統合失調症発症における突然変異遺伝子の役割を高めるエビデンス [2013-01-29]
Evidence mounts for role of mutated genes in development of schizophrenia

統合失調症発症率の高いある一家族におけるあるまれな遺伝子変異が疾患発症において役割を果たしているようであるとの報告がMolecular Psychiatry誌に掲載された。遺伝子Neuronal PAS domain protein 3(NPAS3)の変異を有する家族は統合失調症または健康を害する他の精神疾患の発症リスクが高いようであると研究者らは述べている。このスタディにおいて、研究者らは血液検体を用いて統合失調症患者または関連疾患である統合失調感情障害を有する34人のDNAを検索した。34人全員が家族に一人以上の統合失調症患者を有していた。研究者らは特にNPAS3変異―過去の研究において統合失調症に関係しうることが示唆された―を探し、そして一つの家族においてこれを発見した。この一家族(両親と4人の成人した子供)の血液検体を解析した結果、統合失調症の母親、統合失調症の2人の子供、および大うつ病の1人の子供はNPAS3 変異型を有していることが明らかになった。NPAS3遺伝子は933のアミノ酸を含む蛋白の生成の指令を出す。変化した遺伝子がある欠陥(バリンがイソロイシンに入れ替わる)を引き起こした。

聴力損失を有する高齢者は認知機能低下加速のリスクが高い [2013-01-29]
Older adults with hearing loss have increased risk for accelerated cognitive impairment

あるスタディの高齢者において、聴力損失は認知機能低下および認知機能障害と独立して関連があるようであるとの報告がJAMA Internal Medicineオンライン版に掲載された。研究者らはある前向き観察研究に組み入れられた高齢者1,984人(平均年齢77歳)を調査した。スタディ開始時に聴力損失を有していた高齢者計1,162人では、聴力の正常な人々よりも、全般的および実行機能で計測した検査スコアの年間低下速度が、それぞれ41%および32%大きかった。聴力の正常な人々と比較し、スタディ開始時に聴力損失を有していた人々は認知機能障害発現リスクが24%高かった。3MS(モディファイミニメンタルステート検査)における5点の低下(認知機能障害を示す変化として一般的に認められているレベル)が認められるまでの期間は平均して、聴力損失者では7.7年であるのに対し、聴力が正常な者では10.9年であろうと筆者らは述べている。今回認められたこの関連性の構造的基盤やそのパスウェイが聴力リハビリ介入に反応するか否かを調査するさらなる研究が必要である、と筆者らは指摘している。

二か国語を使用する高齢者は認知的柔軟性課題を行う際の消費エネルギーが少ない [2013-01-22]
Older bilinguals expend less energy when performing cognitive flexibility tasks

小児期から二か国語を話し続けている高齢者は単一言語を使用してきた高齢者よりも一つの課題から他の課題への切り替えが速いとのスタディ結果がThe Journal of Neuroscience 1月9日号に掲載された。単一言語を使用する同胞対象と比較し、終生の二か国語使用者は切り替える際の脳の活動性パターンも異なっていた。研究者らは機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて健康な二か国語使用高齢者(60〜68歳)と健康な単一言語使用高齢者の、認知機能の柔軟性を検査する課題をこなす際の脳の活動性を比較した。両群ともに課題は正確に行った。しかし、二か国語使用者は単一言語使用者よりも前頭皮質−課題切り替えに関わることが知られている−のエネルギー消費が少ないにもかかわらず課題を施行するのが速かった。研究者らはまた、若年の二か国語使用者および単一言語使用者についても認知的柔軟性課題を行う際の脳の活動性を計測した。若年者は課題をこなすのが速く、若年者においては二か国語使用者であることは課題の成績や脳の活動性に影響しなかった。これらの結果から、二か国語使用高齢者は単一言語使用者よりも脳をより効率よく使っていることが示唆された。

うつ病のリスクは甘味飲料を飲む人々において高いがコーヒーを飲む人では低いようである [2013-01-22]
Risk of depression appears greater for people who drink sweetened beverages but lower for those who drink coffee

甘味飲料、特にダイエット飲料を飲むことは成人のうつ病リスクを上昇させるがコーヒーはリスクを軽度低下させる。このスタディの結果は3月の第65回American Academy of Neurology学会で発表される。このスタディは組み入れ時50〜71歳の人々263,925人を対象とした。ソーダ、茶、フルーツパンチおよびコーヒーなどの飲料の摂取量が評価された。約10年後に研究者らは参加者がうつ病と診断されたかどうかを質問した。計11,311件のうつ病が診断された。ソーダを1日に4缶または4杯より多く飲む人はソーダを飲まない人と比較しうつ病を発症する確率が30%高かった。フルーツパンチを1日に4缶飲む人は甘味飲料を飲まない人よりもうつ病を発症するリスクが38%高かった。1日に4杯のコーヒーを飲む人はコーヒーを飲まない人よりもうつ病を発症する確率が10%少なかった。うつ病発症リスクは通常のソーダよりもダイエット飲料を、通常のフルーツパンチよりもダイエット飲料を、そして通常のアイスティーよりもダイエット飲料を飲む人において多いようであった。

高血圧管理に使用されるβ遮断薬はアルツハイマー病のリスクも低下させる可能性がある [2013-01-15]
Beta blockers used to manage hypertension may also reduce risk of Alzheimer's disease

高血圧管理のためにβ遮断薬を内服している患者は、アルツハイマー病および他のタイプの認知症の徴候の可能性のある脳の変化を有する確率が低い可能性があるとのスタディ結果が2012年3月に開催される第65回American Academy of Neurology学会で発表される。Honolulu-Asia Agingスタディに参加した高齢日系米国人男性774人に死亡解剖が施行された。そのうちの610人が高血圧を有するかまたは降圧薬を投与されていた。治療を受けていた約350人のうち、15%がβ遮断薬のみを、18%はβ遮断薬と他の薬剤を1種類以上、残りの人々は他の薬剤を投与されていた。いずれの治療も無治療よりは良い結果であった。しかし、唯一の降圧薬としてβ遮断薬を内服していた男性は、高血圧の治療を受けていなかった者または他の薬剤を投与されていた者よりも脳の異常が少なかった。β遮断薬と他の薬剤を投与されていた参加者においては脳異常の軽減数は中等度であった。これらの脳の異常には2つの異なる脳領域(アルツハイマー病、および通常無症候性脳卒中に属する微小梗塞を示す)が含まれた。β遮断薬を内服している参加者はまた、脳萎縮も有意に少なかった。

一部のアルツハイマー病や精神疾患の多様性は出生時の脳の変化に関連する [2013-01-15]
Some polymorphisms for Alzheimer's disease and mental illness linked to brain changes at birth

アルツハイマー病、統合失調症および自閉症などの疾患に関連した一般的な遺伝子変異を有する成人において発見されたある脳変化が新生児の脳においても認められた、とのスタディ結果がCerebral Cortex.に掲載された。スタディには生後すぐにMRI検査を施行された新生児272人が含まれた。成人の脳構造に関連した7つの遺伝子における10の一般的な変異に関して各人のDNAを検査した。これらの遺伝子はまた統合失調症、双極性障害、自閉症、アルツハイマー病、不安障害およびうつ病などの疾患に関与するとされている。アルツハイマー病と関連のあるAPOE遺伝子の変異などの一部の多型に関しては、小児における脳の変化は同様の変異を有する成人に認められる脳変化と非常に類似しているように見えた。しかしこれはこのスタディに含まれた多型いずれにおいても認められるわけではなかった。例えば、このスタディにはDISC1遺伝子の2つの変異が含まれたが、そのうち新生児の脳のパターンが成人と同様であったのは1つのみであった。これらの結果から、胎児期の脳の発育は後の生涯における精神的リスクに重大な影響を及ぼすことが示唆される。

C反応性蛋白レベル上昇は精神的苦痛およびうつと関連があるようである [2013-01-08]
Elevated levels of C-reactive protein appear associated with psychological distress and depression

C反応性蛋白(CRP)レベル上昇は一般成人において精神的苦痛およびうつと関連があるようであるとの報告がArchives of General Psychiatryオンライン版に掲載された。過去のスタディにおいて軽度の全身性炎症はうつの発症にかかわっている可能性があることが示唆されている。研究者らは20〜100歳の73,131人を対象としたコペンハーゲンの2つの一般人口のスタディデータを用いて、炎症性疾患のマーカーであるCRPレベルを解析した。CRPレベル上昇は精神的苦痛およびうつと関連があった。抗うつ薬使用に関する自己申告では、CRPレベル0.01〜1.00mg/Lに対し、1.01〜3.00mg/Lでオッズ比が1.38、3.01〜10.00mg/Lで2.02、10.00mg/L超で2.7であった。抗うつ薬処方に関しては対応するオッズ比はそれぞれ1.08、1.47、および1.77であった。うつ病による入院に関してはそれぞれ1.30、1.84、および2.27であった。他の解析の結果、CRPレベル上昇はうつ病による入院と関連がある(傾向検定においてP =4X10-8)ことが示された。これらの結果は抗うつ薬治療に抗炎症薬を追加することにより予後が改善するかどうかを調査する介入スタディの開始を支持するものである、と筆者らは述べている。

アンフェタミンに対する反応はアルコールおよび薬物使用に影響する負の情動性と相互作用する [2013-01-08]
Response to amphetamine interacts with negative emotionality to influence alcohol and drug use

Alcoholism: Clinical & Experimental Research 2013年4月号に掲載予定の新たなスタディの結果、高レベルの負の情動性は薬剤ベースの報酬への感受性と同時に起こると飲酒問題に繋がる可能性があることが示された。研究者らは18〜25歳の参加者192人(女性99人、男性93人)を組み入れた。参加者は負の感情について評価するために多面的人格質問表Multidimensional Personality Questionnaire(MPQ)に回答し、アルコールや他の薬物使用に付随した質問に回答した。その後10mgのd-アンフェタミン投与を受け、彼らの自己報告の薬物の効果について評価された。さらに研究者らは、アンフェタミンに対する主観的な反応と薬物使用の計測におけるMPQの負の情動性との関連を評価した。その結果、低用量のアンフェタミンの刺激効果に感受性があり強い負の気分も経験している者は過剰飲酒する傾向にあることが示唆された。アンフェタミンの効果が少ないと感じた者は、負の感情を経験しても飲酒しないようであった。研究者らはまたアンフェタミンに対する反応と麻薬使用との関連も明らかにし、これらからあるタイプの薬剤の報酬効果に感受性のある人々は他の薬物を使用する可能性が高いことが示唆される。