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高塩分食はヘリコバクターピロリによる胃がん誘発を亢進させる [2013-04-30] |
High dietary salt intake exacerbates Helicobacter pylori induced gastric cancer |
多くの疫学スタディの結果、高塩分食により胃がんリスクが上昇することが示されている。高塩分食と胃潰瘍を引き起こす細菌であるヘリコバクターピロリ感染が組み合わさることによりがんのリスクが大きく上昇することが、今回Infection and Immunity印刷版に先立ちオンライン版に掲載される。このスタディにおいて、研究者らはモンゴルのスナネズミをヘリコバクターピロリに感染させた。片方のネズミ群には通常の食事を与え、もう片方のネズミ群には高塩分食を与えた。高塩分食のネズミ全てががんを発症したのに比べ、通常食のネズミでは58%が発症しただけであった。胃がんの発症にはヘリコバクターピロリが産生するCagAとして知られる特定の細菌性オンコプロテインの存在が必要なようである。高塩分食ネズミのうちCagAを産生しない変異ヘリコバクターピロリに感染されたものにおいては、胃がんは発生しなかった。また、ヘリコバクターピロリに感染し高塩分食を摂取したネズミは通常食ネズミよりも胃炎が有意に高度であることも示された。少なくとも50%の人々がヘリコバクターピロリに感染しており、少なくともその90%は無症状である。 |
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前立腺生検の結果良性とされた肥満男性の前立腺病変は前がん病変であることが多い [2013-04-30] |
Precancerous lesions more common in benign prostate biopsies of obese men |
肥満男性は非肥満男性に比べ、生検による良性前立腺病変に前がん病変を検出される可能性が高く、その後前立腺がんを発症するリスクが高いとのデータがCancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載された。研究者らは肥満と将来の前立腺がん発症率との関係を、生検または経尿道的前立腺切除を施行された後14年間追跡された良性前立腺病変を有する男性6,692人のコホートにおいて調査した。これらの患者494人およびマッチさせたコントロール494人においてケースコントロールスタディを施行した結果、患者の良性組織標本の11%に前がん病変が発見された。この異常所見は生検時の肥満と有意に相関した。前立腺がん家族歴、初回施術時の前立腺特異抗原(PSA)レベル、および追跡期間中のPSA検査と直腸指針の回数などの様々な可変因子を考慮した結果、初回施術時の肥満は追跡期間中の前立腺がん発症を57%増加させることが示された。今回認められた体格と前立腺がんリスクとの関連性は過去のスタディで認められたものよりも大であった。 |
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血清ビリルビン低値は肺がんリスクを予測するバイオマーカーとなり得る [2013-04-23] |
Low levels of serum bilirubin a potential biomarker for lung cancer risk prediction |
血清ビリルビンレベルの低い喫煙者はビリルビンレベルが最も高い喫煙者と比較し肺がん発症および死亡のリスクが高く、この結果から血清ビリルビン値が肺がんリスク予測バイオマーカーとなり得るとのデータがAACR 2013年年次集会で発表された。血清検体のプロファイリングを行うメタボローム解析に関する独特のマルチフェーズスタディデザインを用いた結果、ビリルビンはこのトライアルのディスカバリーフェーズにおいて最も有望なマーカーであることが明らかになった。研究者らはその後この結果を、台湾人435,985人の前向きコホートからなる第V相試験において確認した。その結果、ビリルビンレベルが0.68mg/dL以下の男性においては肺がん発症率が10,000人年当たり7.02であったのに対し、ビリルビンレベルが1.12mg/dL以上の男性では3.73であった。この結果は、ビリルビン低値であると肺がん発症リスクが51%上昇したと解釈できる。また、ビリルビンレベルが最も低かった者は肺がん特異的死亡率が59%高いことも示された。喫煙者の中でビリルビンレベルが最も低かった者では肺がん発症リスクが69%高く、死亡率が76%高かった。"喫煙未経験者"においてはビリルビンの有意な影響はなかった。 |
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新たな低侵襲療法は健常組織を損傷することなく複雑ながんを安全に治療する [2013-04-23] |
New minimally invasive therapy safely treats complex cancers without harming healthy tissue |
健常組織を損傷することなく腫瘍に顕微鏡的小孔を開ける新たな低侵襲治療は、難治性のがんに対する有望な治療であることを示唆するプレリミナリースタディーが第38回Society of Interventional Radiology年次集会で発表された。不可逆性エレクトロポレーション(IRE)は、マイクロ秒電気パルスを用いて周囲の健常組織を傷害することなく細胞レベルでがんを殺傷する、新たながん治療法である。IREは、肝臓、肺、膀胱および骨盤領域に転移したがんの治療に安全であることが示されている。今回のスタディにおいて肺、膵臓、甲状腺、前立腺、子宮および子宮内膜、卵巣および直腸原発がんから肝臓への計40の転移巣を有する25人の患者がIREで治療された。平均の腫瘍径は2cmであった。IREの使用は病変部位、熱焼灼の影響を受ける周囲の重要臓器を考慮し決定された。研究者らは重大な合併症なく30の施術を終了させ、IREはさらなる研究や大規模臨床試験において使用拡大するのに十分安全であることが示された。 |
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マンモグラフィーによるスクリーニングが遅延した高齢女性は乳がんで死亡する確率が高い [2013-04-16] |
Older women who delay mammography screening more likely to die from breast cancer |
最後にマンモグラフィー検査を受けてからの時間が長く乳がんと診断された高齢女性は乳がん死亡リスクが高く、75歳以上の女性におけるマンモグラフィースクリーニング継続の役割が示唆されたとのデータが、2013年AACR年次集会で発表された。マンモグラフィー施行間隔が乳がん死亡率に影響するかを評価するため、研究者らはWomen's Health Initiative観察研究または臨床試験の対象となり12.2年間の追跡期間中に乳がんと診断された女性8,663人のデータを解析した。最後のマンモグラフィー検査から乳がんと診断されるまでの間隔が5年以上であると進行がんである確率が23%であったのに対し、その間隔が6か月〜1年であった者では20%であった。マンモグラフィーから乳がんの診断までの期間が5年以上であったか、または一度もマンモグラフィーを受けたことのない75歳以上の女性は、マンモグラフィーから診断までの期間が半年から1年であった女性と比較し、乳がんによる死亡のリスクが3倍以上高かった。これらの関連性は若年女性では認められなかった。 |
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2つの新規経口剤の連続使用は難治性BRCA欠損がん患者において抗腫瘍活性を示した [2013-04-16] |
Sequential combination of two new oral drugs showed antitumor activity in patients with incurable BRCA-deficient cancers |
2つの経口治験薬―sapacitabineとseliciclib―の連続投与は難治性BRCA欠損がん患者において相互に作用し抗腫瘍効果が引き出されるとの第1相試験のデータが2013年AACR年次集会で発表された。SapacitabineはDNAに単鎖傷害を引き起こす経口ヌクレオチドアナログ製剤である。傷害されたDNAが修復されないと最終的に細胞死へとつながる。Seliciclibはサイクリン依存性キナーゼ(CDKs)を阻害する。CDKを阻害することによりsapacitabineのような薬剤により引き起こされるがん細胞死が複数のメカニズム(その一部はDNA修復パスウェイの抑制)により増幅されることがすでに示されている。研究者らは難治性固形がんを有し臓器機能の保たれた患者38人を組み入れた。彼らは患者に1日2回のsapacitabine治療を7日施行後に1日2回のseliciclib治療を3日間施行した。BRCA欠損膵、乳または卵巣がんを有する4人の患者はこれらの薬物併用により部分寛解が持続した。3人の患者は部分寛解の状態が持続しており、最長で78週間を超えている。さらに、8人の患者においては状態が12週間以上安定しており、うち2人はBRCA変異を有する卵巣がんまたは乳がん患者で、それぞれ64週および21週安定した状態が持続している。 |
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乳がん、前立腺がんおよび卵巣がんのリスクを上昇させる遺伝子変異の全体像 [2013-04-09] |
Clear picture of genetic alterations that increase risk of breast, prostate and ovarian cancer |
乳がん、前立腺がんおよび卵巣がんのリスクを上昇させ得る80領域以上のゲノムがこの種で過去最大のスタディにおいて明らかにされた。この研究の詳細はNature Genetics, Nature Communications, PLOS Genetics, the American Journal of Human Genetics, and Human Molecular Geneticsに掲載された13の論文集において述べられている。100,000人を超えるがん患者および一般人口100,000人のDNA 構成を調査することにより研究者らは、前立腺がん、乳がんまたは卵巣がん患者において最も多く認められる遺伝子変異−一塩基多型(SNP)−を発見した。前立腺がんにおいては23のSNPが発見され、これにより計78となった。重要なことに16はより進行が速く生命を脅かす型のがんであった。乳がんに関しては49のSNPが発見され、過去に同定されたSNP数の倍以上になった。さらに、卵巣がんにおいては、11の新たな領域が発見された。各々の変異はがんのリスクを少し上昇させるのみであるが、これらの変異の多くを有する人々の1%は前立腺がん発症リスクが50%近く、乳がんが30%程度に上昇する可能性がある。 |
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起床直後の喫煙は肺がんおよび口腔がんリスクを上昇させる可能性がある [2013-04-09] |
Smoking immediately upon waking may increase risk of lung and oral cancer |
朝起床後の喫煙が早いほど肺がんまたは口腔がんを発症する確率が高いとの研究結果がCancer, Epidemiology, Biomarkers and Prevention誌に掲載された。研究者らは、喫煙をする成人1,945人の尿検体中のNNAL(たばこ特異的発がん性物質NNK代謝物)の解析データを調査した。1日で初回の喫煙を、約32%の参加者は起床後5分以内に、31%は6〜30分後、18%は31〜60分後、19%は1時間以上経過してから行っていた。NNAL値は喫煙頻度および他のNNAL濃度予測因子に関係なく、起床後すぐに喫煙した者において最高であった。起床後すぐに喫煙する者はより深く全体的に吸気し、それが血液内NNAL値上昇および口腔または肺がんリスク上昇の原因となり得る、と筆者らは考えている。起床後初回喫煙までの時間は、高リスク喫煙者の同定および早朝喫煙者を標的とした介入の開発において重要な因子である、と彼らは述べている。 |
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高密度乳房の女性であっても50〜74歳の女性においては2年に1回のマンモグラフィーが最も良い [2013-04-02] |
Biennial mammography best for women 50-74 years, even those with dense breasts |
2年に1回のスクリーニングマンモグラフィーを施行された50〜74歳の女性は毎年マンモグラフィーを受けた女性と比較し、進行期乳がんのリスクは同等で累積偽陽性リスクは低いとの報告がJAMA Internal Medicineオンラインファースト版に掲載された。研究者らは乳がん女性11,474人および乳がんを有さない女性922,624人のデータを解析した。その結果、50〜74歳の女性において、乳房密度や閉経後ホルモン補充療法の有無に関係なく、2年に1回のマンモグラフィーにより毎年のマンモグラフィーと比較し進行期または大型の腫瘍のリスクは上昇しなかった。しかし、40〜49歳の極端に高密度乳房の女性では、2年に1回のマンモグラフィーにより、毎年のマンモグラフィーと比較し、進行期がん(オッズ比[OR]1.89)および大型腫瘍(オッズ比[OR, 2.39])のリスクが上昇した。マンモグラフィーの結果が偽陽性である累積確率は、毎年マンモグラフィーを施行された極端な高密度乳房の40〜49歳またはエストロゲンとプロゲステロンを併用している女性において高く(それぞれ65.5%および65.8%)、2年に1回または3年に1回のマンモグラフィーを施行された、乳腺散在または脂肪優位型乳房の50〜74歳の女性において低かった。 |
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スタディにおいてグーグルのPageRankモデルを用いて肺がんの拡がりを予測した [2013-04-02] |
Research uses mathematical probability model to predict how metastatic lung cancer spreads |
人々が最も訪れがちなウェブサイトを予測するのに用いられるのと同種の数学的モデルが、今や人体における肺がんの拡がり方を描くのに有用である可能性が高いことが示されたとの新たなスタディ結果がCancer Research誌に掲載された。Markovチェーンモデルとして知られる洗練された数学方程式システムを用いて研究チームは、転移性肺がんは、従来の医学的視点のように原発巣から遠隔部位に一つの方向に進展するのではないことを明らかにした。その代わりに、がん細胞は体内を一度に複数の方向に動くことを発見した。また、細胞が最初に移動する方向ががんの進行において重要な役割を果たしていることも学んだ。このスタディは、体の一部が"スポンジ"のように働き肺がん細胞を他の体内部位に比較的拡散しにくくしていることを示した。スタディにより、肺がん細胞の"拡散臓器"として他の部位を同定した:主な拡散臓器は副腎および腎であり、主なスポンジは局所リンパ節、肝臓および骨であった。 |
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