薬剤併用療法はベバシズマブを使用できない非小細胞肺がん患者の治療選択肢となり得る [2012-04-24]
Drug combination may provide option for patients with non-small cell lung cancer ineligible for bevacizumab
非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するnab-paclitaxelとカルボプラチン併用療法はベバシズマブを使用できない患者の有望な治療選択肢となり得るとのデータが2012年AACR学会で発表された。研究者らは進行NSCLC患者63人においてカルボプラチンとnab-paclitaxelの併用療法を評価した。76%の患者の組織所見が扁平上皮がんでありそのためベバシズマブの適応外であった。これらの患者におけるベバシズマブの他の禁忌は喀血、血栓および治療目的での抗凝固療法であった。研究者らは患者に300mg/m2/AUC6を21日ごとに投与した。これは後に神経障害が過剰であったため260mg/m2/AUC6に変更された。その結果、評価が可能であった患者53人における全奏効率は41%であった。さらに39%の患者は少なくとも6週間状態が安定した。19%の患者においては進行が認められた。10%を超える患者において、血液毒性、発熱性好中球減少症、感染症、感覚性ニューロパチー、呼吸困難および脱水症などのグレード3〜4の毒性が発現した;研究者らはグレード5毒性の死亡4例を報告した。筆者らは、この併用療法は特に他の治療法が限られている扁平上皮がん患者に対する選択肢とすべきである、と述べている。
phase III試験の結果、筋層非浸潤性膀胱がんに対する標準治療が変わる可能性が示された [2012-04-24]
Phase III research represents potential shift in standard care for non-muscle-invasive bladder cancer
筋層非浸潤性膀胱がん治療として使用されるアジュバント免疫療法カルメット・ゲラン桿菌(BCG)のConnaught株の使用により、カルメット・ゲラン桿菌のTice株と比較し、がん再発が有意に減少したとのデータが2012年AACR学会で発表された。このphase IIIスタディにおいて研究者らは、Connaught株およびTice株のがん再発および進行予防効果を前向きに比較した。149人の患者を組み入れ、週1回のTice株またはConnaught株の注射を6回施行する群に無作為に割り付けた。全ての患者が可視の膀胱腫瘍の除去術を受けた。追跡期間中央値25か月後、全ての患者における5年無再発生存率は61%であった。Connaught株を用いて治療された患者はTice株で治療された患者よりも有意に再発が少なかった。Connaught株で治療された患者の5年無再発生存率は75%であったのに対し、Tice株で治療された患者では46%であった。この結果は筋層非浸潤性膀胱がんの標準治療が変わる可能性を示している、と筆者らは述べている。
ベースラインのホルモンレベルが高値であると転移性虚勢抵抗性前立腺がんの生存率が良好なことが予知できるようである [2012-04-24]
High baseline hormone levels appear to predict improved survival in metastatic castration-resistant prostate cancer
アンドロゲン阻害薬abirateroneで治療された虚勢抵抗性前立腺がん患者で、ベースラインホルモンレベルが高値の患者はホルモンレベルが低い患者と比較し全生存期間が長いようであるとのデータが2012年AACR学会で発表された。この前向きサブスタディにおいて研究者らは、abirateroneとプラセボを比較した無作為化phase IIIトライアルのデータを評価し、abirateroneの承認に繋げた。ベースラインのホルモンレベルが高いと、ベースラインのホルモンレベルが低い場合と比較し、初回治療にかかわらず全生存率が有意に高かった。ホルモンレベルが高くプラセボを投与された患者は、ホルモンレベルが低くプラセボを投与された患者よりも生存率が50%高かった。さらに、ベースラインのホルモンレベルが高い患者および低い患者において、abirateroneを使用した方がプラセボよりも全生存期間が長期であった。ベースラインホルモンレベルが高くabirateroneを投与された患者の全生存期間は、ホルモンレベルが低くプラセボを投与された患者の全生存期間の2倍であった。このデータが確認されれば、ホルモン、特に副腎アンドロゲンにより転移性虚勢抵抗性前立腺がん患者の治療有効性を予測する新たな方法が医師に提供されることになる。
骨髄異型性症候群および白血病治療目的の新たなDNAメチル化阻害薬のphase Iの良好な結果が得られた[2012-04-24]
Positive Phase I results for novel DNA methylation inhibitor to treat myelodysplastic syndromes and leukemia
体内におけるがん細胞の機能方法を安全に変化させる新たな強力なエピジェネティック薬が発見された可能性があるとのスタディ結果が2012年AACR学会で発表された。研究者らは、既存のエピジェネティック治療薬decitabineの改良型である新たなDNAメチル化阻害薬SGI-110を開発した。彼らは骨髄異型性症候群または白血病患者におけるSGI-110の生物学的有効用量および忍容性を確定するためにphase Iトライアル―従来の最大忍容用量トライアルデザインを用いたものとは異なる新たなアプローチ法―を施行した。ヒトを対象とした初めてのスタディにおいて、彼らは再発または難治性の中等度または高リスクの骨髄異型性症候群または白血病患者を、SGI-110を毎日5日間皮下注射する群または週1回の注射を3週間施行する群に無作為に割り付けた。これまでに66人の患者を組み入れた。その結果、SGI-110は注射部位の疼痛、好中球減少、血小板減少および貧血などの有害事象が認められたが、忍容性は良好であることが示された。さらに、データからSGI-110は半減期が長く臨床効果を生み出すことが示された。少なくとも2人の患者が寛解し、うち1人は完全寛解でありもう1人は部分寛解であった。
ホルモン受容体陽性乳がんの予後不良に関連した蛋白が発見された [2012-04-24]
Proteins associated with poor prognosis in hormone receptor-positive breast cancer identified
過剰発現したり活性化されたりするとホルモン受容体陽性乳がんの予後を不良とする、翻訳に関わる特異的な蛋白が発見されたとのスタディ結果が2012年AACR学会で発表された。筆者らは、翻訳に関わるいくつかの蛋白の過剰発現または活性化が進行の速いリンパ節転移陽性乳がんと関連することを強調している。ステージ1〜3のホルモン受容体陽性乳がん患者190人の腫瘍解析を通して研究者らは、リボソーマル蛋白S6および翻訳開始因子4E結合蛋白1のリン酸化の増加、真核細胞伸長因子 2キナーゼ発現の増加およびプログラムされた細胞死蛋白4発現減少の全てがホルモン受容体陽性乳がんの予後不良に関連していることを発見した。この同定されたマーカーは、乳がんおよび他のがんで活性化されている重要な発がん性パスウェイであるPI3K/mTORパスウェイにより制御されていることを見出した。この結果は、翻訳異常ががん進行において重要な役割を果たしていることを示唆している。
中国においてアブラナ科野菜摂取と乳がん生存率上昇とに関連が認められた [2012-04-24]
Cruciferous vegetable consumption linked to improved breast cancer survival rates in China
中国人女性において乳がんの診断後にアブラナ科野菜を摂取することにより生存率が上昇したと2012年AACR学会で発表された。研究者らは、2002〜2006年にステージ1〜4の乳がんと診断された中国人乳がん患者4,886人の前向きスタディであるShanghai Breast Cancer Survival Studyにおいてアブラナ科野菜の効果を調査した。人口動態、患者背景および生活習慣因子で補正した結果、乳がん診断後最初の36か月間のアブラナ科野菜摂取により総死亡、乳がん死亡および再発のリスクが摂取量依存的に減少することが示された。アブラナ科野菜摂取量4分位の増加に伴い、総死亡率は27%低下し62%に、乳がん死のリスクは22%低下し62%に、そして再発は21%低下し35%になった。野菜の摂取習慣が中国と異なる文化の女性に一般化することには注意が必要であると筆者らは述べている。中国で一般的に摂取されているアブラナ科野菜はカブ、中国キャベツ/青梗菜および青菜などである。
BRAF変異メラノーマはMEK1変異が共存していてもBRAF阻害薬が有効であった [2012-04-17]
Patients with BRAF-mutant melanomas responded to BRAF inhibitor despite a concurrent MEK1 mutation
BRAF 変異メラノーマの治療を受ける患者においてMEK1の遺伝子変異は、この遺伝子変異が治療抵抗性の原因である可能性があるとの現在の見解に反し、BRAF阻害薬の有効性を阻害しない。この革新的な研究は2012年AACR学会で発表されCancer Discoveryプリント版に先立ちオンラインで掲載された。BRAF変異はメラノーマの50%以上において認められる。BRAF阻害薬は約60%の患者において抗腫瘍反応を誘発し得る。したがって一部の腫瘍は初期の時点で薬剤耐性であり、最初は薬剤が有効であった患者でも薬剤耐性を獲得し得る。研究者らは、メラノーマを有しBRAF阻害薬で治療されている31人の腫瘍標本を分析した。これらのうち、16%が治療前から腫瘍内にBRAFとMEK1変異の両者を有していた。2重にBRAF/MEK1変異を有する患者の5人中3人の腫瘍はBRAF阻害薬が有効である。研究者らは、実験室で培養したメラノーマの細胞株を使用してこの結果を実証した。BRAF変異メラノーマおよびBRAFとMEK1の変異を有するメラノーマはBRAF阻害薬またはBRAF阻害薬とMEK1阻害薬の併用の有効性が同等であり得る、と筆者らは結論付けている。
長期のエストロゲンホルモン療法は乳がんリスク上昇と関連があるが死亡とは関連がない [2012-04-17]
Long-term use of estrogen hormone therapy linked to increased risk for breast cancer, but not death
2012年AACR学会で発表されたある画期的なスタディの結果、長期間のエストロゲン/プロゲステロン併用療法およびエストロゲン単独のホルモン療法(HT)と乳がんの高発症リスクとが関連付けられた。Nurses' Health Studyのデータを用いて、研究者らは1976年に30〜55歳であった閉経後女性登録看護師から収集した追跡データを評価した。その結果、HTを行われなかった女性と比較し、エストロゲンとプロゲステロンを10〜14.9年内服した女性では乳がんリスクが88%高かった。エストロゲンとプロゲステロンを15〜19.9年内服した女性では、リスクは2倍以上高かった。エストロゲン単独のHTを行われた女性においては、10〜14.9年の内服ではリスクが22%上昇し、15〜19.9年の内服で43%上昇した。いずれのHTにおいてもリスクはプラトーにはならなかった。HTは致死的な乳がんリスクは上昇させなかった。過去のスタディでは、10年未満のHT使用に関連したリスクのみ評価がなされていた。
C型肝炎を原因とする進行肝細胞がんの患者を対象とした小規模スタディにおいてtremelimumab の臨床効果の兆しが示された [2012-04-17]
Tremelimumab shows signs of clinical activity in small study of patients with advanced hepatocellular carcinoma due to hepatitis C
Tremelimumab治療は12か月以上、C型慢性肝炎による進行肝細胞がん患者を安定化させたとのスタディ結果が2012年AACR学会で発表された。研究者らは15mg/kgのtremelimumabを90日ごとに約2サイクル静脈内投与された患者21人を評価した。腫瘍量は2人の患者において軽減し、11人においては疾患が1年以上安定化した。Intention-to-treat解析において、全生存期間中央値は7.5か月であり無増悪期間は6.4か月であった。治療に関連した有害事象は80%の患者において認められた:グレード3以上の有害事象は掻痒1件、紫斑1件およびトランスアミナーゼ上昇5件であった。血液内のC型肝炎ウイルスの減少も認められ、抗ウイルス免疫の客観的な強化も伴っていた。筆者らは、今回のような少人数の患者において明らかな臨床効果が見極められるのは珍しく、また抗ウイルス活性に関する情報もまた、非常に有望であると述べている。
低用量のIL-2および13-cisレチノイン酸投与を受けた進行がん患者は生存率が改善する [2012-04-17]
Improved survival for patients with advanced cancers who received lower doses of IL-2 and 13-cis retinoic acid
インターロイキン2および13-cisレチノイン酸による維持療法は、様々なステージ4のがん患者における生存率を上昇させる安価な方法となり得る、との研究結果が2012年AACR学会で発表された。ある転移性メラノーマ患者が通常の18M UI/m2の高用量インターロイキン2(IL-2)に忍容性がなく、しかし低用量が奏効した後の1995年に、研究者らは進行がん患者における維持療法の評価を開始した。このスタディにおいては、腫瘍の種類は様々であるが全員ステージ4の患者500人を評価した。通常のがん治療後に、患者は週5日のIL-2(1.8×106IU)自己皮下注射および経口RA(0.5mg/kg)投与を、3週間のサイクルで連続2サイクル行いその後1週間休薬する治療を1年間施行された。追跡期間中央値60か月後には、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)数が増加し血管内皮増殖因子が減少していた。15年無病生存期間および全生存率はそれぞれ、32.6%および36.8%であった。卵巣がん、非小細胞肺がん、肉腫の心臓転移、大腸、胃、腎細胞がん、メラノーマ、頭頸部がん、乳、膵および再発性卵巣がんを含む全てのがんにおいて有益であった。
Phase IIスタディにおいて前立腺摘出術前のメトホルミン使用は有害事象がほとんどなくがんの進行を遅延させる [2012-04-17]
Using metformin before prostatectomy slows cancer's growth with few adverse events in phase II study
前立腺摘除術前の男性に対するメトホルミン投与は一部の代謝系パラメータを改善させ、がん進行率を低下させるのに役立ったとのphase IIスタディの結果が2012年AACR学会で発表された。メトホルミンは糖尿病に対し最も一般的に処方される薬剤である。過去の実験結果によるとメトホルミンは前立腺がん患者のがん細胞増殖を遅延させることにより予後改善に役立つことが示唆された。この実験の手がかりをさらに追及するために、研究者らは前立腺がんと確定診断された男性22人に対し、前立腺摘除術前にメトホルミン500r1日3回を期間中央値41日間投与し評価した。この期間中にグレード3の有害事象を報告した男性はおらず、いずれの男性もメトホルミン投与に関連した有害事象はなく前立腺摘除術を施行された。メトホルミンは空腹時血糖、インスリン増殖因子-1、ボディーマスインデックスおよびウエスト対ヒップ比を有意に低下させた。さらに、プレリミナリーの結果では、メトホルミンは一部の男性において前立腺がんの増殖を軽減させるようであった。また腫瘍の全体的な増殖に関わる可能性のある主要な増殖パスウェイの一つを減少させるようでもあった。
 
ARMOR1スタディ:早期臨床データからgaleteroneは去勢抵抗性前立腺がんに対し安全で有効であることが示された [2012-04-17]
ARMOR1 study: Early clinical data show galeterone safe, effective against castration-resistant prostate cancer
去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者における小分子経口薬galeterone(TOK-001)の副作用は限定的であり、多くの症例において前立腺特異抗原発現量が低下するとのphase Iのデータが2012年AACR学会で発表された。ARMOR1スタディにおいて研究者らはCRPC患者を、1日650mg、975mg、1300mg、1,950mgまたは2,600mgの漸増用量を1日単回でまたは複数回に分けて12週間内服する8つの用量群のいずれかに割り付けた。最大耐量に達した患者は一人もいなかった。ほとんどの副作用は軽症で、倦怠感、嘔気および下痢であった。15人の患者において一過性の重篤でない肝酵素上昇を認め、その多くが無症状であった。これらの患者のうち11人は一時的にgaleterone治療を中断し、6人は治療を再開したが肝酵素の再上昇は認めなかった。唯一発現した重篤な合併症は、スタチンを内服しており腎機能障害を有する患者における横紋筋融解であった。早期有効性試験において患者の49%で30%以上のPSA低下を認めた;これらの患者のうち11人では50%以上低下した。さらに、CTスキャンでは一部の患者において腫瘍サイズの減少が見られた。