化学療法誘発性末梢神経障害に有効な治療(Abstract # CRA9013)
新たなPD-1標的免疫療法の有望な作用(Abstract # CRA2509)
進行乳がんに関する新たな治療法は有望である(Abstract # LBA1)
進行大腸がん患者の生存期間延長(Abstract # CRA3503)
新たな微小管阻害薬は週1回のパクリタキセルと変わりない(Abstract # CRA1002)
若年の白血病患者は成人よりも予後が良好である(Abstract # CRA9508)
化学療法と放射線療法の併用は一部の脳腫瘍患者の寿命を延長する(Abstract # 2)
小児がんに対する放射線治療は乳がんリスクを上昇させる(Abstract # CRA9513)
卵巣がんにおける無増悪生存期間の倍加(Abstract # LBA5002)
リンパ腫の新たな治療法はCHOPよりも有効性が高い(Abstract # 3)
進行肺がんの進行抑制(Abstract # LBA7500)
Trametinibは進行メラノーマの生存期間を改善する(Abstract # LBA8509)
スタディにより前立腺がんに関する論争が決着した(Abstract # 4)
新たな分子標的薬はGIST患者の予後を改善する(Abstract # LBA10008)
進行性小児がん治療に関する有望な結果(Abstract # 9500)
メラノーマに対する有望な新併用療法(Abstract # 8510)
オランザピンは化学療法の副作用をコントロールする(Abstract # 9064)
限局性高リスク前立腺がんの有望な治療(Abstract # 4521)
デュロキセチンは有痛性化学療法誘発性末梢神経障害の第一の有効な治療法である [2012-06-26]
Duloxetine is first effective treatment for painful chemotherapy-induced peripheral neuropathy
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第3相スタディの結果、デュロキセチンは有痛性化学療法誘発性末梢神経障害の治療に有効であること―この発見によりがん診療が変わり、患者にとって重要な新たなQOLの解決法が得られる―が明らかにされた。デュロキセチンは現在米国において、うつ病および有痛性糖尿病性末梢神経障害に対し承認されている。今回のスタディでは、タキサンまたはプラチナ製剤治療による末梢神経障害に基づく高レベルの疼痛を訴えていた患者を、デュロキセチン投与後にプラセボを投与する群とプラセボ投与後にデュロキセチンを投与する群に無作為に割り付けた。参加者らは1日1錠の3mgカプセルを1週間内服した後に1日2カプセル(計60mg)をさらに4週間内服した。参加者らは疼痛に関するアンケートにスタディ開始時およびその後毎週回答した。疼痛が軽減したと回答したのはデュロキセチン内服中患者の59%であり、プラセボ内服群では39%であった。疼痛に変化がなかった割合は同等であった(デュロキセチン群30%対プラセボ群33%)。疼痛が増悪した割合はプラセボ群において高かった(デュロキセチン群11%対プラセボ群28%)。中等度から重度(グレード2以上)の倦怠感の発現率はデュロキセチン群においてプラセボ群よりも高かった(11%対3%)。
治験段階の免疫療法薬は様々ながんの腫瘍縮小に有望であることが示された [2012-06-26]
Investigational immunotherapy agent shows promising tumor shrinkage in a range of cancers
第48回American Society of Clinical Oncologyで発表された第1相試験の結果、治験薬BMS-936558による治療により進行メラノーマ、腎および非小細胞肺がん(NSCLC)の腫瘍が最大4分の1に縮小したことが示された。この抗体薬は、がんに対する個体の免疫反応を阻害するPD-1と呼ばれるT細胞の重要なパスウェイを標的とする。このパスウェイを遮断することにより、BMS-936558は腫瘍細胞と戦う免疫系を再活性化させる可能性がある。研究者らは、標準治療を行ったにもかかわらず増悪したメラノーマ、大腸がん、NSCLC、前立腺がん、および腎がんの患者296人を組み入れた。奏効が認められたのはメラノーマ(26/94人;28%)、腎がん(9/33人;27%)、およびNSCLC(14/76;18%)であった。扁平上皮肺がんおよび非扁平上皮肺がんいずれにおいても奏効した。多くの患者において12か月以上にわたり奏効が認められ、この報告がなされている間もそれは持続していた。この薬剤の忍容性は全般的に良好であった; 14%の患者に重篤な毒性が認められた。このトライアルのサブ解析の結果から、がん細胞上のバイオマーカー(PD-1と呼ばれる蛋白質)の可能性も示唆された。このバイオマーカーはBMS-936558が奏効する患者を予知するのに役立つ可能性がある。
EMILIA:HER2-陽性進行乳がんの新たな治療法は現在の標準治療よりも無増悪生存期間を延長させる [2012-06-19]
EMILIA: New treatment for HER2-positive advanced breast cancer, improves progression-free survival over current standard therapies
治験薬トラスツズマブ-DM1(T-DM1)をカペシタビンとラパチニブ(XL)を用いた標準治療と比較した第3相無作為化スタディの結果、タキサンとトラスツズマブ治療歴を有するHER2陽性局所進行または転移性乳がん患者においてT-DM1による有意かつ臨床的に重要な無増悪生存期間(PFS)の改善が示された。EMILIAと呼ばれるこの国際スタディでは1,000人近くの患者をT-DM1 またはXLを疾患が増悪するかまたは対処不能な毒性が出現するまで3週ごとに施行する群に無作為に割り付けた。PFS中央値はT-DM1治療群で9.6か月であったのに対し、XL群では6.4か月であった−この差は統計学的に有意であった。2年後の生存率はT-DM1群で65.4%であったのに対し、XL群では47.5%であった。この統計的有意性における差はトライアルであらかじめ定義された一次解析用の統計学的生存率閾値に合致しなかった。スタディ後半で計画されている二次生存解析により、さらなる情報が提供されるであろう。T-DM1群におけるグレード3以上の一般的な有害事象は血小板減少(12.9%対0.2%)および肝機能検査値上昇であった。これらの副作用は休薬期間を設けることにより解決した。このスタディは2012年ASCO学会で発表された。
進行大腸がん初回増悪後のセカンドライン化学療法にベバシズマブを継続することにより生存期間が延長する [2012-06-19]
Continuing bevacizumab with second-line chemotherapy after first progression extends survival for advanced colorectal cancer
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された大規模第3相臨床試験の結果、ファーストラインとしてベバシズマブ併用療法を受けた進行大腸がん患者のセカンドラインとしての標準的な化学療法とベバシズマブによる併用療法が全生存期間を延長したことが示された。この第3相無作為化トライアルでは、転移性の切除不能大腸がん患者820人が標準的なファーストライン化学療法(医師の選択によりオキサリプラチンまたはイリノテカンベース)とベバシズマブの併用で治療された。疾患増悪を受けて、患者はもう片方の化学療法薬とベバシズマブまたはプラセボ併用群に無作為に割り付けられた。その結果、全生存期間(11.2か月対9.8か月)および無増悪生存期間(5.7か月対4.1か月)は、ベバシズマブ投与群において有意に長かった。全体的に両群患者とも治療の忍容性は良好であった:ベバシズマブによる副作用は過去のスタディで認められたものと同等であった。これはファーストラインとしてベバシズマブ併用療法を受けた患者に対するセカンドライン治療としてのベバシズマブ継続併用療法を評価した、はじめての無作為化トライアルである。
局所進行または転移性乳がん治療において新たなより高価な薬剤は標準的な週1回のパクリタキセル投与と変わりない [2012-06-19]
Newer, more costly drugs no better than standard weekly paclitaxel for locally advanced or metastatic breast cancer
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第3相無作為化トライアルの結果、局所進行または転移性乳がんに対するファーストライン治療として、新たなより高価な2つの薬剤であるnab-パクリタキセルおよびixabepiloneの週1回投与はいずれも標準的な週1回のパクリタキセル投与よりも優れてはいないことが明らかにされた。さらに、この条件下ではパクリタキセルを使用した方がixabepiloneよりも無増悪生存期間(PFS)が長くnab-パクリタキセルよりも毒性が少ないようであった。スタディには799人の患者を組み入れ、これらの3つの治療法のいずれかを受ける群に無作為に割り付けた。PFS中央値はパクリタキセル投与群で10.6か月、nab-パクリタキセル群で9.2か月であり、ixabepilone群で7.6か月であった。週1回のixabepilone投与はパクリタキセルよりも有意に有効性が低く、nab-パクリタキセルもまたパクリタキセルよりも優れてはいなかった。感覚神経障害(パクリタキセル群16%対治験薬群25%)を含むグレード3または4の非血液毒性もまたパクリタキセル群において最も少なかった。グレード3または4の血液毒性はixabepilone群で最も少なくnab-パクリタキセル群で最も多く(12%対51%)、それと比較してパクリタキセル群では21%であった。実際問題として、多くの患者は週1回のパクリタキセル投与により、副作用は少なく低コストで(新たな治験薬を投与された患者と)同等に軽快することがこの結果から示唆された。
青年期および若年成人期の白血病患者はそれより若年の患者よりも再発率が高く生存率が低い[2012-06-19]
Adolescent and young adult leukemia patients have higher rates of relapse and lower survival than younger patients
高リスク急性リンパ性白血病(HR-ALL)の青年期および若年成人期(AYA)患者(16〜30歳)の予後は、若年患者(1〜15歳)よりも不良であり、無イベント生存率および全生存率が低かったとのALL治療に関する第3相試験の結果が第48回ASCO学会で発表された。ハイリスクB前駆細胞性ALLに対する4つの治療法を調べたこの無作為化トライアルは、AYA患者501人(16〜21歳466人および22〜30歳35人)を対象とし、1つのがん臨床試験ではこの年代のこれまでで最大のコホートであった。AYA患者はトライアル全体の組み入れ数2,574人の20%を占めた。5年無イベント生存率はAYA患者で68%であったのに対し、若年患者では80.9%であった。全生存率(OS)はAYA患者で79.8%であり、若年患者では88.4%であった。AYA患者は再発率が高く21.3%であり、若年患者ではその割合は13.4%であった。これらの差は統計学的に有意であった。この結果は、この高年齢層患者の白血病コントロールを改善し、治療毒性を軽減させる新たな戦略の必要性を示している。
化学‐放射線療法の併用は退形成性乏突起膠腫、特に染色体突然変異を有する者の生存期間を延長する [2012-06-19]
Combined chemo-radiation extends survival in patients with anaplastic oligodendroglial tumors, particularly those with chromosomal mutations
European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)が施行し2012年ASCO学会で発表された第3相試験の結果、脳腫瘍の一種である退形成性乏突起膠腫患者に標準的な放射線治療を行った後に化学療法を併用することにより、腫瘍の成長が遅延し寿命が延長したことが示された。このスタディに登録された患者368人は新たに診断された未治療の退形成性乏突起膠腫を有していた。患者は放射線療法単独または放射線療法の後にPCVとして知られるプロカルバジン、CCNUおよびビンクリスチンを用いた化学療法を6サイクル併用する群に無作為に割り付けられた。今日、この疾患のほとんどの患者が化学療法かまたは放射線療法により治療され、併用療法はなされていない。無増悪生存期間は放射線/PCV療法群で24.3か月であり、放射線療法単独群では13.2か月であった。全生存期間は放射線/PCV療法群で42.3か月であり放射線療法単独群では30.6か月であった。遺伝子サブタイプによる調査を行ったところ、PCVと放射線療法の有益性は1p/19q共欠失を有することが判明しているサブセットの80人に限定された。これらの患者においては放射線/PCV療法により放射線療法単独を受けた患者と比較し、死亡リスクが44%低下した。
小児がんに対し放射線治療を受けた若年女性は、これまで考えられていたよりも低レベルの放射線照射でも乳がんリスクは上昇し得る [2012-06-19]
Lower levels of radiation than previously thought can increase risk of breast cancer among young women treated for childhood cancer
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表されたスタディの結果、小児期がんに対し胸部への放射線照射を受けた小児がん既往女性は若年期に乳がんを発症するリスクが、BRCA1/2変異を有する女性と同等に高いことが示された。またこの結果から、これまで考えられていたよりもより多くの小児がん既往女性が影響を受けている可能性があることも示唆された。このスタディではChildhood Cancer Survivor Study(CCSS)に参加した女性1,200人余りおよびWomen's Environmental Cancer and Radiation Epidemiology(WECARE)スタディに参加した女性の第一度近親者4,570人のデータを解析した。WECAREは乳がんと診断され診断後1年以上生存している女性を組み入れた。総じて、小児がん既往者が50歳までに乳がんを発症する確率は24%であった。ホジキンリンパ腫既往者における乳がん発症率は30%であった。BRCA1変異を有する女性が50歳までに乳がんを発症する確率は31%であった。10〜19Gyの低用量の放射線療法を受けた女性が40歳までに乳がんを発症する率は7%であり、20Gy以上の照射を受けた女性では12%であった。
プラチナ抵抗性卵巣がんに対する化学療法にベバシズマブを併用することにより無増悪生存期間が改善する [2012-06-12]
Adding bevacizumab to chemotherapy for platinum-resistant ovarian cancer improves progression-free survival
プラチナ抵抗性卵巣がん女性の第3相無作為化トライアルにおいて、標準的な化学療法にベバシズマブを併用することにより無増悪生存期間(PFS)が倍になったとの結果が第48回American Society of Clinical Oncology学会において発表された。この多施設国際スタディでは、最終のプラチナ製剤投与後6か月以内に増悪を認めた上皮性卵巣がん、卵管がんまたは原発性腹膜がん患者361人に対し、ベバシズマブ併用化学療法と化学療法単独を比較した。全ての患者がこの状況で通常提案される3つの標準的な化学療法―週1回のパクリタキセル、topotecan、またはペグ化リポソームドキソルビシン―のうちのいずれかを受けていた。追跡期間中央値13.5か月後、ベバシズマブ併用化学療法群患者の75%(179人中135人)において再発が認められたのに対し、化学療法単独群患者におけるその割合は91%(182人中166人)であった。PFS中央値は併用群で6.7か月であり、単独群では3.4か月であった。全生存期間に関するデータはまだ出揃っていない。有害事象発現率はベバシズマブ群において高かった。有害事象はグレード2を超える高血圧(20%対7%)、蛋白尿(11%対1%)、消化管穿孔(2%対0)、消化管瘻または膿瘍(2%対0)などであった。
リンパ腫に対するベンダムスチン療法は標準的な治療法よりも有効性が高く副作用が少ない [2012-06-12]
Bendamustine regimen more effective for lymphoma than standard therapy with fewer side effects
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された多施設第3相試験の結果、緩徐進行性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫患者において、bendamustineとリツキシマブによる併用化学療法は標準治療よりも無増悪生存期間を倍の6年近くにまで延長することが示された。研究者らは未治療の緩徐進行性非ホジキンリンパ腫またはマントル細胞リンパ腫患者514人を、ベバシズマブ/リツキシマブ(B-R)またはリツキシマブとシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾロン(R-CHOP)のいずれかを投与される群に無作為に割り付け、無増悪生存期間を比較した。追跡期間中央値45か月後の無増悪生存期間(PFS)中央値は、B-R群で69.5か月であったのに対しR-CHOP群では31.2か月であった。全生存期間は両群間で差がなく、その理由の一部は疾患が増悪し続けたR-CHOP患者の半数はB-Rを受けることを許可されたためであり、一部は緩徐進行性リンパ腫の生存期間は非常に長い傾向にあるためであった。そのためPFSが最も信頼できる臨床上の有益性や患者のQOLの指標となっている。Bendamustine療法は副作用も少なかった。
LUX-lung 3トライアル:Afatinibは進行肺腺がん、特に一部の遺伝子サブセットの腫瘍において進行を遅らせる [2012-06-12]
LUX-lung 3 trial: Afatinib delays progression of advanced lung adenocarcinomas, particularly in genetic subset of tumors
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第3相国際トライアルの結果、分子標的薬afatinibを用いた初回単剤経口療法は、上皮細胞増殖因子受容体 (EGFR、ErbB1としても知られる)変異を有する進行肺腺がん患者の無増悪生存期間(PFS)を延長させることが示された。このスタディにおいて研究者らは345人の患者をafatinibまたは経静脈投与による標準的な併用化学療法に無作為に割り付けた。LUX-lung 3トライアルの患者全員が中央検査でEGFR変異を有することが同定され、画像検査は個々に読影され治療の結果を評価された。追跡期間中央値8か月後に、afatinibは疾患の増悪を標準治療よりも4か月延長した(PFS:11.1対6.9か月)。19またはL858Rの欠失を有する患者308人においては、PFSはさらに長かった(13.6対6.9か月)。Afatinibによる治療を受けた患者はまた、標準的な化学療法を受けた患者と比較し、咳や呼吸困難などの肺がんに伴う一般的な症状の悪化が遅く、QOLが良好であった。Afatinibによる副作用はEGFR標的治療と同等であった。全生存期間に関するデータは2年以内に得られる予定である。
METRIC study:新たなMEK阻害薬は進行BRAF-変異メラノーマ患者の生存期間を改善する [2012-06-12]
METRIC study: New MEK inhibitor improves survival for patients with advanced BRAF-mutated melanoma
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第3相試験のデータから、経口治験薬が標準的な化学療法と比較し、BRAF変異を有する進行メラノーマ患者の腫瘍増殖を遅延させ生存期間を延長させることが示された。METRICとして知られるこのスタディにおいて、最高1回の化学療法を受けたことのある進行BRAF変異メラノーマ患者をtrametinib(214人)または標準的な化学療法(108人;dacarbazineまたはパクリタキセル)を受ける群に無作為に割り付けた。全体で、trametinib治療を受けた患者の22%が治療に奏効したのに対し化学療法群患者でのそれは8%であった。無増悪生存期間中央値はtrametinib投与群(4.8か月)の方が化学療法群(1.5か月)よりも有意に長かった―増悪リスクは55%低下した。中間全生存期間もまたtrametinib治療群で有意に長く、死亡リスクは46%低下した;6か月後に生存していたのはtrametinib群患者で81%であったのに対し、化学療法群では67%であった。化学療法中に疾患が増悪した患者のほぼ半数(47%)はtrametinib内服を許可されたため、全生存期間に関する有益性はこの"クロスオーバー効果"を考慮するとさらに大であることが最終的に証明されるであろう。
一部の進行前立腺がん男性において間欠的なホルモン療法は持続的なホルモン療法よりも有効性が低い [2012-06-12]
Intermittent hormonal therapy less effective than continuous therapy in certain men with advanced prostate cancer
ホルモン感受性転移前立腺がん男性に対する2つの一般的な治療法を比較した長期多施設第3相国際臨床試験の結果、転移が最小限の患者において間欠的なホルモン療法は持続的なホルモン療法よりも有効性が低いことが示された。このトライアルには、7か月間の持続的なホルモン療法の後にPSAが4ng/mL以下に低下したホルモン感受性転移性前立腺がん男性1,500人余りを組み入れた。その後彼らは間欠的ホルモン療法(770人)または持続的ホルモン療法(759人)を受ける群に無作為に割り付けられた。間欠的治療群患者は定期的に治療を受けたため、この群の患者は平均で持続的治療群患者の半分のホルモン療法を受けた。追跡期間中央値9.2年後にがんの転移が最小限(転移が脊椎、骨盤、およびリンパ節を越えない)の患者の全生存期間中央値は、持続的治療群で7.1年であったのに対し、間欠的治療群では5.2年であった。がんがより広範に転移している患者においては、全生存期間中央値は両群で同等であった(持続的治療群で4.4年に対し間欠的治療群で5年)。このスタディは第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された。
Regorafenibは承認標的治療に対する耐性のために進行した消化管間質腫瘍に対し有効である [2012-06-12]
Regorafenib effective for gastrointestinal stromal tumors that progress due to resistance to approved targeted therapies
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第3相国際トライアルの結果、新たな経口分子標的薬regorafenibは、イマチニブやスニチニブを含む他の使用可能な治療オプションに対する耐性のために進行した消化管間質腫瘍(GIST)患者の予後を改善しうることが示された。研究者らは転移性および/または手術不能なGIST患者199人をregorafenibまたはプラセボと疾患の症状を緩和する最良の支持療法を併用する群に無作為に割り付けた。全ての患者が過去に少なくとも標準的なイマチニブおよびスニチニブ療法を受けていた。その結果、無増悪生存期間はregorafenibを用いて治療された患者(4.8か月)においてプラセボを用いた患者(0.9か月)よりも4倍長かった。疾患が悪化した場合にはプラセボ群患者はregorafenib治療に変更することが許可されていた;全体で85%の患者がregorafenib内服に変更することができた。このトライアルデザインのために、全生存期間は両群間で統計学的な差を認めなかったが、治療の過程でregorafenibを早期に開始した患者において有意ではないが好ましい傾向がみられた。この薬剤の忍容性は全般的に良好で、副作用はGISTに対する他の承認分子標的薬と同等であった。
早期スタディにおいてcrizotinibはALK遺伝子異常により引き起こされる3つの小児がんに対し強力で長期持続する奏効を示した [2012-06-05]
In early study, crizotinib induces strong, long-lasting responses in three pediatric cancers driven by ALK gene abnormality
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された第1相試験の結果、分子標的薬crizotinibは腫瘍の成長を停止させ、一部の症例では、進行性神経芽腫、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)または炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)を有する選択された小児において全ての徴候を根絶することが示された。Crizotinibはこれらの小児がん患者において一般的に認められる ALK遺伝子異常を標的とする。患者は6つの用量のcrizotinibのうちいずれかの用量を投与され、忍容性が良好な限りは同用量を継続した。その結果、ALCL患者の88%(7/8)において病変が検出されず完全寛解が認められた。奏効の持続は長期間認められ、治療を継続した患者は18か月間疾患の増悪を認めなかった。7人のIMT患者がこのトライアルに登録された。その多くが腫瘍の縮小から完全な腫瘍退縮に至るまでの実質的な有益性を最長2年間得た。神経芽腫患者27人中2人は完全寛解し、8人においては疾患が安定した。ALK異常が証明されている患者8人中2人が完全寛解した。治療が奏効したこれらの患者は疾患が増悪することなく9か月から2年以上にわたり治療を継続した。
進行メラノーマ患者に対する2つの分子標的治療薬併用は毒性が少なく有望な作用を示した [2012-06-05]
Combining two targeted drugs shows encouraging activity with fewer toxicities for patients with advanced melanoma
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表されたexpanded IBトライアルの結果、治験段階にある2つの分子標的治療薬―BRAF阻害薬dabrafenibおよびMEK阻害薬trametinib―は、がんの進行を停止し、現在の標準単剤BRAF標的治療薬のスタディで公表されたよりも皮膚副作用レベルが低いことが示された。この解析ではV600 BRAF変異を有しBRAF標的治療を受けたことのない進行メラノーマ患者を対象とした。トライアル全体では、様々な用量のdabrafenib および trametinibを投与された患者125人が含まれ、今回の解析では過去にBRAF標的治療を受けたことのない(化学療法などの前治療は許可された)、したがってBRAF標的治療抵抗歴のないサブグループの77人に焦点が当てられた。この77人の患者の無増悪生存期間中央値は7.4か月であり、過去のvemurafenib単剤スタディでみられた結果と同等であった。生存期間に関するデータは今年後半に得られる予定である。トライアル全体の125人中扁平上皮がんが発症したのはわずか2%であり、他の2%において日光角化症が発症した。一般的な、しかし制御可能なその他の副作用は発熱、倦怠感および脱水などであった。
抗精神病薬は化学療法誘発性悪心・嘔吐をコントロールする [2012-06-05]
Anti-psychotic drug controls breakthrough chemotherapy-induced nausea and vomiting
従来の治療が奏効しないがん患者の化学療法誘発性悪心・嘔吐(CINV)に関する第3相試験の結果、時に衰弱をもたらすがん治療によるこの副作用に対し、抗精神病薬オランザピンが有効であるとの初めての決定的なエビデンスが示された。第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表されたこのスタディにおいて、化学療法治療歴のない患者205人はまずガイドラインの推奨するCINV予防薬を化学療法前に投与された。これらの薬剤は多くの患者においてCINVを予防した一方で、80人においてはブレイクスルーCINVが発現した。これらの患者らはその後オランザピンまたはメトクロプラミドを毎日、3日間内服する群に無作為に割り付けられた。患者は72時間フォローされ看護師からの電話を受けたり日記を記載するよう求められた。72時間の観察期間中にオランザピン投与患者の71%(42人中30人)に嘔吐はなく、メトクロプラミド投与患者におけるその割合は32%(38人中12人)であった。オランザピンを内服した患者の67%は悪心が発現しなかったのに対し、メトクロプラミドにおけるその割合は24%であった。
術前ホルモン療法にabirateroneを追加することにより一部の高リスク前立腺がん男性の腫瘍が除去しうる [2012-06-05]
Adding abiraterone to hormonal therapy before surgery can eliminate tumor in the prostate in some men with high risk prostate cancer
第48回American Society of Clinical Oncology学会で発表された無作為化第2相スタディの結果、前立腺全摘術前の標準的なホルモン治療に6か月間の標的治療薬abirateroneを追加することにより、限局性高リスク前立腺がん男性の3分の1においてがんが消失したかまたはほぼ消失したことが示された。このスタディの対象となった男性はPSAレベルが20を超えておりGleasonスコアは8以上でステージT3がんを有していた。過去のスタディの結果、術前のleuprolideを含む標準的なホルモン単独療法の有益性は限られていることが示されている。今回のスタディでは2つのグループの男性(グループAはleuprolideホルモン療法を12週間受けた後にleuprolideとabirateroneをさらに12週間受ける男性27人、グループBはabirateroneおよびleuprolideの両者を24週間受ける男性29人)にabiraterone とleuprolideを追加した。前立腺手術は24週間の治療終了後に全員に対し施行され、組織のがんの所見の有無が調査された。グループBの男性のうち34%は手術の時点で完全消失またはほぼ完全消失していた(p=0.894)。グループAでは手術の時点で15%が完全消失またはほぼ完全消失していた。