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糖尿病治療薬として広く使用されている薬剤を内服することによる心臓代謝への効果は男女で大きく異なる [2013-12-24] |
Large differences in heart metabolism between men and women taking widely used diabetes drugs |
2型糖尿病治療に広く使用されている薬剤の心血管系への効果は、血糖コントロールが同等に良好であっても、男女で異なるとのスタディ結果がAmerican Journal of Physiology - Heart and Circulatory Physiology 12月号に掲載された。特に、メトフォルミンは女性においては心機能に好ましい作用を有するが、男性においては心不全リスクを上昇させると考えられる代謝の変化をもたらし、好ましい作用は認められなかった。研究者らは78人の患者を3群(最初の群はメトフォルミン単独、2つ目の群はメトフォルミンとロシグリタゾン、そして3番目の群はメトフォルミンとLovaza[魚油]を内服した)のうちのいずれかに割り付け評価した。これらの3群を男女別にせずに比較すると、心臓代謝の差は見られなかった。しかし、患者を男女別にすると、薬剤の心臓代謝に対する影響は非常に異なり、時に正反対の効果をもたらした。この結果は全ての患者において血糖コントロールは良好に保たれたにもかかわらず認められた。最も劇的に差が認められたのはメトフォルミンを単独使用した場合であり、女性においては好ましい心臓代謝への影響が認められたのに対し、男性では好ましくない影響がみられた。これらの男女において異なる反応は、いくつかの糖尿病治療薬に関する相反するデータの一部の説明となる可能性がある。 |
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従来のMモードおよび2D法を用いた心臓超音波検査はスポーツ参加前スクリーニングの精度を上昇させる [2013-12-24] |
Echocardiography with conventional M-mode and 2D modalities increases accuracy of pre-participation sports screening |
従来のMモードおよび2D法を用いた心臓超音波検査は、スポーツ参加前スクリーニングの精度を上昇させる簡便で費用対効果に優れた方法であるとの研究結果が2013年EuroEcho-Imaging学会で発表された。今回のスタディでは、フットボール、アスレチックス、ハンドボール、サイクリング、バスケットボールおよび体操に参加予定である16〜32歳の健康なアスリート男性446人および女性54人の計500人(平均年齢21±5歳)がヨーロッパPPSプロトコールに従いスクリーニングされた。心血管系の異常はいずれのアスリートにおいても検出されなかった。従来のECHO検査(Mモードおよび2D法)がその後に全てのアスリートに対し施行された。心血管系の異常は14例(2.8%)検出された。7例(1.4%)は僧帽弁逸脱(1例において血行動態的に有意)を、3例(0.6%)は大動脈二尖弁(1例において有意な大動脈弁狭窄)を、4例(0.8%)は心筋炎、心筋ブリッジ、左室緻密化障害または冠動脈瘻を有していた。従来のMモードおよび2D ECHO法は、これを標準プロトコールに追加することにより、これを行わなければ検出不可能な心異常の同定がより有力になり、したがって標準スクリーニングプロトコールの一部となる可能性がある。 |
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CPAPを用いた睡眠時無呼吸治療は治療抵抗性高血圧患者の血圧を低下させる [2013-12-17] |
Using CPAP to treat sleep apnea reduces blood pressure in patients with resistant hypertension |
閉塞性睡眠時無呼吸および治療抵抗性高血圧を有する患者において、12週間の持続陽圧呼吸(CPAP)により、CPAP治療を受けなかった患者と比較し、24時間平均および拡張期血圧が低下し夜間血圧パターンが改善したとのスタディ結果がJAMA12月11日号に掲載される。研究者らは患者を、通常の降圧薬を続けながらCPAPを受ける群(98人)または受けない群(コントロール、96人)に無作為に割り付けた。CPAP群は24時間平均血圧が3.1mmHg低下し24時間拡張期血圧が3.2mmHg低下したが、24時間収縮期血圧変化の差はコントロール群と比較し統計学的有意ではなかった。さらに、12週間のフォローアップ時点で夜間血圧ディッパー型(夜間平均血圧が日中平均血圧よりも10%以上低下する)を示す患者の割合はCPAP群においてコントロール群よりも多かった(35.9%対21.6%)。CPAP使用時間と24時間平均血圧の低下には正の相関関係が認められた。 |
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自宅ベースの強化トレーニングに参加した心疾患患者において長期の有益性が認められた [2013-12-17] |
Long-term benefit seen in cardiac patients who participated in home-based high intensity training |
自宅ベースの強化運動による心血管疾患後のリハビリテーションは、高価な運動監視機械を用いるか否かにかかわらず有効であり得るとの新たな研究結果がEuropean Journal of Preventive Cardiologyに掲載された。研究者らは、臨床状況下および自宅ベースの心臓リハビリテーションの両方に関してインターバルトレーニングを用いた12週間の心臓リハビリテーションプログラムの実現可能性を調査した。心疾患患者90人が登録され、グループによるトレッドミル運動群、または自宅ベーストレーニング群に無作為に割り付けられた。参加者は心拍数モニターを用いて運動強度を調整し、インターバルトレーニングを週2回施行した。最大酸素摂取量で評価した健康度は、トレッドミル群において自宅運動群よりも有意に増加したが、それは自宅運動群患者の一部は運動プログラムに沿って運動していなかったためであった。しかし、運動処方にしたがって運動した者のみを比較すると、最大酸素摂取量増加に関しては2群間で有意差が認められなかった。1年後の時点において、初期の12週間に自宅で運動した参加者は病院で運動療法を受けた者よりも運動の頻度が高い傾向にあった。 |
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心臓MRI画像によりエナジードリンクが左室収縮能を増強させることが示された [2013-12-10] |
Cardiac MRI images show that energy drinks increase systolic left-ventricular contractility |
健康な成人がカフェインおよびタウリンを多く含むエナジードリンクを摂取すると1時間後の左室収縮能が有意に上昇するとのスタディ結果が、2013年Radiological Society of North America年次集会で発表された。現在進行中のこのスタディにおいて研究者らは、男性15人および女性3人(平均年齢27.5歳)の計18人において心臓磁気共鳴画像検査を用いてエナジードリンク摂取の心機能に対する影響を測定した。各々のボランティアがタウリン(400mg/100mL)およびカフェイン(32r/100mL)を含むエナジードリンク摂取前および1時間後に心臓磁気共鳴画像(MRI)を施行された。スタディ参加者がエナジードリンクを摂取して1時間後に施行した心臓MRIでは、ベースラインの画像と比較し、左心室のピークストレインおよびピーク収縮期ストレインレートが有意に増加することが示された。心拍数、血圧および左室駆出率はベースラインと2回目のMRI検査の時とで有意差はなかった。エナジードリンクを摂取することによる長期の心臓リスクについてはいまだ不明であるが、小児や既知の不整脈を有する人々は、心収縮の変化が不整脈のきっかけとなる可能性があるため、エナジードリンクの摂取を避けるべきである、と筆者らは結論付けている。 |
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思考を上肢を動かす電気インパルスに変換する新たなリハビリテーションデバイスは脳卒中患者に有益である [2013-12-10] |
Stroke patients benefit from novel rehabilitation device that converts their thoughts to electrical impulses to move their upper extremities |
個々人の思考を上肢を動かす電気インパルスに変換する新たな脳卒中リハビリテーションデバイスを用いることにより、脳卒中患者の運動機能および日常生活動作の施行能力が改善したと2013年Radiological Society of North America年次集会で発表された。研究者らは、脳卒中により片方の手に障害を負った8人の患者を組み入れ、彼らのリハビリテーションデバイスに関する小規模な臨床試験を行った。また患者らの異常のない方の手をコントロールとした。それぞれの患者が新たなデバイスを用いて2〜3時間のリハビリテーションセッションを3〜6週間にわたり9〜15回受けた。中等度重症度の脳卒中の患者においてリハビリテーションセッション後に運動機能が最も大きく改善した。軽症および重症の脳卒中と診断された患者らはリハビリテーション後には日常生活動作を完全に行えるほどに改善したと報告した。リハビリテーション前後のfMRI結果の比較から運動機能を司る脳領域の再構築が認められた。リハビリテーション過程中の拡張テンソル画像から線維路の整合性が徐々に強化されることが示された。 |
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ERASE:運動と血管内血行再建術を併用することにより末梢動脈疾患の間欠性跛行の疼痛が軽減した [2013-12-03] |
ERASE: Combining exercise and endovascular revascularization reduced claudication pain in peripheral artery disease |
末梢動脈疾患(PAD)患者において、監視下運動療法を血管内血行再建術と組み合わせることにより、運動療法単独よりも間欠性跛行の疼痛が軽減し歩行距離が増加したとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表された。Endovascular Revascularization And Supervised Exercise(ERASE)トライアルの研究者らは、下肢の間欠性跛行を有する患者212人を調査した。参加者は、トレッドミル検査による歩行時間計測およびそれによる疼痛などの身体評価、およびスタディ開始時、1、6、12か月後のQOLの評価を受けた。参加者の半分は監視下運動療法を受け、他の半分は血管形成術またはステントにより狭窄を解除された後に監視下運動療法を受けた。治療12か月後に、併用療法を受けた患者は運動療法のみの患者よりも約282m(0.18マイルまたは約3ブロック)長く歩き、疼痛は少なかった。併用療法群は運動単独群よりも無痛歩行距離を平均1/4マイル増加させることができた。ガイドラインでは間欠性跛行患者の初期治療として監視下運動療法を推奨しているが、今回のスタディ結果から併用療法が最良の選択肢である可能性のあることが示唆される、と筆者らは述べている。 |
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CORAL:腎動脈狭窄においてステント挿入は薬物療法と比較し有意な有益性を示さなかった [2013-12-03] |
CORAL: Stenting showed no significant benefit compared to medication in renal artery stenosis |
患者にとって腎動脈狭窄の解除は内服治療単独よりも役立つことはなかったとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表され、同時にNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された。Cardiovascular Outcomes in Renal Atherosclerotic Lesions(CORAL)において、慢性腎臓病または高血圧で腎動脈狭窄を有する患者947人が血圧、コレステロールおよび抗凝固に関する標準的な薬物併用療法、またはこれらの薬物療法に加え腎動脈ステントを施行する群に無作為に割り付けられた。死亡率および他の重篤な合併症(心筋梗塞、脳卒中、または心疾患および腎疾患による入院)発現率は、治療群間で差がなかった。合併症発現率は薬物療法のみの群で35.8%、併用療法群で35.1%であり、有意差はなかった。フォローアップ期間中の収縮期血圧は一貫してステント群の方がやや良好であった(P =0.03)。スタディに参加したNEJMの編集委員は、中等度の動脈硬化性腎動脈疾患を有し高血圧またはステージ3の慢性腎臓病を有する患者は降圧剤による血圧コントロールを受け動脈硬化の進行を予防すべきであり、腎動脈ステント術は施行されるべきではないと勧告している。 |
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心臓突然停止を来した男性の半数以上が過去1か月以内に兆候を有していた [2013-12-03] |
More than half of men who had a sudden cardiac arrest had symptoms up to a month before |
心臓突然停止(SCA)は常に突然なわけではないとの研究結果が2013年American Heart Association学会で発表された。中年男性を対象としたスタディにおいて、半数以上の者が心臓突然停止を来す前に最長1か月の間に警告となる徴候の可能性のある症状を有していた。院外で 心停止した者のうち生存できたのはわずか9.5% であった。研究者らは、2000〜2012年の間に院外心停止を来した35〜65歳の男性に関する情報を収集した。院外心停止を来した男性567人中53%が心停止前に症状を呈していた。症状を有していた者のうち、56%は胸痛、13%は呼吸困難、さらに4%はめまい、失神または動悸を有していた。約80%の症状が心臓突然停止前1時間から4週間前に発現していた。症状は特に、冠動脈疾患(CAD)に関連のない心停止よりもCADに関連した心停止の方が高頻度であった(56% 対 32%、P =0.0005)。既にCADを有していることがわかっていた者では、55%がSCA前に症状を有していた。ほとんどの男性がCADを有していたが、心停止前にその検査を受けていたのは約半数に過ぎなかった。研究者らは現在、同様の研究を女性において行っている。 |
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RADAR-AF:発作性心房細動において、高頻度興奮部位焼灼術は標準治療と比較し安全性および有効性が同等であった [2013-12-03] |
RADAR-AF: Targeted, high frequency source ablation was as safe and effective as standard treatment for paroxysmal atrial fibrillation |
発作性心房細動(AF)患者において高頻度興奮部位焼灼術は標準的な焼灼治療と安全性および有効性が同等であるとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表された。Radiofrequency Catheter Ablation of Drivers vs. Circumferential Pulmonary Vein Isolation in Patients with Atrial FibRillation(RADAR-AF)の研究者らは発作性AFまたは持続性AF患者232人を調査した。発作性AF患者は、左心系に血液を流入させる肺静脈を電気的に隔離する標準的な広範囲肺静脈隔離術、またはコンピュータマッピングを用いて異常心組織を選別するより標的化した方法である高頻度興奮部位焼灼術のいずれかを施行された。1年後に心房細動を有さない確率は、高頻度興奮部位焼灼術を施行された発作性AF患者と広範囲肺静脈隔離術を施行された患者とで同等であった。また重大な合併症は高頻度興奮部位焼灼術群で少なかった。持続性AF患者において、有効性および安全性については2群間で同等であった。現在、研究者らは高密度記録の心電図を行い、焼灼術の前に誤った電気信号を引き起こす心領域を同定しより標的化した治療を試みることを計画している。 |
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一杯のコーヒーに含まれるカフェインが微小血管内皮機能を改善する [2013-12-03] |
Caffeine in a cup of coffee ameliorates microvascular endothelial function |
一杯のコーヒーに含まれるカフェインが微小血管機能改善に役立つ可能性があるとの研究結果が2013年American Heart Association学会で発表された。27人の健常成人を対象とした二重盲検プラセボコントロールクロスオーバースタディの結果、カフェイン入りのコーヒーを1杯飲むことにより微小血管内皮機能が有意に改善することが示された。具体的には、カフェイン入りのコーヒーを1杯飲んだ者はカフェイン抜きのコーヒーを飲んだものと比較し、75分間の指先血流量が30%増加した。スタディの参加者は通常コーヒーを飲まない人々で、22〜30歳であった。1日目にそれぞれの参加者は、5オンスのカップ1杯のレギュラーまたはカフェイン抜きコーヒーを飲んだ。その後研究者らはレーザードップラーフローメトリーを用いて指先血流の反応性充血を計測した。2日後に1回目と違う方のコーヒーを飲んだ後に同様の実験が行われた。カフェイン入りのコーヒーは、カフェイン抜きのコーヒーよりも微小血管内皮機能の指標である指先血流の閉塞後反応性充血を有意に増強させた(P <0.05)。心拍数は2群間で同等であった。これらの結果は、少なくとも一部はコーヒー摂取による心血管死亡率減少との関連の説明となる可能性がある。 |
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過去の喫煙者の一部は心不全および心血管死のリスクが15年未満で軽減する可能性がある [2013-12-03] |
Some former smokers may reduce their risk of heart failure and cardiovascular death in less than 15 years |
65歳超の煙草喫煙者は禁煙することにより、心血管疾患死のリスクがこれまで報告されていたよりも速く喫煙歴のない者と同程度まで低下する可能性があるとの研究結果が2013年American Heart Association学会で発表された。研究者らは禁煙してから15年以下の853人と、全く喫煙歴のない2,557人を比較した。過去の喫煙者853人のうち319人は喫煙本数が32パック/年未満であった。スタディの結果、喫煙本数が32パック/年 未満―1日3.2パック(1パック20本)を10年以下、または1日1箱未満を30年―で、禁煙してから15年以下の高齢者は心不全発症または心不全、心筋梗塞、脳卒中により死亡するリスクが全く喫煙歴のない者と同程度まで低下した。スタディ対象者の多くは15年未満(中央値8年)でリスクを低下させることができた。喫煙者はそれでも、心血管系疾患以外のがん、慢性閉塞性肺疾患および肺気腫などにより死亡するリスクが高かった。 |
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