睡眠が不十分であるとうつ病遺伝子を活性化し大うつ病のリスクを増大させる可能性がある [2014-02-18]
Sub-optimal sleep may activated depressive genes and increase risk for major depression

成人の双子を対象とした遺伝子学的スタディと成人を対象とした地域住民ベースのスタディの両者から睡眠時間とうつ病との新たな関連が報告されたとSleep 誌2月号に掲載された。1,788人の成人の双子を対象としたスタディは、自己申告した普段の睡眠時間とうつ症状との環境的相互作用により、ある遺伝子を明示した初めてのものである。その結果、正常範囲を超える睡眠時間はうつ症状の遺伝子リスクを上昇させることが示唆された。1晩当たりの睡眠時間が7〜8.9時間の正常睡眠時間の双子におけるうつ症状の遺伝率は27%であった。しかし、睡眠時間5時間未満の短時間睡眠の双子ではうつ症状に対する遺伝の影響は53%に上昇し、一晩に10時間以上睡眠をとる双子においては49%であった。11〜17歳の4,175人を対象としたもう一つのスタディは、10代の若年者において前向きデータを用いて大うつ病と睡眠時間が短いことに関する相互作用を示した初めてのものである。このスタディの結果、睡眠時間が6時間未満であると大うつ病のリスクが上昇し、逆に大うつ病が若年者の睡眠減少のリスクを上昇させることが示唆された。

ロールプレイアバターは、ゲームをする人が現実世界において他人にどのように報いたり痛めつけたりするかに影響するようである [2014-02-18]
Role play avatars appear to affect how players reward or punish strangers in the real-world

ビデオゲームの仮想世界において自分をどのように表現するかが現実世界において他人にどう振る舞うかに影響するようである、との新たな研究結果がPsychological Science に掲載された。研究者らは大学生194人を2 つの無関係とされるスタディに参加させた。参加者はスーパーマン(ヒーロー的なアバター)、ヴォルデモート(悪役のアバター)、またはサークル(ニュートラルなアバター)としてゲームをする群にランダムに割り付けられた。彼らはゲームを5分間行い、その中でアバターとして敵と戦う役目を課せられた。その後、無関係とされるスタディにおいて彼らは目隠し味見試験に参加した。彼らは味見をしてその後チョコレートまたはチリソースを次の参加者に渡すように指示された。スーパーマンとしてゲームをした参加者が"次の参加者"に渡すのはチョコレートがチリソースの2倍近く多かった。また、彼らは他の役としてゲームをした者よりもチョコレートを渡すのが有意に多かった。一方ヴォルデモートとしてゲームをした参加者が渡したのは、逆に辛いチリソースの方がチョコレートの2倍近く多く、他の群よりもチリソースを渡すのが有意に多かった。

不安の治療を受けた小児および若年成人の多くが長期的な症状軽減を成し遂げられない [2014-02-10]
Long term relief of symptoms elude most children and young adults who are treated for anxiety

不安の治療を受けた小児および若年成人の2人に1人弱しか長期の症状軽減を達成できないとのスタディ結果がJAMA Psychiatryオンライン版に掲載された。様々な治療法で治療された小児に関する初めての長期解析と見られているこのスタディは、不安が診断され3か月間の治療ののち平均6か月間追跡された、11〜26歳の患者288人を対象とした。参加者は薬物療法、認知行動療法またはこれら両者を受けた。288人中135人(47%)は初回治療6年後に何の不安症状もなかった。70%近くの患者が最初の治療から数年後に、何らかのタイプのメンタルヘルス治療を必要とした。受けた治療の種類が再発リスクの予測因子にはならなかったことから、これら3つの治療法の有効性は同等であることが示唆された。家族ダイナミクスと性別が長期不安リスクの最も強力な予測因子であった。本人の性別が男性であることに加え、明瞭な規則と大きな信頼感を有する安定した家庭が良質な時間を過ごすことにより子供の再発リスクは軽減した。女児は男児よりも再発リスクが2倍であった。継続して見守ることだけが不安の初期徴候に着目し再発を予防するのに役立つことを筆者らは強調している。

音楽療法は若年がん患者の対処能力および社会的統合力に良い影響を与える [2014-02-10]
Music therapy has positive effects on young cancer patients' coping skills and social integration

Cancerオンライン版に掲載された新たなスタディの結果、がん治療を施行される青少年および若年成人は、歌詞を書くことやビデオ作成などの治療的音楽過程に参加することにより、対処能力や回復力関連予後を増強することができることが明らかにされた。今回のスタディにおいて、がんに対し幹細胞移植施行予定の11〜24歳の患者113人が治療用音楽ビデオ介入群またはオーディオブックを与えられるコントロール群にランダムに割り付けられた。参加者は3週間に6つのセッションを受けた。介入後に治療的音楽ビデオ群はより勇敢に対処できることを報告した。幹細胞移植から100日後に、治療的音楽療法群は社会的統合および家庭環境が有意に良好であると報告した。青少年や若年成人ががん治療に直面する中で、いくつかの保護因子が打たれ強くすることに役立つことを研究者らは発見した。これらの因子には、精神的信条および習慣;適応能力、結束性、および良好なコミュニケーションなどを特徴とする強力な家庭環境を有すること;社会的に繋がっていたり友人やヘルスケア提供者に支えられていると感じたりすることが含まれた。これらの所見から、このような音楽療法介入は若年患者が積極的にがんに適応するのに役立つ重要な心理社会的サポートを提供し得ることを示している。 

殺虫剤DDT副産物の血中濃度が高いこととアルツハイマー病リスク上昇は関連する [2014-02-04]
Byproduct of pesticide DDT in blood associated with increased risk of Alzheimer's disease

アルツハイマー病患者は、殺虫剤DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)の長期持続性代謝産物DDE血中レベルが健康な人々よりも有意に高いとのスタディ結果がJAMA Neurologyオンライン版に掲載された。アルツハイマー病患者86人と健常高齢者79人を対象としたあるケースコントロールスタディにおいて、血清中DDEレベルがアルツハイマー病患者においてコントロールの約4倍高いことが発見された。このスタディにおいて、DDEレベルが上位3分の1の範囲内であると、アルツハイマー病のリスクが4倍であった。また、DDEおよびDDTが脳のアルツハイマーに関連した作用をもたらすとの妥当なメカニズムも同定された。培養神経細胞を高濃度―高度に曝露された人間と同程度―のDDTまたはDDEに曝露させたところ、アルツハイマー病患者の脳に認められるプラークの主な構成要素βアミロイドの前駆物質である蛋白のレベルが上昇した。DDEレベルはアルツハイマー病を発症するかどうかの単一の決定因子ではなかった;一部のアルツハイマー病患者においてDDEは検出されず、一部の健常人の検体では比較的高濃度(上位3分の1)のDDEが検出された。遺伝子リスクファクターが環境への曝露と組み合わさり疾患を発症させるのであろうと研究者らは述べている。

感染後の炎症は空間記憶の形成能を損傷する [2014-02-04]
Inflammation following infection damages ability to form spatial memories

感染後の炎症が脳の空間記憶形成能を損傷するとの新たな研究結果がBiological Psychiatryに掲載された。この損傷は脳の記憶中枢内の糖代謝の低下により学習や記憶に関わる神経回路を混乱させる。炎症がどのように人の記憶を傷害するかを想像した今回の初のトライアルで研究者らは、20人の参加者に食塩水または炎症を惹起する目的でチフスワクチンを注射し画像検査を行った。ポジトロン断層法(PET)を用いて脳の糖消費に対する炎症の影響を計測し、各被験者が画像検査後にバーチャルリアリティにおいて一連の課題を行う空間記憶検査を受けた。感染後には側頭葉内側部(MTL、脳の記憶中枢)内の糖代謝低下が認められた。参加者は空間記憶課題の成績も低下しており、これはMTL代謝の変化の影響を直接受けたようであった。感染は若年健常人においては長期の有害な影響を与えないようであるが、高齢者においてはこの結果が非常に有意である、と筆者らは述べている。