人工呼吸器を使用した重篤な疾患後に精神疾患の診断や向精神薬使用リスクが上昇する [2014-03-25]
Risk of psychiatric diagnoses and medication use increases after critical illness with mechanical ventilation

人工呼吸器を装着された重症患者は過去に精神疾患と診断されていた割合が高くまた退院後に新たに精神疾患と診断されたり薬物を使用されたりするリスクが高い、とのスタディ結果がJAMA 3月19日号に掲載された。重症患者24,179人中6.2%が重症疾患罹患前5年以内に1つ以上の精神疾患の診断を受けていたのに対し、入院中の患者におけるその割合は5.4%であり、一般の人々では2.4%であった。入院前5年以内に向精神薬を処方されていた患者の割合は入院中の患者と同等であった(48.7%対48.8%)が、一般人口(33.2%)より高かった。精神疾患既往歴のない重症疾患既往者9,921人において新たに精神疾患と診断される絶対リスクは低かったが、入院している患者よりは高く(最初の3か月で0.5%対0.2%)、一般人口(0.02%)よりも高かった。最初の3か月間に新たに向精神薬を処方される患者の割合も高かった(重症疾患既往者12.7%対入院患者群5.0%、一般人口0.7%)が、これらの差は追跡期間1年終了時点では大きく減少していた。

一部の女性において情動ストレスに対する反応は微小冠動脈の機能不全と関連する可能性がある [2014-03-25]
Response to emotional stress may be linked to some women's microvascular coronary dysfunction

いらいらさせる怒りなどの情動ストレスは心拍数をコントロールする神経系の変化を引き起こし、男性よりも女性に頻繁に起こるある種の冠動脈機能不全の誘因となる可能性がある、と2014年American Psychosomatic Society年次集会で発表された。冠動脈微小血管機能不全と診断された16人の女性および年齢や体重が同等で冠動脈微小血管機能不全を有さない女性8人がスタディに参加した。研究者らは、暗算や保冷剤を前額部に置くなどの怒りに対する標準検査を用いて、安静時およびいくつかのストレスを与えた際の心拍数、血圧および心拍変動を計測した。両群のストレス因子に対する反応は、怒りの情動ストレスを処理する以外は同じであった。微小血管機能不全を有する女性において、情動ストレスは交感神経刺激を増強し副交感神経活動を低下させるようであった。これらの結果から、女性においては自律神経系が微小血管機能不全に関与する1つのパスウエイである可能性が示唆される。

血液検査により3年以内の認知機能低下またはアルツハイマー病のリスクを有する者を同定することができる [2014-03-18]
Blood test identifies those at-risk for cognitive decline or Alzheimer's within 3 years

健常者が軽度認知機能障害またはアルツハイマー病を3年以内に発症するか否かを90%以上の精度で予測できる血液検査が開発され検証されたとのスタディ結果がNature Medicineに掲載された。5年の間に、74人の参加者(スタディに組み入れられた525人中)が軽度アルツハイマー病(AD)または健忘性軽度認知機能障害(aMCI)のクライテリアに合致した。そのうち、46人は登録時に診断され、28人はスタディ期間中にaMCIまたはADを発症した(転換者)。スタディの3年目に、研究者らはスタディの脂質バイオマーカー発見段階に着手した。認知機能障害やADの症状を発現する患者において、神経細胞膜の破壊を示すと思われる10の脂質群が発見された。ブラインドデータを解析し、発見段階で同定された10の脂質のみに基づき、正しい診断カテゴリーに特徴付けられるかを判断した。その結果、この脂質群は、現段階では認知機能の正常な者のうち、2〜3年以内にaMCIまたはADを発症し得る者または認知機能が正常な状態を維持でき得る者を90%の精度で鑑別することができた。

PETスキャンを用いて無症候性のβアミロイドの蓄積を検出することは認知機能低下やアルツハイマー病への進行を予測するのに役立つ [2014-03-18]
Identifying silent beta-amyloid plaque build-up with PET scan helps predict cognitive decline and progression to Alzheimer's disease

陽電子放射断層撮影(PET)による脳画像により、軽度認知機能障害を有する者または認知機能障害を有さない者における将来の認知機能低下を予測する早期アルツハイマー病の所見を検出することが可能であるとの研究結果がMolecular Psychiatryに掲載された。スタディには50歳以上の成人152人を組み入れ、アルツハイマー病に関連したPETスキャンにより検出された脳内における無症候性の病理学的変化の有無の評価により、認知機能低下が予知できるか否かの評価を行った。今回使用された放射性色素florbetapirはアルツハイマー病を特徴付けるβアミロイドプラークに結合する。36か月後に、トライアルの開始時点でプラークが検出された軽度認知機能障害者または認知機能障害を有さない者は、プラークが検出されなかった者よりも認知機能検査の低下度が大きかった。軽度認知障害が始まったプラーク陽性の参加者の35%がアルツハイマー病に進行したのに対し、プラークを有さない者では10%であった。さらに、プラーク陽性の軽度認知障害患者はプラークを有さない者よりも認知機能改善薬を開始される確率が2倍以上であった。逆に、プラークが検出されなかった者においては認知機能低下がずっと少なかった:軽度認知機能障害を有するがプラークのない者の90%はアルツハイマー病に進行しなかった。

極度の貧困から抜け出すことが精神衛生に与える影響は男女で異なるようである [2014-03-11]
Moving out of high poverty environment appears to affect the mental health of boys and girls differently

極度の貧困環境から抜け出した家庭において、うつ病や行為障害の発症率が男子では上昇し女子では低下したとのスタディ結果がJAMA 3月5日号に掲載された。この介入(Moving to Opportunity Demonstration)では極度貧困環境の公共住宅に住む3,689人の子供を含むボランティア家族4,604件を転居介入群またはコントロール群のいずれかにランダムに割り付けた。軽度の貧困バウチャー群(1,430家族)は軽度貧困環境へ引っ越すバウチャーを受領した。従来バウチャー群(1,081家族)は、地理的に規制されないバウチャーを受領した。コントロール群(1,178家族)は介入を受けなかった。10〜15年後の追跡調査時点において、軽度貧困バウチャー群の男子はコントロール群と比べ、大うつ病(7.1%対3.5%)、外傷後ストレス障害(PTSD)(6.2%対1.9%)、および行為障害(6.4%対2.1%)を有する割合が高かった。従来バウチャー群においては、コントロール群よりもPTSDを有する率が高かった(4.9%対1.9%)。しかしコントロール群と比べ、従来バウチャー群の女子は大うつ病(6.5%対10.9%)および行為障害(0.3%対2.9%)を有する割合が低かった。

死亡後の双生児の脳はアルツハイマー病診断の有無を問わず同様の病理所見を示す [2014-03-11]
After death, twin brains show similar pathologies with and without Alzheimer's disease diagnosis

アルツハイマー病はその一語が広範囲に使用されているが、実際のところこの疾患は多様な疾患、症状および病理所見の集まりである。脳内で起こっていることは患者毎に大きく異なり、ある人にとっては原因となることが他の人にとっては無害であったりする。研究者らは、何年にもわたり診断的評価を受けた後に両者とも死亡し、両者ともアルツハイマー病と診断され1年以内に2人とも98歳で死亡した1組の一卵性双生児を含む7組の双生児の脳を直接解剖する稀な機会を得た。その結果、多くの双生児のペアが死亡前にアルツハイマー病や認知症の同様の進行を示しただけでなく、病理学的に同様の組み合わせ―2つ以上の無関係の脳損傷領域―も有していた。今回の研究結果は、アルツハイマー病の原因はひとつではなく、遺伝子によっては大きく罹患リスクを上昇させる可能性のある様々な原因によるとのさらなるエビデンスを提供している。この論文はBrain Pathology最新号に掲載されている。

統合失調症患者は自己免疫疾患発症リスクが高い [2014-03-04]
People with schizophrenia at greater risk of developing autoimmune diseases

自己免疫性肝炎、1型糖尿病、多発性硬化症および乾癬などの自己免疫疾患患者は統合失調症発症リスクが高いことは知られている。しかし新たな研究の結果、統合失調症患者もまた、特に重篤な感染症に罹患すると自己免疫疾患発症リスクが高いことが示された。研究者らは、Danish Civil Registration、Danish hospitals and the nation-wide Danish Psychiatric Central Research Registerからデータを抽出し、383万人のデンマーク人からなる大多数の人々を調査した。レジストリの結果から、1987〜2010年までに39,364人が統合失調症と診断され、142,328人が自己免疫疾患と診断された。データを関連付けることにより、統合失調症患者は、この疾患を有さない人々よりも自己免疫疾患を有するリスクが53%高いことが示された。さらに、統合失調症患者が重篤な感染症で入院したり治療を受けたりすると、自己免疫疾患発症リスクが2.7倍高かった。

一般的な感染症への曝露は記憶や認知能力と関連する [2014-03-04]
Exposure to common infections is linked to problems with memory and cognitive skill

一般的な感染症への曝露は、たとえその感染症が発病しなくとも記憶や脳機能に関連するとの研究結果が 2014年American Stroke Association's International Stroke Conference で発表された。先行研究から、一部の感染症が脳卒中やアルツハイマー病のリスクを上昇させることが既に示されている。研究者らは、これらの感染症に過去に曝露したとのエビデンスが記憶力、思考速度および他の脳機能に影響しているかどうかを調査した。彼らは、Northern Manhattan Studyに参加した588人に脳機能検査を施行し血液検体を採取した。参加者の半分が5年後に再度認知機能検査を受けた。その結果、クラミジア肺炎、ヘリコバクターピロリ、サイトメガロウイルス、および単純ヘルペスウイルス1および2型への曝露により引き起こされる抗体価と記憶、精神的処理速度、抽象的思考、計画および推論能力などの認知機能検査の成績が悪いことと関連があった。これらの感染症への曝露は動脈硬化や炎症を引き起こすだけでなく脳卒中リスクを上昇させることと関連しているのであろうと筆者らは考えている。今回のスタディは、感染症が認知機能低下と関連する理由を説明するものではないが、感染症への免疫反応により引き起こされる可能性があることを示唆している。