自殺リスクを予知する血液検査可能なRNAバイオマーカーが同定された [2013-08-27]
Researchers identify RNA biomarkers for possible blood test to predict risk of suicide

自殺念慮のある双極性障害患者や自殺未遂者の血液内において有意に高レベルである一連のRNAバイオマーカーが発見されたとの報告がMolecular Psychiatry誌に掲載された。3年間にわたり、研究者らは双極性障害と診断された男性患者を追跡し、自殺念慮のない状態から強い自殺念慮のある状態へと移行したサブセットを解析した。その結果、自殺念慮の"低い"状態と"高い"状態との遺伝子発現の差を同定し、これらの結果をConvergent Functional Genomicsと呼ばれる遺伝子およびゲノム解析システムに当てはめ、他のエビデンス系統と交差検定することにより最良のマーカーに優先順位を付けた。マーカーSAT1および他の一連のマーカーから自殺思考に関連した最強の生物学的"シグナル"が得られた。また自殺者の血液検体を解析した結果、いくつかの同じマーカーが有意に上昇していることも明らかになった。最後に、2つの患者群の血液検査の結果もあわせて解析し、高レベルのバイオマーカーと将来の自殺関連入院および血液検査以前の入院とに相関があることも示した。これらのバイオマーカーの検査は自殺念慮のリスクのある者を同定するのに役立つ可能性がある。

fMRIスタディによりアルツハイマー病の化学バイオマーカーの変化と同時に脳内の接続の傷害が検出された [2013-08-27]
fMRI study detects damaged connections in the brain simultaneous with changes to Alzheimer's chemical biomarkers

早期アルツハイマー病患者において、脳ネットワークの崩壊がアルツハイマー病の髄液中に現れる化学マーカーとほぼ同時に出現するとのスタディ結果が、JAMA Neurology誌に掲載された。研究者らは高齢だが認知機能の正常な研究ボランティア207人を調査した。数年の間、髄液採取を複数回施行し早期アルツハイマーの2つのマーカー(アルツハイマー脳内プラークの主要含有物であるアミロイドベータ[Aβ]および神経細胞の構成成分であるタウ蛋白)の変化に関して解析を行った。ボランティアはまた安静時機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いた画像検査を繰り返し施行された。アルツハイマー病がデフォルトモードネットワークと他の脳ネットワークの接続を傷害することが過去のスタディにより示されている。今回の新たなスタディの結果、この傷害は髄液内Aβレベルが上昇し始めタウ蛋白レベルが低下し始めるのとほぼ同時に検出可能となったことが示された。アルツハイマー病の発症までにほとんどが傷害されてしまうデフォルトモードネットワークの一部は、記憶に関する2つの脳領域である後帯状皮質と側頭葉内側領域を接続するものであった。

若年認知症の9つのリスクファクターが青年期まで追跡できる [2013-08-20]
Nine risk factors for young-onset dementia can be traced to adolescence

スウェーデンの男性を対象としたスタディの結果、そのほとんどが青年期まで追跡できる9つのリスクファクターが示唆され、65歳前に診断される若年認知症(YOD)のほとんどの症例の原因となっているとのスタディ結果がJAMA Internal Medicineにおいて報告された。スタディは1969〜1979年に徴兵された平均年齢18歳のスウェーデン人男性488,484人を対象とした。経過観察期間中央値37年間の間に487人が年齢中央値54歳の時点でYODと診断された。YODの有意なリスクファクターはアルコール中毒(ハザード比[HR]、4.82);脳卒中(HR、2.96);抗精神病薬使用(HR、2.75);うつ病(HR、1.89);父親の認知症(HR、1.65);薬物中毒(HR、1.54);徴兵時の認知機能低下(HR、1SD低下毎に1.26);徴兵時低身長(HR、1SD低下毎に 1.16);および徴兵時高血圧(HR、1SD低下毎に 0.90)との結果が得られた。全体でこれらのリスクファクターは、YOD症例の68%に認められた。これらの9つのリスクファクターのうち2個以上を有し全体的な認知機能が下から3分の1であった男性は追跡期間中のYODリスクが20倍高かった。

ADHDの青少年における携帯電話を使いながらの運転はスピードのばらつきや車線変更が多い [2013-08-20]
Distracted adolescents with ADHD show more variability in speed and lane position when driving

運転シミュレーターを用いたスタディの結果、注意欠陥多動性障害(ADHD)を有する青少年はADHDを有さない青少年に比べ、携帯電話を使いながらの運転ではスピードのばらつきや車線の変更が多いとのスタディ結果がJAMA Pediatricsに掲載された。このスタディの背景では、青少年は全体的に自動車事故が多いが、ADHDと診断された者はADHDを有さない対照よりも運転上の操作的欠陥が多いとされている。研究者らはADHDを有する(28人)および有さない(33人)16〜17歳の青少年61人に、3つの状況下(携帯電話のない状態、携帯電話での会話中、および文字通信中)で模擬運転中の調査を行った。ADHDに関連した運転の問題はスピードのばらつきおよび車線変更に影響するようであった。平均スピード、ブレーキ反応時間または事故の確率はADHDに関連のない運転の欠陥のようであった。しかし、スタディの結果、全ての青少年において文字通信は運転を"有意に障害"し、ADHDの青少年の有する運転関連の障害を増強することが示唆された。スピードを一定に保ったり車線を中央に維持したりするのには道路や本人の周囲に対し常に注意を払う必要があるため、今回の結果は驚くものではないと筆者らは述べている。

母乳育児期間の長かった女性はアルツハイマー病発症リスクが低い可能性がある [2013-08-13]
Mothers who breastfeed longer have a lower risk of developing Alzheimer's disease

Journal of Alzheimer's Diseaseに掲載された新たなスタディの結果、母乳育児を行った女性はアルツハイマー病発症リスクが低い可能性があり、母乳育児期間が長いほどさらにそのリスクが低下することが示唆された。このスタディで使用されたデータは英国人女性81人の非常に少人数のデータを収集したものであるが、母乳育児とアルツハイマー病リスクとの間に高度に有意な一貫した関連が認められた。これらは、年齢、教育歴、初産年齢、閉経年齢、および喫煙歴や飲酒歴などの可能性のある他の可変因子を考慮しても影響なく認められた。3つの主な傾向が観察された。母乳育児をした女性はしなかった女性よりもアルツハイマー病リスクが低かった。母乳育児歴が長いほどアルツハイマー病リスクが低かった。そして、一生のうちの総母乳育児期間に対する総妊娠期間の割合が高い女性はアルツハイマー病リスクが高かった。しかし、認知症の親や兄弟を有する女性においてはこの傾向は顕著ではなかった。この場合、認知症の家族歴のない女性と比較しアルツハイマー病リスクに対する母乳育児の影響は有意に低かった。

長時間の要求度の高い仕事を軽減することにより被雇用者のうつ病リスクが低下する [2013-08-13]
Reducing long hours and high job demands could lower employee depression

要求度の高い仕事を長時間行う被雇用者はうつ病を発症する確率が高いことがJournal of Occupational and Environmental Medicineに掲載されたスタディから示唆された。スタディの筆者らは、"長時間および過剰労働"(LHO)の組み合わせを標的とした介入が職場のうつ病リスク軽減に役立つ可能性があると述べている。研究者らは、218人の日本人事務職労働者において、うつ病リスクに影響する職業及び職場因子に関して解析した。その結果、長時間(週60時間以上)勤務で要求される仕事が多い("常に"過剰な仕事を抱えていることで定義)被雇用者はうつ病リスクが高かった。最初にLHOの組み合わせであった労働者は1〜3年後に再評価した際にうつ病である可能性が15倍高かった。他の因子で補正すると、LHOからLHOでない状態に移行した労働者はうつ病リスクが低く、一方非LHOからLHOへ移行した労働者はリスクが上昇した。LHO労働者におけるうつ病リスクは時間とともに上昇するようであった。過去のスタディから、身体的および精神的健康への長時間労働の影響に関しては様々な結果が報告されている。

薬物不使用、集学的プログラムは注意欠陥多動性障害の症状消失に成功した [2013-08-06]
Drug-free, multi-modal program successfully eliminate symptoms of attention deficit hyperactivity disorder

Frontiers, In Child Health and Human Developmentに掲載された無作為化スタディの結果、薬物不使用、集学的プログラムは注意欠陥多動性障害(ADHD)に関連した症状を消失させるのに有効であり認知機能を有意に改善することが示された。このスタディは、4〜13歳の介入群のADHD小児122人とコントロール群のADHD小児から構成されていた。それぞれの小児が注意欠陥、多動、衝動性、学力低下、および/または問題行動を有していた。介入群は12週間の感覚運動エクササイズ、認知エクササイズおよび栄養指導からなる集学的プログラムに組み入れられた。このプログラムは身体バランスおよび脳および大脳半球の時間干渉性に加え、子供の年齢や学年に合わせた技術の均一性を達成することを目的とした。12週後、集学的プログラムに組み入れられた小児の81%はもはやADHDのクライテリアには合致しなかった。さらに、介入群小児の60%が2学年分の学力の伸びを達成し、35%の小児は複数の学科で4学年分の伸びを達成した。この結果は、症状の改善が認知機能や学力の達成の有意な改善を伴うことを意味する。

薬物抵抗性うつ病患者に対しイソフルランは電気痙攣療法の代替療法となる可能性がある [2013-08-06]
Isoflurane may provide alternative to electroconvulsive therapy for patients with medication-resistant depression

電気痙攣療法(ECT)は薬物抵抗性うつ病の最も有効な治療と考えられてきたが、その副作用のためにこの恩恵を被る可能性のある何百万人もの患者がこの治療を利用していない。PLOS One誌に掲載された最近のスタディ結果が大規模スタディやトライアルにより認められれば、難治性うつ病患者はいつの日かECTと同等に有効であるが副作用のない代替療法−外科的麻酔薬イソフルラン−を得ることができる可能性がある。ECT治療を受けた患者20人とイソフルラン治療を受けた患者8人を比較したパイロットスタディにおいて、どちらの治療法もうつ症状を有意に軽減することが示された。治療直後に、ECT患者は記憶、言語流暢性、および処理スピードの低下を示した。ECTに関連したこれらの異常のほとんどは4週後までに消失した。しかしECT患者において、治療4週後の自己の過去に関する記憶、または個人的な人生のイベントの記憶は治療前レベル未満であった。一方、イソフルランで治療された患者は実質的な障害を示さず、治療直後および治療4週後のいずれにおいてもECT患者よりも認知機能検査の改善度が大であった。