する人々は、中枢性睡眠呼吸障害を有さない人々よりも心房細動(AF)発症リスクが高い、とAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicineに掲載された。研究者らは、multicenter Outcomes of Sleep Disorders in Older Men Study(MrOS Sleep Study)に組み入れられた男性842人を調査した。組み入れ時の男性の平均年齢は75歳であった。組み入れ時にAFを有していた男性はスタディから除外された。対象者は、初回のポリソムノグラフィー検査後に平均6.5年間追跡された。追跡期間中に99人がAFを発症した。中枢性睡眠時無呼吸を有する者はこれを有さないものよりAFを発症する確率が2.58倍高かった。中枢性睡眠時無呼吸-Cheyne-Strokes呼吸を有する者は無呼吸を有さないものよりもAF発症確率が2.27倍高かった。リスクは年齢とともに上昇した。組み入れ時年齢が76歳以上で閉塞性睡眠時無呼吸を有する者は、無呼吸低呼吸指数が5単位増加するごとにAF発症が22%増加した。筆者らは、今回のスタディは高齢男性を組み入れており、この結果は若年者や女性には当てはまらない可能性がある、と警告している。