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代謝酵素が最も一般的な腎がんの進行を停止させる [2014-07-29] |
Metabolic enzyme stops progression of most common type of kidney cancer |
ヒトの腎組織内の正常細胞およびがん細胞内の燃料を産生するのに使用される代謝産物の解析において、腫瘍増殖を停止させる酵素の手がかりが発見された。最近の大規模遺伝子配列決定解析の結果、腎明細胞がん(ccRCC)内のいくつかのエピジェネティック酵素の喪失が示され、核内の変化もまた 腎腫瘍増殖の原因であることが示唆された。遺伝子研究を補足するために、研究チームは600を超える代謝酵素を評価した。その結果、代謝調節に重要な酵素であるFBP1がccRCCの核内転写因子に結合し細胞体内のエネルギー産生を抑制する。この酵素は解析された腎腫瘍組織から消失していた。FBP1のないこれらの腫瘍細胞は対照の非がん細胞よりもかなり速くエネルギーを産生した。FBP1が正常に機能していると、コントロールを失った細胞増殖は食い止められる。次のステップは、標的とする他の代謝パスウェイの同定、腎臓および肝がん細胞内の大量の代謝物の計測によりそれぞれにおけるFBP1の役割を確定すること、および前臨床試験に用いるよりよいマウスモデルを開発することであろう。このスタディはNature オンライン版に掲載される。 |
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細切除去術による子宮摘出時の子宮がん存在率がスタディにより調査された [2014-07-29] |
Study examines presence of uterine cancers among women at the time of hysterectomy using morcellation |
電動式細切除去術を用いた低侵襲子宮摘出を施行される女性の10,000人当たり27人に、施術時に子宮がんが存在するとのスタディ結果がJAMAに掲載された。子宮を断片化するこの方法は未検出の悪性腫瘍を拡散させる結果になる可能性があることが問題とされてきた。商品化された電動式細切除器は20年間使用されてきているが、電動式細切除去術(このスタディでは細切除去術とされている)施行時点での悪性腫瘍存在率の正確な見積もりはなされていないと、この論文の背景情報には記されている。研究者らは500を超える病院の保険データベースを用いて2006〜2012年に低侵襲子宮摘出術を施行された女性232,882人を同定した;細切除去術は36,470人(15.7%)に施行された。細切除去術を施行された者において、子宮がん症例の99人が施術時に発見され、有病率は27/10000であった。他の悪性腫瘍や前がん状態も発見された。細切除去術を施行された女性のうち、高齢であることは、がんや子宮内膜増殖症と関連があった。細切除去術によるがん拡散リスクを確定するには有病率の情報が最初のステップである、と筆者らは指摘している。 |
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限局性前立腺がんを有するうつ病男性は進行したがんと診断される [2014-07-22] |
Depressed men with localized prostate cancer are diagnosed with later stage disease |
限局性前立腺がんを有するうつ病男性は、うつ病のない前立腺がん患者と比較し、より進行した前立腺がんと診断される確率が高く、有効な治療法が少なく生存期間が短いとのスタディ結果がJournal of Clinical Oncologyオンライン版に掲載された。このSurveillance, Epidemiology and End Results(SEER)メディケアデータベースの患者を用いた地域住民をベースにした観察研究では、2004〜2007年に限局性前立腺がんと診断された男性41,275人に焦点を当て2009年まで観察した。これらのうち、1,894人の男性ががんの診断2年前に抑うつ障害と診断された。中等度または高リスクの前立腺がんを有しうつ病と診断されてから間もない男性は、根治的治療を施行される確率が低く全生存期間が短かった。高齢、低所得で他の医学的合併症を有し、白人またはヒスパニック系で、結婚しておらず都市部以外に居住する前立腺がん男性がうつ状態になりやすい傾向にあった。さらに、うつ病男性はうつ病でない男性と比較し、手術や放射線療法などの根治的治療を求める率が低かった。 |
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特異的ながん幹細胞は腫瘍全体とは異なる方法で治療すべきである [2014-07-22] |
Specific cancer stem cells need to be treated in a different manner than the whole tumor |
炎症性乳がんにおいて化学療法抵抗性につながる乳がん細胞のメカニズムが同定された。International Journal of Oncology印刷版に先立ちオンライン版に掲載されたこれらの前臨床の結果は、炎症性乳がん腫瘍の化学療法への感受性を回復させ治療を改善させる可能性のある治療法のエビデンスを提供している。研究者らは乳がん細胞株を用いて染色体不安定性および化学療法抵抗性―炎症性乳がんの特徴―の程度がCD44+/CD24–/Low幹細胞様フェノタイプと関連するかを判断した。その結果、CD44+/CD24–/Lowがん幹細胞は従来の化学療法抵抗性であるが、選択的サイクリン依存性キナーゼ2(Cdk2)阻害薬であるSU9516が有効であることが示された。炎症性乳がんのCD44+/CD24–/Low亜集団の維持および拡大にはサイクリンE/Cdk2発がんシグナリングの異常活性化が必要である、と彼らは結論付けた。したがって、炎症性乳がんの新たな治療法は従来の化学療法とCdk2細胞サイクルキナーゼ阻害小分子を併用することになる可能性がある。これらの結果は、ヒトを対象としたトライアルが計画されるまでには確認される必要がある、と筆者らは述べている。 |
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脂質異常症の女性は乳がん発症リスクが高い可能性がある [2014-07-15] |
Women with hyperlipidemia may be at greater risk of getting breast cancer |
100万人を超える患者の14年にわたる英国のスタディにおいて高コレステロールと乳がんとの関連が認められた、とFrontiers in CardioVascular Biology(FCVB)2014学会で発表された。研究者らは、2000〜2013年のAlgorithm for Comorbidities, Associations, Length of stay and Mortality(ACALM)臨床データベースの英国内100万人を超える患者の後ろ向き解析を行った。データベースの女性664,159人のうち、22,938人は脂質異常症を有し、9,312人は乳がんを有していた。約530人が乳がんを発症した。研究者らは、脂質異常症と乳がんの関連を統計的モデルを用いて調査した。その結果、脂質異常症を有していると乳がんリスクが1.64倍に上昇した(95%信頼区間1.50〜1.79)。今回の結果は観察研究であるため高コレステロールが乳がんを引き起こすと結論付けることはできないが、相関が強力であることからさらなる調査が必要であると研究者らは強調している。スタチンは特にハイリスク群において予防の役割を有する可能性がある、と彼らは述べている。 |
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進行頭頸部がんにおいて陽子線治療は強度変調放射線治療よりも優れている [2014-07-15] |
Proton beam therapy has advantages over intensity modulated radiation therapy for advanced head and neck cancers |
Lancet Oncologyに掲載されたスタディの結果、種々の頭蓋底進行頭頸部がん患者において陽子線治療は強度変調放射線治療(IMRT)と比較し、無病生存期間および腫瘍コントロールを有意に改善することが示された。研究者らは拡大データベース検索により、鼻腔および副鼻腔腫瘍に関するスタディをレビューした。治療歴―初回放射線療法や補助放射線療法を含む―がなく再発のない患者のスタディを対象とした。研究者らは、5年後およびそれぞれの患者の最長追跡時点における全生存期間、無病生存期間、および腫瘍コントロールのデータを収集した。彼らはランダム効果モデルを用いてスタディ期間中の治療成績を蓄積し、相互作用テストを使いて陽子線治療およびIMRTを行った際の複合アウトカムのイベント率を比較した。5年後の無病生存率は陽子線治療患者においてIMRT患者よりも有意に高かった(72%対50%)。5年後の腫瘍コントロールに関しては治療群間で差はなかったが、最長追跡時点では腫瘍コントロールは陽子線治療患者においてIMRT患者よりも高かった(81%対64%)。 |
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エベロリムスは進行肝細胞がん患者の全生存期間を改善しない [2014-07-08] |
Everolimus does not improve overall survival in patients with advanced hepatocellular carcinoma |
前臨床データは強固であったにもかかわらず、エベロリムスはプラセボと比較し進行肝細胞がん(HCC)患者の全生存期間を改善しなかったとのスタディ結果が、JAMA 7月2日号に掲載された。この第3相試験において研究者らは、ソラフェニブ治療中または治療後に増悪した進行HCC患者またはソラフェニブに忍容性のない患者546人を、エベロリムス(362人)またはプラセボ(184人)を投与される群に無作為に割り付けた。両群ともに最良の支持療法を併用され、疾患が増悪するかまたは毒性が忍容できなくなるまで薬物療法を継続された。その結果、2群間で全生存期間に有意差はなかった:死亡はエベロリムス群303人(83.7%)およびプラセボ群151人(82.1%)であった。全生存期間中央値はエベロリムス群で7.6か月であり、プラセボ群で7.3か月であった。病勢コントロール率(著効、有効、不変)は56.1%(エベロリムス)および45.1%(プラセボ)であった。今回および他の不成功に終わった第3相試験から、第2相試験から有効性の徴候の評価を行うことは困難でありサロゲートエンドポイントは全生存期間予測とは一致しないなどのいくつかの重要な教訓を得た、と研究者らは指摘している。 |
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低用量アスピリンの持続内服は膵がん発症リスクを低下させる可能性がある [2014-07-08] |
Continued use of low-dose aspirin may lower risk of developing pancreatic cancer |
低用量アスピリン内服期間が長いほど膵がん発症リスクが低い、とのスタディ結果がCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。研究者らは膵臓がん362症例およびコントロール690例をスタディに組み入れた。対象者らは個別に、アスピリン開始時期、アスピリン内服年数、内服しているアスピリンのタイプ(低用量または常用量)、およびアスピリン内服中止時期を他の質問に加え問診された。ボディーマスインデックス、喫煙歴、糖尿病歴などの交絡因子も考慮された。参加者のうち、低用量アスピリン内服者の96%および常用量アスピリン内服者の92%が、アスピリンを毎日内服していると報告した。低用量アスピリンを常用している男女は膵がん発症リスクが48%低かった。膵がん予防効果は、低用量アスピリン内服期間6年未満の者における39%のリスク低下から、低用量アスピリン内服期間10年以上の者における60%のリスク低下にわたった。スタディ開始前2年以内にアスピリン内服を中止した者は、持続内服した者と比較し膵がんリスクが3倍であった。 |
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マンモグラフィーにトモシンセシスを追加することによりがん検出率が上昇し再検査および生検の陽性適中率が上昇する [2014-07-01] |
Addition of tomosynthesis to mammography increases cancer detection rate and improves positive predictive value for recall and biopsy |
170,000件を超える検査において、デジタルマンモグラフィーにトモシンセシスを追加することにより、さらに画像検査を行うために呼び戻される患者が減少し、がん検出率が上昇したとのスタディ結果がJAMA 6月25日号に掲載された。研究者らは454,850の検査データ(デジタルマンモグラフィー281,187人、デジタルマンモグラフィー+トモシンセシス173,663人)を評価した。一次検査項目は再検査率、がん検出率、再検査および生検の陽性適中率であった。スクリーニング1,000例当たりのモデル調整率は以下の通りであった:再検査率に関しては、デジタルマンモグラフィー107件対デジタルマンモグラフィー+トモシンセシス91件(再検査率の全体的な減少率はスクリーニング1,000件当たり16件);生検に関しては、デジタルマンモグラフィー18.1件に対しデジタルマンモグラフィー+トモシンセシス19.3件;がん検出率に関しては、デジタルマンモグラフィー4.2件に対しデジタルマンモグラフィー+トモシンセシス5.4件;浸潤性がん検出率に関しては、デジタルマンモグラフィー2.9件対デジタルマンモグラフィー+トモシンセシス4.1件であった。トモシンセシスを追加することにより再検査の陽性適中率は4.3%から6.4%に、生検の陽性適中率は24.2%から29.2%に上昇した。 |
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4つの腫瘍画像を組み合わせることにより悪性乳房腫瘍を良性腫瘍と鑑別でき生検を避けるのに役立つ [2014-07-01] |
Combining four tumor imaging approaches can distinguish malignant from benign breast tumors and help avoid biopsies |
4つの方法を併せて使用した乳房腫瘍画像検査により、少ない画像検査を用いた時と比べ、悪性乳房腫瘍を良性のものとより正確に鑑別でき、乳房生検を繰り返すことが避けられるとのスタディ結果がClinical Cancer Researchに掲載された。Multiparametric 18FDG PET-MRIと呼ばれる新たな画像技術は、4つのパラメータ(DCE-MRI, DWI, 3D 1H-MRSI, および18FDG-PET)による腫瘍の撮影を可能にした。研究者らはマンモグラフィーまたは乳房超音波検査で疑いまたは不確定所見とされた患者76人を組み入れ、全ての患者に対しmultiparametric 18FDG PET-MRI検査を施行した。最も正確な結果を生み出す画像パラメータの組み合わせを決定するために、2つのパラメータ、3つのパラメータ、および4つ全てのパラメータの画像データを組み合わせた。2つのパラメータおよび3つのパラメータによる評価には、全てDCE-MRIが含まれた。全ての結果が組織病理学的診断と比較された。組織病理に基づき、76の腫瘍のうち53が悪性と診断され23は良性と診断された。Multiparametric 18FDG PET-MRIは悪性乳房腫瘍と良性乳房腫瘍とを96%の精度で鑑別し、2つまたは3つの画像組み合わせ法よりも結果が良好であった。このスタディから、この技術は一般的に用いられている画像法DCE-MRIにより勧められている不必要な乳房生検を50%減少させ得ることが推定される。 |
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