ENGAGE AF-TIMI 48:心房細動患者の脳卒中予防においてエドキサバンはワルファリンよりも有効で安全であることが明らかにされた [2013-11-26]
ENGAGE AF-TIMI 48: Edoxaban found to be as effective and safer than warfarin for stroke prevention in patients with atrial fibrillation

新薬エドキサバンは抗凝固薬ワルファリンよりも脳卒中予防において有効であり安全であるとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表され同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。ENGAGE AF-TIMI 48トライアルは46か国1,400の病院の心房細動患者21,000人超を対象とした。参加者はエドキサバン1日60mg(高用量)、エドキサバン1日30mg(低用量)またはワルファリンを投与される群に無作為に割り付けられた。脳卒中予防においてエドキサバンはワルファリンと同等に有効であり、出血リスクおよび心血管疾患関連死のリスクは有意に低かった。ワルファリンと比較し、重大な出血は高用量エドキサバン群において20%低く、低用量エドキサバン群では53%低かった。ワルファリンと比較し、高用量エドキサバン群では心血管死が14%少なく、低用量エドキサバン群では15%少なかった。エドキサバンは現在日本において、整形外科手術を施行される深部静脈血栓症のリスクのある患者に対してのみ承認されている。

MINERVA:調律異常時のみペーシングをするペースメーカーは標準的な"常時オン"のデバイスよりも有効性が高い [2013-11-26]
MINERVA: Pacemakers that only pace during rhythm disturbances more effective than standard "always on" devices

徐脈患者において、調律異常が生じた時のみペーシングを行う新世代のペースメーカーにより永続性の心調律異常リスクが軽減できるとのlate-breaking researchが2013年American Heart Association学会で発表された。MINERVAには、スマートペースメーカー技術を用いたシングルチャンバーまたはデュアルチャンバーの抗頻拍デバイスを植え込まれた患者またはこの技術のないデュアルチャンバーペースメーカーを植え込まれた患者計1,166人が組み入れられた。全ての患者が心房細動および/または心房頻拍歴を有し、徐脈に対しペースメーカーを植え込まれてから日が浅かった。心房頻拍性不整脈または心房細動の発現率はデュアルチャンバースマートペースメーカー群で3.8%であったのに対し、スマートアルゴリズムを有さないデュアルチャンバーペーシング患者では9.2%であった。その後2年間にスマートペースメーカー群の15.2%が入院し、4.6%が死亡したのに対し、スマートペースメーカーでない群ではそれぞれ16.8%および5.6%であった。スマートペースメーカー群の患者の方がQOLは良好で倦怠感は少ないと報告した。今回のスタディは、この一連のアルゴリズムにより心房頻拍および心房細動の慢性化およびそれに関連した死亡や入院が有意に減少することを示した初めてのものである。

ROSE AHF:腎機能障害を有する急性心不全においてドーパミンとnesiritideは有用でない [2013-11-26]
ROSE AHF: Dopamine and Nesiritide unhelpful in kidney-compromised acute heart failure

小規模のスタディで腎機能を改善した2つの薬剤は、2013年American Heart Associationのlate-breaking clinical trialで発表された大規模研究において腎機能障害を有する急性心不全患者にとって有益ではなかった。この結果は同時にJAMAに掲載された。過去の小規模のスタディの結果、低用量ドーパミンまたは低用量nesiritideは急性心不全で入院した患者において、腎機能を改善し尿産生を増加させることにより体液過剰を軽減し得ることが示唆された。Renal Optimization Strategies Evaluation in Acute Heart Failure(ROSE AHF)無作為化トライアルにおいて研究者らは、腎機能障害を有し急性心不全で入院した患者360人のデータを解析した。ドーパミンは2µg/kg/minで静脈内投与され、もう一方の群ではnesiritideがボーラス投与なしの0.005 µg/kg/minで静脈内投与された。全ての患者にオープンラベルで静脈内ループ利尿薬治療が行われたが、他の利尿薬および他の薬剤の追加は医師の裁量に任された。いずれの薬剤も72時間の累積尿量または組み入れから72時間後までの血清シスタチンCの変化、うっ血除去および腎機能の変化を反映する複数一次エンドポイントいずれにも有意な影響を及ぼさなかった。

STREAM:STEMI後の生存率は血栓溶解薬を投与された群と血管形成術を施行された群とで差がなかった [2013-11-26]
STREAM: Survival following STEMI similar among patients receiving clot-busting medications and those undergoing angioplasty

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)後の1年生存率は、最初に血栓溶解薬を投与された患者と迅速に血管形成術を施行された患者とで同等であったとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表された。Strategic Reperfusion Early After Myocardial Infarction(STREAM)トライアルにはSTEMIを発症したが病院到着1時間以内に血管形成術を施行することができなかった患者1,892人が組み入れられた。研究者らはこれらの患者の半分を、3種類の薬剤(年齢で補正した用量のtenecteplaseボーラス投与、クロピドグレルおよびエノキサパリン)を投与される群に無作為に割り付けた。彼らの症状が持続している場合には、血管形成術を施行した。残り半分の患者は血管形成術および標準的な抗凝固薬の投与を受けた。両群ともに心発作症状出現から3時間以内に治療を受けた。最初に薬剤併用療法を施行された患者のうち2.1%が心疾患や脳卒中などで死亡し、それと比較し最初に血管形成術を施行された群では1.5%であった。この差は有意ではなかった。このスタディの早期には、血栓溶解薬投与群患者の方が治療後30日間に合併症なく生存する確率がやや高かった。今回の最新の結果は、元のスタディの1年間フォローアップの結果を示している。

VISTA-16:Varespladibが心筋梗塞リスク上昇と関連していることが示されたためトライアルは早期に中止された [2013-11-26]
VISTA-16: Trial halted early after varespladib is linked with increased risk of myocardial infarction

分泌性ホスホリパーゼA2阻害薬varespladibは、急性冠症候群患者の再発性心血管イベントを予防せず心筋梗塞(MI)リスク上昇と関連するとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Associationで発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。これらの結果から大規模臨床試験VISTA-16の結論が早期に得られた。研究者らは、17か国362施設の心筋虚血症状を有する40歳以上の患者5,000人超を調査した。彼らは患者を、毎日500mgのvarespladibまたはプラセボを16週間投与される群に無作為に割り付けた。全ての患者が確立された急性冠症候群治療薬も投与された。治療は患者が症状を有し病院に到着してから96時間以内に開始された。スタディが早期に中止された時点で、varespladib群患者の6.1%がMI、他の心血管合併症、または死亡を含む再発性イベントを発現し、それと比較しプラセボ群では5.1%であった。Varespladibを投与された患者はプラセボを投与された患者よりもMI再発率が有意に高かった(3.4%対2.2%)。

CATIS:脳卒中急性期に血圧を低下させても回復には影響しなかった [2013-11-26]
CATIS: Lowering blood pressure in the acute phase of stroke made no difference in recovery

虚血性脳卒中後超急性期の降圧は患者の回復に影響しなかったとのlate-breaking clinical trialの結果が2013年American Heart Association学会で発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke(CATIS)の研究者らは、虚血性脳卒中を発症し来院時に高血圧を有していた患者4,071人を調査した。患者の半分は降圧薬を投与され、他の半分は脳卒中発症後48時間は常用の降圧薬を中止する群に無作為に割り付けられた。両群とも標準的な脳卒中治療を受けた。脳卒中発症14日後または退院時までに死亡または重大な障害を有していたのは、いずれの群も33.6%であった。3か月後のこれらの率は両群ともに25%であった。この確率が3か月後に低かったのは、時間経過により重大な障害を有する患者が減少したためである。好ましくない副作用もまた降圧薬治療の有無で差がなかった。

CPRを38分以上行うことにより心停止後の生存および正常な脳機能を保持する確率が改善する [2013-11-19]
CPR for 38 minutes or longer improves chance of a person surviving cardiac arrest and having normal brain function

CPRを38分以上行うことにより患者が心停止後生存する確率および心停止後生存した患者が正常な脳機能を保持する確率が改善する可能性があるとのスタディ結果が2013年American Heart Association学会で発表された。日本における全ての院外心停止症例を追跡したレジストリを用いて研究者らは、患者が虚脱してから心拍再開までに経過した時間、および1か月後に脳機能がどの程度維持されていたかを調査した。意識清明で通常の活動に復帰できる場合や、中等度の障害を有するがパートタイムで働ける程度であったり独立して日常活動に参加できたりする場合は、生存者が神経学的に良好と判断された。虚脱してから心拍再開までの時間は、予後が良好であった者において13分であったのと比較し、重度の脳障害を負った者においては21分であった。脳の予後が良好であることと虚脱から心拍再開までの時間との相関に基づき研究者らは、CPRを38分以上継続することが推奨されると算定した。どの時点においてでも、自己心拍が再開した場合にはCPRを継続することが適切であろうと筆者らは述べている。

小児における先天性心奇形率と一部の産業汚染物質の間に相関が認められた [2013-11-19]
Correlation found between rates of congenital heart defects in children and emissions of some industrial pollutants

小児の先天性心奇形は、その母親が妊娠中に特定の環境有害物質混合物に曝露したことと関連がある可能性がある、との研究結果が2013年American Heart Association's Scientific Sessionsで発表された。研究者らは先天性心奇形発現率パターンとカナダのAlberta地方の環境有害物質の存在について調査した。彼らは3つの化学物質カテゴリーを観察したが、先天性心奇形発現率と強力に関連したのはたった1つのグループだけであった。このグループの化学物質は有機化合物と金属(すなわち、ベンゼン、ブタジエン、二硫化炭素、クロロホルム、エチレンオキサイド、ヘキサクロロベンゼン、テトラクロロエタン、メタノール、二酸化硫黄、トルエン、鉛、水銀およびカドミウム)の混合物からなっていた。カナダにおいては先天性心奇形発現率は2006年以降減少しており、この減少は主に中隔欠損および円錐動脈管奇形の減少によるものである。AHAで発表された予備的な結果から、排気ガスが減少すると先天性心奇形の発現率も低下することが示唆された。研究者らは、このスタディは先天性奇形に対する環境汚染の影響に関するエビデンスを増加させたことに注目すべきである、と述べている。このスタディの限界は、個人のリスクおよび政府が毎年モニターし収集している企業の自己申告データではなく、グループレベルでの観察であることである。

ARCTIC-INTERRUPTION:PCI後1年の時点でイベントを発現しなかった患者は二重抗血小板薬療法の延長は必要ない可能性がある [2013-11-12]
ARCTIC-INTERRUPTION: Patients who are event-free following PCI at 1-year may not need prolonged dual antiplatelet therapy

薬剤溶出ステント挿入後1年間に重大な心イベントを発現しなかった患者は二重抗血小板薬療法(DAPT)の延長が必要ない可能性がある、と第25回Transcatheter Cardiovascular Therapeutics学会で発表された。ARCTIC-INTERRUPTIONトライアルは、冠動脈ステント術後1年間に重大なイベントを発現しなかった患者1,259人を、DAPT中断(624人)またはさらに1年間DAPTを継続する群(635人)に無作為に割り付けた。一次エンドポイントは、1年以内の総死亡、心筋梗塞、ステント血栓、脳卒中、または緊急血行再建術であった。一次エンドポイントは継続群患者の3.8%において発現し、それと比較し中断群では4.3%であった。主な二次エンドポイントであるステント血栓または何らかの緊急血行再建術は継続群の1.3%において発現し、中断群では1.6%であった。重大な出血は継続群患者の1.1%に発現し、それと比較し中止群では0.2%であった。冠動脈ステント術後の最良のDAPT期間は、長期療法の安全性と有効性の比率が不明のため、いまだ不確定である。

GIANT:遺伝子プロファイリングは抗凝固薬に耐性の心筋梗塞患者を同定することにより臨床的な有益性を提供する可能性がある [2013-11-12]
GIANT: Genetic profiling may provide clinical benefit by identifying myocardial infarction patients that are resistant to blood thinner

経皮的冠動脈形成術(PCI)施行予定の患者の遺伝子プロファイルは、クロピドグレルのようなチエノピリジン製剤を適切に代謝しない患者の治療の調整に役立ち虚血の予後を改善する可能性がある。この前向き、多施設、単一群スタディは1,499人の患者をプライマリPCIの時点(胸痛発症から<24時間)で組み入れた。インターベンションから48時間以内に遺伝子プロファイリングを施行し、CYP2C19遺伝子機能欠損を検出しクロピドグレル耐性を同定した。計22%の患者(319人)が有効性遅延群として知られるCYP2C19機能欠損と関連のあるプロファイルを有していた。他の患者をコントロール群とした。有効性遅延群のうち、調整治療を受けた患者はこれを受けなかった患者よりも1年後の有害事象が少なかった(それぞれ3.3%対15.6%)。調整療法を受けた患者の有害事象発現率はコントロール群と同等であった(3.3%対3.04%)。客観的な評価で治療コンプライアンス不良と同定された患者は1年後で4.9%であり、これらの患者においては虚血性イベントが数値的に多かった。GIANTトライアルの結果は第25回Transcatheter Cardiovascular Therapeutics学会で発表された。

左乳がんに対し放射線療法を施行された女性は心血管疾患リスクが高い [2013-11-05]
Cardiovascular risk increased in women with breast cancer following left-sided radiation therapy

仰臥位で左乳がんに放射線療法を受け心臓により直接的に被曝した早期乳がん患者は心疾患リスクが高かったとの研究結果が、2013年JAMA Internal Medicine 10月28日号オンライン版に掲載された。研究者らは、ステージ0からIIA乳がん放射線治療患者48人の放射線治療計画を調査し、心臓の平均被曝量、心リスク、治療側、体位などの放射線治療因子と冠動脈イベントとの関連を計算した。その結果、ベースラインリスクが高く仰臥位で左側治療を受けた女性において冠動脈リスクが最も高かった。最もリスクが低かったのは、ベースラインのリスクが低く右側治療を受けた女性であった。左側放射線照射では、腹臥位により心臓の被曝量およびリスクが低下したが、右側照射では体位の影響は少なかった。心疾患における被曝の影響は掛け算式のようであり、絶対的放射線リスクが最大であることはベースラインの心リスクが最大であることに対応しているようである、と筆者らは指摘している。放射線療法による主要な冠動脈イベントリスクは、生活習慣の改善や薬物治療によるベースラインの心臓リスクファクターコントロールにより低下する可能性がある、と筆者らは述べている。

閉塞性睡眠時無呼吸は高感度トロポニンTレベル上昇と関連がある [2013-11-05]
Obstructive sleep apnea associated with increased high sensitivity troponin T levels

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine印刷版に先立ちオンライン版に掲載されたスタディの結果、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、高感度トロポニンT(hs-TnT)レベルが上昇していることから潜在的心筋傷害と関連のあることが示唆された。スタディでは、ベースライン時に冠動脈疾患(CHD)および心不全(HF)を有さない中年および高齢の参加者1645人を対象とした。追跡期間中央値は12.4年であった。OSA重症度は、呼吸障害指数を用いて、なし、軽度、中等度、または重度に分類された。その結果、年齢、性別、ボディーマスインデックス、喫煙の有無、高血圧、糖尿病、飲酒量、呼吸機能(FEV1およびFVC)、COPDの状態、収縮期血圧、総コレステロール、LDLおよびHDLコレステロール、中性脂肪、インスリン値および推定糸球体濾過率(eGFR)などの17の可能性のある交絡因子で補正した後、hs-TnT値はOSAと有意に関連があったが、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドとは関連がなかった。全てのOSA重症度において、hs-TnTは死亡または心不全発現リスクと有意に関連し、この相関関係は重度のOSAにおいて最強であった。スタディの限界は、因果関係に関する結論が含まれない横断研究であることおよび重度のOSAを有する参加者数が少ないことである。