BRCA1/2変異を有する女性においてアントラサイクリンベースの化学療法の心毒性はわずかである [2014-12-22]
Anthracycline-based chemotherapy has negligible cardiac toxicity in women with BRCA1/2 mutations

アントラサイクリン系薬剤は心臓を障害するとの前臨床でのエビデンスがあるが、腫瘍がBRCA1/2変異を有する患者における心毒性はわずかである、との研究結果が2014年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。スタディでは81人(BRCA1/2保有者39人および変異を有さない42人)を対象とした。遠隔転移およびHER2陽性乳がんを有する患者は除外された。また、高血圧は心筋ストレインに対する交絡因子となるためこれを病歴として有する者も解析からは除外された。参加者はアントラサイクリン系治療終了後平均45か月間心エコー検査を受けた。このスタディでは心機能評価に2つの測定値(左室駆出率[LVEF]およびグローバル長軸ストレイン[GLS])を用いた。ほとんどの女性においてLVEF(91%)およびGLS(85%)は正常であった。BRCA1/2を有する者のうち1人においてLVEFがボーダーライン程度低下し、変異を有さない者のうち6人においてはボーダーライン程度から軽度低下した。また、GLS低下は変異を有する者4人および変異を有さない者7人において認められた。心機能低下は患者全体において非常に軽度であり、化学療法後の心臓晩期障害リスクは低いことが示唆された。

ヨガのリスクファクター軽減による心血管系への有益性は有酸素運動と同程度である可能性がある [2014-12-22]
Yoga may provide the same cardiovascular benefits in risk factor reduction as aerobic exercise

ヨガの一般的な心身鍛錬は心血管疾患に関連したリスクファクターの管理および改善において有益であり、心血管系の健康に対する有効な治療法となり得るとの有望なエビデンスが認められた、とのスタディ結果がEuropean Journal of Preventive Cardiologyに掲載された。37のランダム化コントロールトライアル(対象者2,768人)の系統的なレビューをフォローした結果、研究者らは、ヨガを行っている人々において運動をしない人々よりも心血管系疾患のリスクファクターが改善され、これらのリスクファクターに対するヨガの効果は有酸素運動(サイクリングや早歩き)による効果と同等であることが示された。運動をしないのと比較し、ヨガは各々の主要評価項目を改善した:ボディーマスインデックスは0.77kg/m2、収縮期血圧は5.21mmHg、LDLコレステロールは12.14mg/dL低下し、HDLコレステロールは3.20mg/dL増加した。副次的評価項目においても有意な変化が認められた:体重は2.32 kg、拡張期血圧は4.9mmHg、総コレステロール値は18.48mg/dL、心拍数は5.27/分低下した。しかし糖尿病の指標(空腹時血糖値および糖化ヘモグロビン)に改善は見られなかった。

抗がん剤をリポソーム化することによりアントラサイクリン系薬剤の治療による心毒性が軽減する [2014-12-16]
Liposomal encapsulation of chemotherapy drugs reduces cardiac side effects of treatment with anthracyclines

化学療法薬を脂質二重膜で封入する新技術(リポソームカプセル化と呼ばれる)により、心毒性が軽減するとの研究結果が2014年EuroEcho-Imagingで発表された。スタディには24匹の豚を用い、ヒトと同用量の非ペグ化リポソームカプセル化アントラサイクリン−ドキソルビシン(Myocet)、従来のドキソルビシン、またはエピルビシンを3サイクル使用する群にランダム割り付けした。心機能は心エコーおよび磁気共鳴画像(MRI)で評価した。検査所見として、血液学的検査、腎機能、および心酵素トロポニンとBNPが計測された。エピルビシン群は生存率が低かったため、最終解析からは除外された。3か月後の追跡において、Myocet投与群は従来のドキソルビシン投与群よりも左室および右室の拡張/収縮能が良好であった。Myocet群ではまた、MRIおよび組織染色で示された心筋線維化の進展が軽度であった。豚は若く健康でありアントラサイクリン投与はほんの短期間であったにもかかわらず、副作用は発現した。これらの副作用は多くの場合治療可能であるが、研究者らは、アントラサイクリン系薬剤を投与される全てのがん患者において、心エコーやバイオマーカー、およびMRIを適応に応じて施行し心臓をモニターすることの重要性を強調している。

多くの女性において一次予防目的の低用量アスピリン内服は無効または有害である [2014-12-16]
Low-dose aspirin is ineffective or harmful in the majority of women when used for primary prevention

がんや心疾患などの重篤な疾患予防目的での健康な女性に対する低用量アスピリン投与による有益性は、可能性のある不利益に凌駕されることがHeartオンライン版に掲載された大規模スタディにより示唆される。しかし、このバランスは加齢とともに移動し、一次予防を65歳以上の女性に限定するこの形は、アスピリンを全く内服しない、または45歳以降から女性にアスピリンを投与するよりも好ましかった。Women's Health Studyの参加者は、100mgのアスピリンまたはプラセボを1日おきに内服する群にランダムに割り付けられた。アスピリン常用は心疾患、脳卒中、消化器がん、および一部の女性では他のがんのリスクが低いことと関連したが、それはほんのわずかであった。このわずかな健康上の有益性は、アスピリンを内服している女性の3分の2において認められた消化管出血の有病率により逆転された。消化管出血リスクは加齢と共に上昇したが、大腸がんや心血管疾患に対する薬剤のリスク低下効果についても同様であり、65歳以上の女性においてはこの薬剤が有利に働くようであった。65歳以上の女性を選択してアスピリン治療を行うことにより有益性が上昇する可能性がある、と彼らは示唆している。

心臓CT血管造影は心イベントの高リスク患者を同定する [2014-12-09]
Cardiac CT angiography identifies diabetic patients who are at higher risk for cardiac events

糖尿病患者はたとえ軽症の冠動脈疾患であっても心筋梗塞または他の重大な有害心イベントの相対リスクは重症の1枝狭窄病変の糖尿病患者と同等である、とのスタディ結果が2014年Radiological Society of North America年次集会で発表された。研究者らは、Coronary CT Angiography Evaluation For Clinical Outcomes(CONFIRM)レジストリにおける、CCTAにより冠動脈の動脈硬化の範囲を検出及び判定された糖尿病患者1,823人のデータを解析した。スタディ対象の男女(年齢中央値61.7歳)は、冠動脈疾患なし、軽症冠動脈疾患(50%未満の冠動脈狭窄)、または狭窄病変(50%以上の冠動脈狭窄)に分類された。5.2年間の追跡期間中に246例が死亡し(スタディ対象全体の13.5%)、295例(30.3%)が心筋梗塞や冠動脈血行再建術施行などの重大な有害心イベント(MACE)を発症した。CCTAで判断された狭窄病変および軽症の冠動脈疾患があるか、または狭窄病変および冠動脈疾患がないかが患者の死亡およびMACEに関連した。軽症冠動脈疾患患者の死亡またはMACEの相対リスクは、1枝狭窄病変患者と同等であった。

Marfan症候群の小児においてロサルタンの大動脈拡大速度低下効果はアテノロールと同等である [2014-12-02]
Losartan equally as effective as atenolol for slowing rate of aortic enlargement in children with Marfan Syndrome

Marfan症候群の小児の大動脈拡大速度を低下させる治療の選択肢が広がったと、American Heart Association年次集会で発表された。Marfan症候群患者におけるアテノロール治療とロサルタン治療とを比較したスタディの結果、大動脈拡大速度は2つの治療群間で有意差がなかった。研究者らは、Marfan症候群患者608人(生後6か月から25歳)においてアテノロール(Marfan症候群患者で最も一般的に用いられる薬剤)とロサルタン(一部の研究においてアテノロールよりも有効である可能性が示唆されている薬剤)を比較した。両薬剤ともに体格で指標化した大動脈根部の経時的な低下をもたらした。3年間の大動脈拡大速度は2群間で有意差がなく、特に若年者において両群ともに大動脈拡大重症度は時間とともに低下した。この結果の原因は不明である。研究者らは薬物の用量設定が重要であると強調している。アテノロールの用量は患者の心拍数で調整され、日常診療においてMarfan症候群患者に使用されているよりも高用量であった。このスタディ結果は同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。

FACTOR-64:糖尿病患者の冠動脈疾患検出目的でのCT血管造影を用いたルーチンのスクリーニングは不要である [2014-12-02]
FACTOR-64: Routine screening of patients with diabetes for coronary artery disease with CT angiography not necessary

冠動脈コンピュータ断層血管造影(CCTA)を用いた糖尿病患者のスクリーニングの結果、少数において血行再建術が必要となり、スタチン使用が増加し、血圧およびLDL-Cが低下したが、4年後の心血管イベントは有意に低下させなかった。トライアルはJAMAに掲載され、2014年American Heart Association年次集会における発表と同時に公表された。研究者らは、少なくとも罹病期間が3〜5年の1型または2型糖尿病で冠動脈疾患症状のない患者900人をCCTAを用いたスクリーニング(452人)または標準的な国内ガイドラインに基づいた糖尿病管理(448人)を行う群にランダムに割り付けた。標準的または強化療法(脂質、血圧および血糖値の治療に対して)は、CCTA所見に基づき推奨値を決定された。平均追跡期間4年後に、一次アウトカムイベント率(死亡、非致死性MI、または入院を要する不安定狭心症の合計)はCCTAとコントロール群とで有意差がなかった(6.2% 対7.6%、p=0.38)。虚血性主要有害心イベントである二次複合エンドポイントもまた2群間で差がなかった(4.4%対3.8% 、p=0.68)。これらの結果はこれらの患者群におけるCCTAスクリーニングを支持しないものであった。

虚血性僧帽弁逆流症患者においてCABGに加え僧帽弁修復を施行することによる利益はない [2014-12-02]
No gain seen to adding mitral valve repair to CABG in patients with ischemic mitral regurgitation

心筋梗塞後の中等度の僧帽弁傷害患者において冠動脈バイパス術(CABG)後にルーチンに僧帽弁修復術を追加することは是認されない可能性がある、とのスタディ結果が2014年American Heart Association年次集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。このスタディは中等度の虚血性僧帽弁逆流(MR)に対し片方または両方の手術を施行された患者301人を対象とした。研究者らは、心収縮後の左室内残存血液量を6か月後および12か月後に計測することにより各々の患者の状態を評価した。両方の手術を受けた患者とCABG単独治療を施行された患者とで1年後の左心室の器質的障害からの回復、および心不全、脳卒中、機能的状態またはQOLなどの二次計測値には差が認められなかった。しかし、僧帽弁修復術の追加は神経学的イベント増加、クロスクランプや心肺バイパス時間増加、およびICU在室時間や入院期間が長いことと関連があった。さらに長期の追跡調査が現在行われている。

外科医らは複雑な障害を有する患者を心臓の3Dプリントモデルを用いて治療する [2014-12-02]
Surgeons use 3D printed model of heart to treat patients with complicated disorders

心臓の実験的3次元プリントモデルと標準的な医用画像との組み合わせは、外科医が複雑な先天性心奇形を有する患者を治療するのに有用である可能性がある、との研究結果が2014年American Heart Association年次集会で発表された。ほとんどの心臓外科医は手術のプランニングに際してX線、超音波およびMRIを用いて撮影された2D画像を用いる。しかし、これらの画像は複雑な先天性心奇形を現しきれていない可能性がある。しかし今や、医師は標準的な2D画像をガイドとし、最も複雑な構造異常ですら心臓の詳細な3Dモデルを石膏やセラミックなどの様々な素材で作成し示すことができるようになった。研究者らは安価な石膏複合材料を用いて、複雑な先天性心奇形を有する生後9か月女児、3歳男児および20歳代女性の心臓モデルを作成した。モデルと従来の画像を研究した結果、外科医は重度の心奇形患者3人全ての治療に成功した。このモデルは予後に有益であり得る妥協点を外科医らが見極めるのに役立った。今回のスタディは小規模のもので3Dプリントは今の時点ではまだ未承認の開発中の技術であることを研究者らは警告している。