◆ |
胆汁内VEGFのバイオマーカーにより膵がんを高い精度で検出できる [2013-10-29] |
Biomarker in bile VEGF can correctly identify pancreatic cancer with high sensitivity |
膵臓から吸引した胆汁中の血管内皮増殖因子(VEGF)レベルにより、膵がんを他の一般的な胆管疾患と正確に鑑別することが可能であると第78回American College of Gastroenterology年次集会で報告された。このパイロットスタディでは、膵がん症例の93%を正確に検出し、この胆汁内マーカーを用いることにより膵がんを高感度で正しく同定できることを示した。胆管狭窄の原因が悪性であるかまたは良性であるかを診断するのは臨床上困難である。狭窄の原因である悪性疾患は通常、断層撮影や超音波内視鏡を用いた針吸引、および内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)の結果に基づき診断される。残念なことに、一部の患者においては現在の精密検査では確定診断に至らない可能性がある。これは内視鏡医が狭窄のみを指摘するような不明確な狭窄を有する患者においては特に言えることである。今回のスタディにおいてERCPを施行された患者53人中膵がんは15人、18人は原発性硬化性胆管炎、9人は胆管がん、そして11人は良性の膵および胆管病変であったが、膵がん患者においては中部胆管VEGFレベルが有意に高かった。 |
 |
◆ |
食道腺がんリスクは身体的に活動的な人々において低い [2013-10-29] |
Risk of esophageal adenocarcinoma lower among the most physically active people |
運動は食道がんの中でも特に食道腺がんのリスク低下と関連するようであるとの観察研究の新たなメタ解析の結果が、第78回t the American College of Gastroenterology年次集会で発表された。4つのスタディのメタ解析において、Barrett食道から発生し得る食道腺がんのリスクが身体的に活動的である人々ではリスクが32%低かった。またこのメタ解析の結果、食道がん全体のリスクは最も身体的に活動的であった人々において、最も活動的でない人々よりも19%低かった。肥満は慢性炎症に加えインスリン高値を介して食道がんリスクを上昇させた。内臓脂肪を減少させ、発がん性アディポカインレベルを低下し、インスリン感受性を改善し、慢性炎症を軽減させることにより、運動は食道がんリスクを低下させる可能性がある。この関連に関する現段階でのエビデンスは観察研究のみである。運動が直接的に食道がんリスクを減少させると結論付けるのは時期尚早であると筆者らは述べている。Barrett食道患者における食道がんリスクに対する運動の効果を評価する無作為化コントロールトライアルが現在施行されている。 |
 |
◆ |
標的治療と化学療法の併用は卵巣がん患者に有益であり得る [2013-10-22] |
Targeted treatment plus chemotherapy could benefit women with ovarian cancer |
従来の化学療法を新たな標的治療とタンデムで使用することにより一部の卵巣がん患者の生存期間が延長し得るとのスタディ結果がClinical Cancer Research 10月号に掲載された。研究者らはBRCA変異卵巣がん患者89人をモニターした。これらの患者全員がolaparibと呼ばれるPARP阻害剤への耐性出現後に化学療法を受けた。Olaparib耐性患者のほぼ半分(49%)において、引き続きプラチナ製剤ベースの化学療法を受けることにより腫瘍サイズの有意な縮小が認められた。この結果から、かなりの割合の卵巣がん患者は両方の治療を受けることで、より長く生存できる可能性があることが示唆される。研究者らはまた、先端技術を駆使した新たな配列決定技術を用いて、卵巣腫瘍における薬物耐性の原因となる遺伝子メカニズムの詳細を調査した。これまで腫瘍は新たな2番目のBRCA遺伝子変異を来すことにより―BRCA蛋白を変異非機能性から機能性蛋白へ逆転換することにより―PARP阻害剤およびプラチナ製剤両者に対する耐性を獲得すると思われていた。しかし、今回の6例の小さなサブセットにおけるスタディでは2番目のBRCA変異の徴候は認められず、少なくともこれらの症例においてがんはPARP阻害剤およびプラチナ製剤ベースの化学療法に対し異なる方法で耐性を獲得したことが示唆された。 |
 |
◆ |
悪性肝細胞がんを発生させる前駆細胞が同定された [2013-10-22] |
Researchers identify progenitor cells that give rise to malignant hepatocellular carcinoma |
将来的に悪性肝細胞がん(HCC)腫瘍―最も一般的な肝がん―を発生させる前駆細胞が初めて分離同定された。傷害されたり硬変した肝臓においてしばしば認められる異型または異常病変においてHCC前駆細胞(HcPC)が形成されることがCell 2013年10月号で報告された。この肝傷害は肝炎ウイルス感染や慢性アルコール乱用などによって生じ得る。筆者らによると、異型病変が組織障害により引き起こされた単なる再生反応なのか、それとも、実は腫瘍前駆細胞を内部に有する前がん病変であるのかについてはこれまで全く立証されていなかった。筆者らは、HcPCを正常細胞と区別するいくつかのバイオマーカーに基づきこれを特徴付けることができた。また、HcPCが悪性化する可能性において"重要"であるHcPC内で活性化される細胞シグナリングパスウェイも同定した。HcPCは異型病変由来のようであり、悪性腫瘍に成長する可能性があり、HcPCの完全な肝臓がんへの悪性化はそれらの周囲の微小環境に依存すると結論付けている。この結果は、診断および治療が困難であり予後不良なHCC治療において重要な意味をもつ可能性がある。 |
 |
◆ |
ゲムシタビンによる術後補助化学療法は膵臓がん術後の全生存期間を改善する [2013-10-15] |
Adjuvant gemcitabine improves overall survival following surgery for pancreatic cancer |
膵臓がんに対し腫瘍切除術を施行された患者のうち、ゲムシタビンを用いた6か月間の治療により、観察のみを行った場合と比較し、全生存期間および無病生存期間が延長したとのスタディ結果がJAMA 10月9日号に掲載された。研究者らは、ゲムシタビンによる術後補助化学療法により無病生存期間が改善したとの過去の無作為化トライアルのフォローアップを行い、この治療により全生存期間が改善するかどうかを明らかにした。膵臓がんを肉眼的に完全切除された患者計368人がゲムシタビンによる術後補助化学療法を6か月施行される群または観察のみの群に無作為に割り付けられた。フォローアップ期間終了時までに316人(89.3%)が死亡し38人は生存しており、うち23人は治療群であり15人は観察群であった。全生存期間は2つのスタディ群間において統計学的に有意に異なり、中央値は治療群で22.8か月であり観察群では20.2か月であった。5年生存率も、観察のみの群と比較し、統計学的に有意な10.3%の絶対的な改善を示し(20.7%対10.4%)、10年生存率は4.5%改善した(12.2%対7.7%)。 |
 |
◆ |
ウォーキングを週7時間以上行う活動的な閉経後女性は乳がんリスクが低い [2013-10-15] |
Active postmenopausal women reduce their risk of breast cancer by walking seven or more hours a week |
非常に活動的であるかまたは週7時間以上歩く女性は乳がんリスクが低かったとのスタディ結果がCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。研究者らは閉経後女性73,615人(50〜74歳)を抽出し、そのうち4,760人が後に乳がんを発症した。参加者の約9.2%は何の運動もしておらず、約47%はウォーキングが唯一の運動であった。代謝当量(MET:安静時代謝に対するある一定の運動中に消費したエネルギーの比)中央値は、活動的な女性では時間当たり9.5 METであり、これは中等速度のウォーキング3.5時間に匹敵した。週当たり42MET時間以上の最も活動的な女性(1時間以上の精力的な運動を毎日)は、週当たりの運動が7MET時間未満であった最も活動的でない女性と比較し、乳がんのリスクが25%低かった。運動はウォーキングのみと報告した女性のうち、週当たり7時間以上歩く者は3時間以内の者と比較し、乳がんリスクが14%低かった。 |
 |
◆ |
中咽頭がん患者において強度変調陽子線療法は栄養チューブの必要性を減少させる [2013-10-08] |
Intensity modulated proton therapy reduces need for feeding tubes in patients with oropharyngeal carcinoma |
強度変調陽子線療法(IMPT)で治療された中咽頭がん(OPC)患者においては強度変調放射線療法(IMRT)を施行された患者よりも栄養チューブの使用が50%以上少なかったと第55回American Society for Radiation Oncology'学会で発表された。スタディではIMPTおよびIMRTによる治療を受けた患者それぞれ25人を評価した。IMPTを受けた患者のうち栄養チューブの使用を必要としたのは5人(20%)であったのに対し、IMRTを受けた患者では12人(48%)であった。IMPT患者は、嘔吐、嘔気、聴覚障害、および粘膜炎などのIMRTの毒性により引き起こされる副作用を免れることができた。さらに、患者は栄養状態や水分レベルをより良好に維持することができ、このことがしばしば治療中および治療後の早期回復につながった。がん細胞および健常細胞の両者を破壊するIMRTとは異なり、IMPTはがん細胞を破壊する一方で周囲の健康な組織には傷害を及ぼさない能力を有している。このようにして、頭頸部がん患者の神経認知機能、視覚、嚥下、聴覚、味覚および会話などの重要なQOLに関する予後が温存され得る。この結果は、咽喉背部に発生した腫瘍を有する患者に対する重要なQOLの有益性が陽子線療法により提供される可能性があることを示唆している。 |
 |
◆ |
アスピリンが血小板に対しどのように作用し結腸がん患者の予後を改善するかが研究により示された [2013-10-08] |
Research shows how aspirin may act on blood platelets to improve survival in colon cancer patients |
2013年ヨーロッパがん学会で発表された研究により、ヒト白血球抗原クラスT(HLAクラスT)蛋白を発現する腫瘍細胞を有する患者の予後をアスピリンが改善することが示された。研究者らは結腸がん患者999人を調査し、HLAクラスTおよびCOX-2酵素の発現を観察した。また663の腫瘍からDNAを抽出し、PIK3CA遺伝子の変異を観察した。COX-2発現およびPIK3CA変異のいずれも、がん発症に関与していることが知られている。診断後の低用量アスピリン(1日80mg)内服は、HLAクラスTを発現する腫瘍を有する患者のみにおいて生存率を改善した。これらの患者がアスピリンを内服すると、HLAクラスTを発現する腫瘍を有しアスピリンを内服しなかった患者と比較し追跡期間の平均4年間の間に死亡する確率が半分になった。このアスピリンの作用はHLAクラスT発現を有さない患者においては認められなかった。したがって、HLAクラスTは結腸がん診断後アスピリン療法の恩恵を被る患者を同定するのに役立つ予測バイオマーカーとなる可能性がある。この結果からまた、患者の生存改善に関するアスピリンの役割は個体の免疫系とアスピリンの血小板に対する作用との相互作用によって説明できる可能性がある。 |
 |
◆ |
全脳照射の際に脳の海馬領域を避けることにより記憶力低下が予防できる [2013-10-01] |
Avoiding the hippocampal portion of the brain during whole-brain radiotherapy prevents memory loss |
脳転移に対する全脳照射(WBRT)の際の脳の海馬領域の被曝量を制限することにより治療後最長6か月の記憶力が保存されるとの研究結果が、第55回American Society for Radiation Oncology(ASTRO)学会で発表された。この単一アーム、第2相試験は、スタディ群と海馬の防護なしにWBRTを施行された患者からなる過去のコントロール群とを比較した多施設国際臨床試験である。スタディには、海馬外の周囲に5mmの安全域を有する計測可能な脳転移巣を有する成人患者113人が組み入れられた。全ての患者が海馬を避けた全脳照射(HA-WBRT)を10回分割で30Gy施行された。解析可能な患者全てにおいて、海馬の総被曝量は10Gyを超えず、また最大被曝量は17Gyを超えなかった。RT 4か月後に解析可能であった患者42人は、Hopkins Verbal Learning Test - Delayed Recall(HVLT-DR)においてベースラインから4か月後で7%の低下を認めたのに対し、過去のコントロール群では30%低下していた(P =0.0003)。治療6か月後に解析可能であった29人の患者はHVLT-DRがベースラインより2%低下していた。 |
 |
◆ |
進行子宮頸がん治療において高線量率小線源療法にシスプラチンを追加することにより予後が改善する [2013-10-01] |
Adding cisplatin to high-dose brachytherapy for advanced cervical cancer improves outcomes |
StageVB子宮頸がん治療において、放射線療法(RT)および高線量率小線源療法(HDRB)による治療プランに化学療法薬シスプラチンを加えることは有益であるとの研究結果が第55回American Society for Radiation Oncology's(ASTRO)学会で発表された。無作為化コントロールトライアルにおいて、stageVB子宮頸部扁平上皮がんのブラジル人女性147人を調査した。各々の患者が骨盤領域に対する45Gyの体外放射線照射を25分割で施行された(易感染性子宮傍結合織に対する追加照射14.4GyおよびポイントA[子宮動脈と尿管の交差する部位]に対し処方された4回にわたる週1回7Gyの分割に相当するHDRB)。75人の患者がRTおよびHDRB治療のみを受け―RT群、72人はRTとHDRBに加え骨盤照射療法中に週1回の40 mg/m2のシスプラチン静脈内投与を受けた―CHRT群。CHRT群患者は無病生存期間が有意に良好であり(ハザード比[HR]0.52、95%信頼区間[CI]0.28〜0.98:P =0.04)、全生存期間が良好な傾向にあったが、統計学的には有意ではなかった(HR=0.67、95%CI 0.37〜1.183;P =0.16)。またこのスタディの結果、併用治療の毒性は許容範囲内であることも示された。 |
 |