スタディの結果、うつ病および疼痛緩和に対しketamine療法が奏効する双極性障害患者が見極められた [2013-10-29]
Study identifies which bipolar patients will respond to ketamine therapy for depression and pain relief

双極性障害患者の3分の2においてはketamineが有益で、血液検査を用いることにより反応が良好な患者が予測できるとのスタディ結果が2013年ANESTHESIOLOGY™年次集会で発表された。このスタディにおいて、双極性障害の患者22人がketamineの静脈内投与を受けた。各々の患者から血液が採取された。反応者および無反応者は標準うつ病評価尺度を用いて見極められた。有効反応は50%以上改善することと定義された。さらに、血液検体内の代謝パターンも調査された。研究者らは、18の異なる代謝産物レベルの差に基づき、反応者と無反応者とで脂肪酸代謝の仕方に違いがあることを発見した。彼らはketamineの分解産物を同定しHNK(2S, 6Sヒドロキシノルケタミン)と名付けた。さらに彼らは、HNKに対し反応する患者を指し示す血液内脂肪酸のパターン、つまり"指紋"を明らかにした。次の段階は、治療に反応する代謝パターンを発現するか否かを決定する遺伝子または環境因子を探すことであると筆者らは述べている。彼らはこれが各患者に対しカスタム化つまり個別化した治療の開発につながることを期待している。

不安やうつなどの心理的因子が炎症よりも炎症性腸疾患の駆動力となっている可能性がある [2013-10-29]
Psychological factors like anxiety and depression may be central drivers of inflammatory bowel disease rather than inflammation

American College of Gastroenterology年次集会で発表されたスタディの結果、炎症性腸疾患(IBS)においては、消化管自体を起源とする炎症性変化よりもむしろ不安やうつなどの心理的因子が中心的な駆動力となっている可能性があることが示唆された。研究者らはサイトカインインターロイキン6(IL-6)レベルおよび、特に過去に広範に研究をされ主な便のパターン(下痢型[IBS-D]、便秘型[IBS-C]、および混合型[IBS-M])に基づき定義されたサブグループに関連し得る全ての範囲の背景因子を調査した。その結果、IL-6レベルが高いことはIBS患者が精神的な併存疾患を有することと関連があった。このことから循環サイトカインの障害は粘膜レベルの炎症を反映しているのではなく中枢性に調節されている可能性があることが示唆される。この結果はまた、これらのサイトカインレベルの変化は症状の重症度および不安やうつのレベルに関連していることも示している。このスタディは、不安やうつのような中枢性の因子がより重要なIBS患者を検査により鑑別できるか;および向精神薬(抗うつ薬や抗不安薬)がこの群の患者により有効であるか?という2つの問題を提起している。

心理的介入は心疾患患者の死亡および他の心血管系イベントを半減させる [2013-10-22]
Psychological interventions halve deaths and other cardiovascular events in heart disease patients

心理的介入は心疾患患者の死亡および他の心血管系イベントを半減させるとの研究結果がスペインのマドリッドで開催された2013年Acute Cardiac Care 学会で発表された。このスタディは9つの無作為化コントロールトライアルのメタ解析である。研究者らは心理的介入を従来のリハビリテーションプログラムに組み合わせることにより冠動脈疾患患者の予後が改善できるかを評価した。その結果、心理的介入を追加することにより2年以上経過後の死亡および心血管イベントが55%減少した(相対リスク[RR]0.45、95%信頼区間[CI]0.37〜0.54、P <0.001)。この有益性は最初の2年間では有意ではなかった(RR0.77、95%CI 0.55〜1.09、P =0.145)。介入には患者やその家族が心配していることについて話しかけること、リラックス運動、音楽療法、およびお祈りの補助などが含まれた。今回の結果は、心血管疾患は単なる身体的疾患ではなく心理的な要素も少なからず有しているとの最近の考え方を立証するものである。冠動脈疾患患者のリハビリテーションに心理的介入を組み入れるべきであると研究者らは結論付けている。

透析中に施行される行動療法は腎不全患者のうつ病を克服する可能性がある [2013-10-22]
Behavioral therapy provided during dialysis sessions may combat depression among patients with kidney failure

腎不全患者が透析を受けている間にチェアサイドで行う行動療法はうつ病克服に役立ち患者のQOLを改善する可能性があるとのスタディ結果がJournal of the American Society of Nephrology次号に掲載予定である。研究者らは、特別に設けたうつ病に対する認知行動療法を患者が透析を受けている間にチェアサイドで行った。この方法を治療中の患者59人において試験した。33人の患者においてチェアサイドでの認知行動療法が3か月間にわたり行われた。残りの26人は透析中に認知行動療法を受けなかった。3か月後および6か月後に患者は評価を受けた。その結果、治療群においてはコントロール群と比較し有意にうつ病スコアの低下が大であった。スタディ開始時点でうつ病と診断された患者のうち、治療終了時にうつ病でなかったのは治療群で89%であったのに対しコントロール群では38%であった。治療群の患者はQOLが大きく改善し、透析日から透析日の間の水分摂取コントロールも良好であった。チェアサイドでの治療はうつ病と闘っている腎不全患者の20〜44%に役立つ可能性がある、と筆者らは結論付けている。

術後譫妄は退院後1年経過していても認知症様疾患の予測因子となる [2013-10-15]
Post-surgical delirium is predictor of dementia-like disease as long as one year after discharge

世界中において集中治療室(ICU)で治療される患者は治療開始時には認知機能障害の所見がないが、退室時には外傷性脳損傷(TBI)や軽度アルツハイマー病(AD)患者に認められるのと同様な障害をしばしば有しており、それらは少なくとも1年間は持続するとのスタディ結果がNew England Journal of Medicineに掲載された。研究者らは呼吸不全、心原性ショックまたは敗血症性ショックの成人患者821人を調査した。スタディの対象となった患者の74%が入院中に譫妄を発症し、ICU退室から1年経過してもこれが認知症様脳疾患の予測因子であることが示された。3か月後にスタディ対象患者の40%において全般的認知機能スコアがTBI患者と同等であり、26%がAD患者と同等であった。障害は高齢患者および若年患者いずれにおいても生じ、また合併症の有無に関係なく、12か月後まで持続し、34%および24%がそれぞれTBIおよびAD患者と同等のスコアであった。

スタチン系薬剤は長期使用により認知症および記憶力低下を予防する可能性がある一方で短期の認知機能の問題は引き起こさない [2013-10-15]
Statin medications may prevent dementia and memory loss with longer use while not posing any short-term cognition problems

スタチン系薬剤使用による心筋梗塞予防に関する数十ものスタディをレビューした結果、一般的に処方されるこの薬剤が短期記憶は障害せず、さらに1年以上内服すると認知症を予防する可能性すらあることが示された。このスタディにおいて研究者らは、計41の異なるスタディの中から最も適切である16のスタディに絞り、2つの異なる解析を行った。最初の解析は短期間のスタチン使用による記憶、注意力および問題解決などの認知機能に対する影響を観察した。この解析のために、Digit Symbol Substitution Test(数字符号置換検査)として知られる標準的かつ客観的な計測法を用いたスタディを使用した。もう1つの評価では、参加者が1年以上にわたりスタチンを内服し後のアルツハイマー病または血管性認知症の診断との相関の有無を観察したスタディに焦点を当てた。その結果、スタチンは短期記憶または認知機能には影響しないことが明らかになった。一方、スタチン系薬剤を1年以上内服すると、認知症リスクは29%低下した。これらの結果はMayo Clinic Proceedingsオンライン版に掲載されている。

アルツハイマー病に特徴的な神経変性パターンを引き起こす変異が認められた [2013-10-08]
Observed mutations leads to a pattern of neurodegeneration characteristic of Alzheimer's disease

60歳以降に発症する一般的なタイプのアルツハイマー病(AD)を引き起こすと思われる2つのまれな遺伝子変異が同定され確証されたとの研究結果がNeuron 10月16日号に掲載予定である。この2つの変異はADAM10(アミロイド前駆体蛋白処理過程に関わる酵素のコーディングを行う)と呼ばれる遺伝子内に発現する。このADAM10が今、後期発症ADの第2の病理学的に確認された遺伝子および全般的なAD遺伝子の第5番目となる。この研究ではマウスADモデルの脳内においてADAM10内の2つの変異がいかにして毒性アミロイドベータ(A-beta)蛋白の生成および蓄積を増加させるかについて述べている。この変異はまた、学習や記憶に対する重要な脳の一部である海馬の新たな神経細胞の生成を減少させる。ADAM10におけるこれら2つのまれな変異の多くの作用から酵素の活性低下によりADが起こり得ることが強く示唆される。これらの結果はADAM10が治療および予防の両方で有望な治療標的であることを支持するものである。

オメガ3脂肪酸の豊富な食物は認知機能低下を予防または遅延させる防護効果は有していない可能性がある [2013-10-08]
Foods high in omega-3 fatty acids may not have protective effect in preventing or delaying cognitive decline

過去のスタディ結果に反して、Neurology®に掲載された新たな研究の結果、オメガ3脂肪酸の思考能力への恩恵は認められない可能性のあることが示唆された。オメガ3系はサーモンなどの魚やナッツ類に含まれる。今回のスタディはWomen's Health Initiative臨床試験に登録された65〜80歳の女性2,157人を対象とし、年1回の思考および記憶力試験を平均6年間受けた。参加者の血液内オメガ3脂肪酸量を計測するために、スタディ前後に血液検査を施行した。その結果、オメガ3系レベルの高い女性と低い女性とで初回の記憶力検査の結果には差がなかった。また、経時的な思考能力低下速度に関しても2群間で差はなかった。今回の結果ではオメガ3系の認知機能低下予防または遅延作用は認めなかったが、この結果に基づき食事内容を変化させることは推奨できないと研究者らは述べている。

簡単な2つの質問による調査はがん患者の大うつ病を正確にスクリーニングする [2013-10-01]
Simple two-question survey accurately screens cancer patients for major depression

簡単な2つの質問による調査で、がん患者の大うつ病を正確にスクリーニングできたとのスタディ結果が第55回American Society for Radiation Oncology学会で発表された。この2つの質問による調査では、過去2週間に患者が物事を行うのに興味や楽しみがほとんどなかったか、および患者の気分が沈んでいたか、うつ状態であったかまたは絶望していたかを尋ねるものである。それぞれの質問に対し患者は、全くない(0点)、何日か(1点)、半分以上の日数(2点)、またはほぼ毎日(3点)のいずれかで回答した。2つの質問の合計点数が3点以上の患者は、うつ病であるリスクが高いと考えられた。スタディは米国の37施設で放射線療法を受けているがん患者455人を対象とした。患者は初回放射線治療を受ける前または受けたあと2週間以内に調査された。16%の患者がスクリーニングの結果うつ病であるとされた。この2つの質問による調査は、Patient Health Questionnaireの9つの質問のうち最初の2問から成っている。2つの質問によるこの簡易スクリーニング検査は、それより長い9つの質問によるスクリーニング検査と同等に正確であることが証明された。これは他の2つのスクリーニング検査よりも正確であった、と研究者らは締めくくっている。

認知機能を高めることを目的とした薬剤は軽度認知機能障害を有する患者において短期的には有効であるが長期効果はない [2013-10-01]
Drugs intended to enhance cognition have short term, but not long term effects in people with mild cognitive impairment

向知性薬―集中力、記憶力、敏捷性および気分を増強するために内服する薬剤―は軽度認知機能障害患者において長期的に認知能力や機能を改善しないとの新たなスタディ結果がCanadian Medical Association Journalに掲載された。この論文の背景資料には、向知性薬が認知症の発症を遅延させるとの仮説が立てられ、この薬剤を要求する家族や患者が増加傾向にあることが記されている。しかし、軽度認知障害患者に対するこれらの薬剤の有効性は確立されていない。カナダの研究者らは、軽度認知障害患者において4つの向知性薬(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、またはメマンチン)のうち1つとプラセボを比較した8つの無作為化トライアルを調査した。これらの薬剤を用いることによる1つの認知機能スケールにおける短期の有益性は認められたものの、約1年半後の長期効果は認められなかった。2つ目の認知機能スケールや機能、行動および死亡率におけるその他の有益性はなかった。これらの薬剤を内服した患者は嘔気、下痢、嘔吐および頭痛などを発現する割合が多かった。これらの結果は軽度認知機能障害患者に対する向知性薬の使用を支持しない、と結論付けている。