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高リスク小児がんの遺伝学的基礎により新薬治療戦略の可能性が示される [2013-01-29] |
Genetic basis of high-risk childhood cancer points to possible new drug treatment strategy |
Nature Geneticsに掲載された研究の結果、劇的な染色体喪失と治療成績不良で知られる2つの小児白血病サブタイプの治療の糸口となり得るものが同定された。またこの発見により、低二倍体(hypodiploid)急性リンパ性白血病(ALL)として知られるこの高リスク白血病の遺伝学的基礎の初めてのエビデンスも提供された。低二倍体に焦点をおいたスタディとしては過去最大の今回のスタディでは、この腫瘍は喪失した染色体数および腫瘍が保有している超顕微鏡的遺伝子変異により区別される別個のサブタイプを有することが確認された。研究者らは、low hypodiploid ALLとして知られるサブタイプの患者の3分の1以上がLi-Fraumeni症候群を有するとのエビデンスを明らかにした。Li-Fraumeni症候群の家族はTP53腫瘍抑制因子の家族内変異を有しており、種々のがんの高リスクである。これまで低二倍体ALLはLi-Fraumeni症候群の一般的な発現型であるとは認識されていなかった。研究者らは、主な低二倍体サブタイプはいずれもがん細胞の増殖を阻害する化合物ファミリーに感受性があることを報告した。この化合物には他のがん治療に既に使用されている薬剤も含まれる。これらのサブタイプは32〜39染色体を特徴とするlow hypodiploid ALL、および24〜31の染色体を有するnear haploid ALLである。 |
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天然に発生する酵素と多形膠芽腫との関連性が明らかにされた [2013-01-29] |
Association found between naturally occurring enzyme and glioblastoma multiforme |
Neuro-Oncologyに掲載されたあるスタディにおいて、天然発生酵素カリクレイン6(KLK6)と成人における最も破壊的な脳腫瘍の1つである多形膠芽腫との間に重要な関連性が同定された。研究者らはグレードIVの星細胞腫−このステージでは膠芽腫としても知られる−60検体および進行の速度の遅いグレードIII星細胞腫を観察した。その結果、最も重篤なグレードIV腫瘍においてKLK6レベルが最も高かった。腫瘍検体を観察したところ、KLK6レベルが高いと患者の生存期間が短いことも明らかにされた。KLK6レベルが最も高い患者の生存期間は276日であり、レベルが低いもののそれは408日であった。この結果から、腫瘍のKLK6レベルから患者の生存期間が予測できることが示唆された。この研究グループはまた酵素のメカニズムを調べ腫瘍増殖に有意な役割を果たしているのかを判断した。研究者らはペトリ皿の中で、KLK6で処理された膠芽腫細胞が放射線および化学療法に耐性となることも発見した。この結果は、致死的な膠芽腫の治療の可能性(KLK6機能を標的とする治療)の新たな道筋を導き出すものである。 |
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高繊維食の血管新生抑制効果は前立腺がんの発症を抑制する可能性がある [2013-01-22] |
Anti-angiogenic effects of high-fiber diet have potential to control progression of prostate cancer |
Cancer Prevention Research 2013年1月号に掲載されたスタディの結果、早期の前立腺がんと診断された患者において高繊維食は臨床的に前立腺がんを抑制する可能性があることが示された。このスタディでは、高繊維食の主要成分であるイノシトール6リン酸(IP6)を与えられたマウスと与えられなかったマウスとを比較した。その後MRIを用いてこれらの動物モデルにおける前立腺がんの発症をモニターした。その結果、主にIP6の血管新生抑制効果により腫瘍体積が減少した。本質的に、高繊維食の有効成分の投与は腫瘍自体にエネルギーを供給するのに必要とする新たな血管を作製するのを抑制した。このエネルギーがないと前立腺がんは増殖できない。同様に、IP6を用いた治療は前立腺がんがブドウ糖を代謝する速度を低下させた。IP6の抗代謝効果の考えられるメカニズムにはブドウ糖輸送物質であるGLUT-4と呼ばれる蛋白の減少などが含まれる。 |
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喫煙の程度とがんマーカーにより膀胱がんの重症度が予測できる [2013-01-22] |
Smoking intensity and cancer markers predict seriousness of bladder cancer |
喫煙は膀胱がんを発症させるのみでない―喫煙はまた膀胱がんの経過にも影響し、より多く喫煙する人はより進行の速い致死的な膀胱がん発症確率が高いとの研究結果がCANCERオンライン版に掲載された。スタディの結果、一群の膀胱がんマーカーにより死亡リスクの最も高い特定の症例を予測できることも明らかにされた。研究者らは、Los Angeles County Cancer Surveillance Programを通して組み入れた212人の多民族患者の膀胱がんと喫煙歴を解析した。大量の喫煙歴を有する人に発症した膀胱がんは、喫煙歴のない人または喫煙量の少ない人に発症した膀胱がんよりも死亡率が高かった。6〜9のマーカーに変化を伴っている患者の予後は非常に不良であり、これらの患者はより積極的な治療の恩恵を被った可能性があるとの仮説が推測される。これらの蛋白の変化数は疾患の進行という意味で患者の健康上の予後に直接比例していたため、この結果は、がんの特徴を決定づけるのには、変化の蓄積の方が個々の変化よりも重要であるとの説を確認するものである。 |
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前立腺がん治療において手術は最も費用対効果に優れ生存率も最高である [2013-01-15] |
Surgery ranks as most cost-effective prostate cancer treatment with best survival rates |
過去に施行された最も包括的なレトロスペクティブスタディで、救命および費用対効果の観点から主要な前立腺がん治療を比較したスタディの結果、中等から高リスクの前立腺がん男性において手術は全般的に最も費用対効果に優れた治療であることが示された。この報告はBritish Journal of Urology Internationalに掲載された。このスタディでは、1つ以上の標準治療(放射線療法、手術、ホルモン療法および小線源療法)で治療された低、中等度、高リスク前立腺がん患者の臨床試験結果を報告した過去10年間にわたる232の論文を解析した。低リスク前立腺がん患者では、生存率に関しては治療の種類による差は非常に少なかった―このタイプのがん患者においてこれの確率は非常に良好であり5年がん特異的生存率は100%近かった。しかし低リスク前立腺がんに対する放射線療法のコストは手術のコストよりも有意により高額であった。中等度および高リスクのがんにおいては、生存率およびコストの面で手術の方が他の治療よりも全般的に好ましかった―しかし高リスク前立腺がんにおいては体外照射と小線源療法の両者の組み合わせは、QOLで補正した生存率の面では同等であった。 |
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知覚的な陰茎サイズの縮小は前立腺がん治療の選択と関連している [2013-01-15] |
Perceived reduction in penis size linked to choice of prostate cancer treatment |
前立腺がんスタディの対象男性のうち、低い割合で陰茎が治療後に短くなったと訴えており、一部の患者はそれが肉体関係を妨害し彼らが選択した治療法を後悔する原因となったと述べている。訴えは前立腺全摘術または放射線療法とアンドロゲン除去療法(ADT)の併用による治療を受けた男性に多い。Urology 1月号に掲載されたこのスタディの結果は、前立腺がん治療を施行され再発した患者948人に対し医師らが行った調査に基づいた。25人(対象患者の2.63%)が治療後に陰茎が短縮したと訴えた(手術療法患者3.73%、放射線療法とADT併用患者2.67%、放射線療法単独患者0%)。放射線療法には体外照射および小線源療法の両者が含まれた。治療前後のいずれにおいても、陰茎の直接的な計測は施行されていない。どの主治医も副作用に関して質問はしておらず、この問題は医師との会話の中で患者からもち出されたものであった。このような理由から、この問題は調査で報告されたよりも実際はもっと多いと思われる、と筆者らは述べている。 |
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慢性閉塞性肺疾患と肺がんとの関連は喫煙の影響で説明された [2013-01-08] |
Association between chronic obstructive pulmonary disease and lung cancer explained by effect of smoking |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と肺がんは世界中において最も重要な喫煙関連疾患であり、莫大な死亡の重荷を伴う。多くの人々はCOPDの存在そのものが肺がんの独立した危険因子であると考えている。一方、喫煙がCOPDと肺がんの両者を助長すると反論する者もいる。Journal of Thoracic Oncology 2013年1月号に掲載されたあるスタディでは、COPDは肺がんの独立した危険因子ではないと結論付けた。研究者らは、英国の一般診療データベースであるHealth Improvement Networkから得た2000年1月〜2009年7月までの肺がん患者を調査した。その結果、COPDと肺がんとの強力な相関を示すエビデンスが得られたが、これは主として喫煙の影響で説明され、また多くが診断後日の浅いCOPD症例であり、診断バイアスの強い要素が示唆された。彼らは、肺がんと診断されるすぐ6か月前の時点でCOPDと肺炎の両者と肺がんとの強力な補正前の相関関係が認められるとしている。これは臨床環境において有用であり、COPDまたは肺炎の診断を下す際に肺がんを考慮することの必要性を強調している、と筆者らは述べている。 |
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日本人における腺がん亜分類の予後予測価値が確認された [2013-01-08] |
Study validates prognostic value of adenocarcinoma subtypes for Japanese population |
International Association for the Study of Lung Cancer(IASLC)、American Thoracic Society(ATS)、および European Respiratory Society(ERS)は肺腺がんの新たな亜分類を提唱した。オーストラリア、ドイツおよび南米から出されたますます多くの論文において、新たな亜分類が検証されている。しかし、アジア人に対してこのタイプの検証を行ったとの報告は少ない。Journal of Thoracic Oncology 2013年1月号に掲載されたスタディでは、新たなIASLC/ATS/ERS分類により日本人患者において予後評価を伴う肺腺がんの組織学的サブタイプが同定されると結論付けられた。研究者らは京都大学病院で肺切除術を施行された肺腺がん患者を観察した。彼らはこの新たな分類により日本人において予後評価を伴う肺腺がんの組織学的サブタイプが同定されると結論付けた。EGFR変異はAIS/MIA/Lepidic/Papサブタイプにおいて有意に認められた。逆にKRAS変異は粘液性サブタイプにおいて多く認められた。これらの結果を基に筆者らは、組織学的サブタイピングおよびEGFRやKRAS変異の分子学的検査を施行し、切除可能な肺がん患者の予後を予測し患者が補助化学療法を選択するのに役立てることを推奨している。 |
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