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統合失調症リスクの高い人々において過剰なグルタミン酸は精神疾患への移行を引き起こすようである [2013-04-30] |
Excessive amounts of glutamate appears to cause transition to psychosis for people at risk for schizophrenia |
統合失調症リスクの高い人々において脳内神経伝達物質グルタミン酸の過剰は精神疾患への移行を引き起こす可能性があるとのスタディ結果がNeuron最新号に報告された。研究者らはまず統合失調症リスクを有する若年者25人のグループを追跡し、患者が精神疾患を発症する際に脳に何が起こっているかを確認した。統合失調症を発症した患者においては海馬のグルタミン酸活性が上昇し、海馬の代謝が上昇し、その後に海馬が萎縮し始めた。グルタミン酸の増加が別の海馬の変化を引き起こすかどうかを観察するために、研究者らはマウス統合失調症モデルの研究を行った。マウスのグルタミン活性を上昇させると、患者と同じパターンの変化が観察された:海馬の代謝が上昇し、グルタミン酸が繰り返し増加すると海馬は萎縮し始めた。論理的に、このグルタミン酸の調節障害および過剰代謝は、疾患リスクを有する者または早期疾患患者の画像検査により検出可能である。これらの患者においてグルタミン放出を調節することにより海馬を保護し精神疾患を予防またはその進行を遅延させることができる可能性がある。 |
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認知の脆弱性は"伝染性"である可能性がありうつ病の発症を予測する [2013-04-30] |
Cognitive vulnerability can be "contagious" and predict episodes of depression |
Clinical Psychological Scienceに掲載されたあるスタディの結果、人々をうつ病に罹りやすくするある特定の考え方は実際他人に伝染し、6か月後にはその人たちのうつ症状を増強させることが示された。研究者らは、認知の脆弱性は社会的環境が激変する人生の重要な移行期において"伝染性"である可能性があるとの仮説を検証した。彼らはその仮説を、大学1年生になったばかりの無作為化したルームメートのペア103組のデータを用いて調査した。ルームメートらは入学当時およびその3か月後と6か月後に認知の脆弱性およびうつ症状に関する計測を含むオンラインアンケートに回答した。また、3か月後と6か月後におけるストレスの多かった人生の出来事に関しても回答した。高レベルの認知脆弱性を有するルームメートとのペアに無作為に割り付けられた者は、ルームメートの認知形式を"捕捉"し、高レベルの認知脆弱性を発現しやすかった。最初の認知脆弱性レベルの低かったルームメートに割り当てられた者は、自身の認知脆弱性レベルが低下した。さらに、入学3か月以内に認知脆弱性の上昇を示した学生は、このような上昇を示さなかった学生よりも6か月後のうつ症状レベルが2倍近く高かった。 |
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重度のうつを電気痙攣療法で治療することにより一部の患者のQOLを回復させることができる [2013-04-23] |
Treating severe depression with electroconvulsive therapy can restore quality of life for some patients |
電気痙攣療法(ECT)後6か月間に重度のうつが寛解した患者は健康人と同程度にまでQOLが改善したとのスタディ結果がJournal of Affective Disordersに掲載された。研究者らは500人を超える患者が身体機能、疼痛、活気や社会的機能などの項目に関して自己評価して回答したQOLに関するアンケートを解析した。患者の約半分がECT後に寛解状態になった。研究者らは6か月後も寛解を保っていた患者64人のECT前後のQOLに関する計測値を収集した。そしてその計測値を、ECTを受けなかったうつ病患者および健康人500人のものと比較した。治療後には最も不良なスコアは全般的に正常化していた。残念ながら、寛解を維持できた患者は多くはなかった。治療成功後、ECT患者は身体的疼痛や精神面の健康に関して健康人よりも高く評価した。しかし、治療前に最も点数が低かった情緒的役割−他者と関わったり共感を感じたりする能力−は正常または正常に近いレベルには回復しなかった。この芳しくない結果は、これらの患者では仕事や他の日常活動においてそれほどの効力はなかった可能性がある、と研究者らは述べている。 |
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GBA1変異キャリアとレビー小体型認知症との有意な相関関係が認められた [2013-04-23] |
Significant association found between GBA1 mutation carrier status and dementia with Lewy Bodies |
JAMA Neurologyオンライン版に掲載されたスタディの結果、グルコセレブロシダーゼ(GBA1)変異はレビー小体型認知症(DLB)のリスクファクターであることが示唆された。このスタディでは、ジェノタイピングを施行している世界中の11施設の患者およびコントロールのジェノタイプデータを比較した。721例がDLB診断基準に合致し151人は認知症を伴うパーキンソン病(PD)であった。これらの症例を、年齢、性別、および人種でマッチさせた同施設のコントロール1,962人と比較した。その結果、GBA1変異キャリアとDLBに有意な相関が認められ、そのオッズ比は8.28であった。認知症を有するPDのオッズ比は6.48であった。DLB診断時の平均年齢は、GBA1変異キャリアにおいて非キャリアよりも早く(63.5歳対68.9歳)、疾患重症度スコアも高かった。GBA1変異はPDにおいてよりもDLBにおいて遺伝子要因としてかなり大きな役割を果たしているようであり、この変異によりレビー小体病におけるグルコセレブロシダーゼの役割に関する知見が提供される、と筆者らは結論付けている。 |
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新たな遺伝子マーカーはアルツハイマー病リスクの高い人を検出する可能性がある [2013-04-16] |
New genetic markers may signal who is at increased risk for Alzheimer's disease |
脳内および髄液内に、ある物質が蓄積している人はアルツハイマー病発症率が高いが、現段階ではどの人にこれらの蛋白が蓄積するかが明らかにされていない。今回Neuron 4月24日号においてこれらの蛋白蓄積レベルに影響するある遺伝子領域の変異が明らかにされた。タウの発現に関連した過去のゲノム解析は少人数の患者においてしか施行されていなかった。今回の新たなスタディでは1,269人の情報が得られ、過去のスタディの3倍以上の規模となった。研究グループにより同定された2 つ目の遺伝子領域は、細胞受容体をエンコードする遺伝子TREM2およびTREML2を含むTREM2ファミリーの他の遺伝子であった。これらの遺伝子は類似しているが、TREM2とTREML2の脳脊髄液タウ値との関連は逆である―ひとつはアルツハイマー病リスクと関連し、もうひとつは防御的に働く。4つ目の遺伝子APOEはかなり以前にアルツハイマー病のリスクファクターであることが明らかにされた。これはアミロイドβと関係しているとされてきたが、今回の新たなスタディではAPOEはタウ値上昇に関連するようであった。 |
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女性化乳房に対する自己肯定感および社会生活機能に及ぼす心理的影響から早期介入および治療が支持される [2013-04-16] |
Psychological effects of gynecomastia on self-esteem and social functioning support early intervention and treatment |
女性化乳房が青年期男子における自己肯定感や精神的、情緒的健康に持続的な悪影響を及ぼすとの研究結果がPlastic and Reconstructive Surgery® 4月号に掲載された。研究者らは、女性化乳房に関して診療中の健康な青年男子47人(平均年齢16.5歳)に一連の心理テストを行い、乳房腫脹のない男子の結果と比較した。女性化乳房患者の62%は軽度から中等度の乳房腫脹を有していた。過去のスタディと同様に、女性化乳房の男子は過剰体重または肥満であった(64%)のに対し、対照群では41%であった。女性化乳房の患者は標準的なQOLスコアが低く、いくつかの領域において問題のあることが示唆された。体重やボディーマスインデックスによる補正後であっても、女性化乳房患者は全般的な健康、社会生活機能およびメンタルヘルスのスコアが低かった。彼らはまた身体的健康度のスコアも低く、これは過剰体重が原因であった。乳房腫脹はまた自己肯定感の低さにも関連した。情緒領域のQOL障害とともに、これらはいずれも過剰体重よりも女性化乳房に直接関連しているようであった。女性化乳房の心理的悪影響はその重症度に関係なく同等であった。 |
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睡眠時無呼吸を有する小児は行動、適応および学習の問題におけるリスクが高い [2013-04-09] |
Children with sleep apnea have higher risk of behavioral, adaptive and learning problems |
小児において閉塞性睡眠時無呼吸はADHD様行動問題や他の適応および学習問題の発症率が高いとのスタディ結果がSLEEP誌4月号に掲載された。この5年間のスタディでは、6〜11歳の小児を前向きに調査し睡眠呼吸障害有病率およびその神経行動学的機能に対する効果を判定した。スタディには263人が組み入れられ、夜間睡眠検査および親と子供の報告した評定尺度を含む一連の神経行動学的評価を施行された。行動上の問題を有する確率は偶発的睡眠時無呼吸を発症した小児において4〜5倍高く、持続性睡眠時無呼吸を有する小児において6倍高かった。睡眠時呼吸障害を有したことのない者と比較し、睡眠時無呼吸を有する小児は多動、注意、破壊的行為、コミュニケーション、社会的能力および自己管理の領域について、親からの問題報告が多かった。持続性睡眠時無呼吸を有する小児はまた、親が学習問題を報告する確率が7倍高く、学校のグレードが低い確率が3倍高かった。 |
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卵巣摘出術後の突然のエストロゲン減少は認知機能低下および認知症を増加させる [2013-04-09] |
Abrupt estrogen loss following oophorectomy associated with increased cognitive decline and dementia |
卵巣摘出術により突然早期エストロゲン減少を来した女性は認知機能低下および認知症が2倍であるとのスタディ結果がBrain誌に掲載された。女性において起こっていることを再現しようとする中で、研究者らはエストロゲン産生卵巣を摘出した直後に低用量エストロゲン療法を施行し10週間を経過したラット、摘出10週後にエストロゲン療法を開始したラット、およびエストロゲンを投与しなかったラットを観察した。学習および記憶の中心を担う脳の海馬に脳卒中様イベントを発症させたところ、遅くエストロゲン療法を開始したラットおよび全くエストロゲンを投与しなかったラットにおいては、通常は脳卒中耐性を有するCA3と呼ばれる海馬領域において特に脳の損傷が大きかった。さらに悪いことに、エストロゲン療法を行われなかったか遅く開始されたラットにおいては、CA3領域にアルツハイマー病関連蛋白が大量に産生され、アルツハイマー病の特徴であるβアミロイド蛋白の最も毒性の強いもののひとつに高感受性になった。これら2つの問題はいずれも脳内フリーラジカル産生増加に関連しているようであった。興味深いことに、酸素不足などのストレスに対する脳の感受性増加には性差があった。 |
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パーキンソン病と診断された時点での軽度認知障害は早期認知症発症リスクの増加と関連する [2013-04-02] |
Mild cognitive impairment at Parkinson disease diagnosis associated with increased risk for early dementia |
パーキンソン病(PD)と診断された時点での軽度認知障害は早期痴呆発症リスク増加と関連するようであるとのノルウェーのスタディ結果がJAMA Neurologyオンラインファースト版に掲載された。PD患者は健康な人々と比較し認知症のリスクが高いため、研究者らは軽度認知障害(MCI)の経過および認知症への進行について調査しようと考えた。この前向き地域住民を対象にしたスタディには、PD患者182人が組み入れられ3年間観察された。スタディ開始時点にMCIを有した患者の方が有さなかった患者よりも、追跡期間中に認知症を発症する確率が高かった(37人中10人[27%]対145人中1人[0.7%])。ベースライン時点でMCIを有していた者のうち37人中8人(21.6%)が追跡期間中に正常な認知機能に回復した。1年後の診察の時点で、軽度認知障害を有していた場合の認知症発症率および正常認知機能への回復率は同様であった(それぞれ36人中10人[27.8%]および36人中7人[19.4%])。ベースライン時および1年後の時点で持続性にMCIを有する22人中10人(45.5%)がスタディ終了時点までに認知症を発症しており、MCIから正常認知機能に回復したのはわずか2人(9.1%)であった。 |
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アルツハイマー病患者においてうつで認知機能が低い状態は機能的能力低下が速いことと関連する [2013-04-02] |
Depression and lower cognitive status associated with faster decline in functional abilities for people with Alzheimer's disease |
うつ症状および認知機能低下がより強いと日常生活の課題をこなす能力の低下がより速いことと独立して関連するとのスタディ結果がJournal of Alzheimer's Diseaseに掲載された。アルツハイマー病患者の約半数はうつ病を有しているため、この疾患における認知機能と機能的能力との長期の相関を調査していた研究者らはアルツハイマー病の進行におけるうつ症状の影響についても観察した。彼らはアルツハイマー病の可能性の高い患者517人において認知機能、うつ、および日常の機能の変化を追跡したデータを解析した。患者は6か月ごと、5.5年以上前向きに調査された。認知機能および機能的能力はスタディ期間を経るごとに悪化したが、うつ症状はほぼ安定していた。認知機能および機能的能力の低下率は患者全体において相関がありまた患者ごとに対になっていることから、この2つは同様の経時変化をすることが示唆された。最初の認知機能の状態が不良であるとその後の機能低下が速く、またその逆も同様であった。うつ症状が重度であると最初の機能が不良でありその後の機能低下が速かった。これらの結果は観察研究であるが、これらの結果からアルツハイマー病患者に対して精神科的治療を行うことにより自立性の低下を遅延させる可能性が示唆される。 |
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