認知症と脳卒中を予測する簡便な検査
  睡眠障害は後の記憶能力に影響する
  大気の質が認知機能低下および脳卒中のリスクに影響を与える
  神経変性の新たな化学的マーカー
  男性は女性よりも軽度認知障害のリスクが高い
  耽溺性に関しては性別が問題となる

 2月14日のDOL Newsは2012年American Stroke Association's
 International Stroke Conference特集のため、Psychiatryニュースは
  お休みさせていただきました。


中年期の歩行速度と握力により認知症および脳卒中リスクが予測できる可能性がある [2012-02-28]
Walking speed and hand grip strength in middle age may predict dementia and stroke risk

4月に開催される第64回American Academy of Neurology学会で発表される予定の研究によると、歩行速度や握力などの簡便な検査が、中年の人々の認知症や脳卒中の発症率を医師が判断する助けになる可能性がある。2,400人を超える男女(平均年齢62歳)が歩行速度、握力および認知機能検査を受け、脳の画像検査も施行された。最長11年の追跡期間中に34人が認知症を発症し、70人は脳卒中を発症した。中年期に歩行速度が遅かった人々は、速かった人と比較し認知症発症率が1.5倍高かった。65歳を超えた人々においては、握力が強い人は弱い人に比べ、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)のリスクが42%低かった。また、歩行速度が遅いと総脳体積が少なく、記憶、言語および意思決定検査において成績が不良であった。握力が強いと総脳体積が大きく対象物の類似性を見極める認知検査の成績も良好であった。

 

睡眠の量と質によりアルツハイマー病発症のリスクが予測できる可能性がある [2012-02-28]

Amount and quality of sleep may predict risk of developing Alzheimer's disease
夜間睡眠の量と質が後の記憶能力に影響する可能性があるとの研究結果が、4月に開催される第64回American Academy of Neurology学会で発表される予定である。研究者らは認知症のない100人(45〜80歳)の睡眠パターンを検査した。この群の半分がアルツハイマーの家族歴を有していた。スタディの結果、参加者の25%にアルツハイマー病発症の数年前に現れうるアミロイドプラークの所見が認められた。参加者がベッドで過ごした時間の平均は約8時間であったが、夜間の短時間の覚醒のために平均睡眠時間は6.5時間であった。1時間に5回以上覚醒する人々はそれより覚醒回数の少ない人々と比較し、アミロイドプラークの蓄積を有する確率が高かった。つまり、ベッドで過ごしている時間に対し実際眠っている時間が85%未満の者では85%以上の者よりも早期段階のアルツハイマー病のマーカーを有する確率が高かった。
 
大気の質が不良であると認知機能低下速度が速まり虚血性脳卒中リスクが上昇する [2012-02-21]
Poorer air quality associated with faster cognitive decline and higher risk of ischemic stroke

大気の質と高齢女性における認知機能低下リスクおよび急性虚血性脳卒中リスクとの関連が2つのスタディにおいて調査され、Archives of Internal Medicine 2月13日号に掲載された。1つめ目のスタディでは、70〜81歳の米国女性19,409人を組み入れたNurses' Health Study Cognitive Cohortのスタディ対象となった高齢女性において、粗大粒子および微小粒子両者の大気汚染と認知機能低下の関連を評価した。この大規模前向きスタディにおいて、PM2.5-10 および PM2.5いずれへの高レベルの長期曝露も認知機能低下速度上昇と有意に関連が認められた。もう1つのスタディでは、米国Massachusetts州Bostonで虚血性脳卒中により入院した患者1,705人の微小粒子(PM)大気汚染(PM 径<2.5μm [PM2.5])レベル変化と虚血性脳卒中リスクの関連を評価した。スタディ期間中にBoston地域のPM2.5レベルは現在のEPA基準を超えなかった。虚血性脳卒中リスクはPM2.5レベルが中等度の日にはレベルが良好な日と比較し34%高かった。脳卒中リスクは交通機関以外由来の成分よりも交通機関汚染の黒色炭素および二酸化窒素マーカー濃度と強力に関連があった。

 

脳の沈着物に結合する化学的マーカーは将来の認知機能低下リスクの高い人々の発見に役立つ可能性がある [2012-02-21]

Chemical marker that binds to brain deposits may help identify persons at risk for future cognitive decline
[18F]FDDNPと呼ばれる化学的マーカーの脳皮質への結合増加は神経変性臨床症状増加と関連があり、このマーカーの局所ベースライン値は将来の認知機能低下と関連があるようであるとの研究結果がArchives of Neurology 2月号に掲載された。研究者らは軽度認知機能障害(MCI)患者21人と標準的な加齢患者22人の計43人(年齢中央値64歳;40〜87歳)を評価した。2年後にMCI群患者においては、前頭、頭蓋、後帯状皮質 、および全体領域の[18F]FDDNP結合値が有意に上昇していたが、内側側頭領域においては有意には上昇していなかった。標準加齢群ではいずれの領域においても有意な結合は認めなかった。また、MCI群患者では、アルツハイマー病へ変化するリスクの高い患者と2年後にアルツハイマー病に変化しない者とを見極めるにあたり、前頭および頭蓋の[18F]FDDNP結合が最も診断精密度が高かった。スタディグループ全体において、経過観察時に前頭、後帯状皮質、および全体の結合が大であることと2年後の記憶力低下の進行に関連が認められた。またベースライン時の[18F]FDDNP結合率が高いと、後にほとんどの認知領域の低下に関連した。
 
軽度認知障害のリスクファクターには男女差がある可能性がある [2012-02-07]
Risk factors for mild cognitive impairment may be different for men and women
男性は女性よりも軽度認知障害を発症するリスクが高い可能性があるとのスタディ結果がNeurology®誌2012年1月25日オンライン版に掲載された。1,450人の集団(認知症のない70〜89歳)が15か月ごとに平均3年間にわたり記憶力検査を受けた。スタディ終了までに296人がMCIを発症した。1年間の新たなMCI発症率は男性において高く、1,000人当たり72人であるのに対し女性では1,000人当たり57人であり、男女合わせると1,000人当たり64人であった。記憶力低下を伴うMCI(1,000人当たり38人)は記憶力低下を伴わないMCI(1,000人当たり15人)よりも多く認められた。教育レベルの低い者や結婚していない者においてもまたMCIは高率であった。他に興味深い結果では、新たにMCIと診断された者のうち1年当たり12%が後に少なくとも1回はMCIがないと診断されたりまたは“認知機能正常”と考えられる状態に回復したりしたことが示された。スタディの結果、軽度認知障害リスクは男女別に調査すべきであることが示唆された。
 

fMRI研究から耽溺性による渇望は男性と女性とで根源が異なることが示唆された [2012-02-07]

fMRI study suggest that addicts' cravings have different roots in men and women
新たな脳画像研究の結果、コカイン依存症の女性においてストレスが渇望に関連した脳領域を強力に活性化させるが、コカイン依存症の男性では薬刺激が同じ脳領域を活性化させることが示唆された。研究者らはコカイン依存者30人およびコントロールとしての機会飲酒者36人に機能的磁気共鳴画像検査(fMRI)を施行した。脳画像検査を行っている間に研究者らは被検者らに、彼らがストレスフルであると述べた個人的な刺激(状況またはイベント)およびコカインやアルコールに関連した他の刺激を提示した。予想通り、コカイン依存の人々はコントロールよりも耽溺性や動機に関連した脳領域の活動性が高かった。しかし、ストレスや薬物刺激に曝露された時のグループ間の活動性のパターンは男性と女性とで明らかに異なっていた。American Journal of Psychiatry 1月31日号に掲載されたこのスタディの結果、コカイン依存の女性は、特にこれらの渇望を標的としたストレス軽減療法が有効である可能性が示唆された。一方男性では、認知行動療法の要素または断酒会の原則に基づく12ステッププログラムにより有益性が得られる可能性がある。

 

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