ナイアシンは危険な副作用を有し心筋梗塞や脳卒中軽減の有益性はない [2014-07-29]
Niacin linked to dangerous side effects and no benefit in reducing myocardial infarction and stroke

ナイアシンは、コレステロール治療法の中心として50年間存在したが、死亡や危険な副作用があり心筋梗塞(MI)や脳卒中軽減の有益性がないことからもはや大半の患者には処方されるべきではない、と医師がNew England Journal of Medicine editorialに執筆している。この意見は、50〜80歳の心血管疾患を有し徐放性ナイアシン(ビタミンB3)およびlaropiprantを内服していた成人を観察した、この雑誌に掲載された大規模新規スタディに基づき発表された。トライアルの対象患者全てが既にスタチンで治療を受けていた。4年後にナイアシンはプラセボと比較し、MIや脳卒中発症率を低下させなかった。さらに重要なことに、ナイアシンは肝障害、感染症増加、過度の出血、痛風、糖尿病患者における血糖コントロール不能およびスタディ開始時には糖尿病を有していなかった人々における糖尿病発症などの重篤な副作用を有意に増加させる上に総死亡を増加させる傾向にあった。エディトリアルの筆者は、ナイアシンはスタチン内服不能で他にエビデンスに基づく選択肢のないMIおよび脳卒中のハイリスク患者のみに限定すべきである、と結論付けている。

ワインやハードリカーの中等量摂取は心房細動、心不全および認知症のリスクを上昇させる可能性がある [2014-07-29]
Moderate consumption of wine and hard liquor may increase risk for atrial fibrillation, heart failure and dementia

中等量であってもワインやハードリカーの摂取は心房細動(AF)、心不全および認知症のリスクファクターとなり得るとの研究結果がJournal of the American College of Cardiologyに掲載された。研究者らは食品やアルコール摂取に関する広範なアンケートに回答した45〜83歳の成人79,016人を調査した。参加者は最長12年間追跡され、7,245件のAF症例が確認された。先行研究と同じく、飲酒(1日3杯超)とAFリスク上昇とに相関が認められ、大量飲酒とAFリスクには強力な相関が示された。中等量のワインやリカー(1日1〜3杯)の摂取でAFリスクが上昇することも示された。先行研究では中等量の飲酒による影響に関しては報告されていない。今回の研究では中等量のビール摂取では同等のリスクは認めなかった。ある補足的なメタ解析において、これらの結果と6つの同様の前向き研究を組み合わせて用量反応性を調査した。全解析には12,554症例のAFが含まれた。アルコールの種類を区別しない解析において、1日1杯の飲酒が増える毎にAFリスクは8%上昇した。

性的虐待と頸動脈内中膜肥厚との関連を示唆する初めてのスタディ [2014-07-22]
First study to suggest a link between sexual abuse and higher carotid artery intima-media thickness

小児期に性的虐待を受けた女性は動脈硬化の徴候を示す可能性があるとの新たな研究結果がStrokeに掲載された。このスタディにおいて閉経前後の女性1,400人(42〜52歳)が小児期および成人期の身体的および性的虐待や様々な確立された心疾患リスクファクターについての質問を受けた。研究者らはその後12年間、毎年対象者の解析を行った。12回目の受診時に、頸動脈超音波検査を行い頸動脈内中膜肥厚(IMT)および頸動脈プラークを調査した。小児期の性的虐待歴を有する女性は、虐待歴のない女性よりも中年期の頸動脈IMTが厚かった。小児期虐待とIMTとの関連は、血圧、脂質、および体重などの標準的な心血管疾患リスクファクターでは説明が付かなかった。研究者らはまた、全ての人種(白人、アフリカン系、ヒスパニック系および中国系米国人)において、女性の16%が小児期の性的虐待歴を有すると報告したことも明らかにした。小児期の性的虐待歴はIMT肥厚と関連があったが身体的虐待とは関連がなかった。小児期の虐待は女性の心血管系リスクを判断する上で重要であり得るため、医師はこれについて患者に尋ねることを筆者らは勧めている。

脳卒中既往歴は非心臓手術後の有害事象高リスクと関連する [2014-07-22]
History of stroke linked with increased risk of adverse outcomes after non-cardiac surgery

脳卒中既往歴は待機的非心臓手術を施行された患者で、特に脳卒中発症から9か月未満に手術を行われた場合に、重大な心血管イベント(MACE)および死亡のリスクが増大するとのスタディ結果がJAMAに掲載された。研究者らは脳卒中既往歴とMACEとの関連、および非心臓手術(481,183件)後最長30日間の総死亡を調査した。脳卒中既往を有する患者(7,137人)および有さない患者(474,046人)のMACE粗罹患率はそれぞれ1,000人当り54.4対4.1であった。虚血性脳卒中既往は、虚血性脳卒中発症から手術までの間隔に関係なく、補正後の30日死亡および30日MACEが脳卒中既往のない患者と比較しそれぞれ1.8倍および4.8倍多いことと関連した。脳卒中から手術までの期間が3か月未満であった患者は特に高リスクであり、脳卒中既往と術後有害事象とには強力な時間依存関係が認められた。脳卒中から手術までの期間が9か月を超えるとリスクは一定となるようであったが、依然として高かった。低および中等度リスクの手術でも、最近脳卒中を起こした患者におけるMACE相対リスクはハイリスク患者と少なくとも同等のようであった。

低所得および低学歴の者ほど末梢動脈疾患率が高い [2014-07-15]
Higher rates of peripheral artery disease found in individuals with low income and lower attained education levels

過去のスタディにおいて、社会経済的地位が低いことと心血管系疾患リスク上昇とに関連があることが確立された。印刷版Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomesに先立ちオンライン版に掲載された新たなスタディにおいて、低所得および低学歴の者において末梢動脈疾患(PAD)率も高いことが示された。研究者らはU.S. National Health and Nutrition Examination Surveyの1999〜2004年のデータを解析した。PADは標準的な計測法である足関節上腕血圧比0.90を用いて定義された。社会経済的地位には、貧困ラインに対する相対的な自己申告による収入の比である貧困-収入比および学歴レベルが含まれた。参加資格のある6,791人におけるPAD有病率は低所得および低学歴の者において有意に高かった。6段階の貧困-収入比群において最も低い群の者は貧困-収入比の最も高い群の者と比較し、PAD率が2倍高く、この相関関係は他のリスクファクターを考慮しても有意であった。低学歴もまたPAD有病率が高いことと関連したが、他の因子で補正後この相関は有意ではなくなった。

生体大動脈弁不全の低侵襲修復後の生存率がスタディにより予測された [2014-07-15]
Study estimates rate of survival following minimally invasive repair of failed bioprosthetic aortic valves

生体大動脈弁不全に対し経カテーテルvalve-in-valve留置術を施行された患者の解析において、全生存率は83%であり、生存率は外科的バルブサイズおよび弁不全のメカニズムに関連するとのスタディ結果がJAMA 7月9日号に掲載された。外科的大動脈弁置換術は機械弁よりも生体弁を用いることの方が増加傾向にある。生体弁不全の治療は臨床上の課題である。標準治療としては再手術が考慮されるが、対象患者はしばしば高齢であり他の合併症を有しており、心臓手術による修復は重大な疾患を引き起こし死亡リスクとなることもある。研究者らは、機能不全生体弁内に経カテーテルvalve-in-valve留置術を施行後の患者459人の生存率を、多国籍登録を用いて評価した。患者(平均年齢78歳)は55施設で留置術を施行された。弁機能不全の原因は狭窄(39.4%)、逆流(30.3%)、および狭窄と逆流の合併(30.3%)であった。1年全生存率は83.2%であった。狭窄群患者の1年全生存率(76.6%)は逆流群(91.2%)および合併群(83.9%)と比較し不良であった。同様に、小さい弁(≦21mm)の患者の1年生存率(74.8%)は、それより大きい弁サイズの患者と比較し不良であった。

ポリフェノールにより末梢動脈疾患患者の疼痛開始前に歩行できる時間と距離がやや延びる可能性がある [2014-07-08]
Polyphenols may help people with peripheral artery disease walk a little longer and farther before pain sets in
ある小規模なスタディにおいて、末梢動脈疾患(PAD)患者はダークチョコレート―ポリフェノールの豊富な食物―を食べた場合、歩行距離と時間がやや延びたとの新たな研究結果がJournal of the American Heart Associationに掲載された。PAD患者(男性14人、女性6人、年齢60〜78歳)を対象としたこのパイロットスタディにおいて、朝にトレッドミル検査を受け、40gのダークチョコレートまたはミルクチョコレートを別々の日に食べ、その2時間後に再びトレッドミル検査を受けた。スタディで用いられたダークチョコレートにはココアが85%以上含有されており、ポリフェノールが豊富であった。ミルクチョコレートのココア含有量は30%以下であり、ポリフェノールは遥かに少なかった。ダークチョコレートを食べた後の歩行距離は朝の検査よりも11%、時間は15%延びた(約12m/39フィート、17秒)。歩行距離および時間はミルクチョコレートでは改善しなかった。一酸化窒素レベルはダークチョコレート摂取時に高値であった。他の酸化ストレスの生化学的徴候もまた低かった。これらの観察結果および他の検査結果から、一酸化窒素レベル高値が末梢血管拡張をもたらし、自立歩行能力を改善している可能性があると筆者らは考えている。
小児期の重度の栄養失調は長期の心血管系への影響をもたらす可能性がある [2014-07-08]
Severe malnutrition during childhood may have long-term cardiovascular consequences

5歳までの重度の栄養失調は成人期の高血圧リスクを上昇させ、健康全体に有意な影響を及ぼす可能性があるとの研究結果がHypertensionに掲載された。研究者らは栄養失調にさらされジャマイカで成長した成人116人と適切に食事を与えられた男女45人とを比較した。ほとんどが20〜30歳代であったこれらの参加者は身長、体重および血圧を測定された後、心エコー検査で心機能検査を受けた。栄養失調でなかった者と比較し、幼少期に栄養失調であった者は拡張期血圧計測値が高く(p=0.007)、末梢血管抵抗が大きく(p<0.0001)、心機能が低かった(左室流出路、駆出量および心拍出量が小さかった)。これらの因子全てが、心疾患や脳卒中の主要なリスクファクターである高血圧リスクを上昇させる方向に働く。小児期に重度の栄養失調を経験した世界中の多くの人々において、出生前および5歳までの栄養失調が長期の心血管イベントを引き起こす可能性があると筆者らは警告している。栄養失調に対し包括的に取り組むことは、これらの長期の慢性心疾患および代謝性疾患のリスクに対しても、公衆衛生上の大きな利益になるであろうと彼らは述べている。

2型糖尿病女性は男性よりもスタチンによりLDL治療目標値を達成できる確率が低い [2014-07-01]
Women with type 2 diabetes less likely to reach LDL treatment goals using statins than men

高コレステロールを有する2型糖尿病女性は男性対照者と比較し、コレステロール低下薬を用いてもLDLコレステロール低下の治療目標を達成できる確率が低いとの研究結果が、2014年International Society of Endocrinology and the Endocrine Societyのjoint meetingで発表された。他のスタディにおいて成人糖尿病患者におけるLDL低下に関して同様の性差が示されたが、今回の新たなスタディの結果、薬物療法の使用状況がこの差の原因ではないことが示された。性別がコレステロール低下薬治療の結果に影響するか否かを評価するために、研究者らはほぼ同人数の男性(101人、平均年齢65歳)および女性(97人、平均年齢63歳)をスタディに組み入れた。全ての患者が2型糖尿病を有し、高コレステロール治療目的で2003〜2004年にスタチンを処方されていた。治療によりLDLコレステロール値が推奨レベルに低下したのは、女性では64%のみであったのに対し男性では81%であった。平均コレステロール値は女性で2.39mmol/Lであり、男性では2.07mmol/Lであった。この結果から、これらの患者における心血管系リスクファクターの評価および治療には性別に基づいた評価が必要であることが示唆される。

TVを1日に3時間以上見る成人は早期の総死亡リスクが倍になる可能性がある [2014-07-01]
Adults who watch TV three hours or more a day may double their risk of premature death from any cause

TVを毎日3時間以上見る成人は、それよりTVを見る時間の少ない成人と比較し、早期の総死亡リスクが倍になる可能性があるとの新たな研究結果がJournal of the American Heart Associationに掲載された。研究者らは若年で健常なスペインの大学卒業生(平均年齢37歳、女性60%)を評価し、3つのタイプの座位行動(テレビ視聴時間、コンピュータ操作時間および運転時間)と総死亡リスクとの関連を判定した。中央値8.2年後に、97人が死亡し、うち19例は心血管系、46人はがん、32人はその他の原因であった。死亡リスクは1日のTV視聴時間が3時間以上の者において、1時間以下の者よりも2倍高かった。この死亡リスクが2倍高いことは、死亡リスク上昇に関連する他の多くの可変因子を考慮しても明らかであった。コンピュータや運転に割いた時間と早期総死亡とに有意な関連はなかった。