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眼球のベータアミロイド検査は脳内レベルと相関を示しアルツハイマー病患者を検出する [2014-07-29] |
Eye exam for beta-amyloid correlates with levels in the brain and detects people with Alzheimer's |
2014年Alzheimer's Association International Conference®において報告された2つのスタディの結果、眼球で検出されたベータアミロイドレベルは脳内ベータアミロイド沈着と有意に相関し、アルツハイマー病の人々を正確に同定できた。1つ目のスタディではボランティアが、ベータアミロイドに高い親和性で結合し蛍光性で眼内アミロイドプラークを検出できる、クルクミンを含む商標登録されたサプリメントを内服した。予備的な結果から、網膜で検出されたアミロイドレベルはPET画像で示された脳内アミロイドレベルと有意に相関することが示唆された。網膜アミロイド検査からアルツハイマー病とアルツハイマー病でない者を感度100%、特異度80.6%で鑑別できた。2つ目のスタディは、アミロイドに結合する局所投与軟膏を用いて目の水晶体内のベータアミロイドを検出する新たな蛍光リガンド眼球スキャニングシステムおよびレーザースキャナーを用いた。その結果、アルツハイマー病患者と健常コントロールを高感度(85%)および高特異度(95%)で鑑別することができた。さらに、水晶体を基盤としたアミロイドレベルはPET脳画像により得られた結果と有意に相関した。これらの結果からアルツハイマー病の簡便かつ非侵襲的な早期発見法となる検査法の可能性が示唆された。 |
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認知機能の正常な高齢者において神経変性の度合いが大きいほど嗅覚機能が不良である [2014-07-29] |
Greater neurodegeneration associated with worse olfactory function in cognitively normal elderly |
匂いの識別能低下は認知機能障害やアルツハイマー病発症を示す可能性があるとの2つの研究結果が2014年Alzheimer's Association International Conference®で発表された。1つ目のスタディで研究者らは嗅覚、記憶能、脳細胞機能喪失のバイオマーカーおよびアミロイド沈着の間の関連を、臨床的に正常な高齢者215人において調査した。海馬が小さく嗅内皮質が薄いほど、嗅覚や記憶能が不良であった。また、脳内アミロイド値が上昇している参加者のサブグループにおいて、嗅内皮質が薄いことで示される脳細胞死が多いことは、年齢、性別、および推定残存脳機能で補正した結果、嗅覚機能が不良であることと関連した。2つ目のスタディで追跡された757人において、匂いの識別スコアが低いと、人口統計学的背景、認知機能および機能計測値、母国語、およびアポリポ蛋白E遺伝子型で補正後、認知症やアルツハイマー病への移行と有意に関連した。認知機能検査スコアが1ポイント低いと、アルツハイマー病リスクは約10%上昇した。 |
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加齢黄斑変性症患者のうつ病は統合療法により半減し得る [2014-07-22] |
Depression in patients with age-related macular degeneration can be halved with integrated therapies |
視力低下とメンタルヘルスを統合した治療を調査する初めてのトライアルの結果、この方法により加齢黄斑変性(AMD)による視力低下の患者におけるうつ病発生率が半減する可能性があることが示された、とOphthalmologyに掲載された。このトライアルは両眼AMD患者188人(平均年齢84歳、女性70%)を組み入れた。最高矯正視力は、全員が20/70未満であった。Patient Health Questionnaireの9項目うつサブテスト(PHQ-9)に基づくと、各参加者は軽度のうつ症状を有し臨床的なうつの発症リスクが高かった。検眼医外来を2回受診しその間にルーペなどの低視力用デバイスを処方された後に患者らは、8週間で1時間の自宅での行動活性化セッションを6回受ける群または8週間で1時間の自宅での支持療法を6回受けるコントロール群のいずれかにランダムに割り付けられた。4週後のうつ病発生率は行動活性化群において支持療法群の半分であった(それぞれ12.6%対23.4%)。行動活性化療法は視力が最も低い患者群(20/100未満)において最も有益であり、うつ病リスクは約60%低下した。 |
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認知症を有する人々に対し白内障手術は視力のみならず認知機能およびQOLも向上させる [2014-07-22] |
For people with dementia, cataract surgery improves not only vision but also cognition and quality of life |
アルツハイマー病および他の認知症患者に対する白内障手術は視力を回復させるのみならず認知機能低下を遅延させ、患者および介護者のQOLを向上させるとの臨床試験の結果が2014年Alzheimer's Association International Conference®で報告された。研究者らは現在進行中の臨床試験の中間結果を報告し、認知症患者の視認能力、認知機能計測値、およびQOLに関するいくつかの指標に対する白内障手術の効果を判定した。スタディ参加者は2群(組み入れ直後の手術および遅れての手術または手術拒否)に分けられた。視力および認知機能、気分、および日常動作能力がベースラインおよび組み入れ後6か月または術後6か月に評価された。手術20症例および手術を受けなかった8症例の予備的解析の結果、手術群では非手術群と比較し視力およびQOLが有意に改善し、記憶力や実行機能の低下が軽減し、行動上の計測値が改善していた。介護者が感じられる負担レベルもまた、手術群において改善した。これらの結果から、視力低下をもたらす白内障などの認知症の併存疾患に安全性と医療リスクのバランスを取りながら積極的に取り組むことの必要性が示唆される。 |
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アルツハイマー病発症を予測できる血液内の10の蛋白が同定された [2014-07-15] |
Scientists identify 10 proteins in the blood that can predict onset of Alzheimer's disease |
アルツハイマー病の発症を予測できる10種の蛋白が同定され、この疾患の血液検査開発への重要な一歩になったとの研究結果がAlzheimer's & Dementiaに掲載された。1,148人(アルツハイマー病476人;軽度認知障害[MCI]220人および認知症のない高齢のコントロール452人)の血液検体が、過去にアルツハイマー病と関連することが示された26の蛋白について解析された。3群全体にわたる476人からなるサブグループは脳MRI画像検査も受けた。その結果、26の蛋白のうち16がMCIまたはアルツハイマー病における脳萎縮と強力に関連することが示された。研究者らは、MCI患者がアルツハイマー病を1年以内に発症するか否かを87%の精度で予測できる10の蛋白の組み合わせを同定する次の一連の検査を行った。多くの臨床試験ではアルツハイマーに対する治療薬の投与が遅延したために不成功であったと筆者らは指摘している。アルツハイマー病の進行を食い止める薬剤を発見するための臨床試験の対象となる早期の記憶障害患者を、血液検査により検出することができる可能性がある。 |
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小児の抗うつ薬治療に認知行動療法を併用することにより再発の可能性が低下する [2014-07-15] |
Cognitive behavioral therapy added to pediatric antidepressant treatment reduces likelihood of relapse |
薬物療法に認知行動療法を併用することにより、うつ病の小児および若者の長期治療成功率が改善するとのスタディ結果がAmerican Journal of Psychiatryに掲載された。このトライアルで使用された治療のタイプ―再発予防認知行動療法―は残存症状軽減、健康的な行動の増加、および再発予防に焦点を当てた家族要素を伴う個別の心理療法である。6か月にわたり、この群の若者(75人)は個々の子供に応じた8〜11のセッションに参加した。抗うつ薬fluoxetineによる初回治療を施行された後に行動療法を6か月間受けた患者の再発率は9%であった。この間に薬物治療のみを施行されたもう一方の群(69人)においては26.5%が再発した。6週間のfluoxetine初回治療後に改善を認めた若年者に関してスタディを継続し、薬物療法のみの群と行動療法と薬物療法併用群に分けた。参加者の年齢は8〜17歳であった。若年大うつ病性障害患者の一般的な再発率は40〜70%である。 |
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精神刺激薬は小児、特にADHDの小児の心血管系イベントリスクを増大させる [2014-07-08] |
Stimulants increase risk of cardiovascular events in children, especially those with ADHD |
小児および青少年における精神刺激薬の心血管系への安全性に関する大規模スタディの結果、まれではあるが、スタディ対象者全員および注意欠如多動性障害(ADHD)患者いずれにおいても、刺激薬使用者では非使用者と比較し心血管系イベントの確率が2倍であることが示された。研究者らはデンマークの700,000人を超える小児(8,300人がADHDであった)を対象に前向き研究を行った。彼らは対象者全体およびADHDの小児において精神刺激薬使用と心血管イベントを比較し、その結果、この薬物治療に関連した少ないが統計学的に有意なリスクを見いだした。また、特定の刺激薬用量と心血管イベントリスクとの関連も報告した。全対象(714,258人、6,767,982人/年)において刺激薬使用により心血管イベントリスクが上昇した;補正後HR=1.83(1.10-3.04)。ADHDの小児(8300人)において刺激薬治療により、時間依存的用量依存的に心血管イベントリスクが上昇した(補正後HR=2.20 [2.15–2.24])。これらの結果から、小児および青少年において精神刺激薬は、多くの交絡因子で補正しても、心血管疾患リスクは上昇することが示唆された。この研究結果はJournal of Child and Adolescent Psychopharmacologyに掲載されている。 |
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外傷性脳損傷の既往を有する退役軍人は認知症の発症率が60%高かった [2014-07-08] |
Veterans with traumatic brain injury are 60 percent more likely to develop dementia |
外傷性脳損傷(TBI)歴を有する高齢の退役軍人はTBIを有さない退役軍人と比較し、後に認知症を発症する確率が高いとのスタディ結果がNeurologyオンライン版に掲載された。このスタディは、スタディ開始時に認知症を有さない米国の退役軍人188,784人(平均年齢68歳)を対象とした。計1,229人の軍人がTBIと診断されていた。追跡期間中にTBIを有する軍人196人、つまり16%が認知症を発症したのに対し、TBIを有さない軍人においては10%であった。認知症リスクに影響し得る他の因子で補正した結果、TBIを有する退役軍人はTBIを有さない退役軍人よりも認知症の発症率が60%高かった。平均で、TBIを有する軍人はTBIを有さない軍人よりも2年早く認知症を発症した(78.5歳対80.7歳)。また認知症を発症しなかった者においては、TBIを有する者はTBIのない者よりも2.3年早く死亡した(77.0歳対79.3歳)。認知症リスクは、うつ、心的外傷後ストレス障害または脳血管疾患を有しTBI歴のある者においてTBIまたは他の疾患のみを有する者よりも高かった。 |
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糖尿病患者がうつ病に罹患しやすい原因となる可能性のある生物学的理由が同定される [2014-07-01] |
Researchers identify a possible biological reason why people with diabetes are prone to depression |
1型糖尿病患者の高血糖は、うつ病に関連する脳内神経伝達物質であるグルタミン酸レベルを上昇させ、感情をコントロールする脳領域間の連絡を変化させるとの研究結果が、2014年International Society of Endocrinology and the Endocrine Societyのjoint meetingで発表された。研究者らはうつ病でない成人19人:1型糖尿病8人(男性3人、女性5人、平均年齢26歳)および健常群11人(男性6人、女性5人、平均年齢29歳)を調査した。対象者は血糖値が正常範囲内(90〜110mg/dL)時、およびブドウ糖持続注入後(180〜200mg/dL)の画像検査を施行された。血糖値が上昇することにより、自己認識および感情に関与する脳領域間の連絡強度は、健常群に比べ糖尿病患者において大きく低下した。これら脳内の連絡強度はまた、血糖コントロールが長期にわたり不良な糖尿病患者において、コントロールの良好な糖尿病患者に比べ低かった。さらに、血糖値が急激に上昇することにより糖尿病患者においてグルタミン酸が上昇したが、健常群ではそのようなことはなかった。これらの脳内変化はうつ病発症リスクを上昇させる。 |
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認知機能低下と妊娠中の代謝状態との関連が認められた [2014-07-01] |
Association found between declining cognitive function and metabolic status during pregnancy |
妊娠糖尿病を発症した女性は正常妊娠女性よりも認知機能検査の成績が不良であったとの研究結果が、2014年International Society of Endocrinology and the Endocrine Societyのjoint meetingで発表された。研究者らは妊娠糖尿病女性44人と、同じような年齢、地理的位置、および教育レベルの健常な妊娠女性56人を比較した。非糖尿病女性と比べ、妊娠糖尿病女性は、同じ妊娠週に施行された認知機能検査において成績が不良であった。Montreal Cognitive Assessmentにおいて、妊娠糖尿病女性は平均点数が3点低かった:21点に対し正常妊娠女性で24点。妊娠糖尿病女性はまた、精神活動速度および注意力も不良であった。さらに、妊娠糖尿病女性は、パターンの即時および遅延再生を測定するSpatial Recall Test 10/36の点数も不良であった。遅延再生において妊娠糖尿病女性の点数は不良であった:平均4.5に対し非糖尿病群で5.4。BMIおよび血糖値が高いほど認知機能が低いことも明らかにされた。 |
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