PETスキャンにより心的外傷の生化学的作用および心的外傷後ストレス障害への関連に関する深い理解が得られる [2013-05-28]
PET scans provide insights into biochemical impact of trauma and its relationship to post-traumatic stress disorder

心的外傷の生化学的作用を解明するために研究者らは、CB1受容体として知られる人間の脳内カンナビノイド受容体量と心的外傷後ストレス障害(PTSD)との関連を明らかにした、とMolecular Psychiatryオンライン版に掲載されSociety of Biological Psychiatry年次集会で発表された。スタディでは60人の参加者を3群(PTSDを有する者;心的外傷歴はあるがPTSDを有さない者;心的外傷歴もPTSDも有さない者)に割り付けた。3群全てが陽電子放射断層撮影(PETスキャン)に曝露されるとCB1受容体を発光させる無害の放射性トレーサーを投与された。PTSDを有する参加者、特に女性はPTSDを有さないボランティアと比較し恐怖や不安に関連した脳領域のCB1受容体を多く有していた。PTSD群はまた、CB1に結合する内在性カンナビノイドである神経伝達物質アナンダミドレベルが低かった。筆者らの説明によると、アナンダミドレベルが低すぎると、脳はCB1受容体数を増加させることで代償する。これは脳が残存している内在性カンナビノイドを使用するのに役立つ。CB1受容体やアナンダミドレベルの検査などのPTSDの生化学的マーカーにより、心的外傷の被害者に対する診断や治療が改善する可能性がある。

メラノーマ以外の皮膚がんを有する人々は加齢後にアルツハイマー病を発症するリスクが低いようである [2013-05-28]
People with non-melanoma skin cancer appear less likely to develop Alzheimer's disease as they age

メラノーマ以外の皮膚がんを有する人はアルツハイマー病を発症する確率が低い可能性があるとの研究結果がNeurology 2013年5月15日号オンライン版に掲載された。このスタディは、スタディ開始時に認知症を有さない1,102人(平均年齢79歳)を対象とした。参加者は平均3.7年間追跡された。最初に109人がメラノーマ以外の皮膚がん(つまり、基底細胞がんまたは扁平上皮癌)の既往を有すると報告した。さらに32人が皮膚がんを、126人が認知症(100人のアルツハイマー病を含む)を発症した。皮膚がんを有する人は皮膚がんを有さない人よりもアルツハイマー病を発症する確率が80%低かった。皮膚がんを有する141人のうち、2人がアルツハイマー病を発症した。この関係は血管性認知症などの他のタイプの認知症では認められなかった。身体活動は認知症を予防することが知られており、アウトドア活動はUV照射への曝露を増加させ皮膚がんのリスクを上昇させることから、この関連性を説明できる可能性の1つは身体活動であろうと筆者らは推定している。これらの結果は日焼け止めの使用や他の皮膚がん予防法を中止すべきであるという意味ではない、と彼らは注意を喚起している。

うつを有する中年女性は脳卒中を発症するリスクが約2倍である [2013-05-21]
Depressed middle-aged women have almost double the risk of having a stroke

うつを有する中年女性は脳卒中を発症するリスクが約2倍であるとの研究結果がStroke 5月16日号に掲載された。研究者らは、オーストラリアのAustralian Longitudinal Study on Women's Healthに参加した47〜52歳の女性10,547人の調査結果を解析した。参加者は、精神的および身体的な健康および他の個人的詳細に関する質問に1998〜2010年の間3年毎に回答した。標準化うつ病スケールに対する参加者の回答および最近の抗うつ薬の使用状況に基づき、約24%の参加者がうつであると報告した。自己報告の回答および死亡記録の結果、初回の脳卒中は177件認められた。12年後にうつを有する女性はうつを有さない女性と比較し、脳卒中のリスクが2.4倍高かった。脳卒中リスクを上昇させるいくつかの因子を除外しても、うつを有する女性は依然として脳卒中を発症するリスクが1.9倍高かった。今回のスタディにおいてうつ病による脳卒中リスク上昇は大であったが、この年代の女性にしては脳卒中の絶対的リスクはかなり低かった:全女性のうち、わずか1.5%が脳卒中を発症した。この数字はうつ病を患う女性において2%余りの上昇であった。

親が薬物依存やアルコール依存であると、そうでない同胞と比較しうつ病を発症する確率が高い [2013-05-21]
Individuals whose parents were addicted to drugs or alcohol are more likely to develop depression than their peers

薬物やアルコールの依存症である親の子供はそうでない同胞よりも成人期にうつ病になる確率が高いとのスタディ結果がPsychiatry Research誌オンライン版に掲載された。研究者らはカナダ人の代表的な成人標本6,268人において親の依存症と成人のうつ病との関連を調査した。回答者のうち312人は調査前1年以内に大うつ病エピソードを有し、877人は18歳未満の時には自宅に住み少なくとも1人の親が"家庭に問題を引き起こすほど頻繁に"飲酒するかまたは薬物を使用していた。年齢、性および人種で補正した後、親の依存症は成人期うつ病の確率が2倍以上であることと関連があった。小児期の虐待および親の無職から成人期の喫煙や飲酒などの健康習慣に至るまでの因子で補正しても、親の依存症により成人期のうつ病確率は69%高かった。このスタディでは、親の依存症とその子供の成人期うつ病との関連性の原因を決定付けることはできなかった。

日常の出来事を処理するにあたっての問題は脳の側頭葉内側部における加齢性萎縮の結果である可能性がある [2013-05-14]
Problems processing everyday events may be the result of age-related atrophy of the brain's medial temporal lobe

高齢者によくみられる記憶障害の一部は、日々の生活を個々の体験に区分化できないことに由来する可能性があるとの新たな研究の結果がPsychological Scienceに掲載された。このスタディにおいて高齢者−その一部はアルツハイマー型認知症を有する−は朝食を作る女性やレゴブロックの船を作る男性が日常生活業務を行っている短い動画を観た。彼らは動画内の一つの活動が終了し新たな活動が開始したと思ったらボタンを押して、この動画を区分化するよう指示された。その後に、動画で起こっていたことを思い出すように言われた。研究者らはまた構造的MRIを用いて高齢者の側頭葉内側部(MTL)のサイズを計測した。MTLの委縮を示した高齢者は日常生活動作を上手に思い出せず、また出来事を区分化するのも苦手であった。これらの結果から、高齢者に特徴的な物忘れは、単に後に記憶を呼び起こすことの問題だけではなく、出来事が展開する際にどのように考察し区分化するかというMTL機能に依存する過程の問題でもあることが示唆される。

抗コリン薬をわずか60日間使用することで高齢者の記憶障害が引き起こされる可能性がある [2013-05-14]
Using anticholinergics for as few as 60 days causes memory problems in older adults

高齢者に一般的に内服されている薬物に関する研究の結果、強力な抗コリン作用を有する薬剤は60日間ほどの短期間でも連続使用すると認知機能障害が引き起こされることが示されたとのスタディ結果がAlzheimer's & Dementia印刷版に先立ちオンライン版に掲載された。同様の作用は、弱い抗コリン作用を有する複数の薬剤を90日間連続使用することでも観察することができる。高齢者は一般的に睡眠薬として、または尿漏れ緩和目的で市販の抗コリン薬を使用している。抗コリン薬は、高血圧、心血管疾患および慢性閉塞性肺疾患などの多くの慢性疾患に対しても頻繁に処方されている。3,960人の高齢者を対象とした今回のスタディは、この種の薬剤の使用期間が脳にどのように作用するかを研究した初めてのものである。強い抗コリン作用−単剤または複数薬のいずれかによる−と、2〜3か月間のこの強い負荷への持続的な曝露が重なることにより認知機能障害を発症するリスクは約2倍になった。抗コリン薬と認知機能障害との関連は過去に報告されているが、抗コリン作用負荷の蓄積は予想外であり、抗コリン負荷と認知症との関連も明らかにされていなかった。

心血管リスクファクター増加と認知機能低下との間に関連が認められた [2013-05-07]
Association found between increased cardiovascular risk factors and decreased cognitive function

35歳くらいの若年成人であっても、心血管リスクファクターが増加すると認知機能が低下するとの新たな研究結果がAmerican Heart Association学会誌Strokeに掲載された。スタディは35〜82歳の参加者3,778人を対象とし、課題を計画し結論付けたり開始や変更したりする能力を測定する認知機能検査を施行した。別の検査で記憶能を評価した。Framinghamリスクスコアにより、彼らのその後10年間の心血管イベントリスクを決定した。心疾患リスクを最も多く有する参加者はリスクが最も少ない者と比較し、認知テストの成績が50%不良であった。総Framinghamリスクスコア、年齢、糖尿病、LDLコレステロールおよび喫煙は認知機能スコア不良と関連した。非喫煙者と比較し1日1〜15本の喫煙をする者は認知スコアが2.41点低く、1日16本以上の喫煙をする者は3.43点低かった。記憶力スコアも同等の関連を認めた。2つの危険因子−喫煙と糖尿病−は認知機能の強力な決定因子であった。禁煙プログラムはがん、脳卒中および心血管イベントを予防するのみならず認知機能障害も予防する可能性がある、と筆者らは提言している。

脳内の炎症反応に関連する遺伝子が遅発性アルツハイマー病を引き起こす重要なメカニズムである [2013-05-07]
Genes involved in the inflammatory response in the brain is a crucial mechanism driving late onset Alzheimer's disease

脳内の炎症反応に関連する遺伝子のネットワークが遅発性アルツハイマー病(LOAD)の重要なメカニズムであるとの研究結果がCellオンライン版に掲載された。研究者らは死亡したLOAD患者376人のDNAの総合解析を行い、遺伝子発現データとともに疾患の重要なメカニズムを引き起こす大規模な遺伝子ネットワークの相互接続関係を明らかにした。彼らは大量データの複雑な数式的表現である生物学的ネットワークモデルを作成した。これらのネットワークからは、疾患に関連する重要な遺伝子のみでなくこれらの遺伝子がコントロールする生物学的パスウェイをも統合した統一型マップが得られる。科学者らは、これまでにアルツハイマー病との関連が示されたことのなかった炎症遺伝子TYROBPに関連するパスウェイを同定した。TYROBPは、最近アルツハイマー病に関連することが明らかにされた他の遺伝子TREM2と相互作用することが知られている。このように、今回の新たな論文においては、TREM2-TYROBPパスウェイが一般的な型のアルツハイマー病を引き起こすのに中心的な役割を果たしていることに注目している。このネットワークモデルはアルツハイマー病の新たな包括的な理解を提供し、介入できる可能性のある標的を見極める。