乳がん患者において乳腺密度は乳がん死に影響しない [2012-08-28]
Breast density does not influence breast cancer death among most breast cancer patients
ほとんどの乳がん患者において、乳がんによる死亡リスクはマンモグラフィ上の乳腺密度が高いことと関係がないとのスタディ結果がJournal of the National Cancer Institute 8月20日号に掲載された。マンモグラフィ上の乳腺密度が高いことと乳がん患者の生存期間が短いことに関連があるか否かを明らかにするために、研究者らはU.S. Breast Cancer Surveillance Consortiumのデータを調べ1996〜2005年に原発性浸潤性乳がんと診断され平均6.6年間追跡された女性9,232人を分析した。彼らはマンモグラフィ上の乳腺密度と乳がんによる死亡および総死亡のリスクとの関係を調べた。マンモグラフィ上の密度はBreast Imaging Reporting and Data System(BI-RADS)を用いて計測した。その結果、乳がんが一度発症してしまうと乳腺密度は死亡リスクには影響しないことが明らかになった。しかし、肥満患者または大きい腫瘍や高悪性度がんにおいては低密度と乳がん死高リスクとに関連があった。
高温で調理した赤肉は進行前立腺がんリスクが上昇する可能性がある [2012-08-28]
Cooking red meats at high temperatures may increase the risk for advance prostate cancer
高温で調理した赤肉、特にフライパンで焼いた赤肉は進行前立腺がんリスクを40%も上昇させる可能性があるとのスタディ結果がCarcinogenesisオンライン版で閲覧可能である。研究者らは、多民族の男性約2,000人のケースコントロールスタディの蓄積データを調査した。スタディ参加者らは、家禽類や加工赤肉を含む摂取肉の種類や量および調理法(例、フライパンで焼く、オーブンで焼くおよびグリル)を評価する包括的なアンケートに回答した。スタディに参加した男性の1,000人以上が進行前立腺がんと診断された。週に1.5人前を超える量のフライパンで焼いた赤肉を食べる男性は進行前立腺がんのリスクが30%高かった。高温で調理した赤肉を2.5人前より多く摂取する男性は進行前立腺がんを有する確率が40%高かった。焼いた家禽肉を摂取する男性は進行前立腺がんリスクが低く、一方フライパンで焼いた家禽肉を摂取する男性はリスクが高いことも明らかになった。フライパンで焼くことにより前立腺がんリスクが上昇する原因は不明であるが、調理中のヘテロサイクリックアミン(HCAs)形成が原因であることが疑われている。
グレープフルーツジュースと薬剤ケトコナゾールはclinical benefitに必要なシロリムス用量を軽減させる [2012-08-21]
Grapefruit juice and drug ketoconazole reduce dose of sirolimus needed for clinical benefit
1日1杯のグループフルーツジュースは、ある抗がん剤自体を3倍用量以上投与された場合と同等の有益性をもたらすとの新たな臨床試験結果がClinical Cancer Researchに掲載された。研究者らは治癒不能ながんを有し有効な治療法のない患者138人を3つの同時第1相スタディで、シロリムスのみ、シロリムスとケトコナゾール(薬剤代謝を遅延させる薬剤)、またはシロリムスと1日8オンスのグレープフルーツジュースを投与される群に割り付けた。シロリムス内服群の至適用量は約週90mgであった。しかし、45mgの用量を超えるとこの薬剤は重篤な胃腸障害を引き起こしたため、シロリムス単独で内服していた患者は2週ごとの45mg内服に切り替えられた。他の群における最大用量ははるかに少なかった。シロリムスとケトコナゾールを内服している患者は同じ血中レベルを維持するのに16mgしか必要としなかった。シロリムスとグレープフルーツジュースを内服した患者は週25〜30mgのシロリムスを必要とした。この併用により患者らは高用量の薬剤による副作用を避けまた薬剤費用を軽減することができた。
毎日のアスピリン服用とがん死亡率低下との関連性は有意であるが以前に観察されたよりも小さい [2012-08-21]
Association between daily aspirin and lower cancer mortality is significant, but smaller than previously observed
毎日のアスピリン服用は全がん死亡率を低下させるがその相関は以前に考えられていたよりも小さいとの大規模観察研究がJournal of the National Cancer Instituteオンライン版に掲載される。血管性イベント予防目的でのアスピリン使用を観察した無作為化トライアルを蓄積した最近の統合解析の結果、5年間の追跡期間中に37%、10年間の追跡期間中に15%の死亡率低下が認められた。この結果にもかかわらず、長期のアスピリン服用のがん死亡率への影響について大部分は不明である。このスタディにおいて、研究者らはがんの既往がなくアスピリンを毎日服用している男女100,139人のデータをレビューした。がんで死亡した参加者5,138人において、毎日のアスピリン服用はがん死亡率をやや低下させたが服用期間とは関連がなかった。"我々の結果は、最近の毎日のアスピリン内服とがん死亡率軽度低下との関連が認められたことと一致している"と筆者らは述べている。しかし、16%という推定リスク低下率は統合解析の5年間の追跡期間に認められた37%低下よりもかなり低かった。
転移性乳がんに対するアナストロゾールとフルベストラントの併用は単剤療法よりも優れている [2012-08-14]
Anastrozole and fluvestrant combination better than single drug for metastatic breast cancer
2つの抗エストロゲン薬併用はホルモン受容体陽性転移性乳がん患者の寿命を延長するとのSWOG臨床試験ネットワークによる第3相試験の結果がNew England Journal of Medicine 8月2日号に掲載された。このスタディにはホルモン受容体陽性、閉経後転移性乳がん女性707人が含まれた。約半数の女性は標準治療(初めにアナストロゾールで治療し疾患が増悪したらフルベストラントに切り替え)群に無作為に割り付けられた。残りの半数はアナストロゾールとフルベストラントを併用された。併用療法は標準治療であるアナストロゾール単剤療法を受けた患者よりも生存期間中央値を6か月以上延長した(47.7か月対41.3か月)。併用療法により疾患増悪までの期間中央値も延長した(15か月対13.5か月)。併用療法はタモキシフェン治療歴のない女性においてより一層大きな有益性をもたらした。この論文ではまた、アナストロゾール単剤群の41%がアナストロゾール使用中に疾患が増悪しフルベストラント治療に切り替えたと報告していることから、これら2剤の連続使用ではなく併用が今回のスタディで認められた延命効果の根底にあることが示唆される。
血中アレルゲン特異的IgEの上昇はグリオーマの低リスクと関連がある [2012-08-14]
Elevated blood levels of allergen-specific immunoglobulin E linked to lower risk of gliomas
Journal of the National Cancer Instituteオンライン版に掲載された新たな研究結果から、アレルギーとグリオーマのリスク低下には関連があることを示唆するエビデンスが相次いで加わった。研究者らは1974〜2007年にノルウェーにおいてグリオーマと診断された患者594人(グリオブラストーマと診断された374人を含む)の蓄積した検体を解析した。彼らはこれらの検体と、採血日、年齢および性別に関してグリオーマと診断されていない人々の1,177検体とマッチさせた。さらに、ノルウェーで最も一般的なアレルゲンに対する特異的IgEおよび総IgEレベルの上昇の有無を各々の検体について検査した。女性においてはアレルゲン特異的IgEが上昇していると、これが陰性の女性よりもグリオブラストーマのリスクが54%低かった。この関連性は男性においては認められなかった。しかし、総IgEレベルとグリオーマのリスクとの関連は男女で統計学的に同等であった。男性と女性を組み合わせると、総IgE上昇があると総IgEの上昇がない場合と比較するとグリオーマのリスクは25%低かった。
PSA検査を施行しないと診断時に進行前立腺がんである男性は3倍に増加するであろう [2012-08-07]
Without PSA testing, three times as many men would have advanced prostate cancer at diagnosis
スクリーニングのための前立腺特異抗原(PSA)検査を中止すれば、状況は大きく後退することになり診断時に転移性がんの男性数が増加することになるであろうとの予測解析がCancer誌に掲載された。初回診断時の病期に対するスクリーニングの影響を解析するために研究者らは、大規模な米国がん登録であるSurveillance, Epidemiology and End-Results(SEER)が保管していたPSA前の時代(1983〜1985年)からPSAが広く使用されている現代(2006〜2008年)のデータを比較した。2008年には約8,000例が初回診察時に転移性前立腺がんを有していた。PSAスクリーニングがないとした場合の2008年の転移性前立腺がん症例数を予測する数学的モデルを用いると、その数は25,000と推測され、PSA検査および早期発見により米国で年に最大17,000症例の転移性前立腺がんが防止できる可能性が示唆された。過去20年の間に米国において前立腺がん死は40%近く減少したと筆者らは考えている。これは患者の治療法(手術または放射線療法)の実質的な変化なしに生じた。
HPV検査陽性との結果はパップ検査結果異常よりも長期の子宮頚がんリスク予測において優れている [2012-08-07]
Positive HPV test results better at forecasting long-term cervical cancer risk than abnormal Pap results
Journal of Clinical Oncologyオンライン版に掲載された前向きスタディの結果、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査は、検査施行から10〜18年後の子宮頚がんの"前がん病変"を発症する女性を予測でき、HPV陽性は細胞診(パップテスト)よりも子宮頚がんリスクの予測因子として優れていることが示唆された。30歳以上のスタディ参加者らのうち、初回検査において8.7%がHPV陽性であり4.3%がパップテストで異常を有していた。その後18年の間にCIN3および子宮頚がんを発症したのはベースライン時点のパップテストで異常であった者よりもHPV陽性であった者の方が多かった(112人対65人)。初回のパップテストの結果にかかわらず、HPV陽性の女性はHPV陰性の女性よりも10〜18年後に前がん病変を有する確率が高かった。18年にわたり、1回のHPV検査で陰性であった方が1回のパップテストで陰性であったよりもCIN3および子宮頚がん発症率は低く(0.9%対1.27%)、HPV検査は後に子宮頚がんの前がん病変を発症しないことの強力な予測因子であることが示唆された。さらに、18年の間に、HPV-16およびHPV-18陽性でパップテストが正常の女性は他のHPV陽性でパップ正常の女性よりもCIN2、CIN3、および子宮頚がん発症のリスクが高かった。