炎症性腸疾患患者は脳卒中や心筋梗塞のリスクが高い [2013-10-29]
Patients with inflammatory bowel disease at higher risk for stroke and myocardial infarction

炎症性腸疾患(IBD)患者は脳卒中や心発作のリスクが高いとの新たなスタディ結果が2013年American College of Gastroenterology年次集会においてメイヨークリニックの研究者らにより発表された。9つのスタディの150,000人超のIBD患者の解析において、研究者らはIBD患者の脳卒中や心疾患のリスクを推定し一般人口と比較した。この比較の結果、IBD患者においては脳卒中や心筋梗塞リスクが10〜25%高かった。リスク上昇は特に女性において顕著であった。消化器医はこの関連性を認識し、禁煙および高血圧や糖尿病の診断とコントロールなどの従来のリスクファクターの管理に重点的に取り組む必要がある。IBD患者のリスクファクターコントロールには、医師とともにIBDを管理すること、ストレス軽減、食事療法、中等度の運動、および禁煙などが含まれる。

インフルエンザワクチン接種を受けることにより重大な心血管有害事象のリスクが低下するようである [2013-10-29]
Receiving an influenza vaccine appears to lower risk of major adverse cardiovascular events

インフルエンザワクチン接種を受けることにより、心不全や心筋梗塞による入院などの重大な心血管有害事象のリスクが低下し、この治療効果は急性冠症候群(ACS)を発症して間もない患者において最も大であるとのメタ解析の結果がJAMAに掲載された。研究者らは、公表された5つのランダム化クリニカルトライアル(RCT)と未公表の1つのランダム化クリニカルトライアルの6,735人の患者(平均年齢67歳;女性51%;心疾患歴を有する者36%;平均追跡期間7.9か月)を同定した。公表された5つのRCTにおいて、インフルエンザワクチンを接種された患者3,228人中95人(2.9% )がフォローアップ1年以内に重大な心血管有害事象を発症したのに対し、プラセボで治療された患者またはコントロール3,231人においては151人(4.7%)であり、絶対リスクはインフルエンザワクチン接種群で1.74%低かった。3つのRCTの既存の冠動脈疾患(CAD)を有する患者のサブグループ解析では、最近のACS歴を有する患者における重大な心血管イベントリスクはワクチン接種群で特に低く(インフルエンザワクチン群10.3%対プラセボまたはコントロール群23.1%)、絶対リスクの差は12.9%であり、それに対し安定CAD群ではインフルエンザワクチン接種群6.9%に対しプラセボまたはコントロール群7.4%であった。

心筋梗塞患者は治療が遅れると復職が遅くなり退職が早まる [2013-10-22]
Myocardial infarction patients return to work later and retire earlier if treatment is delayed

ST上昇心筋梗塞(STEMI)患者の治療体制の遅れは患者の復職を延期させ早期退職を増加させるとの研究結果が2013年Acute Cardiac Care学会で発表された。地域住民を対象としたこのコホートスタディは、STEMIで入院しプライマリ経皮的冠動脈インターベンションで治療された67歳未満のデンマーク人患者4,061人を対象とした。入院3週間にフルタイムまたはパートタイム被雇用者であった者のみが組み入れられた。4年後にスタディ対象者の91%が復職していた。8年後には29%が退職していた。120分以上の治療の遅れは復職の遅延(サブハザード比0.86;95%信頼区間[CI]0.81〜0.92)および早期退職(ハザード比1.21;95%CI 1.08〜1.36)と関連があった。大部分の患者が4年以内に労働市場に戻ったが、14%は治療の遅れのために復職が遅延した。8年後には、大幅に治療が遅れた人々においては退職率が21%高かった。治療の遅れの影響に男女差はなかったが、復職は女性よりも男性の方が遅かった。全体の結果とは対照的に、独身の患者は治療の遅延は少なかったが退職率は高かった。

糖尿病患者において経皮的血行再建術とバイパス術とのQOLに関する長期予後は同等である [2013-10-22]
Angioplasty and bypass surgery lead to similar long-term benefits for quality of life for patient with diabetes

多枝冠動脈病変(CAD)を有する糖尿病患者において、冠動脈バイパス術(CABG)は薬剤溶出ステントを用いた血行再建術よりも6か月後と2年後の健康状態およびQOLをやや良好にしたが、2年以上経過するとその差は消失したとのスタディ結果がJAMAに掲載された。FREEDOMトライアルでは、糖尿病患者においてCABGは薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)と比較し、死亡および心筋梗塞発現率は低下させたが脳卒中リスクは上昇させることを示した。今回研究者らはFREEDOMサブスタディを施行し、機能の状態およびQOLに関して評価した。糖尿病および多枝CADを有するFREEDOMトライアルの患者1,900人のうち、1,880人においてベースライン時点の健康状態が評価され(CABG 935人、PCI 945人)一次解析サンプルを構成した。2年後の狭心症頻度、運動制限、およびQOLの計測値は、PCIと比較しCABGにおいて有益性が高いことを示した。2年を超えると、患者の報告した予後はこれらの2つの血行再建術で全般的に同等であった。PCIとCABGの後期のQOLに関する予後の同等性は、PCI群において抗狭心症薬使用率が高いことおよび血行再建術再施行頻度が高いことにより達成された。

冠動脈バイパス手術前にスタチンを内服することにより死亡および脳卒中のリスクが低下する [2013-10-15]
Taking statins before coronary artery bypass graft surgery reduces risk of death and stroke

冠動脈バイパス(CABG)手術前にスタチン療法を受けた患者は術後死亡リスクおよび脳卒中リスクが低いとの研究結果がThe Annals of Thoracic Surgery 2013年10月号に掲載された。スタチンによるこれらの有益性は大動脈弁置換術(AVR)を施行される患者においては同じようには認められなかった。過去の研究において、一部のトライアルにおいてスタチン療法はバイパス患者において有益であったが他のスタディではこの効果を確認できなかったことが示された。研究者らは今回の研究を解析し術前スタチン療法がCABGまたはAVR単独手術の結果を改善するか否かを観察した。解析には36のスタディが含まれ、そのうち32は計36,053人のCABG手術患者の術前スタチン療法を評価し、4つはAVR手術を施行された患者計3,091人におけるスタチンの効果を解析した。全体で、CABG手術前にスタチンを内服した患者の死亡率はスタチンを内服しなかった患者の死亡率よりも低かった。スタチンを内服した患者においては内服しなかった患者よりも脳卒中リスクが19%低かった。心筋梗塞に関しては有意なリスク軽減は認められなかった。AVRに関しては、術前のスタチン療法は術後の予後には有意な違いをもたらさなかった。

体脂肪と心血管疾患死亡率との関連は南アジア人と東アジア人とで異なる [2013-10-15]
Association between body fat and mortality due to cardiovascular disease differs between South and East Asians

British Medical Journalに掲載されたスタディにより、体脂肪と心血管疾患死亡率との関連性は南アジア人と東アジア人とで異なるとの、グローバルな健康に関する勧告において重要な結果が明らかにされた。このスタディにおいて、南アジアの代表としてバングラデシュおよびインドを、東アジアの代表として中国、日本、シンガポール、韓国、および台湾を用いた。研究では、東アジアおよび南アジアの10万人余りの人々を平均10年間追跡した国際研究協力アジアコホート連合の蓄積データを用いた。その結果、南アジア人においてはボディマスインデックス(BMI)が大きいことは心血管疾患死の弱いリスクファクターであった。一方、東アジア人ではBMIが24.9超であることは西欧人と同様に強力なリスクファクターであった。またこの解析の結果、体脂肪が少なすぎることと心血管疾患死との関連にも顕著な差が認められた。低BMI(17.5未満)は実際東アジア人においては心血管疾患死のリスクを上昇させたが、南アジア人においてはそうではなかった。BMIと心血管疾患死との関連は53歳未満の東アジア人においてより強力に認められた。

一般的に使用される経口ホルモン補充療法は静脈血栓リスクを上昇させMIリスクを上昇させる可能性もある [2013-10-08]
Commonly used oral hormone therapy increases risk of venous thrombosis and possibly MI

更年期障害軽減目的で女性に使用される経口ホルモン製剤結合型ウマエストロゲン(CEE)は、経口エストラジオールホルモン補充療法と比較し、静脈血栓(VT)リスクを上昇させ心筋梗塞(MI)リスクも上昇させる可能性があるが、虚血性脳卒中リスクは上昇させないとのスタディ結果がJAMA Internal Medicineに掲載された。スタディの背景によると、2つの一般的に使用される経口エストロゲン製剤の心血管系の安全性についてはあまり知られていないため、研究者らはこれらのホルモン補充療法の心血管系に関する安全性を比較した。研究者らは30〜79歳の経口ホルモン補充療法を行っている閉経後女性384人を対象とした。彼らはVTを発現した68人、MIを発現した67人、虚血性脳卒中を発現した48人、およびCEEまたはエストラジオール内服中のコントロール201人を同定した。その結果、CEEにおいてエストラジオールと比較し、VTのリスクが大であり、MIリスクは統計学的に有意ではないがリスク上昇を認めた。虚血性脳卒中リスクは上昇しなかった。

低テストステロンと心血管疾患との軽度の関連を示唆するエビデンスが増加傾向にある [2013-10-08]
Growing body of evidence suggests a modest connection between low testosterone and cardiovascular disease

テストステロンレベルの低い男性は心疾患発症または心疾患死のリスクがやや高いとの近年のスタディがJournal of Clinical Endocrinology & Metabolisにアクセプトされた。この臨床的レビューでは1970〜2013年に雑誌に掲載された心血管系疾患とテストステロンに関するスタディの結果を調査した。これらのスタディからある種の関連性は認められたが、既存の研究からは低テストステロンと動脈硬化との関連を示すエビデンスは少なかった。このレビューされたスタディからはテストステロンレベルと心筋梗塞との関連性も示されなかった。多くのスタディが因果関係に関する情報を提供しないクロスセクショナルデザインであったが、このレビューではまた1つの状態が他の状態を引き起こすかどうかのさらなる情報を提供する19の前向き観察研究も調査した。これらのスタディでは低テストステロンや心血管疾患に先行する原因の可能性に関しては完全には否定できておらず、これら2つの状態の関連性を確認するにはさらなる研究が必要であると筆者らは述べている。テストステロン療法臨床ガイドラインにおいて内分泌学会は、明らかにテストステロンレベルが低くそれに一致した症状を有する男性のみを治療することを推奨している。

感染性心内膜炎予防ガイドラインは先天性心疾患の小児における抗生剤予防投与の使用を軽減させた [2013-10-01]
Guidelines for prevention of infective endocarditis reduced use of antibiotic prophylaxis in children with congenital heart defects

一部の先天性心疾患を有する小児は感染性心内膜炎のリスクが高い可能性があるとの新たな研究結果がCirculationに掲載された。大規模なカナダのデータベースを用いて、研究者らは先天性心疾患を有する小児47,518人の感染性心内膜炎の発症を観察した。平均で、18歳までの感染リスクは先天性心疾患を有する小児1,000人中6.1件であり心疾患のタイプによりかなり異なった。最新のAmerican Heart Associationガイドラインと一致して、生下時のチアノーゼに関連する病変を有する小児および過去6か月以内に心臓手術を施行された患者は感染性心内膜炎を発症するリスクが有意に高かった。しかし、他の2つの患者群―心内膜床欠損症および左心系の疾患を有する小児―もまたリスクが高かった。感染リスクは、3歳未満の先天性心疾患患者または過去6か月以内に心臓手術を施行された患者においてもまた高い可能性があった。今回のスタディはこれらの重篤な細菌感染防止における予防的治療の有効性に関しては評価しなかった一方で、予防治療が有益であり得る患者を判定するのに役立つ可能性のある重要な情報を提供していると筆者らは述べている。

ビタミンBサプリメントは脳卒中リスクを低下させるがいったん発症してしまえば重症度軽減にはつながらないようである [2013-10-01]
Vitamin B supplements appear to reduce risk of stroke but not the severity of stroke when it occurs

Neurologyオンライン版に掲載された新たなエビデンスの結果、ビタミンBサプリメントを摂取することは脳卒中リスク軽減に役立つ可能性があることが示唆された。科学者らは14の無作為化トライアルの患者計54,913人を解析した。全てのスタディがビタミンB摂取とプラセボまたは非常に低用量のビタミンBとを比較した。参加者はその後最低6か月間追跡された。スタディ期間中に2,471件の脳卒中が発現し、これらのスタディの全てがビタミンB摂取の何らかの有益性を示した。ビタミンBはスタディ全体で脳卒中リスクを7%低下させた。しかし、サプリメント摂取は脳卒中重症度や脳卒中による死亡リスクには影響しないようであった。葉酸塩(ビタミンB9)のサプリメントである葉酸はしばしば栄養強化シリアルに含まれるが、ビタミンBの効果を低下させるようである。ビタミンB12による脳卒中リスクの低下は認められなかった。これらの結果に基づき、ビタミンBの脳卒中リスク低下効果は個体の吸収率、血液内葉酸およびビタミンB12濃度、および腎疾患や高血圧の有無などの多くの他の因子に影響される可能性があると筆者らは述べている。