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遺伝子変異を有する浸潤性上皮性卵巣がん患者は5年生存率が高い [2012-01-31] |
Women with invasive epithelial ovarian cancer and BRCA gene mutation have improved survival at 5 years |
浸潤性上皮性卵巣がん患者のうち、BRCA1またはBRCA2遺伝子の生殖細胞系列変異を有する患者は5年全生存率が高く、中でもBRCA2遺伝子を有する者において予後が最もよかったとのスタディ結果がJAMA 1月25日号に掲載された。26の観察研究のプール解析には、BRCA1(909人)または BRCA2(304人)病原性生殖細胞系列変異を有する上皮卵巣がん(EOC)1,213症例および遺伝子変異ノンキャリア2,666人のデータが含まれた。EOC診断後5年間に1,766人が死亡した。5年全生存率は遺伝子変異ノンキャリアで36%であったのに対し、BRCA1キャリアでは44%、BRCA2キャリアでは52%であった。スタディ参加施設および診断年のみを補正したモデルにおいては、BRCA1キャリアの生存率はノンキャリアよりも良好であり、これはさらにステージ、悪性度、組織学、及び診断時年齢で補正することによりやや増強した。BRCA2キャリアはノンキャリアと比較し、特に他の予後因子で補正すると生存率が非常に高かった。ノンキャリアと比較した際のBRCA1およびBRCA2キャリアの生存率における優位性は存在するが、卵巣がん、乳がん、または両者の家族歴を有する者においては顕著ではなかった。
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新たな検査は早期段階膵管腺がんに関連する蛋白を検出する [2012-01-31] |
New test detects protein associated with early stage pancreatic ductal adenocarcinoma |
ASCO第9回消化器がんシンポジウムで発表された臨床試験の結果、モノクローナル抗体を用いて血中のがんマーカーPAM4-蛋白を検出する検査により、早期段階の膵がん患者の3分の2を正確に同定することができることが示された。研究者らは、この検査により膵がんの約90%を占める膵管腺がん(PDAC)患者全体の76%を検出できたことを明らかにした。PAM4を、膵がんの経過をモニターするのに一般的に用いられる他の腫瘍マーカーであるCA19-9と組み合わせることにより、これらの患者の85%を検出することができた。これらの患者において、この検査によりステージ1の患者の64%が、またCA19-9と組み合わせることにより進行がん患者の85%が正確に検出された。周囲臓器のがんに関しては、肝外胆管がん(50%)および膨大部周囲腺がん(48%)の約半数においてPAM4蛋白が陽性であった。比較のために計測すると、良性膵疾患患者の19%および慢性膵炎患者の23%においてPAM4蛋白が陽性であった。 |
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CORRECT:多標的薬は一部の転移性大腸がん患者の生存率を改善する [2012-01-24] |
CORRECT: Multi-targeted drug improves survival in certain patients with metastatic colorectal cancer |
ASCO第9回消化器がんシンポジウムで発表された多施設国際トライアルCORRECTスタディの結果、治験薬regorafenib単剤での治療により他の承認薬治療を行っても進行した転移性大腸がんの生存率が改善しがんの進行が遅延したことが示された。Regorafenibは、腫瘍の成長に関わる複数の生物学的パスウェイを標的とした新たな経口薬である。CORRECTと呼ばれるこのトライアルは、標準治療を行ったにもかかわらず進行した転移性大腸がんの患者760人を対象としたphase IIIトライアルである。患者は最良の支持療法に加えregorafenibまたはプラセボを投与される群に無作為に割り付けられた。最良の支持療法とは疾患全体の予後を改善するよりもむしろ、がんの症状に対する治療である;これには抗生剤、鎮痛剤、骨転移による疼痛に対する放射線療法、およびコルチコステロイドなどが含まれた。2回目の中間データ解析において、全生存期間中央値はregorafenibで6.4か月でありプラセボで5.0か月であった―全生存期間は29%延長した。スタディの結果、疾患コントロール率(DCR)にもかなりの差があったことも示された:regorafenib群で44%であったのに対しプラセボ群で15%。DCRは、薬剤に対し部分奏効または完全奏効が認められた、あるいは疾患が安定していた患者のパーセンテージと定義された。
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食道がんリスクの高いBarrett食道患者を検出する有望なバイオマーカー [2012-01-24] |
Biomarkers promising for detecting Barrett's esophagus patients at high risk for esophageal cancer |
ASCO第9回消化器がんシンポジウムで発表されたあるスタディの結果、Barrett食道(BE)患者における食道がんの早期発見を将来改善する可能性のある新たな光学的バイオマーカーが発見された。研究者らは、生検を施行されたBarrett食道患者60人から採取した組織をレトロスペクティブに調査した。そのうち、33人は腸上皮化生を有するのみであることがわかり、27人は高度異形成性またはがんであった。研究者らは両群(異形を有さない者および他の生検組織から高度異形性またはがんを有すると診断された者)の患者から得た腸上皮化生部分のみの生検組織の細胞を調査した。空間領域低コヒーレンス定量位相差顕微鏡(SL-QPM)を用いて彼らは、がんのないBE患者を高度異形性/がん患者と見分ける細胞の異常を検出する光の使用に基づいた少なくとも3つの新たな特徴を発見した。これらには細胞核の平均光路長、核内エントロピー、および核内均等性が含まれた。これらのバイオマーカーを用いて研究者らは予知モデルを開発した。従来の顕微鏡ではがんではないとされる細胞を観察するのみで、高度異形性/腺がん を有するBE患者を、異形を有さないBE患者と鑑別するこの予知モデルの感度は89%であり特異度は76%であった。 |
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2つのスタディの結果、陽子線治療は安全で有効な前立腺がんの治療法であることが示された [2012-01-17] |
Two studies show proton therapy is a safe and effective treatment for prostate cancer |
陽子線治療は安全で有効な前立腺がんの治療法であるとの2つのスタディの結果がInternational Journal of Radiation Oncology•Biology•Physics (Red Journal)1月号に掲載された。1つ目のスタディでは低、中等度、高リスクの前立腺がん患者211人が調査された。患者は、X線の代わりに陽子を使用する特殊なタイプの体外放射線療法である陽子線治療を受けた。2年間の追跡の結果、この治療は有効であり消化器系および泌尿生殖系副作用はごくわずかであった。もうひとつのスタディでは、光量子と陽子を用いた高線量の体外放射線療法と小線源療法とを比較したケースマッチ解析を行った。3年の間に196人が体外照射療法を受けた。同じ期間内に小線源療法を受けた同等ステージの患者203人のデータと比較した。その後に生化学的再発率を比較した結果、陽子/光量子治療を受けた患者の再発率は小線源療法を受けた患者のそれと同等であることが確認された。 |
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赤ワインを中等量飲むとエストロゲンレベルが低下しテストステロンレベルは上昇し、がん細胞の成長を停止させる可能性がある [2012-01-17] |
Drinking red wine in moderation lowers estrogen levels and elevates testosterone possibly stemming growth of cancer cells |
中等量の赤ワイン摂取は乳がんのリスクファクターの1つを軽減させる可能性があるとのスタディ結果が、Journal of Women's Healthオンライン版で現在掲載中であり印刷版4月号に掲載予定である。研究者らは赤ワインがエストロゲンレベル調整に重要な役割を果たし、現在乳がん治療に用いられているアロマターゼ阻害薬の作用と類似の作用を有するかを調査した。このスタディでは36人の女性がカベルネソーヴィニョンまたはシャルドネをほぼ1ヵ月間毎日飲み、その後飲むワインを交換した。月2回採血を行い、ホルモンレベルを計測した。その結果、毎晩8オンスの赤ワインを1ヵ月飲んだ閉経前女性において、葡萄の皮や種に含まれる化学物質がエストロゲンレベルを低下させテストステロンレベルを上昇させる結果が得られた。研究者らは、ホルモンパターンの変化から、テストチューブスタディで認められたように赤ワインが、がん細胞の増殖を停止することが示唆されたと述べている。白ワインに同じ効果は欠けていた。研究者らは今回の結果は勇気づけられるものであり、機会飲酒をする女性はアルコールの選択を再考した方が良いかもしれないと述べている。 |
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Bevacizumabを用いた標的治療は卵巣がん患者の無増悪生存期間を延長させる [2012-01-10] |
Targeted therapy with bevacizumab extends progression-free survival of patients with ovarian cancer |
巣がん患者をbevacizumabで治療することにより疾患の進行が遅延し生存期間も改善する可能性があるとの2つのスタディの結果がNew England Journal of Medicine 2011年12月29日号に掲載された。336施設の未治療進行卵巣がん患者1,873人を対象としたphase3スタディにおいて、化学療法にbevacizumabを併用し、さらにbevacizumabを最長10ヵ月追加投与された患者のがん進行までの期間中央値は14.1ヵ月であったのに対し、化学療法とプラセボの併用その後にプラセボを継続されたコントロール群では10.3ヵ月であった。経時的な卵巣がん進行リスクの正味の減少は28%であった。化学療法とbevacizumabの併用投与をされたがその後bevacizumabを投与されなかった患者の無増悪生存期間中央値は11.2ヵ月であった。低用量のbevacizumabを投与したもう一つのスタディ(263施設の患者1,528人)では、全体のがん再発停止は2ヵ月間であった。しかし、最も高リスクの女性においては、疾患進行が5〜6ヵ月遅延し、全生存期間の強い改善傾向が示唆された。 |
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スタディの結果、肝細胞がんに対するマイクロRNA標的療法のさらなる開発の原理が証明された [2012-01-10] |
Study provides proof-of-principle for further development of microRNA-targeted therapies for hepatocellular carcinomas |
Cancer Research誌に掲載された新たなスタディにより、肝がんにとって重要なある特異的なマイクロRNAを選択的に標的とし遮断することが可能であることが示された。この動物実験は肝がんに持続的に高レベルに存在する分子であるマイクロRNA-221(miR-221)に焦点を当てた。研究者らは発光性の蛍光蛋白ルシフェラーゼでラベルした肝がん細胞をマウスの肝臓に注入した。彼等は生体発光イメージングを用いて腫瘍の成長を監視した。腫瘍が適切な大きさに達すると、研究者らは片方のグループのマウスにmiR-221を阻害するように設定されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した。もう片方の群にはコントロール分子を投与した。アンチセンスオリゴヌクレオチド投与10週後に半分のマウスが生存していたのに対し、コントロール群では1匹も生存していなかった。アンチセンスオリゴヌクレオチドは腫瘍および正常肝組織においてmiR-221レベルを有意に低下させた。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる治療により、肝がん内miR-221によりブロックされていた3つの重要な腫瘍抑制遺伝子活性が3倍に上昇していた。この腫瘍抑制遺伝子はp27、p57 および PTENであった。 |
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