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小児期にADHDと診断された男性は成人期の収入が低く離婚率が高く教育期間が短い [2012-10-30] |
Men diagnosed with ADHD as children had lower incomes, higher divorce rates and less schooling as adults |
33年間のフォローアップスタディにおいて、小児期に注意欠損/多動性障害(ADHD)と診断された男性はADHDと診断されなかった男性と比較し、教育的、職業的、経済的および社会的予後が有意に不良であったとの研究結果がArchives of General Psychiatry 10月号に掲載された。この前向きスタディでは、平均8歳の時点でADHDと診断された白人男性135人および小児期ADHDを有さなかった比較対照群136人を対象とした。経過観察時の平均年齢は41歳であった。スタディでは特に、小児期にADHDと診断された小児が小児期にADHDと診断されなかった対照と比較し、成人に達しても教育的、職業的、経済的、社会的、および結婚に関する予後が不良であったり、ADHD持続、反社会性パーソナリティ障害、薬物乱用問題、精神疾患、精神科入院および受刑率が高かったりするか否かを評価した。平均して、小児期ADHDを有していた男性は比較対照群よりも教育期間が2年半短く、31%は高校を卒業しておらず(それに対し小児期ADHDを有さなかった男性におけるその割合は4%)それより高学歴であった者はわずか3%であった(対29%)。さらに、離婚率も高く(31%対12%)、ADHD持続率が高く反社会性パーソナリティ障害や薬物乱用障害を有する率が高かった。 |
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脂肪や蛋白質の多い食事を摂取する70歳以上の人々は高炭水化物食を摂取する人々よりも認知機能が良好である [2012-10-30] |
People 70 and older who ate food high in fat and protein fared better cognitively than those eating a high carb diet |
炭水化物よりも蛋白質や脂肪を多く摂取する70歳以上の人々は認知機能障害を発症する確率が低いとの研究結果がJournal of Alzheimer's Diseaseに掲載された。研究者らは前年に摂取した食物の情報を提供した1,230人(70〜89歳)を追跡した。認知機能障害の徴候のない約940人のみ、認知機能に関する追跡調査に再度参加してもらった。スタディ開始約4年後、940人中200人において軽度認知機能障害の徴候が認められ始めた。スタディ開始時に炭水化物摂取量が最大であった者は炭水化物摂取量が最小であった者よりも、軽度認知障害の発症率が1.9倍であった。砂糖摂取量が最大であった者は最小であった者よりも、軽度認知障害を有する確率が1.5倍であった。しかし、脂肪摂取量が最大であった者は認知機能障害を発症する確率が42%低く、蛋白摂取量が最大であった者はリスクが21%低かった。脂肪および蛋白の総摂取量を考慮すると、炭水化物摂取量が最大の者は軽度認知障害を発症する確率が3.6倍であった。 |
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アンジオテンシンIV薬はアルツハイマー病に関連した認知機能を改善するようである [2012-10-23] |
Angiotensin IV drug appears to improve cognitive function associated with Alzheimer's disease |
アルツハイマー様精神障害を有するラットの認知機能を劇的に改善する新薬候補が開発されたとJournal of Pharmacology and Experimental Therapeuticsオンライン"Fast Forward"セクションに報告された。既に生じた脳損傷を修復することを目的としたこの化合物は、細胞死の過程を遅延させ学習や記憶発達に関連した重要な神経伝達物質を破壊すると考えられている酵素コリンエステラーゼを阻害する現在のアルツハイマー治療から一線を画するものである。研究者らはアンジオテンシンIVペプチドの海馬に対する影響を観察し始めた1992年から、この化合物に取り組んできた。彼らは、アンジオテンシンIV、またはそれに基づく新薬候補は多くの認知症モデルにおいて観察される学習障害を逆戻りさせる能力を有することに気付いた。これらの新薬候補は速やかに代謝されまた血液脳関門を通過できないため実用性は非常に限定的である。研究者らは血液脳関門を通過できる小分子バージョンを開発した。さらにこの小分子バージョンは消化管から血液内へ移動できるため経口投与できるという利点もある。さらなる試験が必要である。 |
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悪いニュースは男性よりも女性においてストレスフルな状況に対する反応の仕方を変化させるようである [2012-10-23] |
Negative news stories seem to alter the way women respond to stressful situations more than men |
メディアにおける悪いニュースはストレスフルな状況に対する女性の感度を上昇させるが、男性においては同様の影響はないとのスタディ結果がPLOS Oneに掲載された。研究者らは60人を4群に分け実際のニュース記事を読んでもらった。一方の男性グループおよび女性グループは新しい公園の開園や映画の封切りに関する記事を読み、残りの男女別グループは殺人や事故などの暗いニュースを読んだ。参加者は、記憶や思考力にかかわる標準課題(これによりストレスフルな状況に対する反応を評価したり比較したりできる)を行った。記事を読む前後およびストレス活動後に唾液のコルチゾールが検査された。参加者は翌日、自分達の読んだ内容について話をした。ニュース記事のみではストレスレベルを上昇させなかったが、暗いニュースを読んだ女性においては"ストレス"要素を含む実験後に、普通のニュースを読んだ女性よりも唾液中のコルチゾールレベルが高かった。女性の方が悪いニュースのより詳細な点を記憶していた。この現象は男性においては認められなかった。 |
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視覚的混乱を排除することは軽度認知機能障害患者に役立つ [2012-10-16] |
Eliminating visual clutter helps people with mild cognitive impairment |
Hippocampus 10月号に掲載された新たなスタディの結果、早期アルツハイマー病と診断された人々の記憶障害の一部は類似の対象物を区別することに問題があることが示唆された。この結果はまた、過去にはもっぱら記憶を支えると信じられていた内側側頭葉も知覚対象において役割を果たしていることを示す研究が増えていることを支持するものである。研究者らは軽度認知機能障害(MCI)を有する患者に対して、2枚の絵が異なるか同じかを判断する能力について調べた。High-interference trialでは多くの同じもの(斑点のような被写体)の写真が見せられた。これらの写真は完全に一致しない場合には、形、色、または塗りつぶしのパターンのいずれかがわずかに異なっていた。予想通り、MCI患者は同じものの組み合わせを同定するのに非常に苦労した。Low-interference trialでは、これらの写真は一致しないものがより極端で大きく異なるように点在していた。例えば、蝶の写真は電子レンジの写真の隣に並べられた。非常に似通った写真の間に似ていない写真を配置することで、障害となる物は減少した。この結果から、ある環境下では"視覚的混乱"を軽減させることはMCI患者の日課の助けになり得ることが示唆された。 |
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男性のアルツハイマー病は血中インスリン様成長因子-1およびインスリン様成長因子結合蛋白-3レベル低下と関連がある [2012-10-16] |
Alzheimer's disease in men linked to low serum levels of hormone insulin-like growth factor-1 and insulin-like growth factor binding protein-3 |
血中インスリン様成長因子-1(IGF-1)およびインスリン様成長因子結合蛋白-3(IGFBP-3)レベルの低下は男性においてアルツハイマー病と関連があるが女性においては関連がないとのスタディ結果がJournal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2012年12月号にアクセプトされ掲載予定である。IGF-1およびIGFBP-3は寿命に関与し、特に実験研究でアルツハイマー病の主要な病的過程をIGF-1が阻止することが示されており、この疾患における認知機能に有益である可能性がある。この多施設クロスセクショナルスタディにおいて、研究者らは高齢者694人(男性218人および女性476人)の血中IGF-1およびIGFBP-3レベルを計測した。スタディ参加者のうち481人が記憶に関する病状を有し、アルツハイマー病または軽度認知機能障害と診断された。計測の結果、血中IGF-1およびIGFBP-3レベルは男性においては認知機能と有意に関連があったが、女性では関連が認められなかった。筆者らは、クロスセクショナルな関連は因果関係を意味するものではなく、血中IGF-1/IGFBP-3が性別に伴う認知機能低下の予測因子となるか否かを評価する長期スタディを正当化するものであると述べている。 |
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うつは反復性片頭痛をより苦痛を伴う慢性片頭痛へと変容させる独立したリスクファクターである [2012-10-09] |
Depression is an independent risk factor for transforming episodic migraine into far more burdensome chronic migraine |
反復性片頭痛を有する患者におけるうつは、その頭痛パターンをより苦痛を伴う慢性片頭痛へと変容させる独立したリスクファクターであるとのデータが、European Headache and Migraine Trust International Congressで発表された。研究者らは、現在進行中の地域住民を対象としたAmerican Migraine Prevalence and Prevention studyにおいて、反復性片頭痛のクライテリアに合致する参加者13,500人近くのデータを解析した。可能性のある交絡因子で幅広く補正した解析において、反復性片頭痛とうつの両者を有する参加者はうつを有さない反復性片頭痛患者よりも、翌年慢性片頭痛へと進行する率が65%高かった。さらに、うつ重症度と反復性から慢性へと進行するリスクとには明らかな用量依存性の関係が認められた。慢性片頭痛患者に対する有効なうつ治療が反復性片頭痛への逆変容を促進するか否か、さらに反復性片頭痛患者に対する抗うつ薬の使用が慢性片頭痛への進行リスクを軽減できるか否かに関しては答えが出ておらず、筆者らの視点ではさらに研究を行うことに重要度が置かれている。 |
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人道的救援活動に従事する者は配置後および帰宅後のうつや不安のリスクを上昇させる [2012-10-09] |
Humanitarian aid work raises risk of depression and anxiety both when deployed and after returning home |
人道的救援活動に従事する者は、現場および帰宅後いずれにおいても精神衛生上の問題のリスクが有意に高いとの研究結果がPLOS ONEオンライン版に掲載された。朗報は、このリスクを軽減し得る手段があることである。研究者らは19の非政府組織(NGOs)で働く国際的な人道的救援活動に従事する212人を調査した。現場配置前に3.8%が不安症状、10.4%がうつ症状を有していると報告したが、これは大まかに一般人口におけるこれらの障害の有病率の範囲内であった。配置後、これらの割合はそれぞれ11.8%および19.5%に跳ね上がった。3〜6か月後に不安症の割合はやや改善を認めた―7.8%に低下、一方でうつの割合はむしろ高値―20.1%であった。うつのリスクを上昇させたのは特別危険な、あるいは生命にかかわるような状況を経験することではなく、困難な仕事に取り組む環境への持続的な曝露であった。社会的サポートが脆弱であることや精神疾患歴もリスクを上昇させた。この論文ではNGOに対するいくつかの勧告の要点を述べている:1)精神疾患歴のある者をスクリーニングし彼らにリスクを警告し配置中及び配置後の精神的サポートを供給する、2)サポートのある職場環境、こなせる範囲内の仕事量、および正しい評価を行う、3)社会的サポートや同胞のネットワークを奨励し容易にする。 |
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戦闘に曝露された軍人における心的外傷後ストレス障害症状が統合医療により軽減する [2012-10-02] |
Post-traumatic stress disorder symptoms reduced in combat-exposed military via integrative medicine |
ヒーリングタッチと誘導イメージ療法(HT+GI)の併用は戦闘に曝露された現役軍人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状を臨床的に有意に軽減する、とのスタディ結果がMilitary Medicine 9月号に掲載された。この報告によると、これらの補完医療介入を受けた患者は、従来通りの治療のみを受けた軍人に比べQOLが有意に改善し、うつやシニシズムが軽減したことが示された。現役の米国海兵隊を対象とした無作為化コントロールトライアルには、PTSDを有する123人が含まれた。55人はPTSDに対する通常通りの治療(TAU)を受け、残りの68人はTAUに加えHT+GIも受けた。3週間以内の6セッションの後に、HT+GI群患者はこれらを組み合わせた補完医療の結果、PTSD症状が有意に改善したと報告した。ヒーリングタッチは人のバイオフィールドを復活させ平衡を保ち、疼痛を軽減し治癒を促進させるエネルギーベースの非侵襲的治療である。誘導イメージ療法は想像力を用いて人を助け、ストレスを軽減し、疼痛を軽減し視覚化することにより全体的な健康状態を増強する1つの方法である。このスタディは、全ての軍隊隊員が有効で烙印を押されることのない(non-stigmatizing)PTSD治療を受けられる必要があることを強調している、と筆者らは述べている。 |
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脳卒中リスクは小児期に高度の感情的ネグレクトを受けた成人において最大である [2012-10-02] |
Risk of stroke highest in adults who report high level of childhood emotional neglect |
Neurology誌オンライン版に掲載された新たな研究の結果、小児期に感情的ネグレクトを受けた人々は成人期の脳卒中リスクが高い可能性があることが示唆された。このスタディのために、1,040人の成人(55歳以上)が18歳までの身体的感情的虐待を評価する調査を受けた。質問は、参加者らが介護者に愛されていると感じていたか、恐怖感を持たされたり脅されたりしていたか、あるいはベルトなどを用いて罰を受けていたかなどに焦点を当てたものであった。離婚や経済的貧困も含まれた。3年半の間にスタディ対象の257人が死亡し、そのうち192人が脳の解剖を受け脳卒中の徴候の有無を調査された。病歴や身体所見から参加者のうち40人は脳卒中の形跡が認められた。解剖の結果から89人は脳卒中の徴候を有していた。脳卒中リスクはやや高レベルの小児期感情ネグレクトを報告した者において、やや低レベルのネグレクトと報告した者よりも3倍近く高かった。この結果は糖尿病、運動、喫煙、不安および心血管疾患などの因子を考慮しても同等であった。 |
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