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スタディの結果、認知的活動度とアルツハイマー病に関連した脳蛋白に関連があることが示唆された [2012-01-31] |
Study suggests association between cognitive activity and brain protein related to Alzheimer disease |
読み書きやゲームをするなどの認知機能を刺激する活動により脳の活性化を生活の中で維持している人々は、アルツハイマー病(AD)のアミロイドプラークの大きな部分を占めるβアミロイド蛋白のレベルが低いようであるとArchives of Neurologyオンライン版に報告された。このスタディでは認知機能の正常な高齢者:健康な高齢者65人(平均年齢76.1歳)に加えAD患者10人(平均年齢74.8歳)および若年のコントロール11人(平均年齢24.5歳)に[11 C]PiB PETおよび神経心理学的検査を施行した。認知的な活動度と[11 C]PiB取り込みには直接的な関連が認められ、認知的従事の高い人に認められる生活習慣因子がβアミロイド沈着を予防または遅延させ、おそらくAD発症および進行に影響していることが示唆された。これらの結果から、生活の中で認知機能を刺激する活動により多く参加することにより(しかし特に若年期および中年期)、[11 C]PiB取り込みが低下するようであることが示された。認知的活動度が最も高い高齢者の[11 C]PiB取り込みはコントロール群の若年者群と同等であったが、認知機能活動度が最も低い者では[11 C]PiB取り込みはAD患者と同等であった。 |
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第二世代抗精神病薬を内服する小児において遺伝子亜型により代謝系の副作用のリスクが上昇する [2012-01-31] |
Genetic variation increases risk of metabolic side effects in children on second-generation anti-psychotics |
ある遺伝子亜型が、第二世代の抗精神病薬を内服している小児のメタボリック症候群発症リスクを6倍に上昇させるとのスタディ結果がTranslational Psychiatryに掲載された。このスタディでは特に二つの状態(高血圧および空腹時血糖上昇)との密接な関連が示された。研究者らはBC小児病院の小児&成人精神科の入院小児患者209人を評価した。彼らの平均年齢は13歳であり、105人は第二世代の抗精神病薬で治療され、残りの小児はこれらの薬剤を内服していなかった。DNA解析の結果、両群の8%の子供はMTHFR遺伝子上にC677Tと呼ばれる遺伝子亜型を有していた。MTHFR C677T変異を有し、第二世代抗精神病薬を内服していた子供はメタボリック症候群を有する確率が6倍高かった。MTHFR C677T遺伝子亜型は統合失調症を有する成人のメタボリック症候群、および精神疾患を有さない成人の心血管疾患と関連があることが知られているため、研究者らはこの遺伝子を標的とした。この発見は第二世代抗精神病薬と関連した代謝系の合併症を予防し管理するための重要なステップである、と筆者らは述べている。 |
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身体運動とコンピューター刺激環境を組み合わせることにより高齢者の認知機能に有益性がもたらされる可能性がある [2012-01-24] |
Combining physical exercise with computer-simulated environments may provide cognitive benefit for older adults |
バーチャルリアリティ―改良運動とコンピューター刺激環境および双方向ビデオゲーム機能を用いた身体的な運動を組み合わせることにより、従来の運動のみよりも高齢者の認知機能に対しより有益であるとの新たなスタディ結果がAmerican Journal of Preventive Medicine2月号に掲載された。このサイバーサイクルスタディには運動用エアロバイクへのインドアアクセスのある個人住居施設のボランティア101人(58〜99歳)が組み入れられた。79人は初回評価およびトレーニングを終了し、同じ固定式リカンベント自転車を漕いだ(研究用バイクにはバーチャルリアリティディスプレイが装備してあることのみ異なっていた)。サイバーサイクル参加者らは3Dツアーを体験し、彼らの最後の最良の走りに基づいたアバターである “架空のライダー”と競争した。認知機能の評価が、登録時、1か月後(介入前)、3か月後(介入後)に実施された。その結果、サイバーサイクルを使用した者は従来の固定式自転車に乗った者よりも高次機能が有意に良好であり、またサイバーサイクル使用者は従来の運動療法を行った者と比較しMCIへの進行が23%少なかった。スタディの結果、BDNF上昇がサイバーサイクル使用者で従来のバイク使用者よりも有意に大であり、双方向/複合型精神的および身体運動は神経栄養効果に関連したバイオマーカーを介して認知機能に対し有益である可能性が示唆された。 |
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成人において統合失調症の診断と進行性の脳変化は関連する [2012-01-24] |
Schizophrenia diagnosis associated with progressive brain changes among adolescents |
統合失調症および他の精神疾患と診断された成人は精神疾患と診断されていない健康な成人と比較し、灰白質体積の減少および前頭葉の脳脊髄液増加が大であるとArchives of General Psychiatry1月号に掲載された。研究者らは、スペインの6つの小児および成人精神科病棟の患者において、早期発症精神疾患の初回エピソードにおける脳変化の進行および診断や2年後の予後との関連を調査した。コントロール患者と比較し、統合失調症と診断された患者においては2年間の追跡期間中の前頭葉灰白質体積の減少の度合いが大きかった。統合失調症患者ではまた左前頭葉の脳脊髄液の増加が認められた。さらに、統合失調患者においてコントロール患者と比べ、全灰白質および左頭頂葉の変化が顕著であった。統合失調症患者においては、ある領域の進行性の脳体積変化は、追跡期間中の入院期間が長いことや陰性症状が改善しにくいなどの予後不良指標と関連があった。統合失調症患者において左前頭葉灰白質体積減少が大きいほど入院週数がより多かったが、陰性症状は脳脊髄液増加と関連があった。 |
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ニコチンパッチは軽度認知障害を有する非喫煙者の記憶を改善する [2012-01-17] |
Nicotine patch improves memory for non-smokers with mild cognitive impairment |
ニコチンパッチの使用は高齢者の軽度記憶障害改善に役立つ可能性があるとのスタディ結果がNeurology 2012年1月10日号印刷版に掲載された。ニコチンは禁煙後の過去喫煙者の認知機能を改善することが明らかにされており、過去の短期スタディではニコチンによりアルツハイマー病患者の注意力および記憶能が改善することが示されている。今回のスタディでは軽度認知障害患者におけるニコチンの効果を観察した。スタディには軽度認知障害を有する平均年齢76歳の非喫煙者が組み入れられた。参加者の半分は1日15mgのニコチンパッチを6ヵ月間投与され、残りの半分はプラセボを投与された。参加者はスタディ開始時とその後再度3および6ヵ月後に記憶能および思考能に関するいくつかの検査を受けた。治療6ヵ月後に、ニコチン投与患者では長期記憶に関して年齢相応の正常な機能の46%が回復したのに対し、プラセボ群では同期間に26%回復しただけであった。ニコチンパッチ投与群患者で重篤な副作用は認められなかった。 |
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循環器系、泌尿生殖器系、感染症、神経系、および呼吸器疾患による入院率は認知症を有する患者において高い [2012-01-17] |
Hospitalization for circulatory, genitourinary, infectious, neurological, and respiratory disorders is higher among people with dementia |
認知症を有さないものと比較し、認知症を発症した者はその後の全ての入院および、積極的に管理していれば予防できた可能性のあるACSC(ambulatory care-sensitive conditions)による入院の率が有意に高いとJAMA1月11日号に掲載された。研究者らは認知症の発症により入院率が上昇するかまたは入院原因、特にACSCにおいて差があるかを調査するためにあるスタディを行った。彼らは、スタディ開始時に認知症を有さなかった65歳以上の高齢者3,019人の入院を解析した。スタディ期間内に494人が最終的に認知症を発症し、うち427人(86%)が少なくとも1回入院した;2,525人は認知症を発症せず、うち1,478人(59%)が少なくとも1回入院した。認知症患者群の40%(196人)がACSCによる入院を少なくとも1回認めたのに対し、認知症のない群においては17%(424人)であった。認知症を有する参加者における平均年間入院率は、認知症を有さない参加者と比較し2倍以上であった。5つの系統の疾患(循環器、泌尿生殖器、感染症、神経、および呼吸器)による入院率は、認知症を有する参加者において有さない参加者よりも有意に高かった。 |
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女性においてアディポネクチン上昇は認知症およびアルツハイマー病発症の独立した予測因子のようである [2012-01-10] |
Elevated adiponectin levels appear to be an independent predictor for dementia and Alzheimer's disease in women |
アディポネクチンと呼ばれる内臓脂肪由来のホルモンが女性における全ての種類の認知症およびアルツハイマー病(AD)発症のリスクファクターである可能性があるとのスタディ結果が、JAMA/Archives誌のひとつであるArchives of Neurology 2012年1月2日号オンライン版に掲載された。研究者らはフラミンガム心臓スタディの第19回隔年調査において患者の血漿中C反応性蛋白、ホスホリパーゼA2に関連したリポ蛋白、およびアディポネクチンに加え、血糖値、インスリン、および糖化アルブミンを計測した。840人の患者(女性541人、年齢中央値76歳)を平均13年間追跡し、ADおよびあらゆる認知症の発症徴候を評価した。この期間に159人の患者が認知症を発症し、うち125例がADであった。他の認知症リスクファクター(年齢、アポEジェノタイプ、血漿ドコサヘキサエン酸低値、体重変化)で補正した結果、女性におけるアディポネクチンのみが全ての認知症およびADのリスク上昇と関連があった。筆者らは、AD患者においてインスリンシグナリングは機能障害を起こすことが知られていることに言及している。アディポネクチンはインスリン感受性を増強させるため、彼らは認知機能低下を防御する有益な作用を期待していた。驚くことに、スタディの結果、女性においてアディポネクチンレベル上昇はあらゆる認知症およびADの独立した予測因子であった。 |
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軽度認知障害を有しある物質の脳脊髄液内レベルが上昇している患者はアルツハイマー型認知症を発症しやすい [2012-01-10] |
Patients with mild cognitive impairment and changes in certain cerebrospinal fluid levels are likely to develop Alzheimer's dementia |
一部の軽度認知機能障害患者はアルツハイマー(AD)型認知症を発症する5〜10年前に脳脊髄液中Aβ2レベルは低下しているようであるが、他の髄液内レベルは後期の疾患マーカーのようであるとArchives of General Psychiatry 1月号に掲載された。研究者らは、ベースライン時に軽度認知障害(MCI)を有していた患者137人を対象とした過去のスタディのコホートを延長して追跡した(中央値9.2年)。フォローアップ期間中に72人(53.7%)がADを発症し、21人(15.7%)が他の型の認知症を発症した。ベースライン時点で、脳脊髄液(CSF)Aβ42レベルは低下しており他のバイオマーカーTタウおよびPタウレベルは、追跡期間中にADに変化した患者において、ADを発症しなかった患者と比較し上昇していた。ベースラインのCSFAβ42レベルは、5年以内にADに変化したMCI患者(早期発症者)と5〜10年後に変化したMCI患者(後期発症者)とで同等に低下していた。しかし、TタウおよびPタウレベルは早期発症者において後期発症者よりも有意に高かった。これらの結果から、ベースライン時点でMCIを有しCSFマーカーが病的である者の約90%は9.2年以内にADを発症することが示唆された。 |
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