乳がんにおいてリンパ節転移は幹細胞変異と関連するようである [2013-07-30]
Lymph node metastases appear associated with stem cell mutations in breast cancer

乳がん幹細胞および前駆細胞(BCSCs)がPI3K/Akt(細胞増殖の一部であるパスウェイ)シグナリングに欠損を有する腫瘍はリンパ節転移と関係があるようであるとのスタディがJAMA Surgery 7月24日号オンライン版に掲載された。30の浸潤性乳管がん(ステージIA〜IIIB)の手術標本から悪性BCSCsおよび良性幹細胞を収集し発がん遺伝子変異に関して検査した。研究者らは発がん遺伝子AKTI、HRAS および PIK3CAの変異および腫瘍の変異、およびそれらと病理学的腫瘍ステージ、腫瘍のホルモン受容体の状態およびリンパ節転移との関連を検索した。BCSCsがPI3K/Aktシグナリングに欠損を有する腫瘍は、リンパ節転移を呈する傾向が強かった。これらの発がん遺伝子欠損は腫瘍の全分子検査で見逃される可能性があるが、より進行性の乳がんのマーカーである。BCSCsの分子的プロファイルは、現在臨床試験を施行されているPI3K/Akt阻害薬の有益性を被る可能性の高い患者を見極める可能性があると結論付けている。

スタディの結果、乳がんスクリーニングの品質水準としての再検査率の限界が強調された [2013-07-30]
Study findings highlight limitations of recall rates as a quality measure for breast cancer screening

スクリーニングマンモグラフィー後の追加画像検査のために再呼び出しされる女性の割合は、主に患者層の違いにより、地域診療所よりも病院の方が高い可能性があるとの新たなスタディ結果がRadiology誌オンライン版に掲載された。放射線科医により、地域診療所および大学病院で施行されたマンモグラフィー計74,297件が調査された。再検査を必要とされた患者数は5,799人であり全体の再検査率は7.8%であった。地域診療所の再検査率は6.8%であり、病院の再検査率8.6%より有意に低かった。研究者らはこの再検査率の差に影響しうる重要な違いを見出した。病院で施行された患者は過去に手術および生検を施行された数が多かった。病院で検査を受けた患者の13%強が手術歴を有したのに対し、地域診療所で検査を受けた患者では5.6%であり、生検を受けたのは病院の患者の7%に対し地域診療所では1.4%であった。他の重要な因子は年齢であった。病院で検査を受けた患者の平均年齢は56歳であり、診療所では63歳であった。

がんの既往および化学療法はアルツハイマー病リスクが低いことと関連する [2013-07-23]
Cancer history and chemotherapy linked with decreased risk of Alzheimer's disease

ほとんどのがん種はアルツハイマー病リスクが有意に低いことと関連するとの大規模試験の結果が2013年Alzheimer's Association International Conferenceで報告された。さらに、スタディの結果、化学療法はさらにアルツハイマー病リスクを低下させることが示唆された。研究者らは、ベースライン時に認知症のない65歳以上の退役軍人3,499,378人の健康記録を解析した。追跡期間中央値5.65年の間に82,028人の退役軍人がアルツハイマー病と診断された。アルツハイマー病と診断された者の24%はがんの既往を有し、一方76%はがんの既往がなかった。ほとんどの型のがんはアルツハイマー病低リスクと関連し、その低下率は9〜51%であった。リスク低下率が最も大きかったのは肝がん既往者(リスクが51%低かった)、膵がん(44%)、食道がん(33%)、骨髄腫(26%)、肺がん(25%)および白血病(23%)であった。アルツハイマー病リスク低下と関連がないかまたはリスク上昇と関連があったのは、メラノーマ、前立腺がんおよび大腸がんであった。がん既往歴を有する退役軍人のうち、化学療法治療により、前立腺がんを除きがんのタイプによりアルツハイマー病リスクが20〜45%低下したが、放射線療法では低下しなかった。

1年以上妊娠を試み不成功であった小児がんサバイバーの女性のほとんどが最終的には妊娠した [2013-07-23]
Most female survivors of childhood cancer who tried unsuccessfully for at least a year to conceive eventually got pregnant

小児がんサバイバーの女性は不妊リスクが高いが、1年以上妊娠を試み不成功であった者の3分の2近くが最終的には妊娠した、との研究結果がLancet Oncologyに掲載された。この新たなスタディは、26施設の21歳未満でがんと診断され5年以上生存した者のコホートスタディであるChildhood Cancer Survivor Studyのデータに基づいている。研究者らは、性的に活発な18〜39歳のがんサバイバーの女性3,531人およびコントロールとしての参加者の姉妹1,366人を調査した。1年以上妊娠を試み不成功であったがんサバイバーの64%が、平均その後6か月で妊娠したのに対し、臨床的に不妊のコントロール群女性では平均5か月後に最終的に妊娠した。アルキル化薬による化学療法あるいは腹部または骨盤部に対する高線量放射線療法で治療された女性が最も不妊リスクが高かった。不妊治療を受けたがんサバイバーのうち処方を受けたのはわずか42%であり、コントロール群では75%であった。不妊に対し医療の補助を受けようとする確率は両群で同等であった。

腫瘍を描出するのに用いられる標準的な放射線技術より安全な代替法が新たな技術により得られる可能性がある [2013-07-16]
New technique may provide safer alternative to standard radioactive techniques used to image tumors

磁気共鳴画像(MRI)スキャナーのブドウ糖取り込み感度を増強させることによりマウスのMRI画像上腫瘍が明るい画像として示されたとのスタディ結果がNature Medicine印刷版に先立ちオンライン版に掲載された。グルコース化学交換依存型飽和移転(glucoCEST)と呼ばれるこの新たな技術は、腫瘍はその増殖を維持するために一般の健康な組織よりも多くのブドウ糖を消費するという事実に基づいている。GlucoCESTはラジオ波を使用しブドウ糖を磁気的にラベルし、従来のMRI技術を用いることにより腫瘍内における検出を可能にする。この方法は普通の砂糖を用いて注射するため、放射性物質の注射を必要とする既存の腫瘍検出方法よりも安価で安全な代替物である。この打開策により標準的な放射線技術より安全で簡便な代替法が得られ、放射線科医らはより詳細な腫瘍画像が入手できる。ヒトのがんのブドウ糖を検出する試験が現在進行中である。今回の研究により、多くの大規模病院で施行できる標準的な画像技術であるMRIを用いてがんを画像化できる有用でコストエフェクティブな方法が示された。

大豆たんぱく補充療法は前立腺全摘除術後の前立腺がん再発リスクを低下させない [2013-07-16]
Soy protein supplementation does not reduce risk of prostate cancer recurrence after radical prostatectomy

前立腺全摘除術を施行された男性のうち、大豆たんぱく抽出物を含む飲料用粉末のサプリメントを2年間毎日摂取した者において前立腺がん生化学的再発が軽減したり遅延したりすることはなかった、とのスタディ結果がJAMA 7月10日号に掲載された。サプリメントによる介入は術後4か月以内に開始され毎日最長2年間継続し、前立腺特異抗原(PSA)の計測を初年度は2か月おき、その後は3か月おきに施行した。参加者は大豆たんぱく抽出物(87人)またはプラセボとしてのカルシウムカゼイン塩(90人)の形でタンパク質20gを含んだ飲料粉末を毎日投与される群に無作為に割り付けられた。治療の効果が認められなかったため、このトライアルは早期に中止された。全体で、参加者の28.3%がトライアル参加後2年以内に生化学的再発(PSAレベル≧0.07ng/mL)を来した。介入群の22人(27.2%)およびプラセボ群の23人(29.5%)が生化学的再発と確定診断された。再発までの期間中央値は介入群(31.5週)でプラセボ群(44週)よりやや短かったが、この差は統計学的に有意ではなかった。アドヒアランスは90%を超えていた。

喫煙をする独身男性は発がん性口腔内ヒトパピローマウイルス感染リスクが高い [2013-07-09]
Smokers and single men at higher risk for cancer-causing oral human papillomavirus infection

Lancetに掲載された男性におけるHPV感染(HIM)スタディの結果、喫煙をする独身男性は発がん性口腔内ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染する確率が高いことが報告された。HPV関連口腔咽頭がんはまれであるが、特に男性において急速に増加している。口腔領域のHPV感染および感染持続のパターンを確定するために、研究者らは健康な男性の性器HPV感染の自然経過を評価するように本来デザインされたHIMスタディの一部として収集した口腔内洗浄液検体のHPV感染状況を評価した。最初の12か月の間にスタディ対象男性の4.5%近くがHPVに感染した。最も一般的に感染するHPV16に感染したのは1%未満であり、発がん性の口腔内HPVに感染したのは2%未満であった。これらの結果は、口腔内HPVがんの有病率が低いとの過去のスタディの結果と合致するものである。しかし今回のスタディの結果、発がん性口腔内HPV感染は喫煙をする独身男性において多く認められることが示された。HPV16の持続感染は、子宮頸部HPV持続感染が子宮頸がん前がん状態に繋がるのと同様に、口腔咽頭がん前駆状態となる可能性があることを筆者らは指摘している。

オートファジーにおいて責任を担う遺伝子の不活性化は非小細胞肺がんを良性のものにする [2013-07-09]
Inactivation of a gene responsible for autophagy renders non-small cell lung cancer tumors benign

Genes & Developmentに掲載された新たな研究結果から、オートファジーとして知られる細胞生存過程において責任を担う重要な遺伝子の不活性化が非小細胞肺がん(NSCLC)の増殖を抑制しそれらをより良性のものにすることが示唆された。研究者らはマウスモデルを用いてK-Rasがん遺伝子内の変異を活性化することにより増殖するNSCLCを調査した。オートファジーの自己保存メカニズムを阻害する中で、がん細胞はミトコンドリアを介して供給される自己保存エネルギーを奪われる。研究者らは、オートファジーが存在しないかまたはこれが欠陥を有すると、機能不全のミトコンドリアが蓄積し一時は悪性であった腫瘍がオンコサイトーマとして知られるまれな良性優位の腫瘍となることを明らかにした。筆者らはまた、オートファジーに必要な過程がp53腫瘍抑制遺伝子に影響されることも明らかにした。オートファジー遺伝子を不能にするとp53腫瘍抑制メカニズムが早期に活性化され、その結果がんの増殖や拡散が停止する。p53が除去されると、Rasにより駆動する腫瘍は、ミトコンドリアや細胞外環境変化の存在下において細胞生存能力維持に役立つ他の機能の保存はオートファジーに依存することも明らかにされた。この結果は、この種の肺がん治療におけるオートファジー阻害薬の役割の可能性を示唆している。

BRAF-変異結腸細胞はBRAF-野生型新生腫瘍細胞よりもアスピリンの抗腫瘍効果に対する感受性が低い可能性がある [2013-07-02]
BRAF-mutant colonic cells may be less sensitive to the antitumor effects of aspirin than BRAF-wild-type neoplastic cells

2つの大規模スタディにおいて、アスピリン使用と大腸がんリスクとの関連性はBRAF遺伝子の変異に影響され、アスピリン使用はBRAF野生型大腸がんリスクを低下させるがBRAF変異がんのリスクは低下させず、BRAF変異結腸腫瘍細胞はアスピリンの効果の感受性が低い可能性があることが示唆されたとのスタディ結果がJAMA 6月26日号に掲載された。127,865人中、分子データを入手できた大腸がん患者1,226人が同定された。アスピリン常用はBRAF野生型がんでは有意なリスク低下(27%)と関連したが、BRAF変異がんではリスク低下と関連がなかった。アスピリン使用と大腸がんリスクとの関連性はBRAF変異の有無で有意に異なった。アスピリンを使用していないと回答した者と比較し、アスピリンを週に6〜14錠内服する者および週14錠以上内服する者においてBRAF野生型がんリスクは有意に低かった。さらに、アスピリン使用期間が長いほどBRAF野生型がんリスクは低下し、一方BRAF変異がんリスクはアスピリン使用期間との関連性はなかった。

乳腺内の脂肪細胞は社会的ストレスとトリプルネガティブ乳がんとを結びつける可能性がある [2013-07-02]
Fat cells in mammary gland may connect social stress to triple-negative breast cancer

乳腺内の脂肪細胞から放出される局所化学信号により、人生早期の執拗な社会的ストレスへの曝露とその後の乳がん発症との決定的な関連性が得られるようであるとCancer Prevention Research 7月号で報告された。研究者らは以前に、孤立させて飼育した雌のマウスが有意に大きなより進行の速いトリプルネガティブ腫瘍を発症することを示し、この結果の根底にある詳細な生物学的現象の詳細解明を望んでいた。今回のスタディにおいて、彼らは乳房の脂肪細胞を他の種の細胞と分離し、集団で飼育されたマウスと孤立飼育されたマウスとの複数の組織における遺伝子発現や循環ホルモンの差を計測することができた。驚いたことに、循環ホルモンに差はなかった。しかし乳腺内の脂肪細胞において劇的な変化を発見した。15週齢に採取されたこれらの細胞の計測から、社会的孤立刺激は3つの遺伝子―Hk2(ヘキソキナーゼ)、Acly(ATPクエン酸リアーゼ)およびAcaca(アセチルCoAカルボキシラーゼ)―の発現を有意に増加させることを発見した。ストレスを受けたマウスの乳房脂肪細胞はストレスのないマウスの同様の脂肪細胞の約2倍のブドウ糖を取り込み、代謝活性が有意に増大していることが示唆された。