2014
セックスは心筋梗塞リスクを上昇させない
テキストメッセージは患者のコレステロールレベル低下に役立つ
心疾患に対するうつ病と血圧の相乗効果 (ESC2015 Presentation # P1374)
睡眠との闘いは心疾患リスクに影響する可能性がある
中枢性睡眠時無呼吸症用デバイスは心不全の死亡率を上昇させる (ESC2015 Presentation # 5063)
実臨床においてリバーロキサバンは安全性および有効性試験をパスした(ESC2015 Presentation # 5072)
発作性心房細動におけるカテーテルアブレーションの優位性(ESC2015 Presentation # 5777)
ARBはCVDバイオマーカーによい影響を及ぼす可能性がある (ESC2015 Presentation # 4134)
生体吸収性ステントはメタルステントと同等に好ましい(ESC2015 Presentation # 6001)
胸痛とうつ病は共通の神経化学的経路を有する可能性がある (ESC2015 Presentation # 4301)
治療抵抗性高血圧にはスピロノラクトンが最適である (ESC2015 Presentation # 4137)
持続性心房細動を止める(ESC2015 Presentation # 2188)
急性MIにおける早期アルドステロンブロック(ESC2015 Presentation # 1167)
迅速でより感度の高い検査は胸痛患者のトリアージを迅速にする (ESC2015 Presentation # 1161)
驚くべき心臓の所見が将来のリスクを予測する (ESC2015 Presentation # 1164)
抗血小板薬2剤併用療法継続期間に関する論議 (ESC2015 Presentation # 3159)
小児心停止において早期のエピネフリン使用は有益である可能性がある
小児心停止に対する救急医療隊員による早期介入
心筋梗塞後の患者には性生活再開を奨励すべきである [2015-09-29]
Patients should be encouraged to resume sexual activity after a myocardial infarction

セックスは滅多に心筋梗塞(MI)の原因とはならず、ほとんどの心疾患患者は心臓発作後の性生活を再開しても安全であるとの研究のレターがJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。研究者らは心疾患患者536人(30〜70歳)を観察し、MI前12か月の性生活を評価し性生活頻度とその後の心血管イベント(致死的MI、脳卒中または心血管死など)の関連を推定した。自己申告制のアンケートにおいて、14.9%の患者はMI前12か月間に性生活がなかったと回答し、4.7%はセックスの頻度が月1回未満であり、25.4%は週1回未満、55%は週1回以上と回答した。10年の追跡期間中にスタディ対象患者において100件の有害心事象が発現した。性生活はその後の有害心イベントのリスクファクターではなかった。またMI前最後の性生活時期を評価した結果、MI前1時間以内にセックスをしたと回答した者はわずか0.7%であり、それに対し78%はMI発症24時間以上前に最後の性生活を行ったと回答した。

生活習慣に焦点を当てたテキストメッセージはLDLコレステロールおよび他の心血管リスクファクターを改善する [2015-09-29]
Lifestyle-focused text messaging improves LDL cholesterol and other cardiovascular risk factors

生活習慣改善をサポートするセミ・パーソナライズの携帯電話テキストメッセージによる簡便で低価格の自動プログラムは、冠動脈疾患患者の低比重リポ蛋白(LDL-C)値、血圧、ボディマスインデックス、および喫煙状況の改善に繋がるとのスタディ結果がJAMA 9月22/29日号に掲載された。研究者らは冠動脈疾患が確認されている患者を通常治療に加え4つのテキストメッセージを毎週6か月間受信する群(介入群;352人)または通常治療群(コントロール群;358人)にランダムに割り付けた。テキストメッセージは、アドバイス、動機付けのリマインダー、および生活習慣改善のサポートを提供した。患者の平均年齢は58歳;53%は現喫煙者であった。6か月後に、LDL-C(79mg/dL対84mg/dL)、収縮期血圧(128mmHg対136mmHg)およびボディマスインデックスは介入群参加者で低かった。6か月後の喫煙率もまた介入群で低く(26%対43%)、介入群の参加者は運動も増加したと報告した。参加者の多くがテキストメッセージを有用であり(91%)、理解しやすく(97%)、頻度が適切である(86%)と報告した。

うつ病と極端な血圧は有害な血管イベント率が最大であることの予測因子である [2015-09-25]
Depression and extremes of blood pressure predict highest rates of harmful vascular events

うつ症状と極端な血圧は既存の心疾患、糖尿病または脳卒中の患者における有害な血管イベント率が最大であることの予測因子となる、と2015年ESC Congressで発表された。スタディは、スコットランドに居住する既存の心疾患、糖尿病または脳卒中患者35,537人を対象とした。4年間の追跡期間中、3,939人(11%)の患者が少なくとも1つの重大な有害イベントを発現した。重大な有害イベントの予測において、うつ病は収縮期血圧(SBP)と有意な相互作用を有していた(p=0.03)。血圧が正常でうつ症状がない者に比べ、高血圧とうつ症状の両方を有する患者は4年間の重大な有害イベントのリスクが83%高く(ハザード比[HR]=1.83;95%信頼区間(CI)=1.46-2.30、 p<0.001)、低血圧とうつ症状の両方を有する者はそのリスクが36%高かった(HR=1.36;CI=1.15-1.62、p<0.001)。この結果は、年齢、性別、ボディーマスインデックス(BMI)、総コレステロール値、社会経済的状態、抗うつ薬の使用および合併疾患数などの血管イベントリスクに影響し得る因子で補正された。これらの結果から、血圧モニターの仕方に重点的に取り組むこと、およびうつ症状を合併する患者に治療を提供することが健康上の転帰を改善し得ることが示唆される。

過剰、過少、および質の悪い睡眠は早期の心疾患徴候のリスクを上昇させる [2015-09-25]
Too much, too little, and poor quality sleep increase risk for early signs of heart disease

悪い睡眠習慣は、適切で良質な睡眠をとっている者に比べると早期の心疾患徴候のリスクを上昇させる可能性がある、とArteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biologyに掲載された。研究者らは若年者および中年47,000人以上を調査した。彼らは睡眠に関する質問表に回答し、早期冠動脈病変を検出し動脈スティフネスを計測するためさらに精密な検査を受けた。早期冠動脈病変は冠動脈石灰化があることで検出され、動脈スティフネスは上肢と足首の間の脈波伝播速度を計測することで評価された。その結果、1日の睡眠時間が5時間以下の者は睡眠時間が7時間の者に比べ、冠動脈石灰化が50%多かった。1日の睡眠時間が9時間以上の者は7時間の者に比べ、冠動脈石灰化が70%多かった。よく眠れないと回答した者はよく眠れると回答した者よりも冠動脈石灰化が20%多かった。動脈スティフネスに関しても同様のパターンが認められた。

慢性心不全患者における中枢性睡眠時無呼吸症の治療に関して、実際の診療を変化させるガイダンスがスタディにより提供された [2015-09-15]
Study provides practice-changing guidance for the treatment of central sleep apnea in patients with chronic heart failure

適応補助換気(ASV)は死亡率を増加させるため、心駆出率の低下した心不全患者の中枢性睡眠時無呼吸症の治療には使用すべきでない、との研究結果が2015年ESC Congressで発表され同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。SERVE-HFトライアルにおいて、心駆出率の低下した慢性心不全患者1325人が、ガイドラインベースの薬物管理のみ(コントロール群)または推奨されている夜間5時間週7回のASVを加える群にランダムに割り付けられた。追跡期間中央値31か月後、ASVは中枢性睡眠時無呼吸症の治療には有効であったが、一次エンドポイントである総死亡、救命のための心血管インターベンション、または心不全悪化による予定外入院の合計である一次エンドポイントにおいて効果がなかった。一次エンドポイントのイベント率はASV群の54.1%に対し、コントロール群では50.8%であった(ハザード比[HR]1.13;p=0.10)。さらに、ASVを標準治療に追加しても、QOL、6分間歩行距離、または症状などの機能的計測値において有益な効果が認められなかった。しかし、総死亡率および心血管系死亡率はASV群でコントロール群よりも高かった(34.8% 対29.3%;HR 1.28;p=0.01および29.9%対24.0% HR 1.34;p=0.006) 。

XANTUS:脳卒中予防目的でリバーロキサバンを投与された心房細動患者において出血および脳卒中発現率が低い [2015-09-15]
XANTUS: Low bleeding and stroke rates in patients with atrial fibrillation given rivaroxaban for stroke prevention

脳卒中予防目的でリバーロキサバンを投与されている心房細動(AF)患者は、出血や脳卒中の発現率が低いとのXANTUSスタディの実臨床におけるデータが2015年ESC Congressで発表された。この単一群観察研究では、日常臨床における非弁膜症性AF患者6,784人の脳卒中予防に対するリバーロキサバンの安全性および有効性を評価した。全ての治療および用量決定は治療担当医の裁量に委ねられ、患者は1年間または早期中止例ではその30日後まで追跡された。観察期間終了までに、大多数の患者(96.1%)は治療中の大出血、全死亡、脳卒中または全身性塞栓症を認めなかった。治療中の全死亡は1.9%/年であった。全体で、治療中の大出血は2.1%/年に認められ、これらの症例の多くが標準的な臨床的尺度を用いて治療された。致死的出血は0.2%/年であり、脳卒中は0.7%/年に発現した。この結果からROCKET AFの第III相試験データが確証され、直接第Xa因子阻害薬リバーロキサバンを用いた抗凝固療法は、AF患者における脳卒中予防において血栓塞栓イベントの高および低リスクの両方に対して安全で有効であることが示された。

MANTRA-PAF:心房細動軽減においてファーストラインとしてのカテーテルアブレーションは薬物療法より優れる [2015-09-15]
MANTRA-PAF: First-line catheter ablation superior to drug therapy for reducing atrial fibrillation

心房細動軽減においてカテーテルアブレーションを用いたファーストライン治療が薬物療法よりも優れているとの5年間のMANTRA-PAFトライアルの結果が2015年ESC Congressで発表された。国際多施設共同のこのトライアルでは、重度の症状を有する発作性心房細動患者294人を対象に、ファーストライン治療としてカテーテルアブレーションまたは抗不整脈薬治療群にランダムに割り付けた。以前に示された2年間のトライアル結果によると、両治療群ともに心房細動を有効に減少させたが、どちらの治療が優れているかについては示されなかった。5年間の追跡調査は294人中245人(83%)において完遂され、うち125人はファーストライン治療としてカテーテルアブレーション、120人は抗不整脈薬群に割り付けられた。ホルター心電図検査は227人に施行された。心房細動の回避は、あらゆる心房細動(126/146対105/148、p=0.02)および症候性心房細動(137/146対126/148、p=0.015)いずれにおいても、抗不整脈薬群よりもカテーテルアブレーション群で高かった。心房細動負荷はカテーテルアブレーション群の方が抗不整脈薬群よりも有意に少なかった(あらゆるAF:p=0.003、症候性AF:p=0.02)。この結果は、ホルター心電図検査を実施しなかったことで補正しない場合でも同等であった。

ATTEMPT-CVD:心血管系バイオマーカーはARB以外の降圧薬に比べテルミサルタンに対し反応が良好である [2015-09-15]
ATTEMPT-CVD: Cardiovascular biomarkers respond better to telmisartan than non-ARB blood pressure medications

ATTEMPT-CVDトライアルの結果から、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタンはARB以外の降圧薬よりも有益である可能性のあることが示唆された。2015年ESC Congressで発表され同時にEuropean Journal of Preventive Cardiologyに掲載されたこの結果は、ARBがARB以外の薬剤よりも2つの心血管系疾患(CVD)バイオマーカーに対しより良い影響を与える可能性があることを示した初めてのエビデンスである。日本の168施設の高血圧患者が、テルミサルタン(615人)またはARB以外の降圧薬(613人)を投与される群にランダムに割り付けられ、3年間追跡された。血圧コントロールは同等であったにもかかわらず、36か月後の時点で尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の低下はテルミサルタン群でARB以外の降圧薬群よりも大であった(ARB群で12.2mg/gCr低下に対し、非ARB群では4.1mg/gCr、p<0.001)。血漿BNP上昇はテルミサルタン群で非ARB群よりも小であった(血漿BNPはARB群で0.5pg/mL上昇に対し、非ARB群では3.8pg/mL上昇、p=0.044)。他のバイオマーカーに関しては、ARB群でアディポネクチンの増加が大であり(p=0.041)CVD健康状態が良好であることが示され、またeGFR低下が大でありこれから腎機能が低いことが示唆された(p<0.001)ことを除き、2群間で差はなかった。

ABSORB Japan:薬剤溶出冠動脈ステントの有効性および安全性はメタルステントと同等であることが示された [2015-09-15]
ABSORB Japan: Dissolving drug-eluting coronary stent shows similar efficacy and safety as metal stent

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行される患者において、生体吸収性素材で作られた薬剤溶出ステントの有効性および安全性の結果はメタルステントと同等である、とのABSORB Japanスタディの結果が示された。2015年ESC Congressホットラインセッションで報告されたこの結果は、同時にEuropean Heart Journalに掲載された。スタディは400人の患者(平均年齢67.2歳)を対象に、生体吸収性ステント(266人)またはメタルステント(134人)を用いてPCIを施行される群にランダムに割り付けられた。いずれのタイプのステントもエベロリムスでコーティングされていた。スタディの一次エンドポイントは1年後の標的病変不全であった。エンドポイントに達したのは生体吸収性ステント群で4.2%であり、メタルステント群で3.8%(相対リスク[RR]1.10、95%信頼区間 0.39-3.11)であり、生体吸収性スキャフォールドの非劣性が示された(p<0.0001)。13か月後に計測された二次エンドポイントは、造影上のセグメント内遠隔期損失径であった。このエンドポイントは両群で同等であり、これにおいても生体吸収性ステント群の非劣性が認められた(p<0.0001)。筆者らは、これらの結果は生体吸収性ステント使用がPCIを施行される患者の長期予後を改善する可能性が現実的であることを支持した先行研究と一致することを指摘している。

冠動脈疾患の有無にかかわらず、うつ病の重症度は胸痛の頻度と独立して相関がある [2015-09-15]
Severity of depression was independently associated with the frequency of chest pain in patients with and without underlying coronary artery disease

うつ病患者は冠動脈疾患がなくても胸痛頻度が高いとのEmory Cardiovascular Biobankの結果が2015年ESC Congressで発表された。スタディは成人5,825人を対象とし、平均年齢63歳、男性は65%であった。その結果、うつ病の重症度は胸痛頻度と独立して相関があり、より重度のうつ病患者はより頻回の胸痛を有することが示された。軽度のうつ病であっても、うつ症状のない患者に比べ胸痛頻度が高かった。この結果は、冠動脈疾患重症度、年齢、性別、人種および喫煙の有無、ボディーマスインデックス、血圧、血中脂質レベルなどの従来の心血管リスクファクターで補正してもなお認められた。うつ病患者はうつ病のない患者に比べ胸痛を有する頻度が3倍高かった。これは冠動脈狭窄の有無に関わらず当てはまった。追跡調査で、うつ症状の軽減が胸痛頻度の低下に関連していた。しかし1年後の追跡調査で、血行再建術を施行されたうつ病患者は胸痛頻度の減少が認められなかった。これらの結果から、疼痛とうつ病は共通の神経化学的経路を有している可能性が示唆された。

PATHWAY-2:利尿薬スピロノラクトンは治療抵抗性高血圧患者の血圧を有効に低下させる [2015-09-08]
PATHWAY-2: Diuretic spironolactone effectively lowers blood pressure in resistant hypertension

治療抵抗性高血圧患者において、利尿薬スピロノラクトン追加は他の降圧薬を追加するより効果的であるとのPATHWAY-2トライアルの結果が、2015年ESC Congressホットラインセッションで発表された。3剤(ACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬;カルシウム拮抗薬;およびサイアザイド系利尿薬)の最大耐用量をすでに併用投与されている治療抵抗性高血圧患者を対象とした。ベースライン時の治療に加え、患者らはスピロノラクトン(25〜50mg)、ビソプロロール(5〜10mg)、ドキサゾシン(4〜8mg徐放剤)およびプラセボのいずれかを引き続き12週間投与される群にランダムに割り付けられた。314人の患者において、スピロノラクトンはプラセボ(8.70mmHg低下、p<0.001);ドキサゾシン(4.03mmHg低下、p<0.001);およびビソプロロール(4.48mmHg低下、p<0.001)、さらにドキサゾシンとビソプロロールの平均(4.26mmHg低下、p<0.001)に比べ、血圧コントロールに優れていた。全体で、スピロノラクトンを追加された患者のほぼ4分の3で血圧が大きく改善し、ほぼ60%の患者においては厳格な血圧コントロールに合致した(p<0.001)。60% の患者においてスピロノラクトンが最良の降圧薬であったが、ビソプロロールやドキサゾシンが最良であったのはそれぞれ17%および18%のみであった。

BELIEF:左心耳切除により持続性心房細動を長期にわたり止められる可能性がある [2015-09-08]
BELIEF: Isolating left atrial appendage could halt long standing persistent atrial fibrillation

標準的な治療を行っているにもかかわらず長期の持続性心房細動(AF)を有する患者において、追加で左心耳(LAA)の電気的切除をすることで合併症を増加させることなくAFから解放される率が改善し得る、とのBELIEFスタディの結果が2015年ESC Congressホットラインセッションで発表された。研究者らは173人の患者を標準的な治療のみ(肺静脈隔離術および肺静脈外トリガーのアブレーション、88人)、または標準治療に加えLAAアブレーションを行う群(85人)にランダムに割り付けた。1年後の無再発率は標準治療群の28%に対し、LAAアブレーション追加群では56%であった(p=0.001)。両群とも再発した患者は次の施術としてLAAアブレーションを施行された。24か月後の平均施術件数は1.3件であり、累積成功率はLAAアブレーション群で76%、標準治療群では56%であった(p=0.003)。追跡期間中の、一過性脳虚血発作や脳卒中などの合併症率は両群間で差はなかったが、平均ラジオ波曝露時間はLAA群で長かった(93分対77分;p<0.001)。多変量解析では、LAAアブレーションを施行しないことはAF再発率が有意に高いことと関連があった(p=0.004)。

ALBATROSS:アルドステロン拮抗薬は心不全のない急性MIにおいて有意な有益性を示さない [2015-09-08]
ALBATROSS: Aldosterone antagonists show no significant benefits in acute MI without heart failure

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者のアルドステロンカスケードをブロックすることにより予後改善を試みたが、コントロール患者との有意差を示すことはできなかった、との研究結果が2015年ESC Congressホットラインセッションで示された。1,622人の患者が、標準治療のみ(801人)またはアルドステロン拮抗薬(MRAとしても知られる)を追加する治療(802人)にランダムに割り付けられた。救急を含む早期のランダム化を行うことで、早期の治療開始が可能であった。MRA療法は、カンレノ酸カリウム(20mg)の静脈内ボーラス投与後にスピロノラクトン25mgの初回経口投与を12〜24時間以内に行い、その後6か月間毎日投与した。追跡期間中央値118日後の主要評価項目− 6か月以内の死亡、蘇生された心停止、有意な心室性不整脈、植込み型除細動器適応、または心不全の新規発症か悪化の複合エンドポイント−は、治療群およびコントロール群で同等であった(p=0.81)。死亡率のみの転帰に関しては、MRAはSTEMI群のサブグループにおいて死亡率を低下させた(1,229人、HR 0.20、95% CI 0.06-0.70)が、NSTEMI患者においては低下させなかった。このスタディはSTEMI患者を特異的に評価する目的でデザインされていなかったため、結果を解釈する際には注意が必要である。

BACC:救急外来において高感度トロポニンI検査はMIトリアージを加速化する [2015-09-08]
BACC: High-sensitivity troponin I test accelerates MI triage in the emergency department

急性心筋梗塞(AMI)を示唆する胸痛で救急外来を受診した患者は、精密化されたカットオフ値を用いた新たな迅速アッセイを用いることで、より速やかに安全にトリアージできる。2015年ESC Congressホットラインセッションで発表されたBACC(Biomarkers in Acute Cardiovascular Care)スタディでは、AMIを示唆する急性の胸痛で受診した患者1,045人(平均年齢65歳)を対象とし、標準的な3時間のアッセイおよび1時間のアッセイの両者を用いて評価した。標準的な方法に基づき、184人の患者はAMIと診断され入院した。その他は帰宅した。全ての患者が6か月間追跡された。研究者らが2つのアッセイの結果を比較し、AMIを除外する最良のトロポニンIカットオフ値は、現在の推奨値である27ng/Lよりはるかに低い値である6ng/Lであると算出した。その後、心血管イベントを予知するこの新たなカットオフ値の臨床的妥当性をBiomarCaREスタディのデータを用いて確かめた。その結果、トロポニン値が6ng/Lより高いことは死亡または心血管疾患の高リスクを示唆することが確認された。研究者らは次にこの新たなカットオフ値をBAACコホートに適用したところ、この新たなアルゴリズムでトリアージした方がこれまでの3時間の方法で行うよりも死亡率が低くなるであろうことが明らかにされた。

DOPPLER-CIP:左室拡張末期容積の減少および左室心筋重量は将来の心不全を予測する可能性がある [2015-09-08]
DOPPLER-CIP: Small left ventricular end-diastolic volume and left ventricular mass may predict future heart failure

慢性虚血性心疾患の患者において、壁肥厚を伴い左室容積が小さいことは、一般的に心不全への最初の段階であると考えられている形態学的リモデリングの最強の予測因子であるとの予期せぬDOPPLER-CIPトライアルの結果が、2015年ESC Congressホットラインセッションで発表された。このトライアルは異なる非侵襲的方法を比較し、ベースラインにおいて2年後の心臓リモデリングのリスクを予測する最も有用な方法を検討した。研究者らは慢性虚血性心疾患が疑われる患者676人を対象とした。ベースライン時の評価後、全ての患者が医師らの裁量で血行再建術、部分的血行再建術、または薬物治療などの最良の、ガイドラインに基づく治療を受けた。2年後、対象の約20%がMRIまたは心エコー検査の結果、心リモデリングの所見を示した。ベースライン時におけるリモデリングの最善の予測因子は、左室拡張末期容積(LVEDV)およびLV重量(LVM)などで計測される左室サイズであった。ベースライン時にLVEDVが小さい(<145mL)とリモデリングの確率が25〜40%であり、それよりLVEDVが大きい場合の確率の方が低かった(20%;p<0.001)。リモデリングリスクはまた壁厚が厚い場合にも高かった(p=0.003)。これらの結果は、安定冠動脈疾患患者のリスク層別化を完全に変化させ得る、と筆者らは述べている。

OPTIDUAL:ステント留置後1年を超えて抗血小板薬2剤併用療法を延長することによる恩恵は少ない [2015-09-08]
OPTIDUAL: Little benefit to extending dual antiplatelet therapy beyond one year after stenting

OPTIDUALトライアルの結果、冠動脈内ステント留置後抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の推奨期間とされている12か月を超えて延長することにより、主要な心有害イベントおよび脳血管イベント(MACCE)は減少しないことが示された。抗血小板薬2剤併用療法の延長により過度の出血がなく虚血性イベントが減少するかもしれない、との兆候が見られていたと研究者らは2015年ESC Congressホットラインセッションで述べた。スタディには、経皮的冠動脈形成術が施行され、安定冠動脈疾患または急性冠症候群のいずれかに対し少なくとも1個の薬剤溶出ステントが留置された1,385人の患者が含まれた。全ての患者が1年間のDAPTを施行され、その後36か月間これを継続する群またはアスピリン単剤に変更し継続する群にランダムに割り付けられた。その結果、主要MACCEエンドポイントに関して有意な群間差は認められなかった(DAPT延長群5.8%対アスピリン単剤群7.5%、p=0.17)。死亡率はDAPT延長群で2.3%であり、アスピリン群では3.5%であった(p=0.18)。しかし、DAPTを延長することにより、ボーダーラインではあるが統計学的に有意でない虚血性イベント(死亡、心筋梗塞、または脳卒中の合計からなるpost-hoc解析)の減少が認められ(DAPT延長群4.2%対アスピリン群6.4% [p=0.006])、出血が増加したり全死亡率が上昇することはなかった。

小児院内心停止例へのエピネフリン使用の遅れは生存率低下に関連する [2015-09-01]
Delay in administration of epinephrine associated with decreased survival in children with in-hospital cardiac arrest

ショック非適応の院内心停止にエピネフリンを投与された小児において、エピネフリン投与の遅れは24時間生存率および低生存退院率と関連があった、とのスタディ結果がJAMA 8月25日号に掲載された。この論文の背景情報によると、成人における初回エピネフリン投与の遅れは生存率低下に関連するが、この関連が小児においても同様であるかは知られていない。計1,558人の患者(年齢中央値9か月)が最終解析に含まれた。これらの患者のうち、487人(31%)が生存退院した。初回エピネフリン投与までの時間中央値は1分であった。エピネフリン投与の遅れは自己心拍再開の低下、24時間生存率、生存退院率、および神経学的転帰が好ましい状態での生存退院率低下と関連した。これらの関連性は、多数の患者、イベント、および病院特性を考慮しても依然として認められた。エピネフリン投与までの時間が5分超であった患者(233人)は、エピネフリン投与までの時間が5分以内であった患者(1,325人)に比べ、生存退院率が低かった(21%対33.1%)。

小児心停止時の救急医療隊員による10〜35分の現場ケアは予後改善につながる [2015-09-01]
Paramedic care delivered on-scene for 10–35 minutes leads to better outcomes after pediatric cardiac arrest

小児心停止に関する最大のスタディにおいて、救急医療隊員によりケアや治療が行われる場合、10〜35分の現場の心肺蘇生を施行された際の生存率が特に10代で最も高いことが示された。また、このスタディにより、生存率改善は経静脈投与や補液と関連があったが、気管内挿管や蘇生薬投与は生存率改善と関連がないことも示された。研究チームは、非外傷性院外心停止を来した生後3日から19歳までの患者2,244人を調査し、退院までの生存率を評価した。10代が最も生存率が高く、次いで小児、乳幼児の順であった。乳幼児は蘇生を行っている時間が最も短く、侵襲的処置数が最も少なく目撃者のいるイベント率が最も低かった(つまり心停止の原因が不明)。乳幼児突然死症候群の乳幼児が多かった可能性がある。スタディではまた、蘇生施行時間が10分超であることは侵襲的処置数が多いことと関連し、10分以内の"スクープアンドラン(一刻も早く搬送すること)"では患者に有益である可能性のある静脈内補液などの介入を行うには十分な時間がないことが示唆される。このスタディはResuscitationに掲載されている。