総合ビタミン剤を常用している中年期以降の健康な男性において軽度のがん減少が認められた [2012-10-30]
Modest reduction in cancer seen in middle-aged and older healthy men taking multivitamins

一般的な総合ビタミン剤の常用は男性において総がん発症率を低下させたとの新たなデータが第11回AACR International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Researchで発表され、同時にJAMAに掲載された。研究者らは、臓器特異的ながんおよび総合的ながんの発症率と死亡率に対する総合ビタミン剤常用の長期効果について調査した。米国の50歳以上の男性医師14,641人を対象としたPhysicians' Health Study IIのデータを使用した。参加者は総合ビタミン剤常用群または非常用群に無作為に割り付けられた。経過観察期間中央値11.2年の間に、2,669件のがん症例が記録され、うち1,373件は前立腺がんであり210件は大腸がんであった。常用群に割り付けられた参加者においては、総がん発症率が8%低下した。前立腺がんの発症はこの患者集団において最も多く認められたが、前立腺がん発症に対して総合ビタミン剤が直接影響することはなかった。しかし、他の臓器特異的がんに対する総合ビタミン剤の効果を観察したところ、12%の発症減少が認められた。さらに、がん死亡率は12%低下したが、有意ではなかった。

血中ホルモンレベルから閉経後乳がんリスクが20年間も予測できる [2012-10-30]
Blood hormone levels predict postmenopausal breast cancer risk for as much as 20 years

1回の血液検査で閉経後乳がんリスクを最長20年間予測できるとのNurses' Health Studyのデータが第11回AACR International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Research学会で発表された。研究者らはホルモン補充療法を受けていない閉経後乳がん患者796人を解析し、各々の患者を乳がんと診断されていない2人のコントロールとマッチさせた。エストラジオール、テストステロンおよびデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)のホルモンレベルが上位25%以内の女性は下位25%の女性と比較し、乳がんを発症する確率が50〜107%高かった。乳がん発症相対リスクは採血後1〜10年後と11〜20年後(および16〜20年後)とで、同等であった。エストラジオールレベル上昇はHR陽性乳がんリスクを上昇させることも明らかにされた。一般に、DHEAS以外のホルモンレベル上昇は、HR陽性乳がんリスク上昇と密接な動きを示した。HR陰性乳がんに関するデータに関しては非確定的であった。ホルモンレベル上昇はまた、スタディにおいて再発または致死性のがんで定義された進行の速い乳がんとも関連が認められた。性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の保護効果に関してもまた確認された。

悪性度の高い前立腺がん男性の生存期間を予測する6つの遺伝子サインが同定された [2012-10-23]
Six-gene signature identified that can be used to predict survival in men with aggressive prostate cancer

悪性度の高い前立腺がん男性の生存期間を予測する6つの遺伝子サインが同定されたとの新たな研究結果がLancet Oncology 10月号に掲載された。難治性前立腺がん男性202人の血液を用いて研究者らは、難治性前立腺がんの6つの遺伝子特性を見いだした。6つの遺伝子サインを有する男性はハイリスクであり生存期間は7.8か月、これらを有さない男性の生存期間は約34.9か月で低リスクであった。さらに140人の患者を対象とした追試で、これらの結果が確認された。これまで進行前立腺がんの予後は、臨床的な予測因子または場合によっては、中程度に予測に役立つ腫瘍の生検結果からしか判断できなかった。このスタディは、生存期間の判断における6遺伝子モデル血液検査の有効性を示し、また、臨床現場において予後予測マーカーがどのように役立つかを示した初めてのものである。このチームは、他のタイプの前立腺がんにおける6遺伝子サインの実現可能性、患者の疾患経過におけるサインの安定性、および免疫療法で治療された前立腺がん患者におけるこのサインの予測能を研究するさらなるスタディを行っている。

葉酸、ビタミンB6 および12のサプリメントは心血管疾患リスクの高い女性の大腸腺腫リスクに影響しない [2012-10-23]
Folic acid, vitamins B6 and 12 supplements do not affect colorectal adenoma risk in women at high risk for cardiovascular disease

葉酸、ビタミンB6 および12を組み合わせたサプリメントは心血管疾患リスクの高い女性の大腸腺腫リスクに有意な影響を及ぼさない、とのスタディ結果がJournal of the National Cancer Institute 10月12日号に掲載された。葉酸、ビタミンB6 およびビタミンB12 の大腸腺腫(大腸がん前駆状態)リスクに対する効果の可能性を判断するため、心血管疾患リスクの高い女性医療従事者5,442人を観察した無作為化二重盲検プラセボコントロールトライアルであるWomen's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study(WAFACS)が施行された。参加者は葉酸、ビタミンB6およびビタミンB12の組み合わせ、またはプラセボの群にランダムに割り付けられた。この解析には9.2年間の追跡期間中のいずれかの時点でフォローアップ内視鏡を施行された1,470人のWAFACS参加者が含まれた。大腸腺腫リスクは葉酸とビタミンB6およびB12の組み合わせサプリメント摂取により統計学的に有意な影響を受けなかった。葉酸"拮抗物質"として知られるアルコール摂取も大腸腺腫リスクに対するサプリメントの効果に影響しないことも示された。

拡散強調MRI技術は偽陽性乳がん所見を減少させる [2012-10-16]
Diffusion-weighted MRI technique decreases false-positive breast cancer findings

MRIによる水拡散測定により偽陽性の乳がん所見を減少させ不要な生検を減らすことができるとのスタディ結果がRadiology誌オンライン版に掲載された。近年ダイナミック造影MRI(DCE-MRI)が乳がん検出およびステージングの有用な方法として出現している。その主な限界の1つが、生検を要する偽陽性所見が少なくないことである。有望な解決法の1つが、水が組織内をどのように移動するかを計測する見かけ上の拡散係数(ADC)を測定するMRI技術による拡散強調画像(DWI)である。正常な乳房組織は水が比較的自由に移動できるのでADCが高いが、多くのがんは細胞がより密に詰まっており水の動きが制限されるためADCは低い。この新たなスタディのために研究者らは、165人の女性の非悪性病変のDWIの特徴を評価した。過去に定められた診断閾値を超えるADC値に基づき、DWIはDCE-MRIの結果偽陽性であった非悪性乳房病変の46%を良性と判断するのに成功した。この技術は、さらに検査の必要な高リスク病変を他の非悪性病変と鑑別することにより患者の管理を改善する可能性がある、と研究者らは述べている。

地域住民を対象とした乳房スクリーニングにデジタルマンモグラフィを用いることにより命にかかわるがんの検出が向上する [2012-10-16]
Using digital mammography for population-based breast screening improves detection of life-threatening cancer

地域住民を対象とした大規模な乳がんスクリーニングプログラムにおいて、スクリーンフィルムマンモグラフィ(SFM)をデジタルマンモグラフィ(DM)に切り替えることにより、臨床的に有意でない疾患の検出が有意に増加することなく命にかかわるがんの検出が向上したとの研究結果がRadiology誌オンライン版に掲載された。研究者らは2003〜2007年に施行されたスクリーニングマンモグラフィにおいてDMとSFMを比較した。約200万例のマンモグラフィ検査のうち18,896件が再検査を必要とされ、6,410人が乳がんと診断された。予想通り、DMはがん検出において初回感度が高く検出率は1,000件当たり6.8であったのに対しSFMでは5.6であった。高悪性度DCISの検出率はDMで58.5%でありSFMでは50.5%であった。初回の再検診率はDMの方が高かった(4.4%対2.6%)。しかし、デジタルマンモグラフィへの移行により、過剰診断に結び付く可能性のある低悪性度DCIS病変が不相応に増加することはなかった。この結果は、検出、再検査および偽陽性のバランスをとることに焦点を当てたDutch screening programのデータ解析に基づくものであると研究者らは警告している。検出率を高めることにより焦点を当てたスクリーニングプログラムの数字は異なるものであろう。

分子標的薬の組み合わせはBRAF陽性転移性悪性メラノーマの耐性獲得を遅延させる [2012-10-09]
Combination of targeted treatment drugs delays resistance in BRAF-positive metastatic malignant melanoma

2剤併用療法によりBRAF陽性転移性悪性メラノーマ患者の治療耐性獲得が遅延したとのスタディ結果がNew England Journal of Medicineに掲載され、同時にEuropean Society for Medical Oncologyミーティングで発表された。この第U相トライアルでは、BRAF阻害薬 dabrafenib およびMEK 阻害薬trametinibの2種類の経口薬を成人のBRAF発現悪性メラノーマ患者において試験した。162人の患者が異なる用量の併用療法を受ける3群:1日150mgのdabrafenibを2日と2mgのtrametinibを1日、同用量のdabrafenibと1mgのtrametinibを1日、またはdabrafenib単独療法、に無作為に割り付けられた。Dabrafenibを単独投与された参加者は、がんが進行し始めた場合には標準用量の併用療法に切り替えることができた。その結果、両方の併用療法が有意に耐性発現までの時間を延長させた―dabrafenib単独療法よりも約4か月長かった。治療1年後、標準用量の併用療法を受けた患者の41%においてがんの進行がなく、一方1剤のみの患者におけるその割合は9%であった。さらに大規模な第V相試験が現在施行されている。

ゲフィチニブは無増悪生存期間を延長し食道がん患者のQOLを改善する [2012-10-09]
Gefitinib extends progression-free survival and improves quality-of-life for patients with esophageal cancer

食道がんのセカンドライン治療の必要性を調査する初めての第V相試験の結果、ゲフィチニブは重要なQOL指標を改善し無増悪生存期間を延長させることが示された、とEuropean Society for Medical OncologyのESMO 2012学会で発表された。Cancer Oesophagus Gefitinib(COG)studyでは、最大2つの化学療法レジメンによるファーストライン治療後に進行した英国の51施設の患者450人を対象とした。患者はプラセボまたはEGFR阻害薬ゲフィチニブを投与された。無増悪生存期間中央値はプラセボ投与群で35日であり、ゲフィチニブ投与群で49日であった。ゲフィチニブによる治療により、この患者集団における2つの重要なQOL指標である嚥下障害や嚥下痛が改善した。QOLの改善および無増悪生存期間の軽度の改善に加え、一部の患者においては治療による長期の有益性が認められた。この有益性が高いことが分子的に明らかなサブグループを同定するために、300人を超える患者の生検結果を解析するさらなるスタディTRANSCOGが計画されている。もし、このような有益性が確認され、ゲフィチニブの忍容性が良好であれば、この薬剤は再発した食道がんに使用される可能性がある。

研究の結果、治療の支援となる、乳がんと卵巣がんに共通する遺伝子的特徴を含む4タイプの乳がんが同定された [2012-10-02]
Research identifies four types of breast cancer including shared genomic features between breast and ovarian cancer that could aid treatment

研究者らは遺伝子的に異なる4タイプのがんを同定し、乳がんの科学的理解を根本的に改める発見をした、とNatureオンライン版で現在公表されており、10月4日印刷版に掲載される。乳がんのあるサブタイプは多くの遺伝子的特徴を、治療が困難なハイリスク漿液性卵巣がんと共有している。研究者らは、Cancer Genome Atlas(TCGA)の一部として作成された遺伝子データを用いて、4つの主要な乳がんサブタイプ(HER2-enriched [HER2E]、Luminal A [LumA]、Luminal B [LumB] 、Basal-like)が存在し、それぞれが独自の生物学的生存的予後を有していることを確認した。Basal-likeサブグループはトリプルネガティブ乳がんと呼ばれている。研究者らはBasal-likeサブタイプとハイリスク漿液性卵巣がんとの著明な遺伝子学的類似性を明らかにした。さらに解析した結果、変異スペクトラムや遺伝子変異頻度などのいくつかの共通する遺伝子的特徴が発見され、多様な遺伝子異常が少数のがんサブタイプに集束し得ることが示唆された。コンピュータ解析の結果、Basal-like乳がんおよび漿液性卵巣がんはともに、シスプラチンのようなDNA複製阻害薬のみならず血管増殖因子阻害薬に対する感受性が高い可能性が示された。

6つの危険信号をチェックする簡便な卵巣がん症状調査により早期発見率が向上する [2012-10-02]
Simple ovarian cancer symptom survey that checks for 6 warning signs may improve early detection

診察室で女性に対し行われる2分未満の簡便な3つの質問の筆記調査により、卵巣がんを示唆する可能性のある症状を有する女性を効率的に検出できるとのスタディ結果が、Open Journal of Obstetrics and Gynecologyオンライン版に掲載された。この調査では、現在、次に挙げる症状を1つ以上有しているかを尋ねる3つの質問が含まれた:腹部および/または骨盤内の痛み。すぐに満腹になる、および/または通常通りに食べられない。そして腹部膨満および/または腹囲増加。同様に、3つの症状の頻度と期間も尋ねられた。スタディには女性外来を訪れた40〜87歳の1,200人が組み入れられた。半数以上は閉経後であり、約90%が白人であった。調査された者のうち5%がさらに検査が必要であることを示す症状スコア陽性であった。約60人の女性群のうち1人がその後すぐに卵巣がんと診断された。症状調査で陰性であった95%の女性のうち、その後12か月の追跡期間中に卵巣がんを発症した者はおらず、このスクリーニング法の正確性が証明された。