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Vav3蛋白を標的とすることにより白血病形成が遅延し標準治療が奏効する時間が得られる [2012-07-24] |
Targeting the protein Vav3 delays formation of leukemia and gives time for standard therapies to work |
新たな遺伝子を標的とした白血病治療は、他では望ましい予後が得られないであろう患者集団の細胞を標的とし白血病を発症前に停止させることができる可能性があるとの研究結果が、American Society of Hematology学会ジャーナルBlood 7月26日号に掲載された。動物モデルにおいて細胞シグナリングを制御するVav3蛋白を阻害することによりBCR-ABLリンパ性白血病の発症が遅延することを研究者らは発見した。白血病治療が進歩しているにもかかわらず、この型の白血病は標準治療に対し抵抗性を発現してしまうため予後が非常に不良である。筆者らは、Vav3の遺伝子欠損がBCR-ABLからのシグナルを阻害することにより白血病の形成および白血病細胞の過剰産生を遅延させることを明らかにした。その際に標準治療、つまりBCR-ABL阻害薬を作用させることができる。この結果はVav3活性が白血病の形成に関連していることを利用した新たな多標的(multi-targeted)療法へと繋がる可能性がある。 |
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ホルモン抵抗性および化学療法無効の乳がんに対する有望な新たな併用療法の可能性 [2012-07-24] |
Possible new combination therapy for hormone refractory and chemo-resistant breast cancer |
Anticancer Research 7月号に掲載されたスタディの結果、in vitroでの乳がん細胞に対する有効な併用療法が示され、化学療法や他の治療法が無効の異なる型の乳がんに対しこのタイプの併用療法を用いることができる可能性が高まった。研究者らは、ホルモン感受性の乳がん細胞株およびホルモン感受性でないトリプルネガティブのような乳がん細胞株に対するプロテアーゼ阻害薬を用いたエピジェネティック薬の併用療法を試みた。彼らはヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(HDACi)およびシグナリング蛋白制御に関わるカルパインを阻害するカルペプチンを用いた。併用療法は細胞周期停止および細胞死を誘発することにより両方のがん細胞株の細胞増殖を阻害し細胞死を増加させた。ホルモン感受性株の細胞はホルモン感受性でない株の細胞よりも早期に細胞周期を停止した。トリプルネガティブ乳がん細胞株では、この阻害薬が予め組み込まれている腫瘍抑制遺伝子ARHIの再発現を促しそれはがん細胞増殖停止に役立ちがん細胞死を導いた。これらの結果は多くの型の乳がんにおける刷り込み遺伝子を含む腫瘍抑制遺伝子の再発現を調査するモデルとなる。 |
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心血管疾患患者において前立腺がん治療を後悔する確率が高い [2012-07-17] |
Prostate cancer treatment regret is higher in men with cardiovascular disease |
心血管疾患を有する前立腺がん患者は心疾患を有さない患者よりもその治療選択を後悔する確率が52%高いとのスタディ結果が、泌尿器科雑誌BJUI International 7月号に掲載された。研究者らはComprehensive Observational Multicenter Prostate Adenocarcinoma registry(COMPARE)の患者795例(前立腺摘除術410例、体外照射療法237例、小線源療法124例、およびアンドロゲン除去療法24例)を観察した。これらの男性における再発までの期間中央値は5.5年であった。31%が心筋梗塞、うっ血性心不全、狭心症、糖尿病、脳卒中または循環障害などの心血管疾患を有していた。彼らは心血管疾患を有さない男性よりもやや高齢であり(67.6歳対66.7歳)、初回治療として手術を施行される割合が低かった。治療選択を後悔したと報告したのは15%未満に過ぎなかったが、その割合は心血管疾患を有する者において心血管疾患を有さない者よりも52%高かった。心血管疾患を有する男性は有さない男性よりも腸(44%対36%)および泌尿器(46%対39%)の問題を発現する確率が高かった。腸の問題を有した男性では後悔のレベルが58%高かった。 |
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2型糖尿病治療に用いられる一部のチアゾリジン系薬剤は膀胱がんリスクを上昇させるようである [2012-07-17] |
Some thiazolidinediones used to treat type 2 diabetes appear to increase risk of bladder cancer |
2型糖尿病治療に多く用いられているピオグリタゾンの使用と膀胱がんリスク上昇は関連があるとの新たなスタディ結果がCanadian Medical Association Journalに掲載された。2型糖尿病の患者は糖尿病のない患者と比較し膀胱がんリスクが40%高いことを含め、様々ながんのリスクが高い。過去のスタディにおいてチアゾリジン系薬剤の1つであるピオグリタゾンを内服している患者で膀胱がん発症率が高いことが示された。今回、ピオグリタゾンの使用と膀胱がんとに関連があるかどうかを判定するために計260万人の患者を含む無作為化トライアルおよび観察研究の系統的レビューおよびメタ解析が行われた。その結果、チアゾリジン系薬剤、特にピオグリタゾンの使用と膀胱がんリスク上昇との関連が認められた。他の型のチアゾリジン系薬剤であるrosiglitazoneには同様の作用はなかった。このスタディによりピオグリタゾンの使用と膀胱がんとの関連が定量化され、2型糖尿病患者に対してピオグリタゾンをより安全に使用する際の情報提供意思決定に役立つ可能性がある、と筆者らは述べている。 |
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カフェイン摂取量が多いと基底細胞がんリスクが低い [2012-07-10] |
Higher caffeine consumption associated with lower risk of basal cell carcinoma |
カフェイン入りコーヒーの摂取量が多いほど、皮膚がんのうち最も一般的な基底細胞がんを発症するリスクが低下する可能性があるとのスタディ結果が、Cancer Researchに掲載された。研究者らはNurses' Health StudyおよびHealth Professionals Follow-up Studyから得たデータの前向き解析を施行した。2つのスタディの20年あまりの追跡期間中に、解析に含まれた参加者112,897人のうち22,786人が基底細胞がんを発症した。その結果、コーヒー総摂取量と基底細胞がんリスクとの間に逆相関が認められた。同様に、全ての食品源(コーヒー、茶、コーラおよびチョコレート)からのカフェイン摂取量と基底細胞がんリスクとの逆相関関係が認められた。しかし、カフェイン抜きのコーヒー摂取は基底細胞がんリスクを低下させなかった。基底細胞がんに関する結果とは対照的に、コーヒー摂取量もカフェイン摂取量も最も致死率の高い他の2種類の皮膚がん(扁平上皮がんおよびメラノーマ)とは逆相関関係を示さなかった。今回の解析に含まれた参加者112,897人中、扁平上皮がんおよびメラノーマはそれぞれ1,953人および741人に過ぎなかった。 |
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皮膚型ヒトパピローマウイルス感染は扁平上皮がんのリスクファクターであることが明らかにされた [2012-07-10] |
Cutaneous human papillomavirus infection found to be a risk factor for squamous cell carcinoma |
Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載されたケースコントロールスタディの結果、ある皮膚型ヒトパピローマウイルス(HPV)の抗体を有することと扁平上皮がん(SCC)とに相関が認められた。研究者らによると、皮膚型ヒトパピローマウイルス感染(子宮頸がんに関連する粘膜型HPV感染とは異なる)はSCCのさらなるリスクファクターであるとのエビデンスが得られた。彼らのスタディでは、SCC患者およびSCCを有さないコントロールから得た血液検体中の5つの異なるHPV属―α、β、γ、μ、ν―に対する抗体を調査した。スタディでは大学病院皮膚科のSCC173症例および皮膚がんスクリーニングで陰性であったコントロール300例を使用した。その結果、SCCはHPV10 α属およびHPV8と17β属と有意に関連があった。さらに、腫瘍内にβ属HPV5および24を有する症例をコントロールと比較すると、これらに対する抗体との間にも相関が認められた。一部の研究者らは、β属HPVによる感染は日光で傷害された皮膚のDNA修復に影響し、SCCを形成しやすくする変異を蓄積させるとの仮説を立てている。 |
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高脂肪高カロリー食は膵がん発症を加速化させる [2012-07-03] |
High fat and high calorie diet accelerates development of pancreatic cancer |
American Association for Cancer Research's Pancreatic Cancer: Progress and Challenges学会で発表されたスタディの結果、ヒトにおいて高脂肪高カロリーの食事は膵がん発症を促進しうることが強く示唆された。ヒト疫学スタディにおいて、高脂肪摂取および肥満と膵がんリスク上昇とが関連付けられたが、この関連のメカニズムは解明されていない。この関連性を理解するために、研究者らはまず食事とがんに関連があるとの仮説を検証した。彼等は膵前がん病変を発症するような遺伝子変異を有するマウスに、脂肪分およびカロリーの多いコーン油ベースの食事を与えた。同じ遺伝子KRASはヒト膵がんの多くで変異している。その結果、この特別食を摂取したマウスの90%が肥満となり、これらのマウス全てがインスリン抵抗性およびすい臓の炎症を発症した。これらの状態いずれもが、前がん細胞およびがんの増殖を刺激しうる。これらのマウスはまた、通常食のマウスよりも有意により進行した前がん病変を発現した。 |
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日光への曝露および光線過敏性皮膚は膵がんリスクを低下させる [2012-07-03] |
Sun exposure and sun-sensitive skin type decreased risk for pancreatic cancer |
出生地の高レベル紫外線照射、光線過敏性皮膚および皮膚がん既往歴は膵がんリスクを低下させるとのスタディ結果がAmerican Association for Cancer Research's Pancreatic Cancer: Progress and Challenges学会で発表された。研究者らは、オーストラリアクイーンズランドの714人および年齢と性をマッチさせたコントロール709人を組み入れた。NASAの全オゾンマッピングスペクトロメーターを用いて、研究者らは各々の出生地の紫外線照射レベルを特定しその後、紫外線照射レベルに基づき3群に分けた。紫外線照射レベルが最も高い地域に生まれた参加者は低いレベルの地域に生まれた者と比較し膵がんリスクが24%低かった。さらに、全ての皮膚タイプが膵がんリスクと何らかの有意な関連があったが、最も日光に過敏な皮膚と分類された者は日光に対する過敏性が最も低いと分類された者と比較し、膵がんリスクは49%低かった。最後に、皮膚がん既往歴または他の日光関連皮膚病変を有する者は皮膚病変を有さない者よりも膵がんリスクが40%低かった。 |
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