生殖系危険因子は肥満と関連する
失業は心筋梗塞リスクを上昇させる
新薬は心不全治療において有望である(AHA 2012 LBCT-19921)
心停止後の低体温療法は生存率を改善する (AHA 2012 LBCT-20173)
合剤の心疾患治療薬の方が患者の内服する確率が高い(AHA 2012 LBCT-19865)
バックアップ手術の有無による血管形成術のコストの比較(AHA 2012 LBCT-20035)
気候に関係なく心臓関連死は冬に多い(AHA 2012 Abstract # 11723)
薬剤トリオががん治療の有効性を改善し心臓を保護した (AHA 2012 Abstract # 16494)
糖尿病患者においてCABGは薬剤溶出ステントよりも優れている(AHA 2012 LBCT-19997)
HDLコレステロール薬は心疾患患者のリスクを低下させない (AHA 2012 LBCT-19889)
キレート療法はMI後患者において有望である(AHA 2012 LBCT-19786)
1日1回のマルチビタミン摂取は男性の心血管疾患を予防しない(AHA 2012 LBCT-19920)
患者やドナーからの幹細胞は病的心の治療に役立つ可能性がある(AHA 2012 LBCT-19942)
心臓幹細胞は心不全治療に役立つ可能性がある (AHA 2012 LBCT-20230)
Prasugrel内服患者とクロピドグレル内服患者の虚血に関する予後は同等である (AHA 2012)
魚油は術後心房細動減少に有効でない (AHA 2012)
新たなデバイスは心臓の拍動によりペースメーカーを充電する可能性がある
(AHA 2012 Abstract # 15551)
他人の方が家族よりもCPRを用いた対応を行う確率が高い(AHA 2012 RESS Abstract # 203)
若年成人は心臓関連の胸痛を認識する確率が低い (AHA 2012 Abstract # 17831)
HDL注入はコレステロールを迅速に血管外へ移動させる(AHA 2012 Abstract # 11855)
 
女性において初潮の時期は心血管疾患リスクの予測因子となる可能性がある [2012-11-27]
Timing of first menstrual cycle may predict cardiovascular disease risk in women

初潮年齢は成人期のボディーマスインデックス(BMI)、腹囲、および肥満−全て心血管疾患の危険因子−の増加と関連するとのスタディ結果がJournal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2013年1月号にアクセプトされた。このスタディでは2002〜2005年のFramingham Heart Study(FHS)に参加した女性1,638人(40歳以上、160s未満で非妊婦)に焦点を当てた。参加者は身体検査および検体検査により内臓脂肪(VAT)および皮下脂肪(SAT)の計測を受けた。スタディでは、年齢、喫煙の有無、飲酒、身体活動性尺度、ホルモン補充療法および閉経の有無で補正したのちのVAT、SATおよび女性の生殖因子との関連をモデル化した。初潮時期は局所的ではなく全身的な貯蔵脂肪と関連していた。初潮が早いことは肥満と関連があったが、生涯における出産回数や閉経年齢は肥満の計測値には関連がなかった。閉経後女性もまた肥満レベルが高かったが、これは主に年齢のためであり閉経の状態とは関係がないようであった。

失業は急性心筋梗塞リスク上昇と関連している可能性がある [2012-11-27]
Unemployment may be associated with increased risk for acute myocardial infarction

失業、複数の失職および短期間の無職は急性心筋梗塞(AMI)のリスク上昇と関連する可能性があるとArchives of Internal Medicine オンライン版に報告された。研究者らは失業に関する様々な面とAMIリスクとの関連を、Health and Retirement Studyの対象米国成人13,451人(年齢中央値62歳)において調査した。スタディにおいて、165,169人-年の観察期間に1,061件のAMIイベント(7.9%)が発現した。スタディによると、対象者群ではベースライン時に14%が失業しており累積で69.7%が1回以上の失業を経験し、35.1%が無職の時間を過ごしたとのことであった。統計学的解析の結果、AMIリスクは失業者において有意に高く(ハザード比[HR]1.35)、リスクは失業しなかった者と比較し1回の失業(HR、1.22)から4回以上の失業(HR、1.63)にかけて徐々に上昇した。AMIのリスクはまた失業の最初の年に上昇していた(HR、1.27)が、その後は上昇していなかった。複数回の失業に伴ったリスク上昇は、喫煙や糖尿病および高血圧などの他の従来の危険因子の度合いと同等であった。

RELAX-AHF-1:Serelaxinは急性心不全で入院した患者の治療において期待できそうである [2012-11-20]
RELAX-AHF-1: Serelaxin may hold promise for patients hospitalized for acute heart failure

入院中の心不全患者に治験薬serelaxinを投与したことにより症状が改善し、死亡が減少するなどの有益性が認められたとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表されLancetに掲載された。この多施設第3相RELAXin in Acute Heart Failure(RELAX-AHF)トライアルでは、心不全患者1,161人を 1日30mcg/kgのserelaxinまたはプラセボを48時間静脈内投与される群に無作為に割り付けた。患者は、心不全症状による呼吸困難と腎機能低下所見を伴い入院し、入院後16時間以内に薬物を投与された。また、利尿薬を用いた標準治療も受けた。Serelaxin群においては呼吸困難指標の20%低下や入院中の心不全症状増悪エピソードの45%を超える減少などの、心不全症状の有意な軽減が認められた。集中治療室滞在期間はserelaxin群でほぼ半日短く、入院期間はほぼ1日短かった。Serelaxinは6か月時点の心血管死亡率(HR 0.62, 95%CI 0.40-0.95; P =0.03)および総死亡率(HR 0.62, 95%CI 0.40-0.95; P =0.03)を低下させた。Serelaxinは再入院は減少させなかった。

蘇生後の心停止患者の体温を低下させる低体温療法は生存率を改善し回復後の機能的能力を増大させる [2012-11-20]
Cooling resuscitated cardiac arrest patients to lower body temperatures associated with a better survival and greater functional ability after recovery

心臓突然停止後に蘇生された患者の体温を低下させる低体温療法は生存率を改善し機能的能力を高める可能性があるとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Associationで発表されCirculationに掲載された。院外心停止からの昏睡状態生存者に対する2レベルの低体温療法(Two Levels of Hypothermia in Comatose Survivors from Out-of-Hospital Cardiac Arrest)に関するパイロットトライアルでは、院外で心停止した36人の患者(平均年齢64歳、男性89%)を32℃で冷却する群または34℃で冷却する群に無作為に割り付け、24時間の後に徐々に12〜24時間かけて再度体温を上昇させた。患者は低温の生理食塩水を、静脈内投与されたのちに体内カテーテルを用いて投与され体内から冷却され、下半身から心臓への中心静脈内に直接体温維持システムが挿入されていた。その結果、心停止後に32℃(89.6ºF)の低体温療法を施行された患者の44%は、治療6か月後に重篤な脳機能不全なく生存していた。34℃(93.2ºF)で冷却された患者では、それは11%であった。この予後改善が体温低下に関連するものであるか否かを判断するために、さらに大規模なスタディが必要である。

UMPIRE:心疾患患者は薬剤が合剤になっている方がアドヒアランスが良好である [2012-11-20]
UMPIRE: People with heart disease are more likely to adhere to medication regimen if drugs are combined in a single pill

心疾患治療薬が組み合わさって1つの錠剤になっているいわゆる"ポリピル"の方が患者の内服率が高いとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表された。一般的に高所得国においては、必要な心血管治療薬をすべて内服している患者は約50%に過ぎない。低〜中所得国ではその割合はわずか5〜20%である。UMPIRE(Use of a Multidrug Pill In Reducing cardiovascular Events)トライアルにおいて研究者らは、いくつかの薬剤の内服を固定用量の合剤に変更することによりアドヒアランスが改善し血圧やコレステロールのコントロールが改善するか否かを調査した。研究者らは、心血管疾患を有するヨーロッパおよびインドの2,000人以上の男女(平均年齢62歳)を平均15か月追跡した。参加者の半数はアスピリン、スタチンおよび2種類の降圧剤の合剤を投与された。残りの半数は複数の錠剤および用量による通常通りの内服薬を内服した。単剤内服群では複数錠剤内服群と比較し、アドヒアランスが3分の1改善し血圧およびコレステロールが改善した。

C-PORT-E:非緊急血管形成術のコストはバックアップ手術のない病院の方が高い [2012-11-20]
C-PORT-E: Non-emergency angioplasty costs higher in hospitals without back-up surgery

血管形成術のコストは緊急時バックアップ心臓手術体制のない病院において、その体制のある病院と比較し高かった、とのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表された。Cardiovascular Patient Outcomes Research Outcomes of Percutaneous Team(C-PORT-E)トライアルにおいて、心臓手術体制のない病院で施行される待機的血管形成術の安全性および有効性は、院内で心臓手術のできる病院で行われる場合と同等であることが示された。この結果は、心臓外科のない病院がこの施術を同等のコストで行い得るかに焦点をシフトさせた。研究者らは米国59の病院で治療された患者18,273人(平均年齢64歳、白人79%、男性63%)の請求書のデータを解析した。治療9か月後の平均累積医療費は心臓手術体制を有する病院で$23,991であったのに対し、心臓手術体制のない病院では$25,460であった。この差には2つの因子が影響していた―スタディプロトコールでは心臓手術体制のない病院では血管形成術後管理に集中治療室を使用することを求めたこと、およびこれらの病院で治療を受けた患者は心臓手術体制を有する病院で血管形成術を受けた患者よりも治療9か月後の再入院率が高かったことであった。

心筋梗塞、心不全および脳卒中による死亡はあらゆる気候の中でも冬に多い [2012-11-20]
Deaths from myocardial infarction, heart failure and stroke more common in winter in all climates

気候の如何にかかわらず、心臓に関連した死亡は冬に確率が高まるとの研究結果が2012年American Heart Association学会で発表された。研究者らは、2005〜2008年における米国の異なる7か所(カリフォルニア;ロサンゼルス、テキサス;アリゾナ、ジョージア;ワシントン、ペンシルベニアおよびマサチューセッツ)の死亡診断書のデータを解析した。全地域において、総および"循環器系"死亡は、4年間にわたり、死亡率の低い夏からピークの冬にかけて平均で26%から36%に上昇した。循環器系死亡には致死性心筋梗塞、心不全、心血管系疾患および脳卒中が含まれた。総および循環器系死亡の季節的なパターンは、7つの異なる気候パターンの地域において非常に似通っていた。全地域の死亡率も、互いに似通っており他の地域と統計学的に異なる地域はひとつもなかった。研究者らによると、この解析は心臓関連死を冬に増加させ得る特異的な原因を特定するようにデザインされていなかったが、寒い天候が血管収縮を増加させ血圧を上昇させる可能性があるとの仮説を立てている。より良い食事や運動などの健康的な習慣が冬には重要である、と彼等は述べている。

シルデナフィルとrapamycinは相互に作用しドキソルビシンのがん治療を改善し心臓を保護する [2012-11-20]
Sildenafil and rapamycin work together to improve doxorubicin cancer treatment while protecting the heart

がん治療薬ドキソルビシンと勃起不全改善薬シルデナフィルおよび免疫抑制剤rapamycinの併用はがん細胞死滅に役立ち心臓を傷害から保護したとのスタディ結果が、2012年American Heart Association学会で発表された。この数十年の間ドキソルビシンは、乳がん、卵巣がん、結腸および前立腺がんなどの種々の人間のがんに対する強力な抗がん剤である。しかし、この薬剤は心臓に対し不可逆な影響を与える可能性がありその毒性のために使用が制限されている。このスタディでは、細胞および動物モデルを使用し、シルデナフィル単独またはrapamycinとの併用はドキソルビシンの抗がん作用を有意に改善し心臓を保護することを示した。この薬剤併用は心筋をアポトーシスから劇的に保護し、壊死の範囲を減少させた。この3剤全ての併用は最も強力な効果を示した。この薬剤併用はがん患者の余命を改善する可能性があると研究者らは確信している。さらに研究を行い、シルデナフィルやrapamycinがどのように相互に作用しドキソルビシン治療を改善するのかを理解する必要がある。

FREEDOM:糖尿病患者の冠動脈多枝病変に対しては薬剤溶出ステントよりもバイパス術の方が有意に優れている [2012-11-13]
FREEDOM: Bypass surgery significantly better than drug-eluting stents for treating multivessel coronary artery disease in diabetics

冠動脈多枝病変(MV-CAD)を有する糖尿病患者は薬剤溶出ステントよりも冠動脈バイパス術(CABG)を施行された方が有意に予後が良好であったとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。Future REvascularization Evaluation in patients with Diabetes mellitus:Optimal management of Multivessel disease(FREEDOM)トライアルではMV-CADを有する糖尿病患者1,900人を薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)またはCABG群に無作為に割り付けた。患者の平均年齢は63.1±9.1歳であり、29%が女性で糖尿病罹病期間中央値は10.2±8.9年であった。5年以内に心筋梗塞(MI)または脳卒中を発現した者または死亡した者はバイパス手術群で18.7%であったのに対し、薬剤溶出ステントによるPCIを施行された患者群では26.6%であった(P =0.005)。CABG群のうちMIを発症したのは6%であったのに対し、PCI群では13.9%であった(P <0.001)。しかし、脳卒中はCABG群において多く認められた―5.2%対2.4%。多枝病変を有する糖尿病患者に対する血行再建術としてはCABG手術が好ましい方法である、と筆者らは結論付けている。

dal OUTCOMES:DalcetrapibはHDLコレステロールを増加させるが心血管イベント再発リスクは減少させないようである [2012-11-13]
dal OUTCOMES: Dalcetrapib increases HDL-cholesterol but does not appear to reduce risk of recurrent cardiovascular events

心筋梗塞(MI)を発症して間もない患者または狭心症で入院した患者において、高密度リポ蛋白(HDL)コレステロールレベルを上昇させる薬剤は心血管イベント再発リスクを軽減できなかったとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会において発表され、同時にNew England Journal of Medicineに掲載された。Effects of Cholesteryl Ester Transfer Protein Inhibitor Dalcetrapib in Patients with Recent Acute Coronary Syndrome(dal OUTCOMES)トライアルにおいて研究者らは、27か国45歳以上の患者15,871人を1日600mgのdalcetrapibまたはプラセボを内服する群に無作為に割り付けた。97%の患者がアスピリンおよびスタチンを内服しており、87%はβ遮断薬を内服していた。平均追跡期間31か月後に、dalcetrapibはHDLコレステロールを約30%上昇させた。しかし、この薬剤は死亡、MI再発、心原性胸痛による入院、または脳卒中を減少させなかった。性別、年齢、喫煙の有無、内服歴、地理的位置またはボディーマスインデックスなどの因子は、この結果に影響しなかった。LDLコレステロールや他の心血管リスクファクターを低下させる薬剤を既に内服している患者においてHDLコレステロールが依然として重要な因子かどうかは疑問であると研究者らは述べている。

TACT;代替療法は動脈硬化治療に興味深い結果をもたらしたが疑問は残る [2012-11-13]
TACT: Alternative therapy produces intriguing results for treatment of atherosclerosis but questions remain

週1回のキレート点滴療法を受けた心筋梗塞既往患者は外観の同様なプラセボを投与された患者よりも心血管イベントが少なかったとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表された。この多施設二重盲検有効性トライアルである、Trial to Assess Chelation Therapy(TACT)では、MI後患者1,708人(82%が男性、32%が糖尿病、68%が高血圧を有し、73%はスタチンを内服)が500mLのキレート液またはプラセボの点滴を40回施行される群に無作為に割り付けられ、次の無作為化では経口ビタミンおよびミネラル療法またはプラセボ内服に割り付けられた。キレート液には3グラムの合成アミノ酸エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、7gのビタミンC、ビタミンB群、電解質、局所麻酔薬および抗凝固薬ヘパリンが含まれていた。キレート液を投与された患者はコントロール群よりも重篤な心血管イベント発現が少なかった(26%対30%)。心血管イベントは死亡、心臓発作、脳卒中、冠動脈血行再建術施行および狭心症による入院で定義された。糖尿病を有する者は特にこの点滴の有益性が高いようであったが、スタディチームは、サブグループ解析は信頼できない可能性があり再現する必要があると警告している。

1日分のマルチビタミンを毎日摂取しても50歳以上の男性において心筋梗塞、脳卒中または心血管死を予防できなかった [2012-11-13]
Taking a daily multivitamin daily did not prevent myocardial infarction, stroke or cardiovascular death among men 50 and older

1日1回のマルチビタミン摂取は心疾患を予防しない可能性がある。このあるトライアルの結果はAmerican Heart Association 2012年学会で発表されJAMAに掲載された。このトライアルは毎日のビタミン摂取と心血管系の健康に関して調査した初めての唯一大規模な長期臨床試験である。他の観察研究の結果は一致していない。The Randomized Trial of a Multivitamin(MVM) in the Prevention of Cardiovascular Disease in Men:The Physicians' Health Study (PHS) IIは米国の50歳以上の男性医師14,641人を対象とした臨床試験である。大部分は白人であった。全参加者の半数が一般的なマルチビタミンを毎日摂取し、残りの半数はプラセボを摂取した。研究者らはこの参加医師らを平均11.2年追跡した。トライアルの追跡期間中に心血管疾患が1,700件以上発現した時点で、毎日のマルチビタミン摂取が心筋梗塞、脳卒中および心血管死などの重大な心血管イベントを減少させないことが明らかになった。毎日のマルチビタミン摂取による毒性は認められず安全な様であり、同じトライアルで最近報告された全てのがん発症を軽度低下させる効果などの他の長期マルチビタミン内服効果の可能性を考慮することも重要である、と筆者らは特筆している。

POISEIDON:同種幹細胞は心筋症によるLV機能低下患者において安全である [2012-11-13]
POISEIDON: Allogeneic stem cells are safe in for patients with LV dysfunction due to cardiomyopathy

心筋症によるLV機能不全患者の治療に幹細胞を患者またはドナーいずれから得ても安全に治療でき有効性は同等であるとのLate-Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表されJournal of the American Medical Associationに掲載された。The Comparison of Allogeneic vs. Autologous Bone Marrow Derived Mesenchymal Stem Cells Delivered by Transendocardial Injection in Patients with Ischemic Cardiomyopathy trial(POISEIDON)は、同種と自家間葉幹細胞(MSCs)を比較し13か月間追跡した第I/II相無作為化比較試験である。慢性虚血性心筋症患者30人が様々な用量のMSCsを投与された。半分は自己細胞を投与され、残りの半分はドナー細胞を投与された。心不全クラスはドナー細胞を投与された患者の28%において改善し、自己細胞を投与された患者の50%において改善した。過去の心筋梗塞による梗塞サイズは両群ともに平均30%減少し、一部の患者ではQOLが向上した。同種 MSCsがドナー特異的同種免疫反応を有意に刺激することはなかった。MSCsを用いた新たな心筋再生のためには大量の幹細胞を培養する必要があり、それには6〜8週を要する。既に準備されたドナー細胞を使用すれば、この治療の遅延は回避できる可能性がある。

心臓幹細胞は虚血性心筋症患者において生存可能な心筋、LV収縮能、および機能的能力を増大させる可能性がある [2012-11-13]
SCIPIO: Cardiac stem cells increase viable myocardium, LV systolic function, and functional capacity in patients with ischemic cardiomyopathy

術中に患者自身の心臓から心臓幹細胞を分離し後により多数の細胞を再注入することにより、将来心筋梗塞後LV機能不全患者を治療できる可能性があると2012年American Heart Association学会で発表された。Effect of Cardiac Stem Cells In Patients with Ischemic CardiOmyopathy(SCIPIO)トライアルにおいて研究者らは、冠動脈バイパス術を施行された心不全患者33人において心臓組織小片を採取し、c-kit CSCsと呼ばれる心臓幹細胞を分離した。その後彼等はさらに細胞を増殖させ治療に割り当てられた患者20人に注射した。治療を受けた患者20人においてLVEFは4か月後にはCSC注射前の29.0± 1.7%から36.0 ± 2.5%に増加し(P <0.001)、1年後には8.1%増加し続け、2年後には最大12.9%増加した(8人)。治療を受けた患者の瘢痕化した心筋部位の収縮能は4か月後には7.6%改善し、2年後には18.4%増加した。治療を受け心筋核磁気共鳴画像検査を施行された9人の患者において梗塞サイズは有意に減少し、CSCs前には34.9gであったものが4か月後に21.6gとなり、1年後には18.7gとなった。治療を受けなかったコントロール13人においては、1年後の時点で有意な変化はなかった。

TRILOGY ACS サブスタディ:抗血小板薬の比較の結果、血小板反応性には差が認められたが臨床上の予後は同等であった [2012-11-06]
TRILOGY ACS Substudy: Comparison of antiplatelet agents finds differences in platelet reactivity but similar clinical outcomes

ST上昇のない急性冠症候群(ACS)に対し血行再建術を施行されなかった患者において、prasugrelはクロピドグレルよりも、年齢、体重、および用量に関係なく血小板反応性を低下させた。しかし、血小板反応性と虚血に関するアウトカム発現には有意な相関を認めなかったとのLate Breaking Clinical Trialの結果が2012年American Heart Association学会で発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。研究者らは、Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes(TRILOGY ACS)トライアルにおいて大規模な経時的血小板機能サブスタディを施行した。TRILOGY ACSの参加者9,326人中、27.5%がこのサブスタディに組み入れられ、1,286人はprasugrelを1,278人はクロピドグレルを投与された。患者はアスピリンとprasugrel(10または15mg/d)またはクロピドグレル(75 mg/d)のいずれかを併用する群に無作為に割り付けられた。Prasugrelは年齢、体重および用量に関係なくクロピドグレルよりも血小板反応性を低下させた。30か月間の一次有効性エンドポイント(心血管死、心臓発作、または脳卒中)発現率に関し、prasugrelとクロピドグレルの間に有意差はなく、血小板反応性と虚血性アウトカム発現との間に有意な相関は認められなかった。

OPERA:術前および術後の魚油補給は術後心房細動を減少させない [2012-11-06]
OPERA: Pre-operative and post-operative fish oil supplementation does not reduce postoperative atrial fibrillation

心臓手術を施行される患者において、術前および術後のn-3多価不飽和脂肪酸(魚油)補給は術後心房細動(AF)のリスクを軽減させなかったと、American Heart Association 2012年Late Breaking Clinical Trialで発表され、同時にJAMAオンライン版に掲載された。Omega-3 Fatty Acids for Prevention of Post-operative Atrial Fibrillation(OPERA)スタディは、心臓手術を予定された患者1,516人(平均年齢64歳、男性72.2%、心血管リスクファクターを有する)を対象とした無作為化プラセボコントロール多施設トライアルであった。患者は、魚油(1gカプセル中エチルエステルとしてn-3- PUFAを840mg以上含有)またはプラセボを、術前に導入としての10gを3〜5日間(または8gを2日間)の後、術後に2g/日を退院までまたは術後10日まで投与された。一次エンドポイント(30秒以上持続する術後AFの発現)はプラセボ群の233人(30.7%)、およびn-3-PUFA群の227人(30.0%)に認めた。持続性、症候性、または治療を必要とした術後AFまたは患者あたりの術後AF発作数などの二次エンドポイントは、いずれも両群間で差がなかった。

試験中のデバイスにより拍動している心臓のエネルギーを変換しペースメーカーを充電するのに十分な電気が得られる可能性がある [2012-11-06]
An Experimental device that converts energy from a beating heart could provide enough electricity to power a pacemaker

試験中のデバイスにより拍動している心臓のエネルギーを変換しペースメーカーを充電するのに十分な電気を供給したとの研究結果が、2012年American Heart Association学会で発表された。このプレリミナリースタディにおいて研究者らは非線形ハーベスタ―動きから発生した電荷ピエゾ電気を使用するエネルギー回収デバイスを試験した。ペースメーカー作動には少量の電力しか必要としないため、この方法はペースメーカーにとって有望な技術的解決策である。研究者らは心拍により引き起こされる胸腔内の振動を計測した。そして彼らは研究室で"シェーカー"を用いてこの振動を再現し、彼らが発明したプロトタイプ心臓エネルギーハーベスタに接続した。心拍数1分間20〜600の範囲内において100セットのシミュレーション心拍に基づくこのプロトタイプの性能を計測した結果、このエネルギーハーベスタは科学者らが期待した(現代のペースメーカーが必要とするパワーの10倍以上を発生する)通りに作動することが示された。この結果から、患者はバッテリーが消費されても交換の必要なく自らのペースメーカーを充電できる可能性があることが示唆される。次のステップは、現在使用されているペースメーカーのバッテリーの半分のサイズのこのエネルギーハーベスタの植え込みである。ピエゾ電気は除細動器などの消費電力の微小な他の心臓デバイスも充電できる可能性がある。

日本人の家族は心停止に対し友人や同僚および他人よりも反応しにくい [2012-11-06]
Japanese family members were far less likely than friends, colleagues and strangers to effectively respond to a cardiac arrest

心停止した者に対し家族がCPRを行う頻度は、通りすがりの人や友人よりも低いとの日本人を対象としたスタディが2012年American Heart Association学会で発表された。2005〜2009年に発生した心停止547,218件を再検討した結果、約140,000件は居合わせた者に目撃され医師の介入がないものであった。この居合わせた者には家族、友人および同僚、通りすがりの者などが含まれた。倒れてから救急隊を呼ぶまで、および救急隊を呼んでから到着するまでの時間は通りすがりの者が目撃した場合が最も短かった。家族はCPRを施行する確率が最も低く(36.5%)、電話で指示を受けようとする確率が最も高かった(45.8%)。電話での家族への指示は最も成功率が低く(39.4%)、家族は心臓マッサージのみを行うことが最も多かった(67.9%)。生存率や神経学的状態および心停止に対する反応は、家族が第一発見者であった場合に通りすがりの者と比較し最も低かった。この結果は日本における性差の大きさを示している、と筆者らは述べている。日本においては過去の研究で心停止を起こした者の妻や女性は全般的に男性に対しCPRを行う確率が低いことが示された。

若年成人および女性は心筋梗塞症状に対する受診が遅れる [2012-11-06]
Young adults and women delay seeking care for symptoms of myocardial infarction

若年成人は胸痛を心臓関連の問題と考えにくいとのスタディ結果が2012年American Heart Association学会で発表された。しかし、女性の方が男性よりも受診までに1日以上待つと報告した者が多かった。男女ともに症状が消失しないため受診したと報告したが、女性は心疾患を心配して受診する確率が低かった。研究者らは2008〜2012年における米国104の病院の18〜55歳の心筋梗塞(MI)患者2,990人を調査した。患者に直接問診を行ったところ、大部分の女性および男性(男性の90%、女性の87%)が急性MIに伴い胸痛、胸部圧迫感、絞扼感および胸部不快感を経験していた。問診から、女性の3人に1人、男性の5人に1人が入院前に症状のために受診していた。医療提供者から、その症状が心臓による可能性があり再受診して心疾患に関して医師と話すように言われたのは、男性よりも女性に少ない傾向にあった。約60%の男女が彼等の症状は心臓によるものではないと思っていた。女性は消化不良、ストレスまたは不安によるものと考え、男性は消化不良や筋肉痛と考える傾向にあった。

静脈内HDLコレステロール蛋白注入はその後の心筋梗塞リスクを低下させる可能性がある [2012-11-06]
IV infusion of HDL cholesterol protein may lower risk of subsequent myocardial infarction

2012年American Heart Association学会で発表された小規模な早期スタディの結果、研究者らは、HDL内の主たる蛋白の静脈内注入はコレステロールを狭窄動脈から排出させる身体の能力を増強させるようであり、その後の心筋梗塞(MI)リスクを軽減させる可能性があることを発表した。このスタディには血管内投与可能な自然の、コレステロールを動脈や他の組織から肝臓へ転送し排出させるHDL粒子のキー蛋白である人型アポリポプロテインA-1(Apo-A-1)CSL112を用いた。研究者らは57人の健康なボランティアに対し、5〜135mg/kgの用量のCSL112を単回注射し、それに対する反応としてのコレステロールの移動のマーカーを調査した。プラセボ注射と比較し、細胞からのコレステロール排出は速やかに増加した(ベースラインより最大270%)。コレステロール低下に関与するHDLの亜分画preβ1-HDLは劇的に増加した(ベースラインより最大3600%)。全体的に、CSL112は研究者らが期待したのと同等またはそれ以上に作用し、全ての変化はコレステロール逆転送活性の期待された上昇と合致していた。この方法が臨床試験で成功すれば、より緩徐にHDLコレステロールを上昇させる薬剤と比較しこの薬剤は近い将来のMI高リスクを軽減する可能性がある。