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標準的な血栓溶解薬に尿酸を追加することにより虚血性脳卒中後の障害を軽減できる [2014-02-25] |
Adding uric acid to standard stroke clot-busting medication reduces disability following ischemic stroke |
脳卒中患者において、標準的治療に加え、症状発現から4.5時間以内に尿酸を投与することにより、安全かつ効果的に障害を軽減することができるとのlate-breaking scienceの結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで報告された。高尿酸値は腎結石、痛風、心臓および血管疾患および糖尿病と関連するとされてきた。しかし尿酸は強力な抗酸化物質であり、動物実験では脳細胞に尿酸を追加投与することにより細胞を脳卒中による損傷から保護することが示されている。今回のスタディにおいては、スペイン周辺の脳卒中センター10個所の急性脳卒中患者421人(半分女性、平均年齢76歳)を登録した。全ての患者が組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)を投与され、尿酸またはプラセボ投与群にランダムに割り付けられた。90日後に障害を有さなかったのは尿酸およびtPA投与を受けた患者の40%近くであったのに対し、プラセボ投与を受けた患者では33%であった。尿酸は血糖値が高く中等度の脳卒中の女性において最も恩恵をもたらした。スタディの患者数が少なかったため、今回の結果は大規模なトライアルで検証する必要がある。今回のスタディは、より重篤な脳卒中を発症し他の合併症を有する高齢者を含めたことが強みであると筆者らは述べている。 |
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静脈内血栓溶解薬の適時の投与は脳卒中患者の年齢や重症度にかかわらず予後を改善する [2014-02-25] |
Timely administration of intravenous thrombolysis improves outcomes regardless of patient age or stroke severity |
脳卒中患者の年齢や重症度にかかわらず、静脈内血栓溶解薬の迅速な投与は脳卒中による障害を軽減するとのlate-breaking scienceの結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。組織プラスミノゲンアクチベータ(tPA)は急性虚血性脳卒中に対し推奨される治療である。しかし、tPAを投与するべき時間枠および高齢患者や微小または重度の脳梗塞における使用に関しては依然として議論の余地がある。専門家による国際協力グループが9つの臨床試験に参加した脳卒中患者6,756人の記録をレビューした。その結果、tPAはプラセボより有効であり長期障害率を低下させた。また早期治療により予後が改善した。tPAを脳卒中発症から3時間以内に投与された患者のうち脳卒中後に有意な障害を来さなかった者は33%であったのに対し、tPAを投与されなかった患者では23%であった。tPAを脳卒中発症後3〜4.5時間に投与された患者のうち有意な障害を来さなかったのは35%であり、プラセボ群では30%であった。脳卒中発症4.5時間後に投与された群では、33%がほとんど障害を来さなかったのに対しプラセボ群では31%であった。 |
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卵円孔開存の患者における将来のリスクを経頭蓋ドプラにより鑑別できる可能性がある [2014-02-25] |
Transcranial Doppler may differentiate future risk of stroke in patients with patent foramen ovale |
一部の患者の脳卒中の原因となり得る危険な卵円孔開存症(PFO)の検出において、経頭蓋ドプラ検査−脳への血流を計測する安価な超音波法−は標準的な心エコー検査よりも感度が高い可能性があるとのlate-breaking scienceの結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。さらに、経頭蓋ドプラ検査によりこの異常の程度に関連した将来の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)のリスクを鑑別することが可能である。過去の研究から人口の25%、および潜在性脳卒中患者において高率にPFOを有していることが示された。このシャントは血栓を右心系から左心系に逃してしまい、脳へ向かう血管内に進入し奇異性塞栓症を生じさせる。研究者らは、既に経頭蓋ドプラで検出されたPFOが、広く用いられている経食道心エコー検査においても検出されるかを検査した。心エコー検査ではPFOを有する患者340人中15%以上を検出できなかった。見逃されたPFOの約4分の1は重症度の最も高い3つであった。 |
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CRYSTAL-AF:挿入型心モニターは原因不明の脳卒中後の発見しづらい心房細動を検出する [2014-02-25] |
CRYSTAL-AF: Insertable heart monitor finds elusive atrial fibrillation after unexplained stroke |
皮下に植え込まれた小型の心臓モニターは標準的なモニター法よりも、患者に脳卒中を引き起こした不規則な心調律の検出率が6〜7倍高いことが示されたとのlate-breaking scienceの結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。虚血性脳卒中のうち潜在性(つまり原因不明)のものは30%にも及ぶ。CRYSTAL-AF(CRYptogenic STroke And UnderLying Atrial Fibrillation)スタディでは、潜在性脳卒中を来した患者441人を対象とした。対象患者全員が脳卒中発症後90日以内に少なくとも24時間の心臓モニターを施行され、そのうち半数は最長3年間持続的にデータを供給する植込み型モニターにより追跡された。6か月間に心房細動が検出されたのは植込み型モニター群で8.9%であったのに対し、標準的検査群では1.4%であった。1年間に心房細動が検出されたのは植込み型モニター群で12.4%であったのに対し、もう一方の群では2%であった。3年間では、植込み型モニター群30%に対し標準検査群で3%であった。合併症のため植込み型装置を除去せざるを得なかったのは、わずか2.4%であった。 |
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VIPS:小児において一般的な感染と脳卒中リスク上昇とに関連が認められるがワクチン接種によりリスクが低下する可能性がある [2014-02-25] |
VIPS: Common infections linked to increased stroke risk in children but vaccines may reduce risk |
一般的な感染が小児において脳卒中の危険性を有意に上昇させるが、ルーチンのワクチン接種によりリスクが低下する可能性があるとの予備的な研究結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conference で発表された。この国際スタディVascular effects of Infection in Pediatric Stroke(VIPS)は、感染と虚血性脳卒中との関連を調査した前向きスタディである。研究者らは、過去1週間の一般的な感染が脳卒中リスクを6倍以上上昇させることを明らかにした。過去1週間に何らかの微小感染を有していたと報告したのは、脳卒中患者では17%であったのに対し脳卒中を有さない者では3%であった。感染のうちで最も頻度が高かったのは感冒および他の上気道感染であった(脳卒中患者の8%および非脳卒中患者の2.4%が過去1週間にこれらの感染を有していたと報告した)。ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹および肺炎球菌などに対するルーチンのワクチン接種を"いくつか受けたかほとんどまたは全く受けていない"者は"全てまたはほとんど受けた"者よりも虚血性脳卒中を発現する確率が6.7倍高かった。 |
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脳卒中による入院率や死亡率は周囲の温度や露点温度の変化と関連する [2014-02-25] |
Stroke hospitalization and death rates associated with changes in environmental temperature and dew points |
脳卒中による入院率や死亡率は周囲の温度や露点温度の変化により上昇したり降下したりする可能性があるとの研究結果、2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。研究者らは2009〜2010年に虚血性脳卒中で入院した18歳以上の患者134,510人を同定した。その後この期間の温度や露点温度に関するデータを入手した。その結果、気温の日較差が大きく平均露点温度が高い(湿度が高いことを示唆)ことと、脳卒中入院率が高いことに関連があることを見いだした。年間平均気温が低いことは脳卒中入院および死亡と関連した。平均気温が 1°F上昇するごとに脳卒中入院確率が0.86%低下し、脳卒中による入院後に死亡する確率が1.1%低下した。1日の気温の変動および平均露点温度が上昇すると脳卒中入院確率が上昇したが、院内死亡とは関連がなかった。脳卒中リスクの高い人々は有意な気温変化や高露点温度を避けた方がよいであろうと筆者らは提案している。しかし、これらの関連のメカニズムを調査することに加え、天候の変化により脳卒中が増加する原因や天候変化の影響について理解を深める研究が今後必要であると筆者らは指摘している。 |
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脳卒中による脳幹の損傷は睡眠時無呼吸の存在および重症度に影響する [2014-02-25] |
Stroke damage to brainstem associated with presence and severity of sleep apnea |
脳卒中により脳幹を損傷した患者は脳の他部位が損傷された患者よりも睡眠時無呼吸の有病率が高いとの研究結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。スタディに参加した虚血性脳卒中患者355人(平均年齢65歳、男性55%)は、既に登録されていたBrain Attack Surveillance in Corpus Christi(BASIC)プロジェクトから抽出された。スタディ対象の59%がヒスパニック系であり、非ヒスパニック系白人が35%、アメリカ先住民が1%、アフリカ系米国人が4%であった。参加者は脳卒中から13日後に携帯用呼吸モニターを用いた睡眠時無呼吸のスクリーニングを受けた。神経科医が脳のCTおよびMRI画像を読影し、脳幹病変を有しているかを判断した。355人の脳卒中患者のうち11%が脳幹傷害を有し、84%が睡眠時無呼吸を有していた。脳幹に病変のない者において、睡眠時無呼吸を有するのは59%であった。今回のスタディは、脳卒中後患者において脳損傷部位と睡眠時無呼吸との関連に関する地域住民を対象としたこれまでで最も大規模なものである。 |
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出産後12週間は通常よりも血栓症リスクが高い状態が持続する [2014-02-25] |
Blood clot risk remains higher than normal for at least 12 weeks after delivering a baby |
女性の血栓症リスクは出産後少なくとも12週間(これまで考えられていたよりも2倍長い)は高い状態が持続するとの大規模スタディの結果が2014年American Stroke Association's International Stroke Conferenceで発表された。研究者らは、2005〜2010年にカリフォルニアの病院に出産のために入院した女性1,687,930人のデータを用いて血栓症の確率を算出した。これらの女性のうち1,015人がその後1.5年の間に血栓症を発症した。これらの中には脳卒中、心筋梗塞、肺塞栓症または深部静脈血栓症などを引き起こした血栓症患者が含まれた。血栓症発症のリスクは、血小板や他の血液凝固因子が増加する妊娠中に上昇する。リスクは出産時辺りにピークとなるが、今回その後0〜6週間は10.8倍、7〜12週間は2.2倍、13〜18週後は1.4倍(有意ではない上昇)高い状態が持続することが明らかにされた。19〜24週後までに血栓リスクは出産をしなかったのと同等のレベルに戻った。出産後6〜12週に妊娠に関連した血栓症を発症するのは10,000人に1人未満である。 |
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女性は男性よりも脳卒中後の可動性、疼痛/不快感および不安やうつの問題が大きかった [2014-02-18] |
Women had greater problems than men with mobility, pain/discomfort and anxiety and depression following stroke |
脳卒中後のQOLは女性の方が男性よりも低いとのスタディ結果がNeurology オンライン版2月7日号に掲載された。研究者らは、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を患った男女のQOLを比較した。AVAILレジストリ(US national, multicenter, longitudinal registry of ischemic stroke and TIA patients)の56〜77歳の参加者計1,370人がスタディに組み入れられた。QOLは、可動性、自己管理、日常生活動作、うつ/不安および疼痛を評価した数式を用いて、脳卒中またはTIAの3か月後および1年後に計測された。3か月後の時点で、女性の方が可動性、疼痛/不快感および不安やうつを訴える率が高かったが、この差は75歳以上の者において最大であった。年齢、人種および結婚の有無が3か月後の男女差の最大の原因であり、特に結婚の有無が最も重要であった。1年後にも女性は依然として全体的なQOLに関するスコアが男性よりも低かったが、これらの差の絶対値自体は減少していた。 |
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一部の患者に対する、高用量スタチン単剤療法の代替療法としての低用量スタチンと他の脂質低下薬との併用 [2014-02-18] |
Combining lower intensity statin with other lipid-modifying medication as alternative to higher-intensity monotherapy for some patients |
動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の一部においては低用量のスタチンとの併用療法は高用量単剤療法の有効な代替療法となり得るとの研究結果がAnnals of Internal Medicineオンライン版に掲載された。研究者らは雑誌に掲載されたエビデンスをレビューし、ASCVDのハイリスク成人における、低用量のスタチンと他の脂質調整剤の併用療法と高用量スタチン単剤療法の臨床上の有益性、アドヒアランス、および害に関して比較した。胆汁酸捕捉剤またはエゼチミブとの併用療法は高用量単剤療法と同等にLDLコレステロールを低下させたが、有害事象に関するデータは限られていた。フィブラート系薬剤、ナイアシン、またはω-3脂肪酸との併用療法との比較においては、LDLコレステロール低下作用に関する十分なエビデンスはなかった。また、死亡率や急性冠症候群などの長期臨床予後に関しても十分なエビデンスはなかった。筆者らは、スタチンに対し忍容性がなかったり有効性が低かったりするハイリスクの患者においては、低用量スタチンと胆汁酸捕捉剤またはエゼチミブの併用を考慮してもよいと結論付けている。しかし、この方法は長期の臨床的有益性や副作用に関するエビデンスを欠いており、注意深く使用すべきであると彼らは述べている。 |
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PCIおよびCABG後の死亡率を予測する予測モデル法はより個別化した心臓治療へと繋がる可能性がある [2014-02-10] |
Prediction modeling that projects mortality following PCI and CABG may lead to more personalized cardiac care |
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)後の長期死亡率を予測する詳細予測モデルは、循環器チームが個々の患者に対する最良の治療法を決断する際に有用である可能性があるとのスタディ結果が、The Annals of Thoracic Surgery 2014年2月号に掲載された。研究者らは2つのレジストリから得た患者のデータを用いて、CABGおよびPCIの生存モデルを開発した。1995〜2007年までの間にクリーブランドクリニックにおいて13,114人の患者がCABG術を、6,964人がベアメタルステント(BMS)を使用してPCIを、3,104人は薬剤溶出ステント(DES)を使用してPCIを施行された。生存モデルは各々の治療に関して独立して開発され、3つのモデルのいずれかに出現する全ての因子がその後に決断補助ツールに組み入れられ、それにより研究者らは各々の手技の長期生存率を調査することができた。解析の結果、より広範な冠動脈疾患を有し合併症の多い患者ほどCABG術で予後が良好であり、急性心筋梗塞または限局性の冠動脈疾患を有する患者においてはPCIで長期予後が良好なことが示された。 |
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心移植後の多くの患者が術後20年以上生存している [2014-02-10] |
Many patients are living twenty years or more after heart transplantation |
末期的心不全においては心移植が依然として"ゴールドスタンダード"治療であり、いまや多くの患者が心移植術後20年以上生存しているとのスタディ結果がThe Annals of Thoracic Surgery 2014年2月号に掲載された。研究者らは1985〜1991年の間に心移植を施行された患者133人の長期予後を調査した。これらの患者のうち、74人(55.6%)が移植後少なくとも20年生存した。20年生存した者の移植時平均年齢は43.6歳であった。非生存者の死亡の主要原因はグラフト拒絶(21%)、悪性腫瘍(21%)、移植心冠動脈病変(進行性冠動脈疾患;14.5%)、および感染(14.5%)であった。免疫抑制療法が今後改善し続けることにより、移植後患者がより長く健康に生存すると期待できる、と筆者らは考えている。しかし、このスタディにおいては現時点では心移植が好ましい治療であることを確認しているが、将来機械的補助循環デバイスが心移植と競合できるかはいまだ不確定である。 |
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スポーツ医学診療への集束超音波の追加は検出されなかった心血管系の異常を同定するのに役立つ [2014-02-04] |
Adding focused ultrasound to sports medicine physicals could help identify undetected cardiovascular abnormalities |
簡便で安価な超音波検査のスポーツ医学診療への追加はこれまで検出されなかった肥大型心筋症などの心血管疾患を同定するのに役立つとのスタディ結果が、Journal of Ultrasound in Medicineに掲載された。研究者らは、スポーツ医学診療に2分間の集束超音波を加える、Early Screening for Cardiovascular Abnormalities With Preparticipation Echocardiography(ESCAPE)プロトコールを考案した。スタディには18〜25歳の大学生アスリート65人が組み入れられた。スポーツ医学の医師らは病歴および身体所見、ECGおよび集束超音波検査から参加者をスクリーニングした。3人のアスリートにおいてECGが陽性であったが、集束超音波検査は正常であった。他の3人のアスリートは病歴および身体所見の時点で異常があったがECGおよび集束超音波では問題がなかった。この結果は、集束超音波検査によりスポーツ医学診療にさらに多くの時間や経費を追加することなくECGスクリーニングによる偽陽性を検出することができることを示している。次のステップは、検出されなかった心血管系疾患を実際に検出することをゴールとした多施設スタディを開始することである。 |
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HDLが炎症および動脈硬化を促進する過程が明らかにされた [2014-02-04] |
Researchers discover process where HDL promotes inflammation and atherosclerosis |
高密度リポ蛋白(HDL)―いわゆる"善玉コレステロール"―が機能不全となり、その心保護作用を失い、その代わりに炎症や動脈硬化を促進する過程が発見された。アポリポ蛋白A1(アポA1)はHDLに存在する主な蛋白であり、その分子構造によりHDLはコレステロールを血管壁から肝臓に運搬し排泄させている。HDLの心保護作用を与えているのは通常アポA1であるが、今回研究者らは動脈硬化の過程において動脈壁内では大部分のアポA1が酸化されもはや心血管系の健康には寄与せず、代わりに冠動脈疾患の発症を促進することを明らかにした。5年以上の過程を経て、研究者らは機能不全のアポA1/HDLを同定する方法を開発し、動脈壁内でアポA1/HDLが酸化され機能不全となる過程を発見した。そして彼等は循環器疾患患者627人の血液を検査し、機能不全のHDLレベルが高いとその患者の心血管系疾患リスクが高いことを明らかにした。この研究チームは現在、血流内のこの機能不全蛋白を計測する検査を開発中である。彼らの研究はNature Medicineオンライン版に掲載された。 |
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