小児期がんサバイバーは動脈が変化しておりそれが若年性心疾患や動脈硬化のリスクを上昇させる可能性がある [2013-11-19]
Childhood cancer survivors have changes in their arteries that may increase their risks of early heart disease and atherosclerosis

小児がん治療は小児がんサバイバーの心臓を犠牲にするとの研究結果が2013年American Heart Association学会で発表された。過去の研究から、小児がんサバイバーは治療から数十年後に心臓および他の健康上の問題に直面することが示されている。しかし今回、患者がまだ小児の間に生じる小児がん治療の心血管系への影響が初めて観察された。研究者らは白血病および固形がんのサバイバーである男女(9〜18歳)319人において動脈スティフネス、壁厚、および機能を計測した。参加者は初回のがん診断から5年以上生存した。がんサバイバーをがんと診断されていない彼らの兄弟姉妹208人と比較した結果、動脈機能低下で示される早期心疾患が小児がんサバイバーにおいて多く認められた。さらに、化学療法終了後の小児白血病患者は、がんでない群と比較し動脈の健康状態が9%低下していた。今回のスタディの対象となった小児は主に白人であり、したがって今回の結果は他の人種や民族には当てはまらない可能性がある。小児がんサバイバーは心血管リスクを低下させるための生活習慣改善を行うべきである、と筆者らは述べている。

一般的な遺伝子パスウェイが小児脳腫瘍治療への導管となる可能性がある [2013-11-19]
Common genetic pathway could be conduit to pediatric brain tumor treatment

難治性小児脳腫瘍の多くにおいて既知の遺伝子パスウェイが有効であり、これらのがんの新たな標的となり得ることが明らかにされた。研究者らは、最も多いタイプの毛様細胞性星細胞腫を含む低悪性度神経膠腫の小児177人の組織標本を観察した。彼らはまた哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)パスウェイをMK8669(ridaforolimus)として知られる治験薬を用いて遮断することによる効果を、2つの神経膠腫細胞株において試した。その結果、調査した低悪性度神経膠腫の90%においてmTORC1パスウェイ活性が認められ、また腫瘍の81%はmTORC1およびmTORC2両者の活性を示した。mTORパスウェイの構成要素は、他の脳領域よりも視覚経路の腫瘍において多く認められた。また、mTOR遮断薬は1つの細胞株の細胞増殖を6日間で73%減少させ、もう1つの細胞株においても細胞増殖を4日間で最大21%減少させた。このパスウェイは脳の一部の領域で、他の領域よりもより活性化しているため、これらのパスウェイを標的とした治療薬の効果も異なることが示唆される。

最も多いタイプの肺がん治療において治験薬が有望な結果を示した [2013-11-12]
Experimental drug shows encouraging results in treating most common form of lung cancer

メラノーマ治療において有望であることが示された薬剤が非小細胞肺がん患者においても有効な治療薬となる可能性があるとの予備的なMK-3475の第1B相試験の結果がWorld Conference on Lung Cancerで発表された。この安全性および有効性に関するデータは過去に治療を受けたが有効でなかった非小細胞肺がん患者38人のコホートから得られた。スタディにおいて、患者はMK-3475を3週毎に投与された。参加者のうち、24%において薬剤が有効であり、腫瘍が縮小した。全生存期間中央値は51週であった。薬剤が有効であった者においては、有効期間中央値は今回の解析時点では到達しておらず、したがって少なくとも62週である。今回のスタディにおける薬剤の副作用は発疹(21%)、皮膚掻痒感(18%)、倦怠感(16%)、下痢(13%)および関節痛(11%)であった。ほとんどの副作用は軽症であった。今回のデータに基づき、MK-3475の2つの異なる用量と肺がんに対する標準的な化学療法を比較する第2/3相試験の患者登録が開始された。

2つの標的治療を組み合わせることにより横紋筋肉腫の腫瘍増殖が阻害できるようである [2013-11-12]
Combining two targeted therapies appears to inhibit tumor growth in rhabdomyosarcoma

2つの治験抗がん剤を用いた二重治療戦略は、腫瘍増殖を阻害し腫瘍が治療抵抗性を獲得するのに用いる逃げ道を遮断することにより小児がん治療を成功させることが可能である、との新たなスタディの結果がClinical Cancer Researchに掲載された。研究者らは、2つの異なる分子標的療法を組み合わせることにより小児がん死亡の主要な原因である横紋筋肉腫の成長を促す過程を停止させ得ることを明らかにした。研究者らは、PI3キナーゼおよびMAPキナーゼパスウェイに対し有効であることが知られている薬剤を横紋筋肉腫に対し試した。AZD8055およびAZD6244を別々に試したところ、細胞増殖およびシグナリングパスウェイの活動性を示すマーカーのレベル低下が観察されたが、代償性の活動性が明らかに認められた。しかし、2つの薬剤を組み合わせたところ相乗効果が認められ、いずれか単剤による治療よりもさらに細胞増殖が抑制された。横紋筋肉腫マウスにおいてAZD8055およびAZD6244を同時に用いたところ、腫瘍マーカーはコントロールの30%未満に低下し、同様の相乗効果が認められた。

肋間リンパ節の監視は中皮腫患者の予後予測に役立つ [2013-11-05]
Overlooked lymph nodes in rib cage have prognostic power for mesothelioma patients

第15回World Conference on Lung Cancerにおいて、リンパ節(後肋間リンパ節)監視の予後予測能―悪性胸膜中皮腫患者のステージ分類を行い究極的には治療につながり得る―が示された。悪性胸膜中皮腫に対し胸膜全摘術を施行された48人を対象としたこの後ろ向きスタディにおいて、患者の半数強がこれらのリンパ節に転移を有し、一部の患者において転移はこれらのリンパ節のみであった。後肋間リンパ節転移を有さない患者はこれらのリンパ節に転移を有する患者よりも前生存期間が有意に長く、2年半近く長く生存した。後肋間リンパ節はこれまで悪性胸膜中皮腫や他のがんのステージ分類や治療ガイドには使用されなかった。しかし筆者らは、中皮腫のいかなる外科的治療の際でもこれらのリンパ節をルーチンに生検すべきであり、またこれらのリンパ節を中皮腫ステージング分類の改定の際にいずれ含めるべきであると述べている。

大規模前向き研究の結果、長期間にわたる肥満は膵がん患者の生存期間不良と関連のあることが示された [2013-11-05]
Large, prospective study finds long-term obesity is associated with poorer survival for patients with pancreatic cancer

Journal of Clinical Oncologyに掲載された前向きスタディの結果、ボディマスインデックス(BMI)が肥満の領域にある患者は、正常領域にある患者と比較し、年齢や疾患のステージなど患者の生存期間の予測因子として知られる因子で補正後も、膵臓がんと診断されてからの生存期間が2〜3か月短いことが示された。今回のスタディでは、Nurses' Health Study and the Health Professionals Follow-Up Studyの対象者における24か月間に診断された膵臓腺がん患者902例を評価した。全体で、これらの患者の診断後の生存期間中央値は5か月であった。体重が健康レベルにある患者(BMI 25kg/m2未満)は肥満患者(BMI 35kg/m2以上)よりも2〜3か月長く生存した。診断前BMIが大きいことと生存期間が短いこととの関連は、年齢、性別、人種/民族、喫煙の有無、および疾患のステージで補正後もなお認められた。肥満患者の72%は診断時点で転移を来しており、 それと比較し体重が正常範囲内の患者においては59%であった。BMIと生存期間との関連は診断の18〜20年前のBMIが大であった患者202人においてより強力に認められた。